連載

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Base Ball Bear 『二十九歳』
TEXT:鈴木亮介

「青春」の由来をご存じだろうか。中国の五行説をもとにライフステージを示したもので、概ね自我が確立する16~17歳から30歳までが「青春」、その次は40代後半までが「朱夏」、50代を「白秋」、晩年を「玄冬」と表す。
 
人生を四季に置き換えるならば、29歳という位置はちょうど、初めてのステージを終えて次のステージに進もうとする節目にあたる。若芽が眩しい、甘酸っぱい、何をしても許されるような青春が、幕を閉じる。そんな29歳を迎えた今年、あの”青春バンド”はどんな作品を世に送り出してくるのだろうか…同級生(1984年生まれ)の小生は密かに気になっていた。2014年6月4日の発売が決まった5thアルバムのタイトルは、『二十九歳』。直球勝負だ。
 
文化祭出演をきっかけに同じ高校の同級生ら(関根史織のみ1学年下)で結成された”青春バンド”、Base Ball Bear。印象的なコード進行や、ドストレートな青春をテーマにした楽曲に定評があり、ベボベの愛称でティーンエイジャーから絶大な支持を集める彼ら、2007年12月には『十七歳』と題した2ndアルバムを発表しているが、それが青春の入口であるとするなら、今回リリースする『二十九歳』は青春の出口、バンド活動のここまでの総括だ。
 
フルアルバムとしてのリリースは2011年11月発売の4thアルバム『新呼吸』以来およそ3年ぶり。スマッシュヒットを飛ばしたシングル「PERFECT BLUE」、「ファンファーレがきこえる」はもちろん、2013年6月リリースのミニアルバム『THE CUT』より「The Cut feat. RHYMESTER」、同年公開のアニメ「惡の華」コンセプトCDに収録のボーナストラック「光蘚(ひかりごけ)」を含む全16曲を収録した今作。これだけ出し惜しみをしないベストアルバム的な1枚が売れないわけはないのだが、改めて1枚の作品として通して聴いた時、Base Ball Bearの来し方行く末がズシリと伝わってくる。
 
CDプレーヤーに盤を入れて、1トラック目から再生…昭和の生き残りたる29歳のリスナーなら、この感覚はまだ記憶にあるだろう。PCでもスマホでもデジタルプレイヤーでもいいので、脳内でイメージしながら再生してほしい。その1曲目、最初に流れるのは「何才」。青春群像劇の主題歌のような、琴線に触れるギターフレーズに、小出祐介(Vocal & Guitar)の儚いボーカルが乗る。
 
「欲しいのはすべてと言ったら いけないのかな」…20代も後半に差し掛かると、若いから仕方ない、若いのにすごいといった、若さを武器にも逃げ道にもできなくなってくる。体力も衰えてくるし、頑張れば頑張った分伸びていく…みたいな右肩上がりの成長は影を潜めていく。それでもなお、まだまだこんなもんじゃない、「澱(よど)みからメロンソーダまで翔(か)け抜けたい」と叫び、それを自らの音で実証してみせるBase Ball Bearの、これは決意表明とも言える1曲だ。
 
3曲目「ファンファーレがきこえる」のジェットコースターみたいな旋律、8曲目「ERAい人」の爆裂サウンド、9曲目「方舟」のスローでハートウォームな音、12曲目「UNDER THE STAR LIGHT」の疾走感あふれる宇宙サウンドと関根史織による女性コーラス…と、実に様々な角度から彼らは青春を表現する。何才になっても青春。そんな希望を同世代にも、或いはもう少し上の世代にも持たせてくれるのがBase Ball Bearの音楽だ。
 
とは言え、青春だけにとどまり続けているわけではない。「交代で来る絶望と希望」、夢と現実のはざまで「ゆらゆら漂」いながら、彼らは次のステージへと進む。中盤の曲の歌詞をピックアップしても、「僕の生活は 終わらない」、「ラストシーンはスタートラインでしかない」、「変われない僕を連れて」、「あたらしい風に向かい」、「連れていくよ 新世界へと」…と狂おしいほどに彼らは青春スーツからの脱皮を希求している。
 
最終トラック「カナリア」はミドルテンポのホッと一息ついて本音を漏らすような曲。順風満帆な日々だけじゃない、悩みや苦しみ悲しみもあって、希望が失われたり、手に入れた幸福が離れていったり…それでも「1引く1ほど単純じゃない」と彼らは歌う。「失くす前の手触りをまだ確かに憶えてるから」、それが、30歳からの次の人生を歩む糧になるだろうから。
 
青春から、朱夏へ。Base Ball Bearの熱い夏が、始まる。決して「若者に人気のバンド」だけじゃない、どの世代が聴いてもそれぞれに心に響くものがある、青春ベストだ。
 

 


 

◆Base Ball Bear 『二十九歳』
完全生産限定盤(CD+DVD)
UPCH-29167 3,500円(+税)
通常盤(CD)
UPCH-20353 2,931円(+税)
<収録曲>
M01. 何才
M02. アンビバレントダンサー
M03. ファンファーレがきこえる (Album Mix)
M04. Ghost Town
M05. yellow
M06. そんなに好きじゃなかった
M07. The Cut feat. RHYMESTER (Album Mix)
M08. ERAい人
M09. 方舟
M10. The End
M11. スクランブル
M12. UNDER THE STAR LIGHT
M13. PERFECT BLUE (Album Mix)
M14. 光蘚 (Album Mix)
M15. 魔王
M16. カナリア

◆ライブインフォメーション
Base Ball Bear 「2014年秋ツアー」(※タイトル仮)決定!!
(全公演チケット一般発売日:7月12日(土)AM10:00)
・2014年09月06日(土)【群 馬】高崎club FLEEZ
・2014年09月07日(日)【茨 城】水戸LIGHT HOUSE
・2014年09月13日(土)【岡 山】岡山CRAZYMAMA KINGDOM
・2014年09月14日(日)【鳥 取】米子AZTiC laughs
・2014年09月16日(火)【京 都】京都磔磔
・2014年09月20日(土)【北海道】札幌PENNY LANE24
・2014年09月21日(日)【北海道】帯広Rest
・2014年09月23日(祝)【北海道】函館club COCOA
・2014年10月04日(土)【香 川】高松DIME
・2014年10月05日(日)【高 知】高知X-pt.
・2014年10月11日(土)【宮 崎】宮崎SR BOX
・2014年10月12日(日)【福 岡】福岡DRUM LOGOS
・2014年10月16日(木)【栃 木】HEAVEN’S ROCK Utsunomiya
・2014年10月18日(土)【新 潟】新潟LOTS
・2014年10月19日(日)【石 川】金沢AZ
・2014年10月25日(土)【広 島】広島CLUB QUATTRO
・2014年10月30日(木)【大 阪】なんばHatch
・2014年10月31日(金)【愛 知】Zepp Nagoya
・2014年11月02日(日)【宮 城】仙台darwin
・2014年11月03日(祝)【岩 手】盛岡CLUB CHANGE WAVE
・2014年11月07日(金)【東 京】Zepp DiverCity Tokyo
・2014年11月11日(火)【東 京】下北沢GARAGE


◆Base Ball Bear 公式サイト
http://www.baseballbear.com/
◆ニューアルバム『二十九歳』 特設サイト
http://baseballbear29.com/