連載

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Canthana『CellMate』
TEXT:桂伸也

日本クラッシック界でも、指折りの実力をもつチェロ奏者が集い結成されたチェロトリオ、Canthana。彼らの特徴は、何といっても実力派クラッシック奏者であること、そして深くロックに根ざしたルーツをあわせ持っているということだ。そんな彼らのデビュー作『CellMate』がこの春、リリースされた。今回はこの作品から見える彼らのロックとの接点、そして彼らの実態を探ってみよう。
 
ロックナンバーをベースにしながら、クラッシックのエキスパートである彼らが作り上げた、という味が十二分に発揮されたサウンドというのが、この作品のイメージだ。サウンドとして特筆すべきポイントは、ギターやドラムなどのラウドなサウンドではなく、チェロをベースとしたというところにある。単純に原曲のイメージと対比してしまうと、サウンドの荒々しさや重さというインパクトの部分は少なく感じられるかもしれない。
 
しかし彼らが表現力豊かにそのメロディを演奏することで、原曲の秀逸さが改めて認識できる。原曲には素晴らしいメロディが存在するが、ギターやドラムなどのサウンドを強調するあまり、原曲を耳にする者にとっては逆にメロディの印象は思ったほど強くないかもしれない。それがCanthanaバージョンでは、メロディの意味「歌うメロディであること」「メロディこそが中心であること」という案外忘れがちなポイントを強く印象付けている。
 
これは彼らの「音楽のジャンルという垣根を越え、クラッシックよりロックというサウンドに対してアプローチを行う」という挑戦を行うことの、大きな意味であるといえる。また、これこそが音楽という世界の中で新たな挑戦、変革を狙う行動であり、アプローチそのものがある意味「ロック的である」といえよう。そのメロディの歌い方も彼らならでは、彼ら自身が積み重ねてきたルーツから生み出される、彼らCanthanaならではの歌い方が見事に表現されている。
 
また、3人のチェロ奏者が奏でるハーモニーにも注目してほしい。長きにわたって作り上げられたクラッシック音楽、その旨みを存分に反映させたこのサウンドには、パッと聴き流してしまうには惜しいほどの巧みなアレンジが詰まっている。それは繰り返し耳を傾け、響きの一音に集中することでさらに味わい深い印象を感じることだろう。生楽器での演奏による、手間暇かけた珠玉のサウンド。決して使い捨ての音楽ではない、貴重な作品といえる。
 
また、楽曲の選び方が個性的で、いわゆる最近よくメディアなどに露出し始めている「チェロのロッカー」達とは方向の違いも見られて面白い。クラッシックならではの整然とした形、そして響きの豊かさから、改めてロックサウンドの面白みを再発見できる可能性もある。あくなき挑戦を続ける彼らだけに、今後の展開も楽しみ。Canthanaは、要注目のグループだ。


 

 


FTCS2597Canthana『CellMate』
発売中
KICS-3035/3,000円(税抜)
【収録曲】
M01. Sleepwalkers Dream(Delain)
M02. Far From the Edge(Elysion)
M03. High Enough(NEMESEA)
M04. Dreamer(Ozzy Osbourne)
M05. Young Girl(Bruno Mars)
M06. We Work in Bars(The Chap)
M07. Ya Soshla S Uma(All the Things She Said)(t.A.T.u.)
M08. Tainted Love(Soft Cell)
M09. Emissary(Fyrefly)
M10. To France(Mike Oldfield)

 


オフィシャルサイト
http://canthana.com/

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