連載

lead_simple

柴山俊之 『ギラギラ』
TEXT:桂伸也

日本のロックが産声を上げてから半世紀が過ぎようとしている今日、近年は「大御所」と呼ばれるアーティストも徐々に増え始めている。今回紹介するアルバム『ギラギラ』をリリースした柴山俊之も、日本のロックを語る上では重要な存在、いわば日本ロック界の「重鎮」という言葉にふさわしいアーティストだ。

」というステージネームを持つ柴山は、1975年にバンドサンハウスでデビューし、センチメンタル・フール、Ruby、菊花賞、春歌、Zi:LiE-YA、ELECTRIC MUDなどのバンドとともに作詞家としての活動を経て、今年67歳を迎えながら今でも精力的に活動を続けている。そんな彼が新たに発表した『ギラギラ』で見せたものとは、いったいどのようなものだろうか。

アルバム全般を聴いて印象的なポイントは、柴山の歌が意外とも思えるほどにシンプルな唱法を行っていること、その歌メロの中で、聴くものの気持ちを強く揺り動かしてくるような力。もちろん必要なポイントで歌い方に起伏を作っているような個所も当然曲中には存在している。

しかし意識的にそのポイントを強調するというよりも、そこで聴こえてくる詞にちりばめられた言葉の意味を深く訴えかけているような雰囲気が感じられる。変に浮いてしまうような表現はそこには見られず、洗練され、かつ印象的でキャッチ―な言葉をうまく並べるそのセンスは、長きにわたってロックという音楽に携わるとともに、作詞家として活動してきた彼の経験が大きく強みを発している部分だ。

また、付属しているDVDは、彼のこれまで歩んできた道、そして現在、未来の気持ちを、音楽という観点で語ったインタビュー映像だ。単なるQ&Aを載せたオマケ動画ではなく、本編CDとともにロックという歴史を綴った生の証言の一つだ。年代に即したその彼の歴史は、若いロックフリークには興味深く感じられる内容も盛りだくさんであり、ロックファンとしては必見の映像といえよう。

さらには楽曲と同タイトルの10編の短編小説に、彼と親交の深いアーティストたちが描いたイメージ絵画を添えたブックレットが添付され、彼本人の作り上げたものだけでなく、客観的な視点での手が加えられ、より深い柴山の世界を垣間見ることができるだろう。

年齢や活動の功績は、時に人を「円熟」「ベテラン」という表現で一つに締めくくってしまう恐れもある。しかし彼の言葉には、そんな他人の勝手な思いとは裏腹の、彼の中にある刺々しさ、荒々しさすら感じさせてくれる。一曲目のナンバー「On The Road Again」には「ゼロの地点から始めよう」という歌詞がある。長い年月を過ごした彼にとって、「単なる作品だから」と簡単にこのような表現は入れられるものではない。そこには彼が「まだまだ突き進む」という意志を深く持っているからに違いない。まるで「重鎮」という呼び声を一笑に付してしまうような柴山の、今まさに『ギラギラ』したその気持ちを是非感じてもらいたい。

 


FTCS2597柴山俊之 『ギラギラ』
発売中
DQC-1233/7,270円(税抜)
収録内容
<ディスク:1(CD)>
M01. On The Road Again
M02. 魔女の季節
M03. 風が泣いている
M04. Summer of Love
M05. ZIG ZAG (Dedicated to The Doors)
M06. Moonlight Drive
M07. Midnight Glory
M08. Temptation Blues
M09. 空想ロックンロール
M10. My Girl
M11. ギラギラ
M12. On The Road Again…Reprise (instrumental)
 
<ディスク:2(DVD)>
柴山俊之 インタビュー : 今井智子

<Book>Book 楽曲と同タイトルの10篇の短編小説と親交の深いアーティストによるコラボレーションアート 20ページカラー写真集 全188ページ
 
【絵】
柴山俊之 / 山部善次郎 / 坂本慎太郎(ゆらゆら帝国)/ 浅井健一 (ブランキージェットシティ) / ヤマジ カズヒデ (dip) / 那須慶子 / 松尾清憲 / 近藤悦子
 


オフィシャルサイト
http://boogiechillen.x0.com/