連載

レーベル資料館 ~Rock Will Never Die~

第6回 Case Of “SUB-EFFECT RECORDS”
TEXT:桂伸也

連載6回目は、愛知、名古屋という地域性に特色を持ち、良質のヘヴィメタルサウンドを追求するレーベル、SUB-EFFECT RECORDSをご紹介します。まだタイトル数は少ないものの、こだわりのあるサウンド指向を貫き、レーベルの存在感を強めているSUB-EFFECT RECORDSは、現在イベント制作で大きな活動を見せており、現場での評価を重視したその断固とした音楽ポリシーは密かに高い評価を得つつあるレーベルです。
 
東京や大阪といった主要都市圏内で生活しているアーティストであればともかく、地方都市での音楽活動は様々な課題があります。SUB-EFFECT RECORDSが存在する名古屋という地域は、よくバンドのツアーの中でも重要都市を象徴する「東名阪」という言葉の中では、主要都市の東京、大阪と同列に並べられているものの、実際にはこの2大都市のムーヴメントとなかなか同じように見られないことも事実。
 
それでもSUB-EFFECT RECORDSのように、地域に密着しながらレーベル色を強く出しインパクトを高めることで、その地域に対する注目度を上げるという方向は、地方での活動を活性化して行く上で重要な活動といえるでしょう。今回はこのSUB-EFFECT RECORDSの活動の様子から見えてくる名古屋という地域の特色、そして地方で活躍するヒントのようなものを探っていきたいと思います。
 

【SUB-EFFECT RECORDSのスポークスマンであるkumaさんにお話を伺いました。

 
— まず始めに【SUB-EFFECT RECORDS】の設立から現在までのプロフィールを教えてください。
 
kuma:私自身は17歳くらいにOUTRAGEUNITEDのローディーを務め始めたのが、この業界に入ったきっかけでした。1993年にはBEDLAMというバンドを結成し、一時はメジャー契約というところまで行き着きそうな勢いがあったのですが、1996年に解散。その後4年ほど空白の時期に突入しました(笑)。ちょうどヘヴィメタルも低迷していた時期で、名古屋の音楽シーンも「冬の時代」、そんなときに名古屋のメタルの起爆剤となれないか?と考え新たにBold Fat Missileというバンドを2000年に結成しました。

これは実は、同じ名古屋出身のヘヴィメタルバンドOUTRAGEとつながりのあるバンドで、ちょうどOUTRAGEから一時ボーカルの橋本さんが抜け、三人体制でバンドを続けられていたときにドラムの丹下さんが立ち上げたレーベルである30 min. Recordsから音源をリリースしていました。しかし2004年にドラマーが難病をかかえるというアクシデントから彼が回復するまで活動を一時停止したのですが、それでもこのバンドの活動で集まった他バンドとのつながりやイベントは守っていきたいと思い、イベント自体を継続していこうと思いました。2005年頃のことですが、これがSUB-EFFECT RECORDS設立の発端です。そのきっかけとして一番大きかったのは2005年に行ったUNITEDの名古屋公演。私たちが独立した企画として行ったのはこのUNITEDの名古屋公演が初めてで、これを行ったときに「次はこんなところで気をつけてみては」と様々な助言をいろんな人からもらったこともあり、この組織を続けていこうと思いました。

それからイベントを続けていくうちに若いバンドも増えたので、2005年にオムニバスアルバムを作ったのが、レーベルとしても始動したきっかけとなりました。このアルバムは1曲目にOUTRAGEが参加しているという特別なもの。さらには日本を代表するDOOMマスターといわれているETERNAL ELYSIUMも参加している特別なものとなりました。そんなわけで、メタルというキーワードと、名古屋を中心とした地域性という特色で、レーベルを続けていこうという流れがSUB-EFFECT RECORDSとして出来上がりました。
 
— レーベルのカラーとして打ち出している特徴やセールスポイントを教えてください。
 
kuma:先述の通り、もともとは名古屋という地域性を考えた部分が発端でしたが、実は大阪に住んでいる某知人から「kumaのレーベルからアルバムを出させてくれよ」といった依頼もあり、この方針はあっけなく崩れ(笑)、場所は問わずいいモノを作るという方針で様々なアーティストを紹介しています。2004年くらいから名古屋でも徐々にインディーズシーンは徐々に拡大しているという実感はあり、そこで有名/無名は関係なくいいモノを紹介したいと思っています。

どんなタイトルを出すかは、やはりあくまでも私の感性によるところが重要。もともと私がヴォーカリストということもあり、歌に対して注目する部分が大きいのですが、その中でも歌にひとくせあるバンドというのが聴く基準としてあります。うまいとか、「こんなことをやったバンドはまだない」というより、そのバンドでしかできない独自のものを持っていることが一番重要なところだと思っています。

まあ個人的な感性によるところもあるため、もともと私のルーツになっているOUTRAGEUNITEDをはじめとしたヘヴィなサウンドというものは、少なからず影響はありますね。とりあえず見るアーティストは国内に限っていますが、いずれは海外に打って出ることを目指してもらいたいと思うところもあり、注目しているアーティストも、大概は音にそういう傾向があるバンド。そういう志向を重視する傾向もあります。

それと最も気にしているのは、「ライブバンドであること」。どんなに音源が良くても、ライブができなければ意味はない。逆にキッチリしたデモ音源はなくても、まずはライブが見られるか?、またはライブ動画があるか?というところを重視して見ているので、それがサウンドの傾向として反映されている部分は大きいと思います。先程の話で紹介したオムニバスアルバムもそうですが、アルバムのリリースというのは、SUB-EFFECT RECORDSではある意味イベントにつながったもので、イベントの一つとして考えられるようなもの、と意識しています。
 
また、SUB-EFFECT RECORDSの業務としてマネジメントを行っていますが、これはどちらかというと新人の教育の場というか(笑)。例えばリハのときに「まずは始まるときにちゃんと”お願いします”って大きな声で言わなきゃダメだ!」とうるさく言うような係(笑)。うるさいなあと思われるかもしれませんが、バンドマンとしては当然必要なことで、なかなかこれを定性的に行ってもらえる機会もないのが現場の実情。でもしっかり活動をしていこうとするバンドには、こういったマナーや仕組みは必要不可欠だし、かつては私自身もそういうことを知らずにいっぱい失敗したことがあったので、そんな経験を踏まえた上で話すようにしています。成功体験より、失敗体験の方が身になる部分って多いですからね。
 
— お薦めをピックアップして紹介してください。
 
kuma:こちらのリリース2点になります。
 

SUB-EFFECT RECORDSのお薦めはこちら!

HIGHBALL ROLLER

【アーティスト】(Various Artists)
【タイトル】EARTHQUAKE A.G.M.
【発売日】2005年4月30日(土)発売
【定価】¥2,000(税込価格)

名古屋を中心に活動する東海地区(愛知・岐阜・三重)のメタルバンド計14バンド、14曲を収録。地元名古屋を代表するメタル界の重鎮OUTRAGEの「IN YOU」をはじめとして、めDOOM/ストナー界では海外でも高い評価を得ているETERNAL ELYSIUM、実力派パワーメタルバンドのARGUMENT SOUL、2005年にアメリカのインディーズレーベルと契約したVIO SYSTEM DIVIDEなど若手からベテランまで、実力派バンドが参加した最強オムニバス。2005年のリリースではあるが、東海地区メタルシーンを語るものとして、色あせることのない旬な一枚といえる。

 

REVOLT 'N' ROLL

【アーティスト】SIN FROM THE RESURRECTION
【タイトル】RESURRECTION CODE
【発売日】2013年5月17日(金)発売
【定価】¥1,500(税込価格)

名古屋の若きヘヴィメタルアーティスト3人によるバンド(現在は新メンバーを迎え、4人体制)の最新アルバム。メロディ、シャウト、そしてデスボイスとハード&ヘヴィなサウンドの中で様々なキャラクターを見せる。かつミクスチャー的雑多さを感じさせないそのセンスは、ヘヴィメタルの新たな流れを予感させる。




 
— 今後のリリース作品や、アーティスト情報、また公募などあれば教えてください。
 
kuma:現在、レーベルとしてリリースしているのは8タイトル。2005年から始めて、空白の期間もあったことでまだ少ないという印象はあるかもしれません。まあ基本としてやはり「フィーリングとタイミング」、それらが合致して「出したいと思ったときに出す」というのが方針(笑)。そういう意味で実はまだそれ程セールスに強くこだわってはいません。

でも、徐々に増やしていければと考えています。リリース自体がイベントの実施と一貫した内容で作られるものなので、いいライブができるというところからリリースににつながってきます。だからまず公募は「ライブをしているところを見せてもらいたい」或いは、こちらで行っているライブイベントに「出演してもらいたい」というところから、こちらのアプローチが始まります。だから細かい音資料やプロフィールよりも、まずは実際にライブをやっているところ、またはやった映像を見せてもらいたいし、一番はやっぱり生でプレイしているところを見たいと思っています。

ついこの前リリースしたSIN FROM THE RESURRECTIONの例でいくと、実は以前音源を作った後でヴォーカリストが脱退しお蔵入りになるところを、メンバーがどうしても出したいという意向を伝えてきたんです。だからそれに対して私は「いなくなったボーカルの部分を、自分たちでプレイしそこは差し替えよう」と指示し、ようやくリリースにこじつけた経緯がありました。まあそこまでやはりある程度アーティストがリリースやプレイに対して熱意があること、自分たちが作品を出すことに対して責任を持つこと、出すものに誠意を見せるというところは、重視している点ではありますね、他のレーベルでもそうだと思いますが。
 
— kumaさんが思う、レーベルを通じた「ロックシーン」への熱いコメントをお願いします!
 
kuma:地域性という意味で名古屋を拠点に、この勢いを他の地域に飛び火させることはできないか?ということも考えています。イベントをやっていて思うのですが、名古屋のライブというのはかなり特殊で、異様なくらいに盛り上がるんです。何か憑依した、くらいにお客さんが異常に(笑)。特に最近、国内各地のバンドを集めてイベントを開催する機会があり、それをここ名古屋で開催すると、その盛り上がりに「あっ、ここまで盛り上がっていいんだ!?」とか思ってもらえて、凄まじいくらいなときがよくあるんですよ。そんな勢いが、よその地にドンドン伝播してくれればいいなと思っています。

メタルファンのお客さんって、実はまだシャイな方も多いと思いますが、こういう楽しみ方ができるということを名古屋の勢いから知ってもらえればと思うんです。よく「東名阪」という言い方で名古屋を取り上げてもらうことはありますが、実は「東」と「阪」の間で、名古屋ってそれ程まだ大きな存在ではなく、ときにスルーされることもあるんです、悔しい傾向ではありますが(笑)。でもこの現在盛り上がりが大きくなりつつある状況から、「地方発信」という恰好でこんな文化が大きくならないかと思っています。そしてこの伝播から全国を回れるようなバンドがいくつも出てくればと。

そんなバンドをドンドン紹介していきたいと思います。だから、熱いパワーを持っているバンドはドンドン動いてもらいたいし、そういうバンドを応援する受け皿的な要素をSUB-EFFECT RECORDSは持っています。だからドンドン利用してもらえるといいですね。私たちは楽しいものを提供していきたいと思っているんです。ライブで激しく暴れまわったお客さんが、汗をかきながら笑顔で帰っていく姿を見るのは本当に嬉しい。そういう意味ではかつての全日本プロレスのスローガンではないですが、「明るく、楽しく、激しく」といった感じ(笑)。
 

ロゴ
◆レーベル インフォメーション
SUB-EFFECT RECORDS
http://sound.jp/sub-effect/

◆アーティスト インフォメーション
SIN FROM THE RESURRECTION
http://resurrection666.web.fc2.com/

◆ビースト推薦文
レーベルとしての活動はまだ発展途上であるが、あくまで名古屋という地域に存在することと、kumaさんのヘヴィメタルを通じた強い音楽ポリシーという2つのコンセプトにこだわる思いは、近年彼らが名古屋で開催しているイベントで急激な盛り上がりを見せていることからも強く感じられる。また、アーティスト選びに「ライブ重視」という観点をもっていることも、「上質のアーティストマインド」を求める意味で重要なポイントといえる。その意味で、今後の発展を願わずにはいられないレーベルだ。続くリリースにも期待していきたい。