エントリーNo.17　怪獣メトロ | Web Rock Magazine BEEAST

ロック１年生　エントリーNo.17　怪獣メトロ

TEXT & PHOTO：鈴木亮介

気づけば2010年も残り数えるほどになってきました。この時期になると、流行語大賞や10大ニュースなどの話題が増えますね。突然ですが読者のみなさんは「あげぽよ」という言葉をご存じでしょうか。これは今年の女子中高生ケータイ流行語大賞で銀賞を受賞した言葉で、真面目に解説すると、テンションが上がっている「アゲ」状態に、「ぽよ」でかわいらしいニュアンスを付け足したというものだそうな。

実際、小生の身の回りで「あげぽよ」を使っている中高生はほとんど見かけませんが…流行っているのでしょうか。こう書いていると、すっかりオッサンになってしまったようで、BEEASTのTEENAGER担当を自任していながら、お恥ずかしい限りです。ちなみにスズキが高校生だったほんの数年前は、「俺は東京生まれHIP HOP育ち」とか「MAJIでKOIする5秒前」とかが流行ってました…。

さ、気を取り直して、今回のロック1年生は久々にガールズバンドが登場します。県立川崎高校の軽音楽部に所属する同級生で結成された怪獣メトロです。メンバーは鈴木楓さん（vocal）、肥後かれんさん（Guitar）、小泉珠光さん（Bass）、並木香純さん（Drums）の4名で、全員高校2年生。12月の土曜日、部活中にお邪魔し取材しました。元気いっぱい、17歳女子の「あげぽよ」な軽音ライフに迫ります！

— まずはバンド結成のきっかけを教えてください。4人はどのようにして出会ったのでしょうか。

小泉：怪獣メトロは2009年5月に結成しました。入学と同時に4人とも軽音楽部に入部し、仮バンドを組む時に先輩から指名されたのがこの4人でした。私自身は高校に入ったらバンドを組みたいと思っていて、軽音楽部に入るためにこの高校を受験しました。

— 皆さん元々軽音楽部に入ろうと思っていたのですか？

鈴木：私は、一緒の中学校出身だったごんぬ（肥後）に誘われて軽音楽部の体験入部に行ったのがきっかけで、バンドを組みたいと思うようになりました。ずんだ（並木）とは中3の夏、たまたま別の高校を見学した時に知り合ってメールのやり取りはしていましたが、2人とも偶然この高校に入学し、再会。軽音に入ろうよと誘いました。たまちゃん（小泉）とは軽音楽部で出会いました。そして4人が自然と集まって一緒にやるようになったという感じです。

並木：私も元々は軽音楽部に入ろうとは思っていなかったのですが、でんぷりん（鈴木）に誘われて新入生歓迎ライブを見に行ってから、興味を持つようになりました。その後、でんぷりんが体験入部に行くというのでくっついて行って、楽しそうだなと思って入部することにしました。

— では、並木さんと鈴木さんはこのバンドが音楽を始めたきっかけになるわけですね。今のパートを選んだ理由も教えてください。

並木：そうですね。小4あたりから中2までピアノはやっていたのですが、習っているうちに好きじゃなくなり、やめてしまいました。中学では美術部に入り、音楽は好きな曲があったらそれだけ聴く程度でしたが、高校でバンドを組んでから、ロックなど色々聴くようになりました。ドラムを選んだのは…実は入学当初ちょうど突き指をしていて、体験入部の時に3年生の先輩がギターやベースを教えてくれたのですが、その時無理やり突き指している指を持っていかれて…その時「絶対に弦楽器はやらない！」と心に決めました（笑）そして、ドラムが楽しいしかっこいいなと思ったので、ドラムにしました。突き指してなかったら違うパートだったかもしれませんね。

鈴木：入学当初は部活に入らずバイトしようかなとも思っていたのですが、肥後ちゃんについて行ってみたら結構楽しくて、せっかくの高校生活だし何かやろうかなと思って、入りました。体験入部の時はドラムが楽しいと思ったのですが、実際仮バンドを組んでドラムを叩いてみたら難しくて、これは向いてないなと思っていた頃、ボーカルを勧められて、歌うことにしました。最近はエレキも初めて、次のライブではギターボーカルに挑戦します！

小泉：カラオケに行ったらでんぷりん（鈴木）が超歌うまかったんですよ。それで「この子ボーカルにしよう！」ってみんなで言って決めました。

— 肥後さんと小泉さんは入学前から軽音楽部入部を考えていたということですが、元々音楽をやっていたのでしょうか？

肥後：中学の時にBUMP OF CHICKENが好きでバンドに憧れていたのですが、それに加えて父（48）がアコギを趣味で弾いていたのも影響しています。自分も弾いてみたいなと思ってある日声をかけたところ、父が高校生当時に使っていたというギターをもらいました。それが中1の頃です。遊び半分でいじってみたら面白くなり、高校に入ったら楽器を本格的にやりたいと思って軽音楽部に入りました。

小泉：元々は小3からピアノを何となくやっていたのですが、小5、6あたりでシュノーケルが好きになり、ギターがやりたくなって、中1の時にアコギを買いました。独学では難しいので習いに行きました。そうしたらそこの先生に「音楽の基礎はクラシックギターだよ」と教わって、クラシックギターを習うようになったら楽しくなって、今も続けています。ベースは、その教室で中2の時バンドに誘われたのがきっかけで弾くようになりました。そうしたらベースも楽しくなって、高校に入ったら軽音に入りたくなって、軽音が盛んな高校を探して、ここ（県立川崎高校）に来ました。

ちなみに、お互いの第一印象は…

小泉⇒肥後・鈴木　≪体験入部の後、帰り道駅が一緒で、その時肥後ちゃんとでんぷりんと初めて喋って…最初は2人の見分けがついてませんでした（笑）1年生の時は2人とも似てたんですよ～≫

並木⇒小泉　≪入学してすぐの頃、電車で隣に立っていて、「すっごい怖い先輩だなぁ」と思っていたら同い年で、本当にショックでした。電車でケータイいじりながら下向いていて…入部して仮バンを組んでいた頃も最初の方はちょっと怖かったですね。「たまみさん」って感じで（笑）≫

並木⇒肥後　≪純粋そうで静かな子っていうのが第一印象でしたね。私も結構人見知りなので、でんぷりんを介して一緒に喋っていたという感じでしたが、おとなしくて、「いい所のお嬢さん」というイメージを持っていました。仲良くなってみると結構ずぼらでした。部屋が汚かったり（笑）≫

肥後・小泉⇒並木　≪バンドのリーダーは「ずんだがいいんじゃね」って感じで何とな～く決まったのですが、それで正解でしたね。しっかりしてるし。ちなみにずんだというのは、並木のマニキュアの色が枝豆っぽい色で、その後ほっぺをつねったら餅みたいだったのでずんだになりました。≫

— 皆さんは普段どのような音楽を聴きますか？

並木：私はGO!GO!7188や相対性理論が好きですね。

鈴木：私はAAAとか嵐とか…バンドじゃないですね（笑）小学校の時はUVERworldが好きで、それが音楽を聴き始めたきっかけでした。

肥後：私はBUMP OF CHICKENやPlastic Treeをよく聴きます。

小泉：ジャンルは特に決まっていませんが、最近は浅く広くですね。中学の時はロックばかり聴いていて、CONDOR44や小谷美紗子など邦楽ロックが好きです。

— では、バンドの活動について教えてください。

並木：練習はほぼ毎日です。音出しができる時は学校のホールを使います。休日は吹奏楽部と交代で音楽室を使うこともあります。音出しは遅刻したりバンドメンバーが揃っていないとできないので、私たちは結構音出し練習をする機会が多いですね。

鈴木：ボーカルは、普段はキーボードを使っての音出しや腹式呼吸など発声の基礎練習をしています。1年生の時に歌っていた曲を今やってみると、声が出るようになったなという実感があります。

並木：曲はGO!GO!7188や木村カエラなど女性ボーカルのコピーを主にやっています。一度、やりたい曲が2曲あって、それぞれバンドスコアを買ったのですが、2冊買って2曲しかやらないのももったいないので、その中に入っている他の曲もやってみようということで同じアーティストのコピーが多いです。最近は飽きてきたので他のアーティストにも挑戦しようと考えています。そして、オリジナルにも挑戦しています！

小泉：今出来あがっている曲は一応3曲…いや、1.5くらいですね（笑）作り途中のものもあります。

肥後：作詞はでんぷりんで、作曲はみんなでやります。あまり知識がない分、協力して頑張っています。

— 肥後さんは軽音楽部の部長を務めていますが、どのような仕事がありますか？

肥後：部長は代々、前の部長からの指名で決まります。12月のクリスマスライブの時に発表されて、やれと言われたらもう断れないです（笑）。実際部長になってみて…やっぱり大変です！主な仕事は、部活の最初に行われるミーティングを取り仕切ったり、ライブの企画をしてタイムテーブルを作ったり、他校に行ってライブをするときの挨拶をしたり…事務的な仕事が多いですね。大変ですが、ライブが成功した時には達成感があり、やっていて良かったなと思います。今、軽音楽部には全学年合わせて40名ほど部員がいます。1年生が多く、私たち2年生は15名ほどです。

— この2年間、様々なライブや大会に出てきたと思います。特に印象に残っているものや、その時のエピソードを教えてください。

鈴木：1年生の時はちょっと大会に出る程度でしたが、今年の夏からは先輩に誘われてライブハウスにも出るようになりました。今年は既に3回校外ライブを行っています。

肥後：初ライブは1年生の時、去年7月に出た軽音楽連盟の県大会でした。難しい曲を選んでしまったので大変でした。緊張で飛んでしまったり…

並木：一番最初のセッションがひどくて、あまりのできなさに先輩が怒っちゃって…終わった後、みんな泣いたね。大会後、私とたまみは駅のホームで号泣してました。でも、その県大会をきっかけに、みんな本気になって頑張るようになりました。

— なるほど。県大会が怪獣メトロに火を付けたんですね。

並木：でも県大会は好きじゃないです。

鈴木：視線が怖いよね。客席からステージが遠いし。

並木：高い舞台でやらなければいけなくて、観客はみんな座っていて、下からじーっと静かに見られているんですよ。あの空気はすごく嫌です。ライブハウスでのライブが好きです。

鈴木：文化祭は緊張するからキツかったです。でも後輩が「先輩すごいカッコよかったです！」って言ってくれるのは嬉しいですね。

— 親御さんもライブに来てくれるのですか？

鈴木：何度か来てくれましたね。感想は「そんなに期待してなかったけど思ったより良かった」と。

並木：うちは「うまかったねー。でもやっぱり3年生の方がうまいねー」って。それは確かにそうなんだけど。あと、うちの親はEXILEや西野カナが好きなんですが、私の聴いている曲を全部けなしてくるんですよー。

小泉：中学の時、すごいライブに行ってたんですよ。中学生だったので、親に好きな曲を聴かせて、一緒に連れて行っていました。親はバンドミュージックは聴かないのですが、私がバンドをやっていることについては応援していて、やりたいことは結構やらせてくれます。あと、肥後ちゃんを絶賛してましたね。「あの子うまいね、才能かなぁ」みたいな感じで（笑）
並木：肥後ちゃんをベースだと思い込んで、我が子がベースなのを忘れて「何だっけあのベースの子、肥後ちゃん？」って。

— 家族と音楽談義になることも多いのでしょうか。

肥後：うちは、兄（19）とよく話しますね。兄が部屋で爆音でかけている音楽を聴いて、「これカッコイイね」と声をかけたり。ちなみに兄は自転車競技（BMX）をやっていて、プロの一歩手前だそうです。あと、父はLed Zeppelinが好きで、私もロックが好きなので結構趣味が合いますね。

並木：私は中2の弟（14）がいるのですが、アニメの「けいおん！」が好きで、ギターに興味を持っているようです。親からは「あんたは野球やってるでしょ」と怒られていますが。

— 皆さんは今、どのような目標・夢を持っていますか？憧れのアーティストも教えてください。

小泉：進路はまだはっきりと決まってはいませんが、音楽はベースに限らずずっとやっていきたいと思います。ベーシストとしては凛として時雨の中村美代子に憧れています。あと、軽音楽部のライブで音響を担当してからは音響の仕事にも興味を持つようになりました。

鈴木：音楽については高校の間に怪獣メトロでやれるところまで、楽しくやり尽くしたいと思います。当面は大学進学が目標ですが、将来については母親がブライダル系の仕事をしていることもあり、ウェディングプランナーのような人の幸せに関わる仕事に興味があります。

肥後：ギタリストとして尊敬するのはPlastic Treeのナカヤマアキラです。進路に関わらず、大人になってもずっと音楽は続けたいと思います。幼い時から弾いていたピアノも趣味として続けたいですし、ベースにも興味があります。ギターに限らず色々やりたいですね。仕事は服飾、デザインに関心があります。

並木：大学は国際系に進みたいと思っていますが、それよりも今は部活がすごく楽しくて。私は軽音のライブでは舞台でセッティングの手伝いを担当しているので、ローディーに関心があります。なかなか難しいですが、できたらライブなどに関わりたいと思うので、進路が揺れています。音楽はどんな形であれ続けたいですね。弦楽器はさわれないですけど（笑）