連載

ロック1年生 エントリーNo.15 リスとバンド

TEXT & PHOTO:鈴木亮介

Photo今年はいつまで夏が続くのだろう…なんて思っていましたが、9月の連休を過ぎたあたりから急に寒くなってきましたね。早くも鍋料理が食べたくなってきています。

今回のロック1年生は男子4人編成リスとバンドをご紹介します。都立小川高校の同級生で2009年9月に結成されました。小川高校と言えば読者の皆さんにもご記憶いただいていることと思いますが、先日「ロック社会科見学」でご紹介した軽音顧問・尾澤先生の勤める高校です。メンバーは森岡亮君(Guitar & Vocal)、石橋健人君(Bass & Vocal)、松野晃知君(Drums)、阿部晃大君(Guitar)の4名で、全員高校2年生です。

写真をご覧になって分かる通り、実に爽やかなイケメン4人です。そのサウンドも見た目通り実に爽やか。そんな、一見すると「草食系」な彼らの、内なる闘志に迫ります。小川高校の視聴覚室で練習中の4人を直撃しました。

— まずはバンド結成のきっかけを教えてください。

Photo松野:この4人は全員小川高校の軽音楽部に所属しています。僕と森岡が中学の同級生で、石橋と阿部も中学の同級生です。入部当初はこのメンバーを中心にしたヘッドホンアンプでの練習が中心でしたが(「ロック社会科見学」の記事参照)、昨年9月の3連休で秋合宿に行った際、顧問の尾澤先生より指名されて、この4人でバンドを組むことが決まりました。

森岡:先生によって集められたメンバーで、「気が合いそうな顔ぶれで組んだ。変えたければ変えても良い」とは言われたのですが、元々一緒に練習していた顔ぶれだったので特に違和感はありませんでした。

— 皆さんが音楽を始めたきっかけを教えてください。

森岡:僕は小3の頃から合唱をやっていました。幼稚園の先生をしていた、音楽好きの母親(43歳)に勧められたのがきっかけです。中学生になっても、バレー部で運動するかたわら昼休みに練習する有志の合唱サークルに参加していました。高校でも音楽を続けたいと思って、吹奏楽か合唱かバンドか…と悩みましたが、中3の時に小川高校の文化祭で軽音楽部のステージを見てかっこよかったので「軽音にしよう」と決意しました。

石橋:僕は中2の時にギターを始めたのが最初です。アコギを弾いていた友人に「お前もやれ」と勧められて、1年ほど弾いていましたが、中3の6月、学校の選択授業でバンドを組むことになり、その時ベースがいなかったので僕がやることになりました。ベースは叔父(40代後半)から譲り受けたものを使っていました。ちなみにその選択授業ではROAD OF MAJORの曲を演奏しましたが、その時かっこいいなぁと思ったのが、高校でバンドをやろうと決めた理由の一つでもあります。

松野:僕は小2から高1までずっとピアノを弾いていました。また、土日も何か音楽をやりたいなと思って、小5からは吹奏楽部に入りました。そこで打楽器に出会い、ドラムに興味を持ちました。僕も森岡と同様に、軽音楽部と吹奏楽部どちらでドラムを叩くか迷いましたが、小川の文化祭を見て軽音に入りたい!と決意しました。

Photo阿部:僕は中3からギターを始めました。それまでは小、中と8年近くサッカーをずっとやっていて、音楽に縁のない生活を送っていましたが、学校の選択授業でギターを担当したのをきっかけにギターを弾くことに興味を持つようになりました。高校ではサッカーを続けるか軽音楽部に入るか悩みましたが、同級生の石橋と一緒に音楽をやる方を選びました。音楽を聴くこと自体は中学生の頃から結構好きで、特にUVERworldはアニメ「BLEACH」のオープニングでデビューして以来ずっとファンですね。

—ちなみに、皆さんの親御さんは80年代のバンドブーム全盛の世代にあたると思います。親から音楽的な影響を受けた、アドバイスをもらった、といったことはありますか?

森岡:僕の場合、母親がハモりの先生ですね。小学生の頃、車の中で合唱の課題曲を練習していると、なぜか母がうまくハモってくるんです。曲を知らないはずなのになんでだ?と思って、その理由を聞いて、ハモりのコツを教えてもらいました。ライブにもよく来てくれて…終わった後は、「あそこが安定すれば…」等々、感想というよりは指導ですね(笑)ハモりや音程にうるさいです。

石橋:うちの場合、両親が音楽経験者というわけではありませんが、幼少期に車の中でよくスピッツが流れていたのは覚えています。両親とも、いいと思ったらどんなジャンルでも聴くようで、その習慣は僕も受け継いでいます。

— では、バンドの活動について教えてください。

松野:練習は毎週水・土の2回に学校の視聴覚室を使っています。そのほかに、スタジオに入ることが月1~2回ありますが、あとは自主練が主ですね。そして忘れてはいけないのがヘッドホンアンプの練習。2年生になった今も続けています。

森岡:ライブは月2~3回、少なくとも月1回は出ていますね。顧問の尾澤先生から勧められた企画ライブやコンクールにエントリーしたり、他校との合同ライブに参加したりと、とにかくたくさん出ています。僕らはオリジナルメインで活動しているので、コピー曲は校内ライブを除くと全くやっていません。

— なるほど。オリジナル曲はどなたが作っているのですか?

Photo松野:特に誰と決まっているわけではなくて、思いついた人が詞を書いて、それにメンバーみんなでメロディを乗せていく、という感じで作っています。リスとバンド初のオリジナル曲は、作詞も作曲も4人で作り上げていきました。2曲目は石橋が作詞、3曲目は阿部が作詞しています。

— バンドの活動で苦労していることはありますか?

石橋:3曲目のオリジナル曲が完成したのですが、まだ自分たちの納得行く演奏が出来ていません。AメロからBメロへのつなぎや、盛り上げ方など、試行錯誤しています。

森岡:僕らはピンボーカルがいないので、難しい曲のコピーがなかなか出来なくて…それが今の課題ですね。ちなみに校内ライブではTHE BLUE HEARTSの「青空」をやりました。

松野:ちなみに僕の姉(19歳)はずっとフルートやピアノをやっていて、大学ではビッグバンドでサックスを吹いています。音楽の先輩?として、時々アドバイスを聞いたりします。

阿部:僕は4月から部長を務めているのですが、他校との合同ライブをやるたびに「代表の方~」と呼ばれて総括などのコメントを求められるので、いい加減ネタに尽きてきて困っています(笑)

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顧問:尾澤聡先生コメント
まさに草食系ですよね、彼らは。一生懸命練習はする、熱心に楽曲の研究はする、後輩の面倒見も良いと申し分なしです。年末に向けて大会参加も多く入りました。やや弱いステージパフォーマンスに磨きをかけ、持ち味の中のよさ、青春をテーマにしたリスとバンドワールドをもっと振りまいて頂きたい。小川K-ONの明日は君らにかかっている!
— ズバリ、リスとバンドの魅力は?

阿部:やっぱり「爽やか」ということでしょうか。

森岡:「明るく、楽しく、元気よく」をキャッチコピーにしていています。曲もツインボーカルで爽やかなものを目指しています。ハモりはサビに絶対に入れようと心がけています。

— 確かにライブで何度か聴かせていただきましたが、「爽やかでズルい!」と思いました(笑)。女の子からの人気も高いのでは?

石橋:ライブに行くと、必ず「松野君がかっこいい」「ドラムの子がかわいい」って言われるんですよ!

Photo森岡:松野ばっかりズルい!!

—正直、バンドを始めたのは女子にモテたいから…というのも、ありましたよね?

松野:……はい(笑)

—実際やり始めてから、モテるようになりましたか?

松野:そんなことないですよ。

—そろそろ高校生活も後半戦。卒業後の進路などを考えていたら、教えてください!

森岡:僕はこのバンドメンバーで唯一、理系の選択授業を受講していますが、それとは別に、特別支援学級に関心があります。将来はそこで勤めながら、特別支援学級の活動をもっと広めていきたいと考えています。

石橋:ひとまずは1年後、文系の大学への進学を目指しています。中でも法や経済に興味があります。このご時世なのでしっかりと就職し働ければと思いますが、同時に音楽は続けていきたいですね。大学ではジャズ系のサークルに入ってベースを弾きたいなぁとも考えています。

阿部:大学は経済学部を志望しています。まだ「これが面白そう!」という分野を見つけられていないので、大学で出会えればと思います。バンド活動はもちろん大学でも続けていきたいと思います。

—最後に、バンドとして今後の目標を教えてください。

松野:そうですね、このままケンカせず楽しくやれたらと思います。そして、大会では結果を残したいですね。

森岡:秋には都大会があるので、そこで勝ち進んでいきたいと思います。

この日は大きな大会に出場する前日ということで、1年生部員を集めて予行演習。演奏はもとより、MCのタイミングや曲と曲のつなぎなどを入念に確認していました。これまで多くの大会で披露している「明日へ」は、「いつだって信じ合いいけるよ そんな奴らに出会えたのさ」「笑顔を『共』に歩いていこう」と、ストレートすぎるくらいに直球の歌詞で、等身大の自分達の気持ちを歌にしています。

決して派手に動き回るわけでも、挑発的なMCで観客を煽るわけでもないのですが、静かな闘志のようなものを彼らのステージから感じました。そのスタイルをしっかりと持ちつつ、同時にパフォーマンスも楽曲も様々な要素を取り入れ、さらに「幅の広さ」を追究してほしいと思います!!

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リスとバンド

≪インフォメーション≫
【2010年10月30日】ヨコハマフッド2010 セミファイナル@かながわアートホール

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【取材協力】
東京都立小川高等学校
http://www.ogawa-h.metro.tokyo.jp/