連載

ロック1年生 エントリーNo.13 HALU

TEXT & PHOTO:鈴木亮介

Photo5月のある夜、田園都市線溝の口駅付近のロータリーを歩いていると、どこからともなく女性シンガーの歌声が聴こえてきました。機材を使わずアコギ一本の弾き語りなので決して音は大きくないのですが、しかし心にグッとくるものがあります。聞けば、歌い手は女子高生。これは是非BEEASTの連載に出ていただこう!ということで、後日改めて取材をさせていただくことにしました。

というわけで今回のロック1年生は女子高生シンガーソングライターのHALUさんを紹介します。HALUさんは1993年3月16日・神奈川県生まれの17歳。平成生まれの高校生シンガーソングライターとして、2008年より本格的に音楽活動を始め、去年は東京や神奈川で精力的にライブを行いました。今年は大学受験を控え、音楽と勉強を両立させています。当連載はこれまでバンドを中心に紹介してきましたので、ソロで活動する中高生を取り上げるのは今回が初の試みとなります。

—まずは、HALUさんが音楽を始めたきっかけを教えてください。

HALU:私がギターと出会ったのは、中学2年生の時です。友人がギターを弾いていて、「女の子でもギターを弾いていいんだ」と感動し、自分もやってみたいと思いました。その子の家にはエレキとアコギがあって、遊びに行くといつも友達はエレキを弾いているので、じゃあ私はもう一本のギターを、と、アコギを手にしました。それが音楽をはじめたきっかけです。また、歌手になりたいという漠然とした夢はあって、流行りの曲を聴くことは結構ありましたが、本気でやろうと思ったのは高校に入ってからですね。高校入学後すぐ、オーディションに応募しました。ケータイから15秒の動画を送るというもので、歌とギターだけで応募。送ったことさえも自分で忘れていたのですが、夏に2次審査合格の通知が来て、それから意識が変わりました。お世話になっている人のためにも自分のためにもしっかり返していきたいと思って、本格的に始めました。

Photo

—高校では軽音楽部に入ったのですか?

HALU:はい。ソロシンガーとしての活動と併せて、高校では軽音部に入って、バンドを組んでいます。そこではボーカルは別の子がやっていて、私はエレキギターを弾いています!

—路上での弾き語りを始めたきっかけを教えてください。

HALU:私は元々自分に自信がなかったので、度胸をつけたいと思い、高1の冬=2009年の1月からストリートライブを始めました。当時15歳でした。それから人としっかり話し、自分の意見を言えるようになりましたし、度胸も付きましたね。

—いきなり路上で一人というのは勇気がいるのでは?

HALU:確かに、最初にやろうと思って行った日には心臓バクバクでした!1~2時間ずっとうろうろしてましたね(笑)
Photo

—友達は呼ばなかったのですか?

HALU:呼びませんでした。度胸をつけたいのに、それだったら意味ないと思って、あえて誰もいないところに自分一人で行ったのです。それで、緊張して立って歌うことができなくて、とりあえず座ろう、と。人通りの多いところに座って弾き始めましたが、最初は誰も聞いてくれませんでした。週1ペースで川崎の街頭に立ったのですが、最初の1ヶ月はだれも止まってくれず(泣)、2ヶ月目くらいから慣れてきて、前に出られるようになりました。やっとそれらしくなってきて、その頃から道行く人も立ち止まってくれるようになりました。

—路上での弾き語りで、様々な経験をされたと思います。まず、良かった経験は何でしょう?

HALU:やはり何と言っても「出会い」ですね。路上は、私にとって出会いが大切だなと分からせてくれた場所です。たくさんの人との出会いがありました。いつも聞きにくれるファンの方もいて、「元気が出る」と言ってくれるのですが、逆に私も元気をもらえます。また、ストリートライブをやるミュージシャン同士の交流もありますね。私は機材を使わないでやっているのですが、川崎は機材を使う人も多いので、音がかき消されてしまいます…ある日、たまたま私と同じように機材を使わずに生声で座りながら歌っている女の人がいました。自分と似てるなぁと思って話しかけて、一緒にライブをやりました。その時はとても楽しかったです!

Photo

—逆に、大変だったことは?

HALU:やっぱり怖い経験もしましたね。夜やっていると、酔っぱらったおじさんがからんできたり…その場にいる時はあまり怖いという実感がなかったのですが、後から考えたら危なかったな、ということもありました。

—親御さんは心配されなかったのでしょうか?

HALU:実は、最初は親に何も言わずに始めたのです。親に打ち明けたのは…いつ頃だったか覚えていませんが、成り行きですね。「どこいくの?」と聞かれて、「路上ライブ」と。その時は何も言わなかったですね。サバサバしているので。でも、応援してくれました。私が歌うのをちゃんと見守ってくれています。今年の3月16日、私の誕生日にライブハウスでライブをやったのですが、今年は受験を控えているので、それを受験前最後のライブハウス出演にしようと決めて、親を呼びました。その時は、泣いてましたね(笑)

Photo

—ご両親も学生時代に音楽をやっていたのでしょうか?

HALU:中学生の頃、家で最初に見つけたギターが母(50歳)のものでした。そのギターは弦が3本しか張ってないし、全部音も違って…でも最初の頃は弦を張り替えることも出来ないまま、それを弾いていました。母は学生時代に独学で少しやっていたようです。ギターは決してうまくないのですが、歌はうまかったです。家族でカラオケに行った時、あみんの「待つわ」を歌っていました。かつてアイドルのオーディションを受けたこともあったようです。

—さて、楽曲作りについてもお話を伺おうと思います。曲を自分で作り始めたのはいつ頃ですか?

HALU:中2からです。ギターを始めてすぐ、まだギターコードも知らないうちからですね。中学に入ったころからずっと詩を書いていて、それに曲をつけたいと思って、覚えたての3つくらいのギターコードでヘンテコな曲を作り始めて、口ずさんでいました。最近は、まずメロディを忘れないようにケータイに録音して、それを聴いて歌詞をつけて、という風に作っていますが、歌詞から作る曲もあります。私はまだまだ言葉を多く知らないので、伝える言葉が限られているのが悩みです。

Photo

—歌詞を幾つか拝見しましたが、自分の内側にあるものを飾らずに表現しているのが素敵ですよ!

HALU:でも、もっと経験して色んなことを学ばないと。私は元々引っ込み思案で意見もちゃんと言えない子だったので、曲づくりを始めた当時は、それが自分の意見を言える場所でした。気づけば、もう100曲以上作っています!自分の言いたいことではなくて、聴く人に必要なものでなくては届かないのでは、という思いもあります。その一方、シンガーソングライターというのは自分の意見を伝えるための言葉のような気がして、やっぱり自己表現が真ん中になきゃいけないのかなとも思います。

—中川あゆみさんなど10代で活躍する女性ソロシンガーが増えていますが、同世代の女性ソロシンガーはやはり意識しますか?

HALU:いい刺激になるし、相手にとって自分もそうでありたいから頑張りたいですね。ソニーミュージックが主催する「歌girl」という女性アーティストの企画ライブに出たのですが、そこで知り合った子とは今でもよく遊んでいます。やっぱり同世代がCDを出していると悔しいし、遠い所に行ってしまうなと思うけど、私も頑張りたいなと思うのでそういう存在は大切ですね。

Photo

—HALUさんは今高校3年生で、今年は受験勉強のため音楽活動を少しセーブされるということですが、卒業後の進路はどのように考えていますか?

HALU:高校卒業後は普通の大学に進学したいと考えています。私が選んだ大学は芸術や言葉などについて学べるところで、「発信していく人間」として知りたい言葉の伝え方をちゃんと学ぶこができます。大学が決まったら、そこからはどんどんライブをやって、またバンドも組みたいと思います。

—やはり将来は、音楽の道で?

HALU:それしかないです。ここまで来たらもうやるしかないです!

BEEASTの取材ということで、インタビュー後にストリートライブをやってくれました。約1ヶ月ぶりの路上ということで、HALUさんは若干緊張気味。しかし場所を決めると一気に集中モード。目が本気です。事前にHALUさんのブログ上で呼びかけていたこともあり、演奏前から早くもファンが集まってきました。そこで、ライブにはいつも顔を出しているという熱心なファンの方に話をうかがいました。

◆30代男性:HALUさんのライブに来るようになったのは、路上ライブが好きな友人から教えてもらったことがきっかけです。彼女の魅力はたくさんありますが、その中でも特に一つ挙げるならば、曲の歌詞ですね。歌詞の世界観がとても好きです。

◆40代男性:私は去年の4月頃からHALUさんのライブに来ています。ファンになったきっかけは川崎の路上です。当時落ち込んでいたのですが、彼女の「デッサン」という曲の前向きな歌詞に励まされて、曲調もとても気に入ったので、応援しようと思いました。

午後1時、JR武蔵溝ノ口前でストリートライブがスタート。普段は座って演奏するHALUさんですが、この日の冒頭は立ったまま弾き語り。自身初のことだそうで、後日「皆と顔の位置がほぼ同じや~って感動しました」とブログにコメントを残しています。機材を使った大きな音も派手なパフォーマンスもないので、時折拡声器を使った演説に邪魔される場面も。しかし弱冠17歳の女の子が一人ギター片手に歌う姿に、道行く人の多くが注目します。ティッシュを配っていた人たちも、途中から仕事そっちのけでHALUさんのギターに耳を傾け、体でリズムを取っていました。「君のピアス」「デッサン」「スキップ」「Switch」の4曲に加え、前日に書いたという新曲も披露。最後は「受験が終わったらライブハウスでライブをやるので、それまで待っていて」と宣言。温かい拍手で久々の路上ライブは幕を閉じました。

ところで、HALUさんは本誌がオフィシャルメディアを務めるYHMF(ヨコハマ・ハイスクール・ミュージック・フェスティバル)へエントリーしており、見事音源審査を通過!それも、ソロシンガー・HALUとしてだけでなく自身が所属するバンドPOMも同時通過したとのことで、7月11日のライブ選考にダブルで出演します。「バンドではHALUとは違う一面を見られると思います」とのことで、楽しみです!

photo
■HALU 携帯サイト
http://x116.peps.jp/spring7464/
■HALU Myspace
http://www.myspace.com/halu316

※HALUさんが出演するYHMFライブ選考は7月11日(日)日本工学院専門学校(蒲田)にて16:15より開催(入場無料)この日に決勝進出者が発表されます!