連載

ロック一年生 エントリーNo.25 一夏

TEXT & PHOTO:鈴木亮介

Photo「継続は力なり」。さんざん使い古された言葉ではありますが、それこそが一番の成功の秘訣ではないかと思います。どうしようかなぁと行き詰ったり、やめようかなと思った時は、是非、続ける道を選択してほしいですね。

さて、そんな「継続」連載、BEEAST創刊時より続く連載「ロック1年生」は今回で25回目。今回は横浜から高校3年生の男女5人組・一夏(いつか)が登場します!メンバーは佐々木渚(Vocal)、柴田勉(Guitar)、大野智裕(Guitar)、徳網良太(Bass)、森口建(Drums)の5名。神奈川県立松陽高校軽音楽部の同級生で結成しました。女性の名前のような「一夏」というバンド名に込められた、5人の音楽への熱い思いを聞きました。

---まずはバンド結成の経緯を教えてください。

徳網:5人とも同じ軽音部の所属なのですが、毎年軽音部で同窓会があり、現役の高校生がOB、OGの前で演奏を披露します。その同窓会ライブに僕ら39期生のメンバーで1バンド作って出ることになり、そのために集まったのが、この5人です。

Photo佐々木:それが昨年、高2の夏です。先輩と対バンすることになるので、出たいという人はあまりいませんでしたね。その中でやりたいと言って集まったのがこの5人です。ひと夏限定の予定だったのですが、やってみたら楽しかったので続けていこうと決めて、今に至ります。

森口:僕は2年生の時に軽音楽部の部長をやっていて、佐々木が副部長でした。で、出るんだったら自分の中では「先発メンバー」みたいな、ベストメンバーで臨みたいと思い、佐々木柴田徳網を引き抜いた感じです。大野君は…当時入ったばかりで、「面白いから入れよう」と思って(笑)よく言えば新しい風を、ということですね。当時、軽音楽部に彼みたいに茶髪でチャラそうなやつはいなかったので…オリエンタルラジオ藤森さんみたいな(笑)

大野:いやいや!見た目は似てるけど中身は真面目!「チャラくない藤森」ってよく言われますよ。

佐々木:まぁ先輩からもかなりいじられていたので、これは入れるしかないな、と。

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---そうすると、普段は皆さんそれぞれ違うバンドを組んでいるわけですね。

大野:それぞれ、校内軽音楽部のメンバーによるバンドがあります。僕は男女4人組バンドを組んでギターボーカルを担当しています。Freiheitというバンドです。

森口:僕と徳網ら男4人でWHIMSICAL MOONというバンドをやっています。最初は9mm Parabellum Bulletのコピーばかりやっていましたが、最近はパンクが好きだということもあって銀杏BOYZもやるようになりました。

柴田:僕はminstrelというバンドで、男4女1でやっています。その女1というのが佐々木です。日本のインディーズロックバンドのコピーを中心にやっています。

---では、皆さんが音楽を始めたきっかけを教えてください。

大野:僕は中学3年生の時にギターを買ったのが最初ですが、最初は練習が面倒だなと思ってあまり触っていませんでした。高校では、小中と続けていたテニス部に入ったのですが、部活が自分に合わず半年でやめてしまいました。帰宅部でふらふらしていたところ、軽音部の友人から声をかけられて、面白そうだなと思って入り、それからギターを練習するようになりました。

Photo森口:小学校に入ってすぐの頃からマーチングバンドに入ってドラムを始めました。ドラムと言っても、クォードという4つタムのついたものですが。始めたきっかけは姉が既に入っていたので自分も…というものでしたが、やっているうちにどんどんハマっていきましたね。自分は飽き性なので色んなことを挑戦してはやめて…の連続なのですが、今のところドラムはずっと続いています。その後、中2の時に同級生からドラムがあると教えてもらい、軽音楽の世界を知りました。

佐々木:両親がどちらも学生時代に軽音楽部に所属していて、父はギター、母はピアノをやっていました。それで家にギターもピアノもあって、小さい頃から音楽に触れていました。小学生の頃はRADWIMPSBUMP OF CHICKENにハマって、自分も高校生になったら絶対に軽音部に入ってバンドをやりたいと思っていました。幼稚園生の頃からずっと歌手になるのが夢で、歌うのが好きだったので、ボーカルを志望しました。当初は女の子4人バンドでギターボーカルでしたが、今は柴田との校内バンドと一夏、どちらもボーカルのみです。

徳網:高校に入って、何か楽器をやれたらかっこいいなぁと思ったのが始めたきっかけです。最初はギターをやるつもりでしたが、バンドを組もうと誘われたメンバーの中でベース担当がいなかったので、自分がやることになりました。ちなみに中学の時はバスケ部に所属していて音楽とは縁がなかったですが、聴くのは好きで、特にBUMP OF CHICKENはよく聴いていました。

Photo柴田:父がクラシックギターが好きで、よく家で弾いていました。そして僕はなぜか小5の頃からピアノを習うことになり、「1曲弾けるようになったらDSを買ってやる」と言われて、Bach(バッハ)のメヌエットをマスターしました。以来中3までピアノをやっていました。また、中学では吹奏楽部に入りトローンボーンを吹いていました。中3で受験期になって、いずれもやめてしまったのですが、ちょうどその時に父が聴いていたTHE BEATLESを聴いて「あ、バンドの曲もかっこいいな」と思うようになり、家にあったクラシックギターを触るようになりました。

佐々木:受験で忙しくなって音楽をやめたはずなのに!

柴田:確かに(笑)それで、受験が終わった中3の冬にエレキギターを買ってもらい、高校でバンドをやろうと決めました。最初は先輩に誘われて一緒に組もうと言われてやっていたのですが、先輩が卒業していなくなってしまうなと思い、同級生の他のバンドから一人ずつ気に入った人を引き抜いて(笑)自分のバンドを作りました。最終的にボーカルだけ見つからなくて困っていた時に、佐々木を見つけました。

---バンドの活動について教えてください。皆それぞれ組んでいるバンドがメイン、一夏がサブ、という感じなのでしょうか。

Photo佐々木:そうですね。一夏は校内バンドではない扱いになるので、普段は学校の軽音楽部で、各々のバンドの練習がメインになります。ただ、どのバンドも皆コピーが中心なので、一夏はオリジナルをやるために集まったバンド、という位置づけになります。

森口:このバンドでスタジオに入るのは久々ですね。ライブ前にはちょくちょく集まりますが。

徳網:同窓会ライブの時は一夏9mm Parabellum Bulletのコピーバンドだったのですが、その後に「今後も活動していくならオリジナルだよね」となり、曲を作ることになりました。

---初ライブの時はどうでしたか?

大野:僕は入部したばかりでいきなり9mm Parabellum Bulletをやれ!と言われて…結構精いっぱい練習しましたが、やっぱり本番では緊張して全然弾けませんでしたね。

佐々木:リハがない上に、10代上のOBから「お前ら現役のプライド見せてみろよ」と煽られてみんな緊張しちゃって(笑)

徳網:しかもその直前に「挨拶がちゃんとできてない」と説教もくらってしまったので、もうガチガチでしたね。

---そんな悲惨なスタートだったわけですが(笑)、それでもこのメンバーで続けていこう、という話になったのはなぜでしょうか?

Photo佐々木:私がやりたい!って言ったんだっけ?

森口:そうだね。元々このメンバーで組んでみたかった、というのがあったので、オリジナルにもとても興味があったので、そのまま続けていこうと決めました。

佐々木:各々のバンドで練習はしっかりやっているのですが、一夏で合わせるのはライブ前が中心です。とは言え活動は継続的にやっていて、頻繁にライブや地域のイベントにも出ていました。実は去年のYHMFにもエントリーして、最初に作った曲で一次審査までは通過しました。今年に入ってからは音楽甲子園に応募したり、企画ライブをやったりしています。

---曲は誰が作っているのですか?

柴田:作曲は主に僕が担当していて、作詞は佐々木と僕とで半々くらいです。曲作りは割と適当なのですが(笑)幾つかパターンがあって、何もない所からドラムを作ってベースをやってギターをやってメロディを…という場合もありますし、歌詞をもらった場合はそれに合わせてメロディをまず作ってから細かい音を作り込むという場合もあります。

徳網:バンドメンバー内で「こういう曲を作ろう」と話すことはないですね。ライブがあるから、じゃあそれまでに何曲作ろう、柴田よろしく!みたいな(笑)

Photo佐々木:いい曲を作ってくれるので、出来上がった曲をめぐってメンバー内で意見が対立する、といったことも全くないです。ただ、ライブの一週間前にギリギリ「できた!」と来ることもあって、「覚えらんねぇ!」と焦ることはありますが。

大野:ライブ直前に3曲くらい渡されることもあるね(笑)

---そんな一夏の特徴は何でしょうか?

佐々木:対バンすると高校生はコピーバンドが多いので、「オリジナルすごいね」って言われます。でもまだお客さんを多く呼べるバンドではないので、まだまだ頑張っていかないとと思います。このバンドの特徴というか今後の課題は、練習がいつもライブギリギリになることかなぁ。もう少し計画的にやりたいね。

徳網:各々が別にやっているバンドの音楽性がバラバラなので、このバンドで音楽性の違いがどうとか意見が割れたりもめたりすることはないですね。メンバーの中には他のバンドでのいざこざを経験している人もいるので、そこはみんな大人ですね。一夏は平和なバンドです(笑)

森口:コピバンやってると、上手い元の音があってそれと比べられちゃうので、オリジナルは自分達基準に自由にできるので、それは楽しいです。

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---今後の目標、やってみたいことを教えてください。

佐々木:やっぱり大会に出たいです!今既に色んな大会にエントリーしていますが、去年は音源審査での落選など悔しい思いもしたので、最低でもライブ審査には行きたい。メンバー全員高3で、高校生最後の夏に良い結果を残したいですね。

---最後に、皆さん個々の目標を教えてください。

大野:軽音を頑張りたいですね。もう一つのバンドでもギターボーカルをやっていますが、ギターがもっとうまくなれるよう頑張りたいです。近い目標としては、同い年の柴田君がものすごくギターがうまいので、そこに近づければなと思います。そして、歌うことも生涯付き合っていければと思います。

森口:僕は高校を卒業したらドラムを極めるために武者修行に行こうと思っています。人生で一番長く続けているものなので、これからもずっと続けていきたいと思います。目標にしたい先輩がたくさんいる中でドラムをやってこれたので、彼らのようになりたいと思います。

佐々木:高校卒業後は大学進学を考えています。音楽で食べていければいいなという思いはありますが、そんなに甘いことじゃないというのもわかっているので、大学に進学して音楽…でも、やっぱり音楽で食べていきたいですね。と言っても何か専門技術があるわけではないので、それは独学で身につけていくとして、そして自分が作る側にいたいので、歌詞というか文章を作ることも極めていきたいです。

Photo徳網:僕たちが入部した時の3年生にとてもかっこいい先輩がいて、その人の影響でパンクが好きになりました。それから2年、今年が高校生最後の夏なので、このバンドで大会に出て、結果を残せればと思います。進路はこれから具体的に考えようと思っていますが、これからも、音楽で食べるとかではなく、大学に入ってバンドを組んで、好きな人とパンクをやれたらと思います。

柴田:今年に入ってから、このまま音楽をずっと続けていくか、それとも普通の仕事につくか、すごく悩みました。音楽で食っていくとしたらアレンジなどの方面も出来なきゃいけないのでそちらも勉強したのですが、ひとまずは大学に進んで、お金を貯めたりアレンジや作曲の修業をもう少ししてから考えようかな、という結論に至りました。大学は音楽系の大学ではなく、法学部を志望しています。

互いが互いを尊敬し合っていることが会話の随所から伝わってくる、一夏の5人。名付け親の佐々木渚さんによると、バンド名には「ひと夏」という意味のほかにも、先が見えない=「いつか(some day)」、5人=「五つ(か)」という意味が込められているそうです。この夏、大きなステージで是非結果を残し、人生で一度しかない高校最後の夏を、最高の夏にしてほしいと思います!

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◆一夏 ホームページ
http://ituka.6.tool.ms/
 
■サマーライブ
2012年07月24日(火)【町田】Nutty’s
時間:開場12:50/開演13:00

                         ■松陽祭(文化祭)
                         2012年09月15日(土)&16日(日)【横浜】松陽高校体育館
                         時間:両日とも10:30頃から終了時間まで

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【取材協力】
Studio Bloom
http://www.studiobloom.jp/

 
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