連載

ロック1年生 エントリーNo.8 clover

TEXT & PHOTO:鈴木亮介

Photo8回目を迎える今回の「ロック1年生」に登場するのは、声優&ボーカリストを目指している結依さんと、結依さんがボーカルを務めるcloverの皆さんです。バンドの結成は今年6月。cloverというバンド名は「四つ葉のクローバーのように、バンドをやっていることの幸せを周囲に届けたい」という意味を込めて名付けられました。

メンバーは石黒知介(Drums:以下ともゆき)君、西田真帆(Bass:以下真帆)さん、洲之内隆太朗(Guitar:以下すのっち)君、大熊友樹(Guitar:以下熊さん)君、結依さん(Vocal)の5名です。真帆さんが高校1年生、すのっちさんが大学1年生で、残り3名は高校3年生。学年や学校、住んでいる所もバラバラということですが、この5名がどのようにして集まったのでしょうか。

—まずはバンド結成のきっかけを教えてください。

結依:cloverを結成したのは今年6月です。元々バンドを組みたいと思っていた私が、2年ほど前にベースの真帆と知り合い、真帆が組んでいたバンドと合流しました。そこでギターの熊さんと知り合い、その後この3名が独立。真帆のバイト先の先輩であるすのっちがそこに加わります。さらに、ドラムがいなかったのでネットでメンバーを募集し、ともゆきが加入して現在のメンバーになりました。

—皆さんが音楽をはじめたきっかけを教えてください。

Photoともゆき:小学6年生の頃から音楽に興味を持ち始め、中学では吹奏楽部に入って打楽器をやっていました。興味を持ったきっかけは、兄(25歳)ですね。兄がドラムをやっていたのですが、ライブを見に行って、かっこいいなぁと憧れを持ちました。ドラムを始めたのは高校生になってからです。

すのっち:ギターを始めたのは2年ほど前、高校2年生の時です。BUMP OF CHICKENのボーカルの藤原基央さんに憧れて、バンドを組みたいと思って始めました。最初は友人と2人でギターを始めて、高校3年生になってから本格的にバンド活動を始めました。

熊さん:高校1年生の時にアコギを持ったのがきっかけです。初めはコブクロのコピーなどをやっていました。高校2年生からは学校の軽音楽部でエレキに触れる機会があり、現在もエレキを中心にやっています。

真帆:小学校高学年の頃からピアノを始めました。それが音楽との出会いです。その後、中学3年生の夏ごろに友達から誘われてベースをやるようになりました。始めたばかりなので、みんなのレベルに少しでも追い付こうと頑張っています。大変ですが、ベースが出来るようになってみんなと合わせられた時はとても気持ちいいです。

結依:小学校6年生の時ですが、学校のカラオケ大会のような音楽の行事で歌ったところ、周りの友達から「ゆいは歌がうまいね」と誉められました。私、誉められると図に乗るタイプで(笑)目立つことも好きで。そこから、歌うことに興味を持ち始めました。そしてバンド活動にも興味を持っていたので、メンバーを探してcloverを組みました。

—皆さんの親御さんはバンドブーム世代にあたると思うのですが、音楽に関して親から影響を受けたことはありますか?

Photoすのっち:父親(49歳)がサザンオールスターズのファンで、車の中などでよく聞いていました。今自分がバンド活動をしていることに直接関係があるわけではありませんが、幼い頃から音楽に親しんでいたという意味では良い影響を受けたと思います。

結依:親は、私が歌っていると文句を付けてきます(笑)でも良いアドバイスだと思って、頑張って直しています!

真帆:父親(51歳)は、特に音楽をやっていたわけではないのですが、基本的になんでも出来る人で、ベースの基本的な知識を教えてくれました。また、バンドの活動に関しても相談に乗ってもらっています。

ともゆき:両親が、以前組んでいたバンドのライブに足を運んでくれました。感想は…「安定している」と言ってくれました。

—バンドの活動について、詳しく教えてください。

結依:活動頻度は、結成当初は月2回程度でしたが、最近は週1ペースで集まっています。やる曲は、アニメソングが多いですが、他にはRADWIMPSなんかもやります。私の声が出る範囲でやりたい曲をメンバーに選んでもらいました。オリジナルもいずれできればと思っています。

—cloverの魅力は何でしょう?

Photoともゆき:例えば結依がバンドのロゴを作ってくれたり…今までに組んだバンドとは違う魅力がcloverにはあります。

すのっち:自分はバンドを掛け持ちしているのですが、cloverは演奏した時に勢いがあるのが特長です!

—今後の目標を聞かせてください。

熊さん:自分は今高校3年生ですが、卒業後はデザイン系の専門学校に進みます。音楽は趣味で続けていきたいです。

真帆:もっともっとうまくなって、いろんな曲をやっていきたいです。また、バンドを通していろんな人に会っていきたいです。

結依:バンドの目標としては、とりあえずライブがしたいです!そして私自身の目標としては、自分の声を活かした仕事をしていきたいです。歌える声優というのが理想ですね。

cloverの皆さんはこの取材の一週間後に初ライブを迎えました。経験者揃いとはいえ、5人での晴れ舞台は初めてということで緊張もあったようですが、無事に成功を収め、お客さんに“心温まる一時”をプレゼントできたようです。ベースの真帆さんからは、「楽しかったです♪」とシンプルなメールをいただきましたが、まさにその一言に尽きるというところでしょう。これからもいっそう多くの人にcloverの温かい演奏を届けていってほしいと思います。

Photoところで、結依さんはバンドのボーカルとして精力的に活動するかたわら、「歌える声優」という大きな夢に向けても日々努力を続けています。後日改めて、詳しい話を伺いました。

結依:今日も「ヒトカラ」(※一人カラオケのこと)行ってきたんですよ〜

—お好きですね!大体どのくらいの頻度で行くのですか?

結依:週3回くらいでしょうか。「歌いたい日」があるのです。声が出る日や、音楽を聴いていて「これ歌いたい」と思ったり…そうするとカラオケに行きたくなります。学校帰りに、アルバイトが始まるまでの1〜2時間ですね。バイトは地元のファミレスで働いています。もう2年半になるのですが、初めはキッチンで、今はフロアでも働いています。

—週3回も行くと、レパートリーがなくなってしまいそうですね…カラオケではどのような曲を歌うのですか?

結依:大体いつも同じ曲ばかり歌っています。紅白にも出場した声優兼歌手の水樹奈々さんに憧れていて、歌うのは水樹奈々さんの曲ばかりですね。好きな曲を中心に歌っています。もちろん、「ヒトカラ」ばかりではなく、友達を連れていくこともありますよ。

—なるほど。やはり、歌うのが大好きなのですね。

結依:小学校の頃から歌うのがずっと好きでした。けれど中学生の時、友人と行ったカラオケで、友人があまりにもうまくて、完全に自信を失いました。しばらく歌うのが嫌になったのですが、負けたくないと思って練習を始め、高校に入ってからは一人カラオケに行って練習する日々です…。最近はやっとまともに歌えるようになりました。まだまだ全然下手くそですけどね(笑)

—本格的に「自分の声を活かして仕事していきたい」と思うようになったのはいつ頃ですか?

Photo結依:中学3年生の頃でしょうか。高校受験をするにあたって、自分の将来について漠然と考えてみたのですが、「勉強したらできる仕事」じゃつまらないかな、と思いました。そんな時に、以前学校の友人が「声がいい。声優になれば?」と言ってくれたのを思い出して…きっかけは友人の一言ですね。声優という職業にはもちろん憧れていますが、それ以上に一番好きなのは歌うことです。だから、それから歌を一生懸命に練習するようになりました。

—そして「ヒトカラ」に足繁く通うようになるわけですが(笑)、同時に、バンド活動も始めましたよね。

結依:カラオケでの猛特訓の結果、自分としてはまともに歌えるようになったし、声優になるためにある程度経験とかもしてみたいし…ってことで思い付いたのがバンドをやるということでした。高校で軽音楽部に所属したのですが、周囲は既にバンドを組んでいて、入れるバンドが見当たらず…でも諦めきれなかったので、ネットのメンバー募集サイトなどで仲間を探し、真帆ちゃんと出会いました。それから、様々なバンドを経て、cloverを結成するに至りました。

—将来の夢に向けて、今どのような努力をしていますか?

結依:カラオケに行くと、必ず録音するようにしています。レパートリーを片っぱしから全て歌って、自分の声を全部録音します。そして、その場で聞いて、悪い所を直すように努めています。

—悪い所を直すとは?

結依:歌う曲が憧れの水樹奈々さんばかりなので、どうしても歌い方が似てしまいます。だから真似だけでなく、「今日はこういう歌い方をしよう」と決めて歌ったり、「ここはもう少しビブラートを効かせた方がいい」「ブレスを入れた方がいい」と自分で考えて修正しています。

—「どこをどう直せばいい」というのはどうやったら分かるのですか?

Photo結依:私はボーカル教室に通っていないので、専門的なテクニックは正直な所分かりません。友人に「ビブラートをどうやって出すのか」と聞いても分からないと言われてしまい、ネットで調べてもよくわからなくて…仕方なく自分で考えました。そして、ひたすら声を出していたら、自然とできるようになりました。こうすればいいのかなと思って、試して、録音して、違和感があったらこれじゃないなと…これを繰り返しているうちに、歌い方がわかってきました。今となっては、自分で考えることが大切なのだと思います。

—もうすぐ高校卒業ですね。今後の活動予定を教えてください。

結依:先日、地元のカラオケ大会で優勝することができました。自分の実力を試すのに、様々なコンクールやオーディションに出てみようと思います。また、高校卒業後は大学や専門学校には進まず、まずは1年間アルバイトをしながらお金を貯めて、ボーカル教室と声優教室に通いたいと考えています。もちろん、バンド活動も続けていきたいです。

—最後に、改めて伺います。将来の夢は?

結依:歌える声優か、ホテルマンです!

—ホテルマン??その二者には随分ギャップがあるように思いますが…

結依:人と接することが好きなので、一番は声優ですが、接客のような仕事にも興味があります。私の声で人の心を温められれば…これが、私の将来の夢です。

バンドでのオリジナル曲製作に向けて、詩を書き溜めているという結依さん。残念ながらここに公表することは「恥ずかしいので」と断られてしまいましたが、そこにあった言葉はいずれも、真冬の通りで手に握った缶コーヒーのような、温もりを感じる言葉ばかりでした。近い将来、その言葉たちが結依さんの声に乗って、多くの人の心に伝わる日が来ることを期待したいです!

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【取材協力】
藤沢・太陽ぬ荘(てぃーだぬそう)スタジオ
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