連載

ロック1年生 エントリーNo.5

TEXT & PHOTO:鈴木亮介

Photo今回の「ロック1年生」では、バンドを組んで1年に満たないながら、オリジナル一本で勝負する本格派バンド衛星モルモットをご紹介します。曲作りの裏側などもたっぷり聞いてきましたので、「曲ってどうやったら作れるの?」「うちのバンドでもオリジナルに挑戦したい!」というバンドの皆さんは必見ですよ!!

衛星モルモットは2009年2月に結成された男性4人組のバンドで、最年長は全曲の作詞作曲を手がける佐藤康平君(Vocal&Guitar)で20歳。田中完幸君(Guitar)が18歳の高校3年生、そして大塚伸寛君(Drums)と知花和明君(Bass)は16歳で高校1年生です!年齢がバラバラな4人ですが、どのような経緯でバンドを組み、活動を始めたのでしょうか。ライブを直前に控えたメンバーを直撃しました。

—バンドを結成したきっかけを教えてください。

佐藤:元々僕が一人で音楽をやっていたのですが、知花が僕の音楽を聴いてくれて、一緒にバンドを組もうということになりました。それが今年の2月です。

知花:ネットで配信されている曲をよく聴くのですが、そこで佐藤君の音楽と出会って、いいなぁと。で、たまたま同じ神奈川県に住んでいる事を知り、連絡を取りました。

大塚:その後、僕が中学時代の同級生である知花から誘われました。中3の時に一緒のバンドを組んでいたのですが、卒業と同時に解散してしまいました。その後お互いに違う高校に進み、軽音部に所属していたのですが、知花から声をかけてもらった時にこっちの方が面白そうだと思い、再び同じバンドで活動することにしました。

田中:僕は4人の中では一番後の加入になります。知花と同じ高校で、軽音部の先輩−後輩関係にあるのですが、今年6月の終わりごろに知花から衛星モルモットのデモテープを聴かせてもらって、聴いた瞬間に「あ、僕もこういう音楽がやりたいなぁ」と思い、加入しました。

佐藤:うちのバンドは仲が良く、ファミリーという感じです。活動頻度は、練習は週1回程度なのですが、それ以外にもよく遊びに行ったり、僕の家にメンバーが泊まりに来たりしています。

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—皆さんはこのバンドを組む前から既に音楽をやっているわけですね。それぞれの音楽を始めたきっかけを教えてください。

佐藤:小6の時に、学校の友達が廊下でギターを弾いていて、かっこいいなと思ったのが音楽との出会いです。当初はギターを買うお金がなかったので、ハーモニカから始めました。その後、お金を貯めてギターを買うのですが、独学で練習したためコードが全部逆で・・・その後、中2の時に友人とバンドを組みました。その時にボーカルをやることになり、以来ボーカルに魅力を感じるようになりました。これまでにバンドは星の数ほど組みましたが、最終的にはうまくいかず解散。去年北海道から上京し、一人で弾き語りとして活動を続けていました。

知花:僕は中3の時に、大塚に誘われてバンドに入ったのがきっかけです。最初はギターをやっていたのですがコード進行が難しく、ベースの方が簡単かな、と思って転向しました。

大塚:僕も音楽を始めたのは中3の時です。文化祭でバンドを募集しているのを見て、友人と一緒にやろうと言ってバンドを組みました。ドラムをやろうと思ったのは、純粋にかっこいいと思ったからです。

田中:中学の時に仲の良い友達がギターをやっていて、「ドレミファソラシド」を教えてもらいました。でも、できなかったのですよ。友人ができて自分ができないのがムカついて、「負けたくない!」と思って始めました。また、両親が音楽好きで、音楽番組を録画したものなどをよく家で聴かされていたのですが、その中でゆずなどに興味を持って、やってみようと思いました。高校に入ってから本格的にギターを弾き始めるのですが、組むバンドがどれも続かず・・・自分以外のメンバー同士がケンカしたり、周囲の事情に巻き込まれたりといった理由で、1年間で10数回も組んでは別れて・・・の連続で。

—ちなみに、田中君は今高校3年生ですが、どのような進路を考えていますか?

田中:建築系の専門学校に進みます。バンドを続けたいので、4年制の専門に通いながら、音楽活動に注力していきたいです。

—皆さんの親はバンドブーム世代にあたると思います。親から音楽の影響を受けた、といったことはありますか?

佐藤:父親(40代前半)が学生時代にバンドを組んでキーボードをやっていたのですが、日曜の朝っぱらからロックをガンガンかけて、歌いながら起こしに部屋に入ってくるんですよ。父はハウンドドッグが好きで、どうやら僕の名前は大友康平の”康平”から来ているようです。

—お父さんから音楽についてアドバイスはありますか?

佐藤:自分の弾いた曲を「これどう思う?」と聴かせて、感想をもらったりします。父親のアドバイスはすごく厳しいです。「この曲はダメだな〜」と。でもそれがいい刺激になっています。実は、僕を東京に送り出したのは父親なのですよ。「音楽やってこい、帰ってくるな!」と。

—衛星モルモットは全曲オリジナルでライブに臨んでいますね。なぜオリジナル一本で勝負しようと思ったのですか?また曲はどのように作っていますか?

佐藤:コピーはもう既にやっている人がいます。だから、どうせやるならオリジナルがいいなと思ってやっています。衛星モルモットのオリジナル曲は、ようやく10曲を超えました。最初にアコギを適当に弾いて、これいいじゃん!という部分をつなげていって、最終的に歌詞を載せていきます。その単純作業が一番難しいですね。

—ギターを弾いていて、メロディはすぐに出てきますか?曲が出来るまでに時間なども教えてください。

佐藤:結構出てきますね。メロディメーカーなのですよ、俺(笑) 衛星モルモットでやっている曲は、即興で出来たものがほとんどです。歌詞もほとんど修正しません。一発で歌詞を書いて、消さない。それを心がけています。時間は30分ですね。30分か1時間で、曲のタネは出来てしまいます。甲本ヒロトさんも「3分の曲は3分で作るのが当たり前だ」と言っていますが、僕もそこにはまだまだ及ばないものの、そういった姿勢で作曲しています。

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—歌詞はどうやって考えていますか?

佐藤:ドラえもんを作る感じ、ですかね。何でもできる。漫画のストーリーを作るように、日常の中の大事件の部分にスポットを当てて、書いていきます。だから自分の体験が多いですね。

田中:メンバー同士で他愛もない雑談をしていて、突然佐藤君が「曲できたよ!」って言うのですよ。僕らメンバーの間で「神会議」と呼んでいるものがあるのですが、実はそこが歌詞を生みだす現場になっています。

—「神会議」ですか?何ともユニークですが、その内容を詳しく教えてください!

田中:夜中にメンバーと遊んでいて、「ヒマだから会議するか〜」と、訳のわからない会議が始まるのですよ。くだらないことを話すのが神会議。

佐藤:例えば、「空の上には何があると思う?」「マックはスマイル0円なのに、芸能人はなぜ笑って金をもらっているのだ?」と僕が議題を出して。

田中:その「神会議」の結果が、歌詞になっているのです。僕らの中で出た答えが、歌詞に。

佐藤:僕の家にメンバーが泊まりに来た時は必ず開催しますね。あと、コンビニに行って、戻ってきたら「神会議」開始ね、と。恋愛の話が多いですが、政治とか社会問題とかも議題にのぼります。「曲を作ろう」と構えるもかえって出来なくなると思います。僕らは「きちんと音楽をやろう」と意識するより、まず「楽しもう」と考えています。良い曲は遊んでいる時に出来るものだと思います。

—メンバーの皆さんは佐藤君の曲について、どんな印象を持っていますか?

知花:曲の幅が広いですね。毎回イメージというかタイプが違うので、すごいなぁと。

田中:彼はまず歌詞を自分のホームページに載せるのですよ。それを見て僕は、どんな曲になるのかなぁと自分の中でイメージしてギターを弾いてみたりするのですが、いざ佐藤君が持ってきた曲を聴くと、全然違う。この歌詞でそんな曲調かぁと。良い意味でイメージを壊されますね。

—最後に、今後の目標を聴かせてください!

佐藤:例えば温泉とか、「こんなところでライブやるの?」という所でライブをやりたいですね。「そんなことをするのは衛星モルモットくらいだ」と言ってもらえたら本望です。バンドをやる以上、目立ちたいという気持ちを持つことは大切ですよね。「誰かに影響を与える」と言いますが、それ以前に自分の世界に入らないと影響を与えることはできないと思います。

田中:バンドではよく「俺らにしかできないことをやろう」と言っています。これまで、誰かに見られていて恥ずかしいという気持ちがどこかにありましたが、そうした気持ちをなくしたいです。そして、誰に見られても自慢できるくらいのバンドになりたいです。

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今回の取材はライブのリハーサルにお邪魔してインタビューしました。その夜、衛星モルモットなど4組が出演するライブが「川崎Bottoms Up」にて行われました。

トリを務めた衛星モルモット。20時30分、「愛の賛歌」(エディット・ビアフ)をバックに4名が入場。冒頭1曲目は、この日初披露となった新曲「ごめんねガール」。佐藤康平君が一人、アコギで弾き語り、しっとりとした雰囲気でライブがスタートし、一番人気というハードロックな「スピカ」へ。「カナリヤ」は自分達がアニメのオープニング曲を作るならと妄想して作ったナンバー。

「スパイダー」ではメンバーも観客も思いっきり頭を振りまくり、日本の政治や事件を歌った「アイデンティティ」。最後の「CHERRY.」は佐藤康平君がステージダイブ!倒れこんでステージが終了のあっという間の30分。

曲作りについては、具体的な作法やマニュアルがあるわけではありません。しかし、「生まれ持っての才能」というだけでもないようです。その一つの答えは「気張らず、楽しむこと」かもしれません。ギターで遊んでいるうちに、いいメロディが見つかる。気の置けない仲間と、恥も遠慮も捨てて他愛もない話をしていく中で、歌詞になる言葉が見つかる。

オリジナルソングを作ってみたい「ロック一年生」なバンドの皆さんは、そういうことを意識してみると、生まれてくる名曲があるかも!しれませんよ。

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★衛星モルモットの今後の活動予定

11月1日(日)@川崎Bottoms Up
主催ライブ「惑星サミットVol.2」
新曲披露、カセットテープのプレゼントもあります!

詳細は衛星モルモット HPへ
http://55.xmbs.jp/smrock/

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★取材協力

川崎Bottoms Up
http://www.bottoms-up.net/