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※この記事は取材した2013年のアーカイブです。最新情報ではありません。

セレクション26(北海道)「HOT TIME」 KENNETH オーナー
TEXT & PHOTO:鈴木亮介

大人気連載「ロック酒場探訪記」。26回目となる今回は北海道・中央区のミュージックバー「HOT TIME」をご紹介します。北海道一の歓楽街・ススキノに程近く、店内にはバーカウンターはもちろんのこと、音響や楽器、スクリーンも完備している50名収容可能なプレイルームと、さらにはカラオケも内蔵された20名収容のパーティールームがあります。それぞれパーテーションがあるので、様々なパーティーイベントや会合、セッション、ライブなどができるようになっています。

歓楽街ということもあり、結婚式の二次会や誕生会、忘年会としての利用はもちろんのこと、Zepp SapporoやCOLONYなどのライブハウスからも徒歩圏内であることから、ツアーバンドの打ち上げの場としても重宝されているとのことです。今回の取材は北海道のイベントプロデュース・制作全般を手がけるXERO KREW ENTERTAINMENTの三浦宏一代表の案内を受けて、お店に向かいました。

PhotoKENNETH オーナー プロフィール

北海道浦河町出身。学生時代からドラムにのめり込み、下山武徳SABER TIGER)らとともにHRバンド・ANDROGENUSを結成。1993年に第4回BSヤングバトル北海道大会で審査員特別賞を受賞し、その後上京。バンド活動の後、ニュークラの店長などを経て札幌に戻り、約5年前より独立。最近ハマっていることは海外ドラマ。

ニュークラ=ニュークラブ。ホステスが接客する時間制の酒場で、札幌ではキャバクラより高級・上質なサービスを行うとして明確に区別する


— 本格的なライブステージですね!

KENNETH:お陰で、お客さんが「聴きたい人」より「自分がやりたい人」の方が最近は多いくらいです(笑)セッションやミニライブなど様々なイベントをやっています。

Photo— 元々マスターがドラマーとして活躍されていたと伺いました。当時のことを教えてください。

KENNETH:28歳から32歳の頃に一度上京して、毎週ホコ天でライブをやっていました。

— どういうバンドをやっていたのですか?

KENNETH:いわゆるヴィジュアル系です。髪の毛を青くして、ドラムですが、いい年こいてオシャレしてました(笑)

— 東京ではどのくらい活動していたのですか?

KENNETH:2~3年ですね。ホコ天がなくなってしまって、それなりに多くのファンが毎回来てくれて、ライブは何回でもこなせるけど、どうなんだ?と。事務所も中途半端な状態で、じゃあやめようとスッパリ決めました。

Photo— ご出身はどちらですか?

KENNETH:浦河(北海道の中南部、日高地方)です。

— 上京前はどんなバンドを組んでいましたか?

KENNETH:学生の頃からずっとドラムを叩いています。ミュージシャンには、まぁなれたらいいかなぁという程度で、本気でプロを目指す!というわけではなかったのですが、今SABER TIGERのボーカルをやっている下山武徳と一緒に組んで…

— そうだったのですね!

KENNETH:えぇ。ファンもそれなりについて、PENNY LANE24(北海道の老舗ライブハウス)でソロライブをやって、いい気になって「じゃあ東京行くべ」ってなって。でもちゃん(=下山武徳)が上京できないということで、「じゃあ東京でボーカル見つけよう、あれくらいの歌い手、東京ならいっぱいいるだろう」なんて思って彼以外のメンバーで上京したのですが、実際に東京に来てみると彼以上のパフォーマーに出会うことが出来なかったのです。そこで下山武徳の凄さに気づかされたわけですが(笑)、やはりバンドはボーカルが大事だなって痛感しました。

Photo— 確かにフロントマンは大事ですね。

KENNETH:やっぱり雰囲気がないと。かっこいいボーカルがいることが、バンドで成功する上では大事ですね。

— そうすると、上京したのは28歳頃ということですが、いつ頃になるのですか?

KENNETH:1992年です。もう20年前ですね。

— それでバンド活動の数年を経て、また北海道に戻る、と…

KENNETH:いや、そのまま東京に残って、ニュークラで働いてました。自分でも経営して、結構良かった時期もありましたね。

Photo— エリアはどの辺りですか?

KENNETH:中央線沿線が多かったですね。阿佐ヶ谷、荻窪辺りは結構いい感じでしたが、六本木に出店した時は失敗しましたね(笑)オーナーがどうしても六本木でやりたいって言って、止めたんですけどどうしてもってことで…そのオーナーには大変ご迷惑をおかけしました。

— 結構都内のあちこちでやってらしたのですね。

KENNETH:渋谷とか、色々物件は探しましたよ。下北沢でもやりたかったんですが、大家さんがなかなか貸してくれなくてね。下北沢の大家さんはプライドが高い(笑)渋谷は金さえ出せば貸してくれるけど、保証金が高い!

— なるほど。話を戻しまして…北海道に戻られたのはいつ頃ですか?

KENNETH:今から6~7年前ですね。きっかけは親が倒れたことで、ちょうどその時期ニュークラも(業界的に)良くなかったので、これは帰れという意味だなと。

Photo— それで、こちらのお店を出されたのですか?

KENNETH:最初はこちらの状況が分からないので、1、2年はまた同じニュークラで働いて、その後病気して入院して、少し働いて、それから独立しました。その札幌に戻ってきてから勤めたニュークラもまた毎月赤字で…(笑)

— なるほど。独立にあたって、どのようなお店の構想を考えましたか?

KENNETH:カレー屋かロックバーをやりたいと漠然と思っていて、自分でドラム叩ける店やりたいと思ったんですね。そうしたら楽器の演奏ができる物件が見つかり、ドラムセットを入れてやっていたら、昔の仲間が来てくれて…ここの場所に移転したのは2年前で、その前は今の店の半分もない小さな所でやっていました。

— 今、お店は何人でやっていますか?

KENNETH:この店は私と従業員2人で切り盛りしています。アルバイト1人と、私と、私の家内の3人です。

Photo— お店を出す時にこだわったことを教えてください。

KENNETH:先ほども話しましたが、とにかく自分がドラム叩ければいいかなと。自分の”趣味”ができる場所です。マイナスからのスタートで、今もプラスじゃないけど仲間のおかげで何とか店をできています。

— お客さんはどういう世代が多いですか?

KENNETH:30代後半以降が多いです。20代は率にしたら1割もいないですね。バンドマン、楽器をやっている人ばっかりです。

— 壁にあるサインやお店のHPのスケジュールをみると、著名な方もよくいらっしゃるようですね。

KENNETH:菅沼孝三さんは毎年来てくださいます。また、先日は山本恭司さんも来店されました。ライブ前日に必ずギターを弾きたいという方で、下山武徳さんと一緒にいらっしゃいました。ドリンクを頼んで、飲む前にもうステージに立っていましたね。自前のものではなくこの店の機材を使って弾いても山本恭司(の音)だったので驚きました。弘法筆を選ばずという感じです。翌日、ライブ後の打ち上げではドラムを叩いてましたね(笑)

Photo— ファンミーティングのようなイベントやライブもできますね。

KENNETH:ちょっとした楽屋もあり、お客さんが座っていれば動線が見られないので、メジャーなバンドでも満足できるステージを提供できると思います。スクリーンもあるので…先日、HEAD PHONES PRESIDENTのライブをやった際には、開演前にMVを流して登場してもらいました。

— なるほど。そして、料理にもこだわりがあると伺いました。

KENNETH:お陰さまでカレーが人気です。まぁ普通のカレーなんですけどね(笑)玉ねぎとかちゃんと炒めて作っています。

— いつ来ても食べられますか?

PhotoKENNETH:団体客の打ち上げが入っている時は多めに作りますし、何もない時に例えば前日に20食とか出ちゃわなければ…大丈夫だと思います(笑)やはり一日寝かさないと美味しくならないですからね。

— カレー以外にも色々あるようですね。

KENNETH:そうですね。カレー以外にも鍋とか美味しいものがたくさんあります。あとは季節によって、ホットケーキ食べ放題企画をやったり、豚肉丼を作ったり…食べ物で釣るわけです(笑)

— こうしてお話を聞いたり店内の様子を見ていても、とても居心地の良さを感じます。お客さんからはどんな評価がありますか?

KENNETH:アットホームだと言ってもらえることが多いですね。ただいまと言って来店する人も結構います。

— プレイヤー、リスナー問わず、音楽好きにとっての居場所のような空間になっているのですね。

PhotoKENNETH:先ほどの山本恭司さんをはじめ、思わぬ人が来たりサプライズがあるのも「HOT TIME」の魅力だと自負しています。全国ツアーで北海道に来るたびにうちの店を打ち上げに使ってくださるバンドも多いですし、楽器に詳しい人も普段から出入りするので、例えば楽器の調子が悪いという人が相談に来たり、ステージがあるので音出しをしたりするのにも使えます。もちろん、セッションなどのイベントにも参加してほしいですね。

— 今後何か企画していることがあれば教えてください。

KENNETH:幸いにして音楽仲間に助けられてここまでやって来れましたので、これからも企画をもっとやっていかないといけないなと思います。今のライブハウスシーンのブッキングを見ていても色々と感じることはあります。それぞれで売上を出さなきゃいけないという気持ちも分かりますが、上質なイベントを提供して、仲間とともにシーンを盛り上げていくことができればと思います。
 

インタビュー後にマスターの顔写真を撮影させてほしいとお願いしたところ、「ドラマーなんで普段大体後ろで写真に写らないから、緊張する…」と冗談を言いながらも、素敵な笑顔で応じてくださいました。気さくでついつい色々話したくなってしまうそのお人柄が、道産子ロッカーたちにはもちろんのこと、全国から北海道を訪れるミュージシャンに愛されているのだと思います。

そんな「HOT TIME」ではジャンルを問わず企画イベントを行いたい人を幅広く募集しているそうで、「バンド」「楽器」「ミュージシャン」等この分野は任せて!という人は是非連絡してほしいとのこと。素晴らしい空間とお客さん、そして絶品のカレー(残念ながら取材当日食べることができませんでした!) があなたを待っていますよ!

HOT TIME

営業:18:00~23:00(ライブ開催時は時間変更あり)
定休:なし
住所:〒064-0806
   北海道札幌市中央区南6条西6丁目
   第6旭観光ビル5F
TEL:011-522-8775

公式サイト:
http://music.geocities.jp/susukinoht/

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北海道札幌市中央区南6条西6丁目



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