演奏

TEXT:河南太郎

Photo7月26日金曜日。日本武道館は日中の暑さを引きずりながらも、静かにその時が来るのを待ちわびていた。
 
2月27日にリリースされた9枚目のアルバム『新世界』を引っ提げて6月7日Zepp Tokyoを皮切りに始まったACIDMAN LIVE TOUR “新世界”。日本だけには止まらず韓国、台湾でもパフォーマンスを見せ続けた彼らはこの日、武道館でファイナルを迎えた。
 
 
ACIDMAN メンバー:
大木伸夫(Vocal & Guitar)、佐藤雅俊(Bass)、浦山一悟(Drums)
 

ステージを覆い隠す横断幕に映像が映し出された。流れたのは、『新世界』のアルバムを象徴するようなイメージ映像だ。ポチャン、ポチャンと雫が落ちる音がしたかと思いきや、力強いドラムの音が鳴る。そして低く会場に響くベース音。横断幕が少しずつ上に上がっていく。ギターの音もかき鳴らされていく。段々と大きくなっていく手拍子。
 
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「SUSY」からこのライブはスタート。心地良いギターの音が聞こえてくる。オーディエンスの拳が力強く上がっていく。「NO.6」「swayed」「君の正体」と披露していく。会場の熱気がどんどんと高まっていく。
 
MCではドラムの浦山一悟がツアーの思い出などを語る。洗練されたサウンドや力強い演奏とは真逆のゆるいMCが会場の笑いを誘う。「ラストコード」「Further~夜になる前に~」「スロウレイン」「Can’t Help Falling In Love」と続き9曲目に「ALMA」が演奏される。まるで星や惑星に包まれていることを連想させられる歌詞とそこに温かく鳴り響く楽器の音。アリーナのオーディエンスも思わず聴き入ってしまう。
 
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次は坂本龍一がピアノで参加している「風追い人(前編)」と「風追い人(後編)」である。演奏をするメンバーの背後にある巨大スクリーンには、この曲のMVが投影される。白い服を着た老人が薪の前で踊る。それは過去に愛した女性と踊った舞。そして後編ではそこから赤ん坊が高々と持ち上げられる。生と死、そして命の循環ということを綺麗なメロディーで会場を支配していく。それはまるでACIDMANが吟遊詩人のように1人1人に丁寧に聞かせているようでもあった。
 
「この武道館にサハラ砂漠の風が吹くように」と大木伸夫が囁き、優しく「アルケミスト」が始まる。ギターの音、ベースの音、ドラムの音がしっかり一歩一歩歩む少年の足取りを感じさせる。
 
「FREE STAR」は新体制になっている彼らの思いが詰まった演奏になっていた。「to live」と続き「カタストロフ」「新世界」とアルバムからの楽曲が演奏される。そして最後は「白光」。「最後のその日まで、最後に吸う酸素、呼吸に希望を持って死ねたらと思います。人間の温かさを信じて死ねるように。祈りを込めて」とこの曲に込めた思いを語る。荘厳な音とまるで命を削りながら歌っているような歌声が響く。会場は圧倒的なパフォーマンスに魅せられていた。
 
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アンコールはライブの定番曲になっている「ある証明」と「Your Song」を披露。”ライブハウス武道館”といった熱狂の渦ができる。アンコールが終わり、メンバーがステージから消えても、鳴り止まないオーディエンスの声。ダブルアンコールを続ける。そのダブルアンコールに応えるように現れるメンバー。「ずっと来てくれた人はわかると思いますが・・・本来、アンコールは準備しちゃいけないんだけど、万全の準備をしてきましたよ!」と言いながら笑う大木伸夫。「すごく重い歌ですが、特別な日にしか歌わないので」と10分を超える曲「廻る、巡る、その核へ」をビデオクリップに合わせて披露した。
 
この曲は普段残響で終わるのだが、この日はインストゥルメンタル曲をセッションし始める。一転して明るいフレーズが心地良く聴こえる。それはまるで死から生へ。そして生から死へとの輪廻のようなものを感じる。最後に紙吹雪が舞い、約2か月に及ぶ『新世界』のツアーは幕を閉じた。
 
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今回のツアーは10年間所属していた「アムニス」を離れ、新事務所「FREE STAR」を設立してからの初めてのツアーである。新事務所を設立した理由についてメンバーは「理由は多々ありますが、もう一度シンプルにACIDMANの、ACIDMANによる、ACIDMANのための場所で音楽活動を行いたいということが一番の理由です」と説明している。そして「準備万端、真っ直ぐに前を向いて、今まで以上に音楽に邁進して行きたいと思います」と決意を明かしていた。
 
今回のツアーはそんな新体制の中でも不安はあっただろうが、それを全く感じさせないばかりか、さらなる進化を感じさせるものとなった。それは会場から出てくるオーディエンスの顔を見れば一目瞭然であった。
 

◆セットリスト
M01. SUSY
M02. NO.6
M03. swayed
M04. 君の正体
M05. ラストコード
M06. Further~夜になる前に~
M07. スロウレイン
M08. Can’t Help Falling In Love
M09. ALMA
M10. 風追い人(前編)
M11. 風追い人(後編)
M12. アルケミスト
M13. FREE STAR
M14. to live
M15. カタストロフ
M16. 新世界
M17. 白光
-encore-
E01. ある証明
E02. Your Song
E03. 廻る、巡る、その核へ
◆ACIDMAN 公式サイト
http://acidman.jp/
 
◆インフォメーション
・2013年08月26日(月)【東京】Zepp DiverCity
THE WILD ONE
 
・2013年08月31日(土)【愛知】蒲郡ラグーナビーチ
ALPEN・SPORTS DEPO Presents TREASURE05X 2013 -sweet 10 treasures-
http://www.sundayfolk.com/treasure/
 
・2013年09月01日(日)【大阪】泉大津フェニックス
RUSH BALL 2013
http://www.rushball.com/
 
・2013年09月21日(土)【福島】
LIVE福島 CARAVAN日本 2013 FINAL 風とロック芋煮会2013
http://kazetorockcaravan.jp/#imoni2013
 
・2013年09月22日(日)【岐阜】中津川公園
中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2013
http://solarbudokan.com/nakatsugawa/