演奏

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TEXT:桂伸也

「ジャーマン・パワー・メタルという言葉は彼らから始まった」と誰もが信じて疑わないヘヴィ・メタル・バンドACCEPT。結成から約40年を迎えながら未だに衰えを知らず、多くのフォロワーを抱えているそのパワー、存在感は驚愕そのもの。近年では2010年にLOUD PARK出演のために来日、昨年はニューアルバム『STALINGRAD』をリリースと、その健在振りを示しついに単独来日公演を果たした。今回は品川ステラボールにて行われた来日公演初日の模様をレポートしよう。
 
スタート前から2,000人は入りそうなステラボールの広大なフロアはビッチリとファンが埋め、その多くは背中にACCEPTのロゴが入ったTシャツを着てやる気十分、今か今かと彼らの登場を待ち受けていた。

 
◆メンバーリスト:
Mark Tornillo(以下、Mark: Vocals)、Wolf Hoffmann(以下、Wolf: Guitars)、Herman Frank(以下、Herman: Guitars)、Peter Baltes(以下、Peter: Bass)、Stefan Schwarzmann(以下、Stefan: Drums)
 

ACC_H_01会場が暗転するとともに上がる歓声。その声は生声ながら広々としたフロアの中でもはっきりと伝わってきた。その生々しい音こそが、彼らがACCEPTをどれだけ待っていたかを切実に表していた。暗闇の中、白く光る腕の数々。SEに乗って伸ばされた観衆の腕が、暗闇の中で樹海の中に生い茂る古木のように立ち並んでいたのがはっきりと分かる。ステージ最前列から後ろまで、すみからすみまで埋まったフロア。そして観衆が「ACCEPT!」と呼び続ける声が、彼らが登場するまでフロアからは何度も会場いっぱいに投げかけられた。
 
ステージ背面の幕が下り、ACCEPTのロゴがあらわになると、会場の興奮は最高潮に達し、5人が現れると観衆は動き出した。ニュー・アルバムの1曲目と同じオープニング・ナンバー「Hung Drawn & Quartered」で、いきなりK.O.パンチを喰らわせるACCEPTStefanPeterが織りなす超重量級のハード・リズムにHermanのザクザクと刻まれるリズム・ギターが、その硬質かつ力感あふれるサウンドで、ACCEPTらしさを演出していく。その上でまるで自由に泳ぎ回るようなWolfのギター。「さあ、ほら!もっと来いよ!」といわんばかりに観衆をあおりながら、なめらかに指板の上を滑る彼の指。そしてACCEPTのステージでは定番のパフォーマンスともいえる、PeterWolfが並んでプレイする光景。ギターとベースの向きも二人の立ち姿も、まるで黄金比のように計算されたバランスが、ビートから受ける抑揚感以上の衝撃を観衆に与える。そしてトドメはMarkのヴォイス。彼の野太い声は、まさしくヘヴィ・メタルを象徴する。直接フロアにあおりを入れなくても、とにかく観衆を興奮の絶頂まで引き上げてしまう。ここまで完成された彼らのステージは、ライブというよりは観衆まで引き込んで行われる劇場、メタル・シアターとでもいえそうな雰囲気だ。彼らの刻むリズムやキメに、まるで予行演習でもしたかのように寸分違わず観衆は反応し、腕を振り上げ、コーラスをサポートしていく。
 
ACC_H_02「Good evening Tokyo! 今日は来てくれてありがとう!2010年のLoudPark以来だな!また会えてうれしいよ!」このライブ・ステージに向けた彼らの思いを込めて、Markが観衆に語りかける。そしてニューアルバムのタイトル・トラックである「Stalingrad」へ。もうすっかりファンのあいだでは定番曲となった様子が、曲が始まるとともにそのハーモニーをフロアの観衆が総出で歌ったことで立証された。強大なPAのサウンドが鳴っているにもかかわらず、その生声は会場中ではっきりと聴きとることができるという驚きの事態が発生した。時に激しく、そして次の瞬間には叙情的に変化するWolfのギター。その横に立つPeter。この二人の姿は、MarkのヴォイスとともにACCEPTを示すアイコンの一つともいえるほど絵になる姿だ。黙々とプレイに徹するHermanStefanとは対照的に、この二人がステージ最前列に並び顔を見合わせながら派手なアクションを決めると、その度にフロアからは大きな歓声が上がる。9曲目の「Shadow Soldiers」が終わると、Wolfだけを残して全員が一度ステージから掃ける。Wolfのソロ・タイムだ。クリーンなギターサウンドから幻想的なアルペジオ・フレーズを奏でていた序盤だが、次の瞬間にはワーミー・ペダルを合わせた強烈なディストーション・サウンドに一変。そこからメロディを弾きはじめるとフロアの観衆もそのメロディに合わせて歌いだし始めた。
 
アバンギャルドなウルフのソロが終わると、そのままメロウな「Neon Nights」に続き「Bulletproof」へ。途中に繰り広げられたWolfPeterのバトルは見せどころ、聴かせどころたっぷり。時にはMarkがフロアとコール&レスポンスを楽しんだかと思えば、次の瞬間はWolfがギター・プレイで会場を熱狂の渦に包み込む。そして今度はPeter。「Princess of The Dawn」に続いてベースのソロ・タイムとなり、テクニカルなパッセージをプレイしては、観衆の興奮をさらにあおっていく。「I remember long time ago Tokyo! So,let me hear you again!」彼の言葉とともにパッセージは、強烈なドライブ感を見せ、クライマックスへの序章を奏でる。やがでベースによるコード・プレイから再び曲に戻り、Wolfがそのセカンドメロディを奏でると、そのメロディに合わせ観衆が再び分厚いコーラスを口ずさみはじめた。途中でステージがぴたりと演奏を辞めても、さらに歌い続ける観衆。「Louder!」Markの叫びに、さらに声を荒げる観衆。
 
ACC_H_03いよいよステージも大詰め。「Up To The Limit」よりキラーなサウンドをフロアに振りまくと、観衆の勢いはステージ・オープンそのままの熱気がまた会場に蔓延しはじめた。何か話を言って聞かせるような歌いまわしのAメロと一気にそのジレンマが爆発するようなサビ。「Put your hands over!」さらに観衆を盛り立てるMark。ここからはもう怒涛の勢いでラストナンバー「Fast As A Shark」で一気に駆け抜ける。彼らの代名詞であるパワー・メタルという形容をそのまま音で表すと、これしかないといえるような空気がそこには充満していた。力強く、荒々しく、そして会場にいる皆が、ステージの彼らとともに楽しめる空間。ここまで代名詞がぴったりと合う光景が存在するライブはそうは見られない。Markの叫びに呼応して叫びを挙げ、Wolfの「どうだ!」というドヤ顔とともに繰り出されるチョーキングの音に狂喜する観衆。熱狂と興奮の真っ只中で、ステージはいよいよ終わりを迎えた。「Tokyo! We love you! Thank you!」Markの感謝の一言とともに、彼らはステージを降りた。
 
ACCEPT! ACCEPT!」押し寄せる嵐のようなアンコールがフロアからステージに浴びせられ、彼らを楽屋から引きずり出した。ドラムのカウントからおなじみのメロディが鳴り響くと、フロアから一斉にワァーッ!という歓声が上がり、そのメロディに合わせコーラスをする。ACCEPTの象徴ともいうべき「Metal Heart」だ。興奮を最高潮にまで引き上げる展開からメロディがブレイクすると、Stefanがたたき出す勇ましいリズムに合わせ観衆が「Oi!Oi!」と声を上げる。さらにギター・ソロから「エリーゼのために」のメロディが流れはじめると、そのメロディに合わせまたもコーラスが沸き上がる。ここはまさにWolfの土壇場、このメロディが観衆の気持ちを鼓舞する。鋭く振り上げられる拳が、リズムの力強さと気迫を表す。曲の途中ではMarkが「I can’t hear you!」「Come on!」「Louder!」「One more time! let me hear you!」と観衆の声をさらに大きく引き出していく。そして、終焉。「God Bless you! Good Night! Thank you!」Markの感謝の叫びとともにステージをあとにした5人。ライブのあとに流れたSEに合わせて観衆は皆歌い続けながら、その場から離れるのを名残惜しそうにしていた。
 

ACCEPT  Latest Album『STALINGRAD』 UICN-9005/3,600円(税込)
ACCEPT Latest Album『STALINGRAD』
UICN-9005/3,600円(税込)
 
◆ 公式サイト:
バンドオフィシャルサイト
http://www.acceptworldwide.com/
東京音協 オフィシャルサイト
http://t-onkyo.co.jp/
UNITVERSAL『鋼鉄倶楽部』 オフィシャルサイト
http://www.universal-music.co.jp/accept
 
◆セットリスト:
M01. Hung Drawn & Quartered
M02. Hellfire
M03. Restless and wild
M04. Losers and winners
M05. Stalingrad
M06. Breaker
M07. Bucket Full of Hate
M08. Monsterman
M09. Shadow Soldiers
M10. Neon Nights
M11. Bulletproof
M12. Aiming High
M13. Princess of The Dawn
M14. Up To The Limit
M15. No Shelter
M16. Pandemic
M17. Fast As A Shark
 
Encore
E01. Metal Heart
E02. Teutonic Terror
E03. Balls to the Wall

 

彼らがステージに登場した瞬間、会場から沸き上がった歓声は尋常ではない勢いを持っていた。ヘヴィ・メタル創世記の勢い、その勢いがそのまま会場に戻ってきたような気がした。もう何十年も活躍しているグループが、ステージに上がると「懐かしい」と言われることがあるが、彼らはその熱気そのものをあの時のままここに持ってきたのだ。そこにノスタルジーは存在しない。この日見た熱気は、文字通り今に存在する、現在進行形の熱気だった。
彼らにベテランとか、中堅とか、そんな肩書きは似合わない。常に活力と熱意にまみれ、ヘヴィ・メタルをプレイする意欲にあふれているバンド、それこそがACCEPTだ。彼らには今とか昔といった時間軸は不要、彼らを見ることにより人々は勇気を与えられ、明日を生きるための後押しをしてもらえる。彼らはそんなバンドだということを、この日のステージで見せてくれた。
 
彼らのようなバンドがいる限り、ヘヴィ・メタルは死なない。ヘヴィ・メタルを「もう過去の音楽だ!」などと、ののしる者もいる。しかしこれは今も熱く生き続けている音楽なのだ。さらにこの音楽が行き続けることを願う。そして彼らに続き、聴く者を奮い立たせてくれる音を提供してくれる、そんなシーンが活性化することを、願ってやまない。
 

TOPICS
 
BEEAST所属アーティスト第一弾の大塚翔子が、大阪公演にて自身の作品をACCEPTのメンバーにプレゼント!仕上がりも秀逸な作品に、メンバーにも大満足の模様だ。製作への情熱とロックへの愛情をふんだんに注いだ作品が認められたアーティスト大塚翔子。今後もBEEASTは彼女を全力でバックアップ!!
 

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◆大塚翔子 公式サイト:
http://www.beeast69.com/rock_n_kirie/

 

東京音協主催 今後のライブ予定
 
Voices of Rainbow Special Live in Japan 2013 
グラハム・ボネット!ジョー・リン・ターナー!ドゥギー・ホワイト!歴代レインボーのヴォーカリストのうち3人が日本に再び集結!

1)ALCATRAZZ featuring GRAHAM BONNET
※バンドメンバー:Howie Simon, Tim Luce, Bobby Rock
2)JOE LYNN TURNER & DOOGIE WHITE with AKIRA KAJIYAMA
※バンドメンバー:梶山章(JLT)、永川トシオ(GERARD)、長谷川淳(GERARD)、ナカジマノブ(人間椅子)

日時及び会場
2013年3月12日(火) 東京:中野サンプラザ
OPEN 6:30PM / START 7:00PM
前売¥8,000(税込・全席指定)

2013年3月13日(水) 名古屋:ボトムライン
OPEN 6:00PM / START 7:00PM
前売¥8,000(税込・スタンディング・ドリンク代別途) 

2013年3月14日(木)大阪:梅田クラブクアトロ
OPEN 6:00PM / START 7:00PM前売¥8,000(税込・スタンディング・ドリンク代別途)

詳細内容:
※入場時ドリンク代別途必要。

お問合せ:
東京音協 03-5774-3030