演奏

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TEXT & PHOTO:桂伸也

 
日本のロックシーンでは知る人ぞ知る伝説的バンド、THE SLUT BANKS。結成当初から、実名こそ伏せてはいるものの、日本ロック界でも名だたるスゴ腕ミュージシャンたちが集まって結成したバンドとして大きな注目を集めたスーパーグループの一つだ。バンドイメージの「死霊」をモチーフにし太いアイシャドーと骸骨を基調としたファッションというクールでユニークなスタイルが見るものに強いインパクトを与えている一方、荒々しいロックサウンドとポップなカラーの融合は、玄人にもロックビギナーにも強烈なアピールをしている。
 
2000年に一度解散を宣言しながらも2007年に見事復活を遂げた彼らは、昨年で結成ほぼ15周年を迎え、『結成ほぼ15周年tour』とそのままに銘打ったタイトルにてアニバーサリーを祝うツアーを敢行した。そして2012年を締めくくる12月、下北沢GARDENにてファイナルを迎えた。今回はそのライブの模様をレポートしよう。死霊たちに阿鼻叫喚させられる快楽の園(その)に集まった観衆たち。フロアは開始直前には異常なほどの熱気と殺気に包まれ、幕を開ける直前に流れた彼らのライブ映像によってその気迫をさらに高ぶらせていた。
 
◆メンバーリスト:
TUSK(Vocal)、DR.SKELTON(Guitar)、STONE STMAC(Guitar)、DUCK-LEE(Bass)、HONEY bee GARDEN(Drums)

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SEに合わせて続々とステージに登場したTHE SLUT BANKSのメンバーたち。まったく飾り気のない無邪気にも見える表情を見せた彼ら。彼らも観衆と同じようにステージを楽しみたいという思いだけでそこに立っていたのではないだろうか。そしてHONEY bee GARDENの合図から、THE SLUT BANKSの第一声が激しく打ち鳴らされた。そしていよいよステージはスタートした。オープニングナンバーは「ならず者」。その音が早いか否か、「待っていました!」とばかりにモッシュにダイブと暴れまわるフロアの観衆たち。
 
爆音を発する激しいロックのライブでは近年珍しくなくなった光景だが、観衆たちの目には「よくある光景」では済まされない妖しい輝きが見られた。シンプルなタテノリのリズムに合わせて暴れまわるギターリフ、その上でTUSKはいたずらっぽく笑いながらクールなクリーンヴォイスと暴虐なシャウトを交互にフロアに放った。これぞ死霊たちの罠か。彼らの音にのせられ、ただひたすら暴れ続けた観衆。その裏ではDR.SKELTONの流麗かつ凶暴なギターソロがスリリングに、危険な光を放っていた。
 
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「こんな記念日を下北沢で行えてうれしいです!ありがとう!」感謝の礼を告げたTUSK。デビューのワンマンライブをここ下北沢で飾ったという彼ら。彼らの歴史はここから始まった。そんな感激もひとしおのはずだが、それほどのんびりしている暇はないといわんばかりに彼らの強烈なナンバーが続いた。これぞアニバーサリー、とばかりに続いたのは、「涙の最終飛行」、彼らのデビュー曲だ。HONEY bee GARDENが打ち鳴らすタテノリの激しいパンキッシュなリズムの中、DR.SKELTONの泥臭く荒々しいギターリフが会場を充満、そしてその衝動にじっとしていられない観衆を眺め、ほくそ笑みながら高らかに歌を響かせたTUSK。そして彼をバックアップしさらに観衆をあおったSTONE STMACDUCK-LEE
 
しかしただひたすら押しまくるだけではない。曲中に現れるエアポケットのようなフックが観衆の注意を急激に違う方向へ押しやったかと思うと、次の瞬間にはまたステージ上のプレイに集中させられ、いやがおうにも観衆の目はステージに釘付けにならざるを得なくなる。ステージオープンから、もうなにをやってもTHE SLUT BANKSのペース、彼らのビートが催眠術のように観衆をさらにステージの奥へと引きずり込んでいった。
 
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荒々しいギターサウンドと突然飛び込んでくるDR.SKELTONのスリリングなソロ。そんなサウンドを強く印象付けているTHE SLUT BANKSのステージだが、決して彼らは単なる爆音ロックには収まらない。それはやはりTUSKが歌い上げるキャッチ―なメロディによるところが大きいだろう。ロックという概念を強く持つ荒々しさ、重さ、その中にちりばめたテクニカルなプレイ、そしてそれらとは対照的に存在するポップな主旋律。
 
しかも彼らが持つ世界観、音楽性はこれだけではない。冒頭からとにかく押しまくったパンキッシュなビートから一転、ジャパニーズへヴィメタルを彷彿させる様式的なハーモニーとリフを展開させる「幻の子供」や、バラードチックな「Please」など、極上のロックサウンドを存分に披露していった。THE SLUT BANKSならではというパフォーマンスで、観衆の関心を一時も離さない。しかしまるでステージの流れを考えたという形跡は感じられないほどに淡々とプレイを続ける。そのプレイの中には異常なまでに感じられる集中力がうかがえ、強烈なビートが鳴り響けばまたそれに合わせ激しいモッシュとダイブが連発するという有り様。
 
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彼らの楽曲は一般的なポップソングに比べるととても短いものが多いが、それだけにTHE SLUT BANKSのライブでは、彼らなりのステージを表現する意味で大きな効果を発揮する。曲ごとに作った雰囲気やカラーが、たくさんの曲をプレイすることで多くの展開を生むのだ。ステージもいよいよ後半、会場がシンとなったかと思うと、聴き覚えのあるメロディをTUSKが口ずさみ始める。まさかの「White Love」、アイドルグループSPEEDのヒットソングだ。頭のメロディを歌い切ったところでTUSKがメンバー紹介を告げると個々のメンバーがそれぞれの個性を十分発揮したソロでアピールし観衆をさらに興奮させた。
 
そしてクライマックス。やはり疾走するリズムと会場を埋め尽くす音の洪水がなければTHE SLUT BANKSじゃないとばかりに、メンバー紹介後はラストナンバーまでノンストップで爆走を続けた。マイナーキーになれば、THE SLUT BANKSのテーマの一つでもある「死霊」的なイメージが導き出すバイオレンス性が顔をもたげ、聴く者の気持ちを奮い立たせる。逆にメジャーキーになれば激しい音の中でメロディと詞が観衆の心を強くつかんで離さない。そんな様子が交互に現れ、曲間に現れるフックに合わせ観衆は大きな歓声を上げた。激しく鳴り響いたビートは「Pandemic Dance」で終止符を打った。「ありがとう下北沢!ありがとう全国のTHE SLUT BANKSフリークのみんな!」TUSKの叫びが響いた。こうして彼らは「ほぼ15周年」の一区切りを彼らの歴史に打ち込んだ。
 
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ステージ終了の余韻か、観衆は彼らのステージが終わると一時恍惚とした表情でそこにたたずんでいた。が、次の瞬間には一人また一人と我に返り、アンコールを求める声を上げた。次第にその束は大きくなり、一つの渦となった。その声に応え、ステージに5人が再び現れる。この日のステージに対する感謝の気持ちをTUSKが語り、アンコールは始まった。
 
アンコール一曲目は「My lullaby」。最新アルバム「ドクロ」に収録されたキャッチ―なナンバーだ。ここにこのナンバーを選んだのは、「結成ほぼ15周年」をテーマとした本編のステージに対し、彼ら死霊たちが新たなスタートを提示したかったのかもしれない。TUSKの声はのびやかに、そして情感たっぷりに響き、フロアの観衆の耳をとらえた。そして、これで終われないとばかりに勢いたっぷりの「Fire up」「Noisy Love」で全速力のアンコールを駆け抜けた。さらにアンコールをせがむ観衆に応えセカンドアンコールまでも敢行。死霊の罠にはまった観衆とともにその快楽の地獄絵図のようにこの日展開したライブを一堂大満足のうちに終了させた。
 
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◆ ライブ情報:
THE SLUT BANKS × BIG BITES スプリットツアー
【ナイトバンケット】
2013年3月16日(土) 【愛 知】名古屋clubUPSET
2013年3月17日(日) 【大 阪】心斎橋clubDROP
2013年3月23日(土) 【東 京】吉祥寺ROCK JOINT GB
【THE SLUT BANKS × トリルダン 代々木心中】
2013年4月20日(土) 【東 京】代々木 LIVE labo
THE SLUT BANKS【ダークサイドモンキー】TOUR
2013年5月 3日(金) 【東 京】新宿 LOFT
2013年5月 5日(日) 【群 馬】高崎 clubFLEEZ
2013年5月11日(土) 【群 馬】宇都宮 KENT
2013年5月12日(日) 【千 葉】稲毛 K’S DREAM
2013年5月18日(土) 【大 阪】南堀江 knave
2013年5月19日(日) 【大 阪】心斎橋 KINGCOBRA
2013年5月21日(火) 【石 川】金沢 vanvanV4
2013年5月22日(水) 【新 潟】新潟 clubRIVERST
2013年5月23日(木) 【仙 台】仙台 PARK SQUARE
2013年5月25日(土) 【埼 玉】西川口 Hearts
2013年5月26日(日) 【神奈川】横浜 BAYSIS
2013年6月 1日(土) 【福 岡】福岡 DRUM SON
2013年6月 2日(日) 【広 島】広島 スマトラタイガー
2013年6月 3日(月) 【広 島】広島 ナミキジャンクション
2013年6月 5日(水) 【愛 媛】松山 サロンキティ
2013年6月 6日(木) 【岡 山】岡山 Desperado
2013年6月 8日(土) 【大 阪】心斎橋VARON
2013年6月 9日(日) 【愛 知】名古屋 UPSET
2013年6月14日(金) 【兵 庫】神戸 太陽と虎
2013年6月15日(土) 【大 阪】心斎橋 VARON
2013年6月16日(日) 【京 都】京都 Mojo
2013年6月22日(土) 【北海道】札幌 COLONY
2013年6月23日(日) 【北海道】札幌 COLONY

◆ 公式サイト:
オフィシャルサイト
http://www.slutbanks.jp/

公式ブログ
http://slutbanks.jugem.jp/

公式Twitter
https://twitter.com/THESLUTBANKS
 
◆セットリスト:
M01. ならず者
M02. TRUST IN YOU
M03. 人間モスラ
M04. Find my way
M05. 涙の最終飛行
M06. 朝が来るまで
M07. 幻の子供
M08. Please
M09. Pika-Bang
M10. ぱらり
M11. I’ll go around
M12. Virtual People
M13. ♯0022
(メンバー紹介)
M14. デビルモンキースパナ
M15. TOY
M16. METAL MIND
M17. ONLY YOU
M18. コヒワヅラヒ
M19. 二日酔いのラプソディー
M20. Baby Buster
M21. Crying Beggars
M22. Pandemic Dance
 
1st enore
E01. My lullaby
E02. Fire up
E03. Noisy Love
 
2nd enore
E04. 首飾り
E05. 狼狽
E06. SAUCY

2時間超のステージで全22曲、アンコールを含めると28曲という長丁場のステージだったが、筆者はそれをまったく長いと思わなかったことに不思議さを感じた。例えばへヴィメタルやハードロックのライブであれば、これほどMCらしい語りもほとんどなく、とにかく楽曲を詰め込んだようなライブは、どれ程のアーティストでも長いと感じることだろう。しかしそれを彼らは特別な趣向や施策などまったくなしに、最初から最後まで強力なパフォーマンスだけで観衆を常に自分のステージに引き込んでいった。これは彼らの作り上げた「ほぼ15周年」の歴史から生み出された魅力なのだろうか。いや、あるいは「死霊」たちの最大の罠なのかもしれない。そんなことを思いながらも、頭に残ったのはTUSKを始めとして、各メンバーがほくそ笑む表情の中に見せた眼光。その妖しい光は、そんな筆者の疑問すらもまるで仕組まれたかのように頭の隅に追いやってしまった。
 
「ほぼ15周年」という歴史は、そんなTHE SLUT BANKSにとっては単なる結果でしかない。結成から15周年が経過しながらも相変わらず彼らの音を欲し狂ったようにライブで暴れる観衆がいるのは、まさに彼らの悪巧みの成果といっていい。そして彼らの信者を増やすべく新しいスタートをすでに切っている。残念ながら先日HONEY bee GARDENの脱退が報じられたが、その機会も一つのステップとして彼らはなおもそのサウンドとともに暴れ続けていくことを期待したい。「死霊は二度死なない」ことを信じたい。
 

THE SLUT BANKS『ドクロ』
発売中
2,100円(税込)
収録曲:
M01. 二日酔いのラプソディー
M02. ACROBATIC MAN
M03. My lullaby
M04. LOST BOY
M05. 泥沼ダンサー
M06. 綺麗な悪戯(Alternative Version)

 

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