演奏

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TEXT & PHOTO:桂伸也


ピアノとロックとというつながりは、中々想像できない人もいるかもしれない。メインストリームのロックでメインとなるサウンドはギターのイメージが一番強いと思う人も少なくないだろう。しかしもともと広い音域と豊かなサウンドを持つピアノという楽器は、ジャンルにとらわれず幅広い音楽を生み出すことが出来る魔法のアイテムだ。
 
今回紹介する紅月ノリコもまたピアノのサウンドを自らのベースとし、自身の世界を豊かに作りあげるアーティスト。ピアノと歌という基盤から自分の音楽性を広げ、あるときは荒々しく、またあるときには気持ちを癒してくれるような叙情的サウンドを奏でる。ロック、Jazz等のジャンルに拘らない幅広い感性を持つ彼女は、この秋にアルバム『解放』をリリース、その中で彼女の感性を存分に発揮し、一つの世界観を見せている。その彼女がこの日行ったリリースイベントの模様を、今回は振り返ってみよう。
 
◆メンバーリスト:
紅月ノリコ(以下、紅月: Piano &Vocal)野地智啓(以下、野地: Bass)、山際秀人(以下、山際: Drums)、西広樹 (以下、西: Guitar)、大竹創作(以下、大竹: Aluto Sax)、橋本貴久(以下、橋本: Trombone)

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軽快な4ビートのSEの中に広がる拍手に包まれ紅月らはステージに登場した。オープニング・ナンバーはニュー・アルバムの1曲目「永遠の恋人」。哀愁味のあるイントロが、紅月の作り出す物語の1ページ目を開く。彼女のヴォイスは何か強さを表面的に持ちソウルフルな感情を思い浮かばせながらも、その芯にはメロディや詞で哀愁のある繊細な気持ちが表現されているようにも見える。彼女の歌世界を具現化させるためにこの日バックアップするメンバーも強者ぞろい。強力なリズムを作り上げる野地山際のリズムセクション。さらにホーンセクションとして大竹橋本の2管とゴージャスな布陣。時にスウィングし、時には軽快な8ビート、そして16ビート、シャッフル。Jazz的な素養の強いメンバーだけに、リズム面には絶対の自信すら見られる。
 
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Jazzのバック・グラウンドが感じられるそのサウンドを強調するかのように、続いた曲は、ブルース・フレーバーたっぷりの「リセットガールブルース」。ここでは通常の3コードのブルースではなく、要所に部分転調を加えたJazz風ブルース、その上で淡々とした、しかし情感たっぷりでなにか生々しさすら感じられる紅月のヴォイスが浮遊する。途中大竹橋本それぞれのソロをフィーチャーした粋な展開と、気だるさすら感じさせるヴォーカルが言葉どおりブルージーな雰囲気を充満させる。ここから更に続いたのはラテン調の「雑踏」。ブルースから一転、さわやかなメロディのギャップが非常に面白い。終盤に山際のドラムをフィーチャーし、ここでもなかなかの聴かせどころを見せる。
 
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途中、ゲストとしてギターの西が登場、ゆったりとしたボサノバのリズムが、途中アバンギャルドに展開しながら、また一味違った紅月の世界観を聴かせる。ファンキーな「泡」で彼女はピアノを離れ、歌に重点を置いて彼女の音を聴かせる。気だるさの上に荒々しさ、激しさすら織り交ぜ、彼女の歌は展開。また前半で新しいアルバムの楽曲をメインとしたことに対して後半は新旧織り交ぜたスタイル。その展開に大きな落差を感じさせない、自然なライブの展開を見せたことから、彼女にとって新しい作品は常にライブを新鮮に形成するための、個々の要素であることを感じさせる。更にホーンが戻り、「再生ジャンクション」へ。彼女自身がピアニストであることを忘れてしまいそうな抜群のパフォーマンスで会場を盛り上げた。
 
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ドラムの山際とともに昔を振り返りながら、ポップな「原石と宝石」で、いよいよクライマックスを目指す。最後の3曲は、紅月ノリコサウンドの真骨頂とも言えるピアノトリオ・スタイル。ヴォーカル・オンリーのスタイルも素晴らしいが、やはりピアノを弾きながらのスタイルが彼女はよく似合う。「透明」「賞味期限」と、最後は「+α」へ。各曲のテーマを表すそのキーワードは個性的だが、その言葉に込めた真意をメロディとハーモニーに反映し、展開の中で見せるドミナントの展開がさらにその空気を何倍にも増幅していく。そして、エンディング。大きな拍手の中、彼女は観衆に向け礼をし、ステージを降りた。
 
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盛大なアンコールの拍手に押され、紅月はステージに戻ってきた。この日はじめてソロ・ピアノによる「心の瞬き」をしっとりと歌う。MCで語った、ここまでたどり着いたことに対する感謝の気持ちをそのまま歌ったメロディに、会場はしんと静まり返り、みなその音に注意を注ぐ。そして、終焉へ。ニュー・アルバムの流れのまま、トリオによる「表面張力」、さらに再び大竹橋本のホーンセクション、そして西のギターが入りフルメンバーで満足感溢れさせるグルーヴをしっかりと作り上げた「既望」。盛大なハーモニーが、最後にはピアノの音色だけとなり、しっかりとショウを締めた。
 
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◆ライブ情報
「東東京より愛を込めて~2013年新年編~」
2013年1月18日(金) 浅草KURAWOOD
w/ pezite / 7117 / 樋口舞
 
2013年1月24日(木) 仙台 LIVE HOUSE enn 2nd
◆ 公式サイト: 
http://akatsukinoriko.jp/
 
◆セットリスト: 
M01. 永遠の恋人
M02. 依存的幻想
M03. 点と線
M04. 衝動
M05. 瞼(まぶた)
M06. シンプル!
M07. リセットガールブルース
M08. 拝啓、貴方
M09. 雑踏
M10. 泡
M11. 絶対喪失
M12. 再生ジャンクション
M13. 原石と宝石
M14. 透明
M15. 賞味期限
M16. +α
 
Encore
E01.心の瞬き
E02.表面張力
E03.既望

時に激しく、曲によって様々なスタイルを見せた紅月の歌。しかしその芯にはある種ロック的ともいえる熱い情感のようなものを感じた。何事もなく友達と他愛もない話をするような気軽なイメージのMCとのギャップには、戸惑いを感じる人もいるかもしれない。逆にその差があるからこそ彼女の歌は映える。卓越した技術だけに留まらない、彼女の音楽に賭ける情熱の深さの表れともいえるだろう。
 
最後にプレイされた「既望」は、賑やかなショウの終わりというよりは、「また新しい彼女の、次へのステップが始まる」といった期待を持たせるような展開だった。さて、今後彼女はどのような変貌をとげ、そして世界を作り上げていくのだろう?カテゴリにとらわれない貪欲な探究心のある彼女だけに、また新たな展開を見せてくれるのは確かだ。

 

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紅月ノリコ 3rd album『解放』
発売中
AKTK-0003/2,000円(税込)
全9曲収録
RED MOON RECORDS

 

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