演奏

L18

TEXT & PHOTO:桂伸也

メンバーが全て女性ながら、まったくそのフィールドでの勝負を考えていない潔さ、更にリーダーの石坂マサヨ(以下、マサヨ)を中心にライブ精神を貫き、パンクロックバンドとしていまや押しも押されもせぬ存在としてロック界に君臨する、ロリータ18号。海外でのフェスに頼らない地道な活動など、ステージ以外でも見られる強靭なタフネスで、ストレートで骨太なパンクサウンドに磨きを掛け、若いミュージシャンからのリスペクトも多い。そんな彼女らがこの日、気の置けない友人バンドのはぐれヘドローズ、そして気鋭のパンクロックバンドMANGA SHOCKを迎えてのイベントを決行した。ビール好きのマサヨが命名したイベント、その名も『ビールナイト!!!』。パンク好き、ロリータ18号ファンのために、良質のパンクロックサウンドとビールにひたる夜を演出するという、粋なイベントだ。今回はこの彼女らを主体として開催された心地よいイベントの模様を、たっぷりとお届けしよう。

1.MANGA SHOCK
 
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この日のオープニング・アクトとして登場したのは、ハードコア・パンク・サウンドを踏襲したMANGA SHOCK。何か一風変わったギターリフから徐々にその頭角を現し始めるスタート。音が鳴り始めた頃にいなかったひらしま(Vocal)は、なんとフロアの一番後ろからステージ真正面に向かって、歌を叫びながら登場。突然の出来事にあっけに取られたフロアの観衆は、ただ呆然と彼を見守るばかりだったが、彼らは“これぞ狙い通り”とばかりに一辺倒のタテノリ疾走サウンドを炸裂させる。始まったかと思うと、あっという間に終わってしまう各ナンバーは、まるで何かを生き急ぐようなスリリングさが感じられた。MCで語られたが、奇遇にもひらしまは、マサヨと同郷ということが、この日判明したという。その事実でこの日彼らがこのイベントに参加した意味が強くなったのか、勢いは更に増していくばかり。ステージ最前列の柵からフロアへ身を乗り出し、しまいにはまたフロアで絶叫を繰り返すひらしま。オープニング・アクトながらその存在感は十分、イベントの序章に相応しいステージをやり遂げた。
 
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2.トークイベント
 
 
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強烈なインパクトを残したMANGA SHOCKのステージに続いては、この日のスペシャルゲストの一つであるはぐれヘドローズのステージに移る予定だった。はぐれヘドローズはお笑いグループ2丁拳銃のメンバーである小堀裕之(以下、小堀)を中心とした、お笑い芸人で構成されたバンドだ。だが、なんとバンドのリーダーである小堀が、地方営業からの戻りが遅れ、ステージが始められないというアクシデント。そこで急遽、マサヨはぐれヘドローズ小堀以外のメンバーをステージに並べ、この日のイベント名『ビールナイト!!!』にちなんだトークショウを開催することとなった。『ビールナイト!!!』のタイトル命名はもちろん、マサヨのビール好きが講じてこのイベント開催につながったのが発端となったこと、はぐれヘドローズとのつながりを語りながら小堀の戻りを待つ旨を伝え、「芸人達のメンバーですから、きっと凄く面白いトークを展開してくれることでしょう!(笑)」と、一言プレッシャーを掛けるようにジョークを告げながらメンバーを呼び込む。まずは小堀の戻りを待ち侘びるメンバーの文句言い合い合戦から、1回目のビール乾杯へ。ここからはぐれヘドローズ結成のいきさつよりトークは徐々に進む。
 
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「やはり先輩であり、リーダーである小堀さんから“一緒にやれ”と命令されてバンドを始めたんですか?」「そうですね。芸人は先輩の言うことには逆らえません、死ねといわれたら死ぬくらい。まあ、小堀さんに死ねといわれても死にませんが(笑)」さり気ないジョークに会場は和み、ビールも進んでいく。更に勢いをつけるため、メンバーであり、シマッシュレコードというお笑いコンビの島居俊介(以下、島居)、嶋田修平(以下、嶋田)が、ギターを抱えお笑いネタを披露。シリアスな歌メロに込められたジョークがシュールな笑いを誘う。しかもなかなかロックスピリッツあふれる、しっかりとした歌声に、笑いとシリアスさが同居するという不思議な空間が生まれる。最後にはフロアとマサヨを相手にした掛け合いで場を多いに盛り上げた。そして終わると共に小堀よりマサヨの携帯に連絡が入りいよいよ小堀登場、駆けつけの乾杯と共にトークショウを締めた。
 
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3.はぐれヘドローズ
 
◆メンバーリスト
小堀(Vocal)、島居(Guitar)、嶋田(Bass)、藤田力(以下、藤田:Drums)
 
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ジャングル・ビートを叩き出すドラムのイントロから、はぐれヘドローズのステージがいよいよスタートした。「はぐれヘドローズです!楽しんでますか!行けますか!未だ空気に馴染んでいませんが(笑)」小堀が叫ぶ。笑いのツボに落とすオチは、さすが芸人といったところだ。パンキッシュと呼ぶにはポップでノリの良いサウンドが耳に心地よく響いてくる。疾走感十分の藤田嶋田のリズムに、切れのいい島居のギターが重なり、アピール性十分の小堀のヴォーカルが曲に活力を与えてくれる。かつてブルーハーツがそのサウンドで人々の心を捉えた時のような、観衆の気持ちをグッとつかむプレイを展開していく。どちらかといえば荒削りなプレイだが、そのプレイがかえって小堀の歌声に命を吹き込み、聴くものに感じるものを振り撒く。
 
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他愛もない、あっけらかんとした歌詞と、さり気なく哀愁味を加えたメロディ。いつしかフロアの観衆は小堀達のプレイにずっと集中し、その表情には笑顔があふれ、心からステージを楽しんでいる様子が見られた。しかも、最初から最後まで駆け抜けるようにプレイし終えるのではなく、曲の要所で島居が対してボケを見せ、対して小堀がしっかりと突っ込みを入れるという芸人ならではの展開がピッタリと流れに乗り、会場一同満足のステージをやり切った。「僕だけ?楽しんでるのは?お金払ってるんでしょ!?楽しまな損ですよ!?ライブにお金捨てるところなんかないですよ!!」小堀の一言は、芸人であり、かつロックを愛する一人の人間として、感じるべき思いを強く表現したステージとなった。
 
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◆ 公式サイト:
なし

4.ロリータ18号
 
◆メンバーリスト
マサヨ(うた)、Kick(ギター)、たこち(ベース)、TO-BU(ドラム)
 
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リズミカルなラップ・ソングのリズムに乗って登場するメンバー。そして最後に「待たせたな!ロリータ18号じゃ~~~!!」という勢い十分の叫び声と共に現れたマサヨ。「待ってたぞ!」といわんばかりの、フロアのはしゃぎ様。どれ程観衆達は、彼女らの登場を待っていたか?ビールだけでは満たされない、この夜はロリータ18号が彼らに絶対不可欠な存在だった、それを思わせる熱気が、会場一杯に広がっていた。
 
「フライング・クロ」からいきなりフルパワー全開でスタートしたステージ。ギミックなど不要とばかりに打ち鳴らされるビートに載せた荒々しいギターとベースのリフ、その破壊的なサウンドの上で、マサヨが叫ぶように歌う。「これぞマサヨの歌だ!」全く期待通りのパワーを受け止めた観衆は、そう感じたに違いない。みなそろって満足そうな表情で、その荒々しいリズムに合わせて体を力強く揺らす。舌ったらずでキュートな雰囲気と、べらんめぇ節を同時に感じさせるマサヨの特徴的なヴォイス。その声を出すマサヨの表情は常に元気一杯、時に底抜けに明るい表情を見せたかと思うと、次の瞬間には命懸けの表情で、その声に魂を込める。Kick、たこち、TO-BUがプレイを楽しんでいるという雰囲気に反し爆音をかき鳴らす中で、対するマサヨは常に動き回り、フロアの全てを見回し、まるで一人一人にその声を叩き込んでいくように歌い続ける。
 
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「ありがとう!3曲歌って気が付いたんだけどさ…シェルターって乾燥してる(笑)」そして、間に水を飲む際にもフロアはマサヨをまくし立てる。お返しとばかりに、霧吹きのようにフロアに向かって水を吐き出す彼女。こういったところはさすがに単に演奏だけで済まさない、フロアの観衆やファンとのつながりをしっかりと築き挙げたロリータ18号ならではのステージングの一部といえるだろう。そして改めてこの日のイベント『ビールナイト!!!』の開催を宣言、この日を振り返り、集まったバンドへの感謝を告げるマサヨ
 
「今日初めてロリータ18号のライブに来たっていう人いる?大丈夫、曲を知らなくても、何の問題もありません!!とりあえず全曲『Oi!Oi!』だけ言ってればいいから(笑)そんな訳で、とりあえず『Oi!』だけ言ってくれますか!?」「Oi!」「Yeah!」マサヨの気持ちを受け止めた観衆が叫び返す。続いた次の曲は、何故か「Oi!」を言わないナンバー、「君が武器」だったが、ヘヴィなビートが印象的な、全くテンションを下げないドライブナンバーだ。「立ち上がれ もがきながら ここからだ 行け!」ブリッジで叫ぶように歌われたその詞が、観衆の気持ちに火をつける。単に何か利不順なことへの反発がパンクではない、そんな思いが会場一杯に立ち込めていく。その空気を更に倍増させる「クロール」で熱を更に上げたあとは、故忌野清志郎の思い出を振り返りながら、彼と作ったというバラード曲「ロマンチストIII」、切ないハープの音が印象的な「ロマンチストII」と続く。マサヨの歌が、激しいドライブナンバーとは違う形で聴くものの心に染み渡っていった。
 
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いよいよイベントも大詰め、メンバー紹介のあとに「みなさん、全力で『Oi!』って言える曲が着ましたよ!『Oi!』行きますよ!」マサヨのコールが飛んだあとは、「聞こえるか、ガキども」「THE GREAT ROCK’N’ROLL SUNSHINE」と、強烈な「Oi!」が飛び交うナンバーへ。そしてドラマチックなイントロから、一気に会場を思い切りドライブさせる「青雲」へ。その詞に込めた人々を前に向けようとする思いが、そのエネルギーを更に倍増させていく。そしてラストは、ハードコアなリズムが衝撃を与え続ける「さらば青春の刹那」へ。間にTO-BU、たこち、Kickとフィーチャーしながら、更に会場をあおっていくマサヨ。彼女心置きなくそのビートに体を委ねる観衆の様子に、満足な表情を見せながらも、一向にテンションを落とす素振りすら見せなかった。そしてエンディング。「ありがとう!」マサヨの一言と共に、最高のフィニッシュを決めた。
 
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そしてアンコールとして鳴り止まぬ「Oi!」の嵐。再び現れたロリータ18号の面々にまた満足そうな表情を見せる観衆達。この日のイベントに、そして参加したMANGA SHOCK、はぐれヘドローズに改めて感謝の念を伝えながら、アンコールナンバーとして、リリースされる予定となっているニューアルバムに収録予定の新曲2曲を披露。再び強力なドライブが会場を包み込み、人々に心地よいのどの渇きと、ビールへの渇望を覚えさせた。
 
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◆ 公式サイト:
http://www.lolita18.jp/

◆セットリスト:
M01.フライング・クロ
M02.デストロイン
M03.ボビータンク
M04.マイケル卍サントジェン
M05.君が武器
M06.クロール
M07.ロマンチストIII
M08.ロマンチストII
M09.聞こえるか、ガキども
M10.THE GREAT ROCK’N’ROLL SUNSHINE
M11.青雲
M12.さらば青春の刹那
Encore
E01.(新曲)
E02.「YES,PUNK ROCK」call with me!!!

 
ライブが終わり楽屋に楽屋に向かうと、マサヨは笑いながら筆者に語りかけた。「見てましたよ、カメラで写してくれているところ!」これだけの激しいパフォーマンスを繰り広げながらも、マサヨは会場の隅々を見渡し、その音を一人一人に刻み込んでいた。それは取材に入っていた筆者にまで。それこそロリータ18号のステージの、一番の魅力だ。クライマックスにプレイされた「THE GREAT ROCK’N’ROLL SUNSHINE」の一節「きっと神様がくれたご褒美なんだ 今日の今が」で、それは強く表されているようにも見えた。
もはやロック界、パンク・ロック界では、一方ではベテランとも称される彼女らだが、そんな評価などどこ吹く風とばかりに、自分達の音を鮮烈に表現し続けている。まるで人々を前に向いて進めるように後押ししてくれるような彼女らの音が、これからも世に広がり続けることを願って止まない。
 

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