演奏

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TEXT:桂伸也

トリオという最小構成のハンデを全く感じさせない音の重厚さと強力なパフォーマンスで、多くのフォロワーを生み出し続けているジャーマン・パワー・メタルの雄、RAGE。今年2月に21作目となるニューアルバム「21」をリリースし、衰退のかけらも見えない彼らが、一昨年に行われたGAMMA RAYとのカップリング公演に続き、来日公演を果たした。そのパワフルなステージで今回も多くのメタル・ファンのハートをわしづかみにし、彼らの存在のみならずヘヴィ・メタルという存在自体の健在振りを強く誇示した。そんな彼らの、白熱のステージの模様を、今回はレポートしよう。
 
◆RAGE is:
Peter “Peavy” Wagner (以下、Peavy :Vocal& Bass)、Andre Hilgers(以下、Andre :Drums)、Victor Smolski(以下、Victor :Guitar)

開演5分前。フロアから拍手の嵐が鳴り響く。質実剛健の彼らを待ちわびる人々の気持ちが、いかに熱いかを示していた。そしていよいよ時間。フロアが暗転すると、いっせいに大きな歓声が上がる。暗闇でも観衆が真っ直ぐと振り上げた腕の様子が見えてくる。ドラマチックな旋律を奏でるSEが、観衆の気持ちをさらに高ぶらせる。最初に現れたのは、Andre。ドラムセットの後ろに仁王立ちし、観衆を指差し、片手は耳に添え、「どうした?聴こえないぞ!?」とばかりに、観衆をあおる。常に全力投球、それこそRAGEの信条とばかりに、その気迫をパフォーマンスで表していた。やがて登場したPeavyVictorの姿に、観衆は最高潮の歓声を上げた。「HOUSE WINS~21」にて幕を開けたステージ。ステージとフロアが一体となって作り出したいきなりのフルコーラス合唱が、会場の温度を急激に上昇させ、その激しいリズムに同調してフロアが波打つ。機関銃のようなドラムのビートと、ザクザクと鋭利さを見せるギター。開演を待っていた時には気取り屋や、ちょっと勝手の違う雰囲気に気後れしていた様子の観衆が、我を忘れてステージに集中し、狂ったようにそのリズムに激しく身をゆだねる。
 
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時に現れるギターとベースのユニゾン。Peavyのベースはメインヴォーカルを取るだけにバッキングではシンプルなベースラインを描いていたが、ときに高速タッピングを用いたフィルっぽいフレーズや、ギターとの高速ユニゾンを見せ、パワー感や勢いだけでなく、絶妙のテクニックを見せては、「どうだ!」といわんばかりのドヤ顔を決めて、フロアをさらに盛り立てた。そんなPeavyを支えるVictorAndre。ギターのリフと、ドラムのピーク音が見事に合致する時に現れるグルーヴと重量感は、RAGEならではともいえる特筆ポイントを見せる。彼らがパワー・メタルの雄と呼ばれるゆえんでもあり、この音を聞いた時、メタル・ファンは「待ってました!」と、叫びたくなるに違いないだろう。トリオという小構成の中でも、RAGEは間違いなくこれを体現できる数少ないバンドの一つだ。その証拠を、いやというほどにフロアは実感させられる。O-EASTのステージは、3人ではずっと広く見えるに違いないと思われた。実際、ステージに並べられたセットは、ステージの中央に揃えられたドラムのセットと、アンプのみ。開始前のステージは袖との距離を感じられ、ずっと広く見られた。しかし、彼らがステージに現れるや否や、まるでその隙間が消されたような錯覚を受ける。彼らの音を感じ、そのパフォーマンスを感じるのは、この広さが必要なのだ。それをしっかりと証明するようにパワフルなプレイをしっかりと決める。
 
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「コンバンワ!Tokyo!How are you doing!?」「Yeah!」「How are you doing!!」「Yeah!」その反応に満足そうにフロアを見るPeavy。その自信に満ちた目は、まるで不穏な世界を奮い立たせ、前を向く意思をフロアに与えてくれるようだ。スリリングな勘所をよく押さえたアクティヴ感溢れるプレイが続く。とにかく満足そうに自信たっぷりのプレイをこれでもか!といわんばかりに叩きつけてくる。「俺達の新しいアルバムはどうだい?」「Yeah!最高だよ!」「そうか!それは良かった!!」彼らのステージを楽しむのに、言葉の壁はない。明らかに違う言語でも、しっかりと彼らの意思は伝わり、ファンの気持ちをさらに盛り立てる。そして、 スリリングなギターのクリーンなタッピングイントロに、ベースのアルペジオが絡んだ「FEEL MY PAIN」が飛び出すと、このパワフルな鋼鉄サウンドがまた一段と会場にパワフルなエネルギーを放出する。パワー・メタルのおいしいポイントを知り尽くす玄人肌の彼らが織り成すパフォーマンスにあらがうことができない観衆は、さらにその身を彼らにゆだね、暴れまわった。
 
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「Fieren Danke!」ドイツならではの、感謝の声を上げるPeavy。時にデスっぽいシャッフル、時に疾走する中でも超重量級のビートと凶悪なリフが観衆を襲う。その都度会場の温度は熱を上げてく。プレイを止めず、右腕でリフを刻みながら、「どうした!?もっともっと!!」とあおりを入れるVictor。「Do you want to fuckin’ metal right!?」「Yeah!」メタル・ファン達と、ヘヴィ・メタルの雄の、ファミリーの義がここに現れる。クライマックスに向け激しいビートが続くが、フロアは一向に引く気配を見せない。途中、レゲエ調のリズムが印象的なサビを持つ「REFUGE」から、最後のナンバー「DON’T FEAR THE WINTER」へ。絶妙なタイミングで飛んでくるフックが観衆を度重なる浮遊感に浸し、気持ちをさらに持ち上げられハイな気分にさせる。そして見事なまでのフィニッシュ。最大級の衝撃を会場中に叩きつけ、彼らはステージを降りた。
 
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その後すかさず鳴り響くアンコール。なんと会場全体が歌で彼らを呼び込もうとする。どこからともなく上がる歌声が彼らを呼び続ける。その声は徐々に厚みを増し、一つのコーラスを形成した。その声に誘われ登場したのは、Andre。ステージに現れるや否や、第一声を上げた「So Wonderful!!」。もうここまでくれば堅苦しい段取りなど不要とばかりに、当初セットされていた1st、2ndアンコールという形は取り払い、アンコールの5曲、さらに元々セットに予定されていなかった「Drop Dead」を披露するというサービス振り。「Still one More?Still one More?」と繰り返しながらも、熱い空気をさらに熱くしていく。そして「SOUNDCHASER」出迎えたエンディング。何度も名残惜しく彼らの名を呼ぶ観衆に答え、ステージが終わったあともステージに登場し、フロアの観衆へ、感謝の思いを込め親交を深めていった。
 
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(All photo by Teppei Kishida)

◆ 公式サイト:
オフィシャルサイト
http://www.rage-on.de/
東京音協 オフィシャルサイト
http://t-onkyo.co.jp/
日本コロムビア オフィシャルサイト
http://columbia.jp/artist-info/rage/
◆セットリスト:
M01.HOUSE WINS~21
M02.FOREVER DEAD
M03.PAINT THE DEVIL ON THE WALL
M04.FEEL MY PAIN
M05.SERIAL KILLER
M06.THE CRAWLING CHAOS
M07.LIGHT INTO THE DARKNESS
M08.NO REGRETS
M09.UNIITY
M10.DESTINY
M11.REFUGE
M12.GREAT OLD ONES
Encore
M01.EMPTY HOLLOW
M02.DROP DEAD
M03.DON’T FEAR THE WINTER
M04.ALL I WANT
M05.SOLITARY MAN
M06.SOUNDCHASER

Andreが叩き出す力強いビートと、Victorが作り出す、気持ちをかきむしる程のワイルドさを持つギターの爆音、そしてそれらを手なずけ、さらにパワー・メタルならではのパワー感を増幅させるPeavyのヴォイス。ボーダレスがささやかれる昨今の音楽事情の中で、彼らがパワー・メタルの第一人者であり、そのスタイルは不変であることは誰もが認めざるを得ない。自らの音を進化させながらも、中心にある“パワー・メタル”という信条を全くブレさせずにここまで走りぬいてきた彼ら。ベテランの域に達した今でも、その評価を全く衰えさせるどころか、さらなるパワー・フォロワーを増殖させている事実をこの会場ではまざまざと見せ付けられ、ヘヴィ・メタルの生きる道が存在していることを実感させた。ヘヴィ・メタルの持つイメージをあらゆる面で踏襲している彼らの、これからの動向は、これからもますます見逃せない。
 

東京音協主催 今後のライブ予定
 
1)プログレッシヴ・ロック・フェス2012~真夏の夜の夢~
日付・曜日:2012年8月25日(土) 17:15開演
会場:日比谷野外大音楽堂
席種料金:¥12,000(前売・税込・全席指定)
詳細内容:
出演:
ゴブリン
ヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレーター
バークレイ・ジェームス・ハーヴェスト

 
2)Dos a tres caidas ! ~コンチェルト・ムーン炎の三番勝負~ 第二弾
日付・曜日:2012年8月26日(日) 18:00開演
会場:SHIBUYA BOXX
席種料金:立見-5000円
詳細内容:
※入場時ドリンク代別途必要。
出演:
<EARTHSHAKER> http://www.earthshaker.jp/
西田昌史(Vocal)、石原慎一郎(Guitar)、甲斐貴之(Bass)、工藤義弘(Drums)
<コンチェルト・ムーン> http://concerto-moon.com/
島 紀史(Guitar)、久世敦史(Vocal)、長田昌之(Drums)、三谷耕作(Bass ※サポート)

 
3)It bites『TOUR OF THE PAST 2012』
日付・曜日:2012年10月3日(水) 19:00開演
会場:渋谷クラブクアトロ
席種料金:立見-7000円
詳細内容:
※入場時ドリンク代別途必要。
 
お問合せ:
東京音協 03-5774-3030

 

ジャーマン・メタルという言葉を日本でも定着させた立役者のひと組でもあるRAGE。彼らの最新作(通算21目)となる「21」は絶賛発売中。
 
RAGE
「21」
COCB-60053-4/3,200円(税込)