演奏

「LADIES OR GENTLEMEN?」Char / チャットモンチー

TEXT:下村祥子 PHOTO:鈴木亮介

Charチャットモンチー。昨年デビュー35周年を迎えた“日本を代表するロックギタリスト”と、デビュー2年半で武道館2daysを達成したロックバンドによる、誰もが二度見してしまうほど、絶妙な組み合わせの対バンイベントが開催された。

ソールドアウトとなった恵比寿リキッドルームは、開演前から静かな熱気に包まれていた。ステージには下手にドラムセット、中央から上手にかけてはマイクスタンドが設置され、ベース、ギターが背後に並べられている。ようやく会場が暗転し、SEとしてMates of Stateの「Proofs」が流れると同時に、オーディエンスの波が一気に前列へと押し寄せた。

 


 


午後7時、先攻はチャットモンチーだ。ステージに福岡晃子橋本絵莉子の2人が現れた。橋本絵莉子は慣れた仕草でギターを手に取りチューニングを始め、福岡晃子はバスドラを何回か踏みならして感触を確かめる。

チャットモンチーは、徳島県出身の3人組ロックバンドとして、2005年にメジャーデビュー。インディーズ時代より注目を集め、2006年リリースの3rdシングル「シャングリラ」ではお茶の間レベルまでの大ブレイクを果たし、2008年には初の武道館2daysの快挙を達成した彼女たち。しかし、2011年9月に高橋久美子(Drums)が脱退。その際に福岡晃子(Bass)が、ドラマーに転向し、橋本絵莉子(Vocal & Guitar)とメンバー2人で活動中だ。…となれば、ライブではサポートメンバーが加わるのだろうかと安易に考えていたが、そんな単純なステージではなかった!橋本絵莉子はギターを少し鳴らして置いてしまうと、ドラムセットに向かって歩き出し、福岡晃子と入れ替わった。なんと1曲目から、橋本絵莉子はドラムを叩いて歌い出したのだ!!

 


 


ギターの音はループさせて流しながら、ベースの福岡晃子と2人だけで始まったライブは、Charチャットモンチーどちらのファンも驚かせ、同時にそのサプライズなステージから目が離せなくなってしまった。1曲目が終わると福岡晃子がドラムに移って、橋本絵莉子は本領発揮のギターをかきならしつつ、3曲目の最新シングル「ハテナ」では、ブルースハープをホルダーで首から下げて、イントロと間奏で一生懸命に吹きながら、ヴォーカルはあくまでも軽やかに高らかに歌い上げた。その姿にライブハウスならではの一体感を強く感じたし、彼女たちのロック・スピリッツがオーディエンスに好意的に受け止められていくのがわかった。そして4曲目には、ASIAN KUNG-FU GENERATION後藤正文プロデュースで話題騒然の新曲「きらきらひかれ」で、疾走感あふれる轟音ギターを披露。

「今回は一生に一度あるかわからない、Charさんとの対バンです!」Charがライブの対バン相手を探していると聞きつけ、自分達がやりたい!と逆オファーしてこのイベントが実現したという経緯を、福岡晃子が興奮気味にMCで明かした。「今日はCharさん世代のファンを獲得するためにやってきました!」とCharの1977年のヒットシングル「気絶するほど悩ましい」を、1983年生まれの彼女たちがカバー。この微笑ましくもカッコいい、チャットモンチー流アレンジを聴くことができたのは、きっとこの日リキッドルームに足を運んだ者だけの特権だ。

 


 


再び橋本絵莉子がドラマーに変身すると、福岡晃子がキーボードを鳴らした「染まるよ」では、叩き語りとも言うべきスタイルで、恋のせつなさが泣きたくなるほど伝わる歌を聴かせた。さらに、未発表曲と、2007年にリリースされキュンとくる歌詞が大人気の「バスロマンス」といった新旧織り交ぜたラインナップ。終盤にかけては福岡晃子が左手に握ったスティックでドラムを叩きつつ、右手でシンセサイザーを器用に弾き鳴らす場面も見られ、彼女たちの今後のさらなる進化も予感することができた「テルマエ・ロマン」、ラストは「満月に吠えろ」と、チャットモンチーらしいキャッチーなロックチューンで会場を沸かせ、1時間弱の中に様々な現在進行形スタイルを魅せたライブは終了した。

 


 

 


 
 
 
 
 
 
 
 
 
◆チャットモンチー 公式サイト

http://www.chatmonchy.com/
◆セットリスト
M01. 未発表曲
M02. 東京ハチミツオーケストラ
M03. ハテナ
M04. きらきらひかれ
M05. 気絶するほど悩ましい(Char
M06. 染まるよ
M07. 未発表曲
M08. バスロマンス
M09. テルマエ・ロマン
M10. 満月に吠えろ


 


 


15分ほどのインターバルの間にも、次に控えるパフォーマーへの期待感が、会場内に次第に増幅するざわめきとなって広がっていく。そんな中、ついに大歓声に迎えられて、照明がまぶしいステージにChar(Vocal&Guitar)が登場!チェックのシャツに、トレードマークのテンガロンハット。フェンダーUSAのCharシグネチャーモデル“Charizma”を鳴らして「APPLE JUICE」からライブがスタートした。

 


 


もう音が出た瞬間に圧倒されてしまうような、堂々たる貫禄のたたずまいと、軽々と披露されるギターテクの数々。チャットモンチーのMCにあった「リハーサルを観た時点で、わたしたちぶっ飛ばされとったからね」の言葉のごとく、首にタオルを巻いたTシャツの若者がそのロックの爆音にぶっ飛ばされたまま、棒立ちから徐々にエキサイトしていく光景を目の当たりにした。

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1976年、Charが20歳の時にメジャー・ソロ・デビュー。その後まもなく、ジョニー吉長ルイズルイス加部と共にロックバンドJOHNNY, LOUIS&CHARを結成した。今回のライブは、そのJOHNNY, LOUIS&CHAR時代から、1981年に改名し1994年に解散したPINK CLOUD時代の楽曲が多めに構成されていた。70年代から90年代にかけて生み出され、ロックシーンを走り続けてきた数々の曲を、サポートメンバーである、元Dr.StrangeLove奥田民生佐野元春のバンドでもお馴染みの“しーたかさん”こと古田たかし(Drums)、元オルケスタ・デ・ラ・ルス澤田浩史(Bass)とガッチリ組んで、力強いパンチ力がありながら安定したグル―ヴ感と共に、2012年のステージに響かせた。

 


 


最後にCharがオーディエンスに向かって、ピックを投げ入れてステージを後にするまで、アンコールも含めて約80分。しびれるような爆音ロック・サウンドを全身に浴びて、明日へのパワーをしっかり受け取った夜となった。Charチャットモンチー。どちらをお目当てに来た人にとっても、後々まで記憶に残る対バンイベントになったに違いない。

 


 

 


◆Char 公式サイト
http://www.zicca.net/

◆インフォメーション
・2012年07月16日(祝)【なんば】Hatch
・2012年07月25日(水)【目 黒】Blues Alley Japan
※ゲスト出演
・2012年08月01日(水)【大 阪】Billboard Live
・2012年08月02日(木)【東 京】Billboard Live
・2012年08月03日(金)【東 京】Billboard Live
・2012年08月25日(土)【大 田】池上本門寺
Slow Music Slow LIVE ’12
◆セットリスト
M01. APPLE JUICE
M02. WHY AREN’T YOU READY
M03. YOU KEEP SNOWIN’
M04. DOUBT
M05. I’M HERE FOR YOU
M06. IN THE SPACE
M07. HUG LETTER
M08. HEAD SONG
M09. ZIG ZAG ZONE
M10. DRIVE ME NUTS
M11. PURPLE HAZE
M12. からまわり
-encore-
M13. IT AIN’T NO FUN TO ME
M14. LIVIN’ IN TOKYO
M15. NATURAL VIBRATION
M16. SMOKY
M17. COME TOGETHER
M18. UNCLE JACK
M19. JUNPING JACK FLASH