演奏

TEXT:鈴木亮介

山本彩が2019年5月13日(月)、14日(火)の2日間にわたり東京・Zepp Tokyoにてワンマンライブ『I’m ready Zepp Tokyo』を行った。このうち本誌では14日のライブを以下レポートする。
 
山本彩(やまもと・さやか)は1993年7月14日大阪生まれ。国民的アイドルグループNMB48の結成時よりキャプテンをつとめ、8年間中心メンバーとして活動。NMB48加入前からHR/HM好きのギター女子であることは知られていたが、2016年にシンガーソングライターとして始動。NMB48の卒業後も楽曲制作、ライブ活動、メディア出演などを精力的にこなし、今年・2019年からはユニバーサルミュージックに移籍し4月にシングル「イチリンソウ」をリリースした。
 
会場のZepp Tokyoは超満員。男女の比率がほぼ5:5ということに驚いた。ロックのヒロインが20代女子にここまで圧倒的に支持されていることは令和時代の明るい展望を予感させる。開演の午後7時が近づいてきた。
 
◆バンドメンバー:
山本彩(Vocal & Guitar)、小名川高弘(Keyboard & Guitar)、草刈浩司(Guitar)、奥野翔太(Bass)SATOKO(Drums)、Ayasa(Violin)、Asami(Chorus)

「I’m ready」ツアータイトルが大きく書かれた黒い幕がステージには張られている。午後7時、『The Greatest Showman』のような力強いゴスペルに続き、爆音ギターがギグ開始を知らせると、バスドラの鼓動に合わせて拍手と歓声が上がる!
 
冒頭に披露されたのは「BAD DAYS」。どんなに暗闇があっても強くたくましく未来を切り開いていく、という”さや姉“のロックなイメージを体現したこの曲はTAKUROGLAY)が作詞作曲を手掛けている。山本彩の歌声はハスキーだが力強く太い。
 


1曲目が終わり、ステージの白幕が下りると、中央に現れた山本彩は笑顔で観客に応える。弾いていたのはTAKUROから最近プレゼントされたというレスポールだ。続く2曲目はイントロから快活なストリングスと高速のドラミングで高揚感溢れる「JOKER」。山本彩自ら作曲し、MVでは男女2役を1人で演じ話題を集めた楽曲だ。山本彩のマルチな才能を随所に垣間見える作品と言えるが、ライブでは間奏のギターフレーズもサポートメンバーに任せず自ら弾く山本彩。決して気負っているとかではなく、本当にこれが彼女のやりたい表現なんだなぁということがひしひしと伝わる。
 
さらに3曲目「スマイル」ではギターを置いてタオルを持つと、「みんなの声を聞かせて!」「行くぞ!」と力強くリード。この広いZepp Tokyoの群衆を完全に掌握する。その力強さに思わず鳥肌が立つ。NMB48時代からのファンも多いと思われるが、観客もロックのノリを弁えており、思い思いに拳を挙げ、頭を振っている。伸び伸びと歌う山本彩のボーカルに、ギターのキラーチューンが随所に散りばめられる。序盤3曲で完全に心を鷲掴みにされた。
 
「初っ端から笑顔が見えて、テンション上がってます。最後までよろしく!」軽くMCを挟むと、4曲目は落ち着いたピアノが印象的な「夢の声」。山本彩は左右、中央、2階とそれぞれのフロアの方々、一人ひとりに届けるように丁寧に歌い上げる。続く5曲目は真っ直ぐなギターロック「どうしてどうして」。6曲目「彼女になりたい」はドラムの”ドンドンパッ!”に合わせて手拍子が会場を包む。歪むギターがクール。王道のスタジアムロックに、まったく引けを取らない山本彩の熱量高いボーカル。これぞ、ロックシンガーのライブだ。
 


この日のライブは撮影部隊が入り、生配信もされているということで、「変に緊張した」と言う山本彩。MCでは気張らず構えず、観客と対話もしながら自然体で話をしていく。大阪の両親が配信を観ているだろうということで「ママ~」と「Bohemian Rhapsody」風に呼びかけるが、すかさず「ママばっかりで可哀そう。パパ~」と呼びかけ、笑いを誘う。ロックアーティストでありながら、国民的アイドルグループの主将として培われたエンターテイナー気質は、ステージにいっそうの彩りを添える。
 
「もっと熱くなってもらいたいけど、その前にゆっくりできる曲を…」と前置きし、7曲目「ひといきつきながら」をアコギとシンセのシンプルな音で演奏。時に声を震わせながら情感たっぷりに歌い上げる。さらに、アコギ一本で悲恋を歌い上げる「雪恋」、切ないピアノにバイオリンがそっと寄り添う「サードマン」とバラード曲を続け、魂を揺さぶる歌声をZepp Tokyoに響かせる。
 
どちらの曲も山本彩作詞&作曲だが、自らの楽曲を彼女はインタビューで「自分のネガティブさ、根暗さがどうしても表れてしまう」と語っている。しかしそれは退廃的な暗さではなく、悲しみを知っているからこその優しさと熱さに満ちあふれている。Avril Lavigneに傾倒する彼女らしい熱量だ。
 
「ずっと そうずっと 君は君でいて 変わらなくていいから」…肯定のメッセージは、ロックだからこそ説得力を持つ。しかも、山本彩の作る音楽にはロックをルーツとしながらNMB48を牽引する中で培われたであろう発信力、伝える力がそこに加わる。ハードなギターの轟音に重低音が重なる中で、ハスキーなボーカルは少しも霞むことなく、言葉が一つ一つ伝わる。
 


泣きのギターをたっぷりと聴かせると、山本彩は真っ白な衣装に着替えて再登場。シリアスな楽曲4連投のラストは、4月にリリースした新曲「イチリンソウ」。「ひとりでも 咲ける花になりたい」…グループを卒業し、一人のシンガーソングライターとしてブレずに突き進むぞという思いが込められた曲だ。
 
新曲「イチリンソウ」について山本彩は「これからは大勢の中の一人じゃなくて、一人で音楽をやっていく…これからの私の覚悟、決意を感じてほしいし、この曲が誰かの背中を押す曲、力になる曲になれば」と話す。「つらいことがあっても、私自身も音楽をやったり音楽を聴くことであきらめずにこうして一人で歩きだすことができたので、皆さんもそういう風に私の音楽でなってもらえれば」と改めて決意表明し、共感の拍手に包まれた。
 
ライブも終盤。大歓声と手拍子の中「ヒトコト」で伸びやかに歌うと、真っ赤な照明の中「喝采」でアコギを荒々しくかき鳴らす!ゴリゴリのギターロックを披露。さらにバンドメンバーそれぞれのソロ回しを経て「Let’s go crazy」で一つになり、「Are you ready?」で疾走すると、最後は「レインボーローズ」で明るくハッピーエンドを迎えた。
 


アンコールの熱烈な「さやか~!」コールに応えて、ステージへ駆け走る山本彩。「これは、楽しいのは私だけじゃないな?」と語りかけ、「みーんな最高です!こんなに熱くて一体感が作れてるって、本当にみなさん一人ひとりのお陰です」と感謝の気持ちを言葉にする。さらに観客の声に反応し「かわいいって女子だけが言ってる」「みんなの方がかわいいよ」と冗談めく。
 
アンコールでまず披露したのは「幸せの欠片」。スローテンポな切ないサウンドの楽曲。なのに、Zepp Tokyoの客席最後尾まで、至近距離で歌ってくれているような、歌のスケールの大きさを感じる。さらにアコギが爽快な「君とフィルムカメラ」、そして最後はスガシカオが提供したポップチューン「メロディ」でお別れ。
 
ソロでツアーを回るようになって3年目を迎えた山本彩。自分で自分を追い込みすぎて、「自分どう見えてるんやろ」とプレッシャーを感じ、ライブを純粋に楽しめなかった時期もあったという。しかし今回のツアーでは一つ一つがちゃんと自分の実となって、「あのときの自分とは違う」ことを実感できたと話す。
 
「私以上に、来てくださった皆さんが楽しんでいただけるライブになっていたら嬉しいなと思います」と観客に伝えた山本彩。最後に、こう付け加えた。「これからもまた、もしかしたらそんな(ライブを楽しめないような)時期が来たりして…でも安定してる人生の方が面白くないかなって思うし、落ち込んだときこそ、いいことの兆しが見えるんじゃないかなと思うので、そういうときもくじけずに、しっかりと自分とライブと音楽と向き合って、よりいいものを皆さんにお届けできるように頑張っていきたいと思います。もっともっと、私の音楽がたくさんの方に届くように。」
 

◆セットリスト
M01. BAD DAYS
M02. JOKER
M03. スマイル
M04. 夢の声
M05. どうしてどうして
M06. 彼女になりたい
M07. ひといきつきながら
M08. 雪恋
M09. サードマン
M10. イチリンソウ
M11. ヒトコト
M12. 喝采
M13. Let’s go crazy
M14. Are you ready?
M15. レインボーローズ
-encore-
E01. 幸せの欠片
E02. 君とフィルムカメラ
E03. メロディ
◆山本彩 公式サイト
http://yamamotosayaka.jp/
 
◆リリース情報
「イチリンソウ」
・2019年04月17日(水)発売
初回限定盤(CD+DVD)UMCK-7009
通常盤(CD)UMCK-5670

 
 
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