演奏

TEXT:桂伸也 PHOTO:桜坂秋太郎、桂伸也

加納秀人率いる外道のスピン・アウトとして、多摩地区に定着したセッション、たま外道外道のナンバー及び彼のソロ曲で構成されたステージは、元の外道とは異なる面子でのセッションということもあり、また一味違った加納の魅力を感じられ、彼のファンには堪らないステージとなっている。更に競演する満園庄太郎ファンキー末吉という強力なバックアップもセッションミュージシャン界及びロック界では第一人者的存在であり、このセッションの注目すべき要素を更に膨らませている。そんな大枠だけで期待も高まるようなステージの一部始終を、今回はレポートしよう。

◆メンバーリスト:
加納秀人 (以下、加納: Guitar, Vocals)
満園庄太郎 (以下、満園: Bass, Chorus)
ファンキー末吉(以下、ファンキー: Drums, Chorus)

1.第一部
 
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「では始めま~す!」緊張感とは程遠い、リラックスした第一声からスタートした第一部は、目いっぱいブルージーなミディアム・テンポのナンバー「逃げるな」で幕を開けた。テンガロン・ハットの加納は、ギターをかき鳴らしながら、迫力のあるヴォイスをオーディエンスに聴かせていく。Jimi Hendrixの「Hey Joe」を髣髴とさせる、その気だるさの中に見えるリズムの鋭さ、瑞々しいギター・ソロのトーン。サビで聴かれる彼の「逃げるんじゃねぇ!」という叫びには、何か特別な思いすら感じられ、そのルーズなカッコよさは、続いた「乞食のパーティー」に引き継がれた。何か勢いよく引きずられるようなそのグルーヴに、観衆はただ彼らを見つめるばかり。
 
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その後語られたMCでは、近年の、国内での不穏な状況を世間話的に語っていたが、これは冒頭の2曲にそのまま掛かっていた内容なのかもしれない。加納自らが普段の生活から感じた思いをそのままに、その歌とギターにぶつけ、「何かを変えなければならない」という提訴を投げかけた。そのサウンドに掛けられた思いは、更にファンキー満園という強力なバックアップで、更に強いメッセージとして、オーディエンスに伝わる。また、その思いを別の角度から眺めるように、バラードの「SOME DAY」を朗々と歌い上げていった。
 
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MCから展開を変えて、グルーヴ感抜群のファンキー・ナンバー「イエローモンキー」から、「おまたせしました、やっとエッチな曲がやってまいりました!(笑)」との曲紹介と共に、セクシーなバラード・ナンバーの「天国への道」へ。満園のベースの迫力もあいまってか、加納のギターの音の太さには、心躍らされるとともに、安心感のようなものも感じさせた。ファンキーのドラムも、繊細というより、ノリをタイトに打っていく感じが、加納の音に力強く絡む。会場の熱も徐々に上がってくるのが、自然に感じ取られる。そして最後に、キラー・ナンバー「I CAN SHOUT~~~」。ここぞとばかりに、演奏に気持ちのスイッチが入ったような加納の表情がとても印象的。そのスイッチは同時に、満園ファンキーの、心の何かを触発したように、ステージのクライマックスに、何か気持ちの高揚する様をそのまま表しているような展開を見せた。

2.第二部
 
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ジョン・コルトレーンの名作を思わせるタイトルの「LOVE SPREME」でスタートした第二部。
同期を入れた幻想的な雰囲気、サイケな雰囲気。サイケなイントロから、あるタイミングで疾走するリズムに変化する際、一瞬満園加納と顔を合わせ、笑顔を見せた。音を通して気持ちがかみ合う瞬間。セッションという枠ではあるかもしれないが、その枠の中で出来る対話の様な感覚を、彼らはステージの上で体感し、そしてそれを見ている観衆にも撒き散らしていった。疾走感のある、元気の良いナンバーは、少し熱が冷めた会場を再び暖め、エンジンをリスタートさせた。
 
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そこからは、8ビート・バラード「LOVE is just a memory」、ブルース魂むき出しの「狂気」、ロカビリー調の「連れてかれちまうぜ!」と、目まぐるしく曲調を替えていった。第一セットがブルース色を基調とした雰囲気だったのに対し、後半は色彩感豊かな、彼らそれぞれのいろんな面を見せるようなセットで組まれた。セッションという色は見られるものの、そこに存在するイマジネーションの極みとして見られるインター・プレイが随所に披露されていった。歌を歌わないときの加納は、満園を眺め、そしてギターをかき鳴らす度合いで「どうだ、お前ならどうプレイする?」と話しかけていたようだった。それに一歩も引かずに、微妙な加納のフレーズのポイントに、オブリガード等で絶妙に反応するく満園。その中で、ここは彼の領域とばかりに、絶対的な存在感でリズムを支え続けるファンキー。そしてラストに熱いロック・ナンバー「香り」をプレイし切り、彼らはステージを降りた。
 
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鳴り響くアンコールを、増長するファンキーのパフォーマンス。少しの照れと、アンコールへの感謝を表した笑顔で、再び登場した加納満園。リラックスしながらも抱腹絶倒のMCの中でこの日のステージに対する礼を鏤めながら、プレイが再開された。アンコール一曲目は、Jimi Hendrixの名曲であり、セッションではスタンダードともいえる「Purple Haze」を、原曲さながらのイメージで熱唱。そしてラストは、ジェフ・ベックの「悲しみの恋人達」を髣髴させるような、優しくも深い情感のハーモニーを感じさせる「母へのセレナーデ」。先日、母の納骨を行ったという加納の、想いを込めた歌心たっぷりのソロ・フレーズが、鮮烈にその印象を、観衆の心の中に刻んでいった。それは単に「泣きのギター」等という簡単な言葉では片付けられない、彼がその人生で得たもので音を作り上げるというスキルを備えたミュージシャンであることを物語っている。そして終焉。強い歓声こそなかったものの、そんな彼らの素晴らしいステージは、この日訪れたオーディエンス、いやたま外道の仲間達に、しっかりとその音の楽しさと、そこから受けるインスピレーションを与えた。
 
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◆ 公式サイト
加納秀人 オフィシャルサイト
http://www.geocities.jp/guitarmanhk22/
 
満園庄太郎 オフィシャルサイト
http://www.shotaromitsuzono.com/index.html
 
ファンキー末吉 オフィシャルサイト
http://www.funkycorp.jp/funky/
 
八王子Live Bar X.Y.Z.→A オフィシャルサイト
http://www.livebarxyz.com/

 

◆セットリスト:
第一部:
M01.逃げるな
M02.乞食のパーティー
M03.SOME DAY
M04.イエローモンキー
M05.天国への道
M06.I CAN SHOUT~~~
 
第二部:
M07.LOVE SPREME
M08.LOVE is just a memory
M09.狂気
M10.連れてかれちまうぜ!
M11.愛の寝台車
M12.水金地火木土天回明
M13.ビュン ビュン
M14.香り
 
[Encore]
E1.Purple Haze
E2.母へのセレナーデ

ロックという分野のミュージシャンは近年、あまり彼らのようなセッション活動を行っているという例を聞かない。JAZZのような音楽と違って、曲を知らないとなかなかセッションが出来ない音楽では、確かに難しい傾向ではあるかもしれない。近年音楽的な傾向として難しい構成を取る曲が増えた状況では尚更難しいのではないだろうか。

だが、このセッションという形式は、ミュージシャン個々の、人生にちりばめられたのインスピレーションを高める上でも、重要な作業であることは間違いない。決まったメンバーでじっくりと曲を煮詰める一方で、センスを広げたり、バンド活動だけでは得られない経験を得る意味で、セッションはおススメだ。若い人なら尚更。この日のセッションは、セッション経験、そしてミュージシャン経験豊富な、この経験では秀でたミュージシャン3人でのプレイだっただけに、質の高いプレイが聴かれた。またセッションには、あまた存在するCDやDVD等のソフトでは見られない、聴かれない瞬間の連続を体験できる魅力も満載だ。是非一度、たま外道の一員と成るべく、ライブに足を運んでもらうことをおススメしたい。
 

たま外道 次回公演:2012年06月10日(日)@八王子Live Bar X.Y.Z.→A

 

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