演奏

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TEXT & PHOTO:タカシミッシェル
遠藤正明ニューアルバム『V6遠神』

 
Official Video「EASTERN GALE -Theme Song of MAF」
遠藤正明 2016.12.23@東京・日本消防会館

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クリスマス時期の恒例となった特別なライヴ『Christmas acoustic night(以下CAN)』。遠藤正明(以下遠藤)自身が「ファンの方への感謝の気持ちを伝えるべく、どうしてもやりたかった」という特別なライヴは大人の聴かせる音の詰まった最高のクリスマスプレゼントとなった。2016年12月23日の東京は雪でも降り出すのではないかと思うような寒い夜だった。虎ノ門駅から会場であるニッショーホールへ向かう。中央官庁や大使館の点在する地域であり、クリスマスムードに華やぐ商業地とは少々雰囲気が違うエリアだ。通常のライヴではTシャツ姿が多く見られるが、この日に限っては少々趣が違う。コートに身を包んだ冬服の観客で客席は埋まってゆく。観客の冬服は吸音材となる為、ホールでのアコースティックライヴはライヴハウスのロックコンサートととは全く音作りが異なる。そしてエンジニアの腕の見せ所でもある。開演時間が近づきバンドメンバーが登場し歓声が上がる。いよいよ開演かと思われたがそうではなかった。事前に公開された動画を参照に遠藤正明と一緒に歌うという企画が告知されていたが、それに関する確認を「バンドメンバー自らが行う」というアットホームなデキ事であった。

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再びバンドメンバーがステージに登場し歓声が上がる。客席の照明が光を失うかと思われたその時だった……。遠藤が客席中央辺りから突如登場する!完全に意表を突かれたオーディエンスからは大きな驚きと歓声で会場が騒然とする。そして遠藤はアルバム(e)-STYLE収録の「HOPE」の冒頭部分をアカペラで、オーディエンスのド真ん中で、見事に歌い上げる。やや寂しい休日の虎ノ門の街も、このアカペラでクリスマス気分を思い出したのではないだろうか?そしてムーディーなスライドギターとオルガンの音に導かれるように遠藤はステージへと歩みを進める。途中、時折ファンとハイタッチを交わしながら、歓声に応えながら黒のサテンスーツにブラックペイズリーのネクタイで決めた本日の主役はステージ上の最後の1席を埋める。先程のビッグサプライズからの「HOPE」はヴァイオリンに女性コーラスも入り、1曲目からハイライトを迎えたかのような気持ちの高まりを感じる。
 
「今日は1年の皆さんに対する感謝の気持ちを歌で返したいと思います」とのMC後、「勇者王誕生!」が披露される。通常は“会場が湾曲”するほど「ガガガ ガガガガオガイガー!」コールで演者観客一体となって会場温暖化が激しい、ハイライトナンバーだが、この日はピアノとヴァイオリンが印象的なJAZZYなアレンジだ。雰囲気はそのままに「FINALクロスファイト牙狼」へと移行する。スウィングJAZZ的な渋い演奏に遠藤の力強い歌がクロスするシブカッコイイCAN仕様。オーディエンスの手拍子も極上のパーカッションとして演奏に加わるかのようだ。そして、ゆったりしたピアノのイントロ~ツインヴォーカルで、「My Style」が披露される。原曲は整合感の高いAOR的なアレンジで、遠藤の新たな一面が見られた曲だ。エレキギターも入り、原曲に近い雰囲気だ。

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その後和やかに、時より笑いを誘いながらメンバー紹介が行われた。「これは初めてかな?」と前振りがあり「MY TRUE COLORS」が披露される。アコギサウンドに荒野で1人佇んでいるような気分にさせられる。そして、絶望的な状況から抜け出そうともがいているかのような心情が伝播してくる……。間髪入れず「夕凪 -Pray for you-」へ移行。スケールの大きなバラードを持ち前の声量で歌い上げる。情熱的でダイナミックなバラードも遠藤の大きな魅力だ。遠藤のカウントが入り、「またあした」へと移行する。先程のバラードとは打って変わった軽快感が耳に心地いい。「えーちゃん(河合英史:Piano)とヒロポン(三宅博文:Bass)が次にやる曲を是非やりたいと余りにも推すもんでね、ステキな曲なんですよ(笑)。あの短い曲をどうやって、どうアレンジするのか?ココだけでやるのは勿体ないような素敵なアレンジをしてくれました。みなさん、用意はいいですか?」
 
「いってみよ~!」の掛け声と共にPPAP風のオルガンサウンドに会場は笑いに包まれる。I have a ズズン I have a バシャーン ズズンバシャーン! I have a ぶつ I have a 飛ばす ぶっ飛ば~す!遠藤が歌う間時に河合英史久保田陽子(Chorus)がテロップを持ち、最後の「ぶっ飛ば~す」のテロップは遠藤自らが持ち画的にも非常にシュールだ。爆笑を誘うや否やヴァイオリン~オルガンのソロと続く。かつてSABER TIGERのシンガーとしても活躍した久保田陽子のソウルフルなフェイク(アドリブ)があり、そこからR&B的なアレンジに展開し、遠藤へとバトンが渡される。意表を突くPPAP風アレンジに各メンバーの技が散りばめられた「それいけ!電エース」のパフォーマンスに大きな拍手が送られた。

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そしてcanカヴァーの時間へと移行する。今年は女性曲カヴァーの年、1曲目は鬼束ちひろ「月光」だ。遠藤は“全体的に希望を失っているというか、最後まで救いがない、そんな感じが好き”だという。悲壮感を帯びたピアノ・ヴァイオリンが演奏を引っ張り、遠藤のハイトーンヴォイスが白い照明に正に月光の如く浮かび上がる。「次は33年前の……1983年にまだ生まれてなかった人?」と遠藤が客席に問いかけると多くの若いファンが力強く挙手し再び笑いが起こる。「1983年に生まれていなかったそんなキミ達にステキな歌を教えてあげましょう。」遠藤が“THEアイドル、未だに現役の大スター”だと思っているという松田聖子の「瞳はダイアモンド」が披露される。原曲のクリーントーンのエレキギターのフレーズはほぼそのままにアコースティックギターで、透明感あるシンセサウンドはピアノとヴァイオリンで再現され、canという冠にふさわしい素晴らしいアレンジだ。遠藤の歌は“リリース当時高校1年生だった“と言うように、即席臭さがなく昔から本当に好きだった歌をストレートに歌っているように思えた。そして現在作成中のニューアルバム『V6遠神』の30秒スポットが公開された。
 

遠藤正明 LIVE TOUR 2017 ~V6遠神~

 
2017年4月02日(日)北海道・KRAPS HALL 開場16:30/開演17:00
[問]WESS 011-614-9999(平日11:00~18:00)
2017年4月09日(日)宮城・SENDAI CLUB JUNK BOX 開場17:00/開演17:30
[問]GIP 022-222-9999(24時間自動音声案内)
2017年4月15日(土)広島・広島Cave-Be  開場17:00/開演17:30
[問]夢番地 082-249-3571(平日11:00~19:00)
2017年4月16日(日)福岡・DRUM Be-1  開場16:30/開演17:00
[問]キョードー西日本 092-714-0159(平日10:00~19:00/土 10:00~17:00)
2017年4月22日(土)大阪・BIGCAT  開場16:30/開演17:30
[問]ソーゴー大阪 06-6344-3326(平日11:00~19:00)
2017年4月23日(日)愛知・Electric Lady Land  開場17:00/開演17:30
[問]キョードー東海 052-972-7466(10:00~19:00 日・祝休み)
2017年4月29日(土祝)東京・赤坂BLITZ  開場17:00/開演18:00
[問]インフォメーションダイヤル 03-5793-8878(平日13:00~18:00)
 
◇チケット料金:
[北海道・宮城・広島・福岡・大阪・愛知公演] スタンディング 5,000円(税込)
[東京公演]1Fスタンディング 5,000円(税込)
※整理番号順入場 ※入場時別途ドリンク代必要

 
伊平友樹(Guitar)と久保田陽子遠藤の3人編成での「戦士よ、起ち上がれ!」。どことなくJAM Projectの「牙狼〜SAVIOR IN THE DARK〜RED REQUIEM ver」の様な戦う者の悲壮感を感じさせられるアレンジだ。拍手と重なり合うように緊張感あるヴァイオリンとピアノのフレーズが落雷かの如く轟く。曲タイトル通りの「魔神見参!!」に会場は張り詰めた空気に支配される。一転してピアノイントロ~tu ru tu ru tu ru tu tuのスキャットから軽快な雰囲気に変わる。レゲエ風のカッティングギターも加わり、「ROCK ME」の演奏は加速度を増してゆく。MCを挟み「明日への道〜Going my way !! 〜」ワウのかかったハネたギターとヴァイオリン、オルガンが印象的なJAZZYでFUNKYなcan仕様。そしてベースのスラップ・オルガン・ワウの掛かったギターで大人のロックにアレンジされた「Can’t Stop」へと続く。ファンクにヴァイオリンが入るとこれ程カッコよくなるのか?とその斬新さに驚かされた。「まだまだいきますよ~みなさんと一緒に歌いたいと思います!」遠藤がコールし曲タイトルでもある「Jumping on the Monster Beat !!」をオーディエンスと歌い、バンドメンバーにもそれを促す。エレキギターも入り原曲に近い雰囲気だ。更に原曲に近い雰囲気の「LIFE」へと続く。

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遠藤の「最後の曲かな?」というMCに場内から「えっ~~!」という声が響き渡る。シンプルなピアノ伴奏をバックに「Thank you」が披露される。最後のWOW WOW OH WOW OH WOW WOWWOWのコーラスを遠藤が促しながら、ライヴ終わりの名残惜しさを存分に含みながらフィナーレを迎える。観客からバンドメンバー、遠藤に大きな拍手が贈られる。その拍手はすぐにアンコールを促すものへと形を変える。大きな拍手で迎えられた本日の主役たちが改めて登場する。そして和やかな雰囲気の中、改めてメンバー紹介が行われる。「サンシャインズフォーユー!」と曲紹介があり、アンコールという名のラストスパートがスタートする。大合唱が派手な煽りがなかったにも関わらず発生し、アンコールにふさわしい盛り上がりで魅せた!遠藤は言う「僕は天才じゃないので、人より5倍10倍努力する事が他の人達に勝てる唯一の方法」だと。筆者は、難しい歌は勿論、作詞や作曲、軽妙なMC、ダンスと何でもこなせる器用なアーティストというイメージを持っていた。また、多くのファンもそのように思っていたかもしれない。遠藤自身「本当は余り自分でこういう事言いたくないんだけど」と言うように、遠藤自身からこのような言葉を聞いたのは今回が初めてのように思う。

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讃美歌「Amazing glace」の冒頭をアコギに合わせて歌い、「CLOWN」に移行する。クリスマスライヴで「Amazing glace」が歌われたり、一部を挟み込んだりという構成はありがちかもしれない。しかし「Amazing glace」から「CLOWN」という流れには、“過去の悔恨~現在ある恵に対する感謝”という世界観に共通点がある。「Amazing glace」の作詞者ジョン・ニュートンは奴隷貿易に携わる、ある意味CLOWNであったことから、この2曲を繋げたのではないかと筆者には思えた。遠藤が歌う「CLOWN」の後、久保田陽子の歌う「Amazing glace」から「CLOWN」へと移行し、最後はコーラスをバックに遠藤の「Amazing glace」でこの公演を締め、大きな拍手が遠藤とバンドメンバーに贈られた。「ありがとうございました、良いクリスマスを年末を過ごしてください、また来年!!」とありったけの肉声でオーディエンスに感謝のコトバを贈った。大きな拍手が鳴りやまない。年を重ねる毎にクオリティを高めてゆくcanライヴは、間違いなく今までで一番の完成度であったように思えた。また遠藤の2016年最終公演にふさわしい、笑いあり、サプライズもあり、高い技術・センス抜群のアレンジ、そして遠藤の情熱的な歌が堪能できた最高のライヴであった。エンディングSEとして流れる「Carry on」が2月に発売されるアルバムやそのツアー、JAM Project……「この先まだまだ続く“遠藤正明”の活動にご期待ください」というメッセージのようである。2017年もアニソン界の若獅子から目が離せない!

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◆Setlist
M01. HOPE (『(e)-STYLE』)
M02. 勇者王誕生(勇者王ガオガイガー)
M03. FINALクロスファイト牙狼(CR牙狼FINAL)
M04. My Style (『(e)-STYLE』)
M05. MY TRUE COLORS(『EXTRENE V MACHINE』)
M06. 夕凪 -Pray for you-(『EXTRENE V MACHINE』)
M07. またあした(みつどもえ 増量中!)
M08. それいけ!電エース(それいけ!電エース)
M09. 月光(鬼束ちひろカヴァー)       
M10.瞳はダイヤモンド(松田聖子カヴァー)
M11.戦士よ、起ち上がれ!(魔装機神サイバスター)
M12.魔神見参!(JAM Project featuring 遠藤正明)
M13.ROCK ME(『CIRCUS MAN』)
M14.明日への道〜Going my way !! 〜(遊☆戯☆王 5D’s)
M15.Can’t Stop(「ゲッターロボ大決戦」)
M16.Jumping on the Monster Beat !!(『(e)-STYLE』)
M17.LIFE(『CIRCUS MAN』)
M18.EASTERN GALE -Theme Song of MAF-(『V6遠神』)
M19.Thank you(『CIRCUS MAN』)
 
~ENCORE~
M20.サンシャインズフォーユー(『EXTRENE V MACHINE』)
M21.CLOWN(『M.e.』)
◆遠藤正明 Official Website
http://endoh-masaaki.com/
 
◆Stage Member
遠藤正明(Vocals)
久保田陽子(Chorus)
伊平友樹(Guitar)
三宅博文(Bass)
佐々木一剛(Drums)
河合英史(Piano)
須磨和声(Violin)
 

 

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