演奏

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TEXT:桜坂秋太郎

 
単独では27年ぶりとアナウンスされた、STRYPERの3days公演『“YELLOW & BLACK IS BACK” CELEBRATION TOUR IN JAPAN』。3daysの内訳は、Day1とDay2がオールタイムベストと称して、初期アルバムを中心としたベストヒットと最新アルバムからの30周年特別セレクション。Day3は1986年発売の3rdアルバム『To Hell With the Devil』の完全再現とベストヒットという内容だ。開催地は、Day1が大阪で、Day2とDay3が川崎。今回は、最終日となるDay3の『To Hell With the Devil』完全再現LIVEをレポートしてみよう。
 
Day2とDay3は土日ということもあり、開場が16時で開演が17時と早めとなっている。開場の16時頃に会場のCLUB CITTA’に到着すると、すでに多くのファンが詰めかけている。グッズ販売が開場より前の時間だったようで、グッズはすべてが完売となっている。購入したTシャツに着替えて、入場を待つ人も多い。取材陣用に用意された会場2Fにて開演の時を待つ。徐々に1Fフロアが埋まり、2Fもアップ・グレード・チケットをゲットしたファンで満席となる。ステージと客席には、イエローライトがつけられ、黒と黄色のコントラストを描いている。
 
開演直前、2F席から「Glory, Glory, Hallelujah」の声があがり、メンバーを待つ準備は整っている。ステージセットを見ると、STRYPERの再結成後から定番となった、横向きのドラムにセッティングされている。黒と黄色の縞々模様のドラムセットではないので、本国からの持ち込みではなさそうだ。また、ベースの後ろにキーボードセットが無いので、サポートのキーボーディストも居ないことがわかる。衣装は、Day1とDay2が黒を基調とした最近のスタイルで、Day3だけが黒と黄色の昔ながらの縞々を着るとアナウンスされていた。『To Hell With the Devil』の完全再現ということもあり、演出面はバッチリだ。

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ヒットソングをたくさん持つバンドのセットリストは、すべての人を満たせるわけではない。それならば、と考えた時に、アルバム完全再現という方法は、とても良いと思う。私がSTRYPERを聴き込んでいた当時は、まだアナログのレコード時代だったが、『To Hell With the Devil』と4thアルバム『In God We Trust』は、本当によく聴いた。またMTV全盛期でもあり、音楽と映像が密接になった時代に、うまく登場したとも言える。STRYPERのヴィジュアル的なインパクトはずば抜けていた。初のクリスチャン・メタルのバンドということよりも、そのヴィジュアルとメロディの美しさに心を奪われた。
 
私はSTRYPERを観るのは4度目となる。再結成後の2011年に、『LOUD PARK』へイヴェント出演があったが、それは観ていない。しかし80年代の外タレの来日は、ほとんど足を運んでいるので、1985年・1987年・1989年とSTRYPERの来日公演を3度観た。今回はSTRYPER の4度目のステージを、27年ぶりに観ることになる。ふと1Fフロアに目を落とすと、STRYPERの80年代当時のTシャツを着ているファンを見かける。同じ物を持っていた記憶が蘇り、甘酸っぱい気持ちになる。あれから随分と時間が経ってしまったが、来場の年齢層からして、私と同じように4度目や3度目などのファンが多いはずだ。
 
今はYoutubeなどで、色々な動画を見ることができる。取材前に再結成後のSTRYPERの動画はいくつかチェックしたが、演奏力や歌声に衰えがないことに驚いた。西洋人のパワフルな基礎体力という話なのかもしれないが、若い頃と何もかわらないレベルでプレイできるというのは凄い。自分に置き換えてみると、若い頃とまったく違う、劣化した姿と体力に愕然とする。さて、舞台裏のスタッフが配置についたようだ。いよいよ開演!YELLOW & BLACK IS BACK!

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「Abyss」のキーボードサウンドがSEとして会場に響く。『To Hell With the Devil』の完全再現ステージ、レコードに針を落とした時の興奮が蘇る。オーディエンスが呼ぶ中、OZ FOX(以下OZ:Guitar)・ROBERT SWEET(以下ROBERT:Drums)・MICHAEL SWEET(以下MICHAEL:Vocals &Guitar)・TIM GAINES(以下TIM:Bass)の順番でステージに登場。ROBERTのハイハットのカウントから「To Hell With the Devil」がスタート。MICHAELが叫び、オーディエンスが大歓声をあげる中、STRYPER特有の甘いツインリードギターのメロディが、会場を包み込む。TIMはピックを投げ、MICHAELはステージ下手でオーディエンスをあおる。オーディエンスは1番の歌から大きなシンガロングだ!ギターソロではOZがひざまずくアクション!
 
フランクなMCから「Calling on You」。私が取材をしている2Fフロアの隅まで、ROBERTのドラムがよく響いている。手を頭上へおくるアクションをしながら、タイトなリズムを叩き出す姿もカッコいい。OZは身体をくねらせながらソロを弾いてピックを投げる。「Calling on You」のPVと同じような衣装を着ているということも加わり、色あせない名曲に感動だ。エンディングから間髪入れずに「Free」へ。サビのハーモニーはMICHAELが低いメロディを歌い、TIMOZが高いメロディを歌う。逆のパターンのイメージがあったので、かなり新鮮に聴こえる。オーディエンスは、ショーのスタートから大きなシンガロングをずっと続けている。エンディングのツインリードギターがたまらない。STRYPER中毒になる一つのファクターはこの甘いトーンだと思う。
 
ここでお約束の聖書配りのタイムだ。ROBERTもステージ前方へ降りてきて、メンバー全員で聖書を客席へ投げる。当然2F席までは飛んでこないので、2Fのオーディエンスから「いいな~」という声が聞こえる。配り終えるとステージには、MICHAELだけが残り、「Honestly」のイントロが流れてくる。この曲のPVではピアノの前にMICHAELが座っている印象があるが、オケをバックにハンドマイクでMICHAELが静かに歌いだす。オーディエンスに手拍子をするように、OZがステージ前方でアピール。続けざまに「The Way」。MICHAELはオーディエンスに歌うよう即し、Oh – What did you say? Oh – Christ is the wayのシンガロング大会へ。OZがコミカルに、ゲームキャラのようなアクションをみせる。エンディングのハイトーンシャウトもバッチリ決まり、MICHAELの声の調子も最高だ。

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そしてOZTIMROBERTMICHAELの順にメンバー紹介の後、「Sing-Along Song」へ。アルバムの同曲はデジタルビートのイントロで始まるが、OZのアーミングプレイから、ノーマルに演奏はスタート。MICHAELがステージ前方で、拳を突き出してオーディエンスをあおる。サビでは手を大きく左右に揺らして、会場とステージが一つになる。そして「Holding On」。STRYPER節が炸裂するメロディのナンバーに、オーディエンスの身体は2F席まで揺れに揺れまくっている。MICHAELOZは、ピックを頻繁に客席へ投げている。美しいハーモニーでナンバーを締めくくるとMCへ。疾走感が魅力の「Rockin’ the World」が始まると、『To Hell With the Devil』の残りナンバーが少ないことに気がつく。オーディエンスの拳が大きく揺れる。
 
短いMCからオケがまた流れてくる。「All of Me」だ。MICHAELは胸に手を当ててステージ前方で歌う。ひたすら優しさを前面に出したバラードは、先のパワーバラード「Honestly」とは違い、心が穏やかになるようなナンバー。できればストリングスアレンジをしたこのナンバーを生で聴いてみたい。MICHAELが歌い終えてギターを手にすると、ついにアルバム最後のナンバー「More Than a Man」へ。“Jesus in your heart”を叫ぶオーディエンスの声で、STRYPERが改めてクリスチャン・メタル・バンドであることを強く感じる。演奏が終わるとメンバーは手を振りながら、舞台袖へ。完全再現ということで、アルバム丸ごと披露して、ショーは終了。直後からWe Want More!のオーディエンスの声と手拍子が響きわたる。
 
アンコール前の会場は、開演前と同じくイエローライトがつけられている。メンバーが再登場し、2015年リリースの10thアルバム『FALLEN』から、1曲目「Yahweh」のSEが流れて、アンコールがスタート。最新のSTRYPERのナンバーもチェック済みのオーディエンスは拳を高く上げる。MICHAELはジャケットを脱いでシャツだけの姿になっている。2バスドラムとアグレッシブなギターソロにハイトーンの歌。最新のSTRYPERも抜群にカッコいい。メロディアスなSTRYPERのナンバーは、楽曲としてずば抜けて素晴らしいのだが、このハードにヘヴィにロックするSTRYPERの魅力もたまらない。続けて2ndアルバム『SOLDIERS UNDER COMMAND』の6曲目「Reach Out」へ。ハーモニーが素晴らしく美しい!生で聴くとつくづく思う。STRYPERのメロディを組み立てるセンスは、レベルが高すぎる!
◆STRYPER Official Website
http://www.stryper.com/
 
MICHAEL SWEET / ROBERT SWEET
TIM GAINES / OZ FOX

 

◆Setlist
M01. To Hell With the Devil
M02. Calling on You
M03. Free
M04. Honestly
M05. The Way
M06. Sing-Along Song
M07. Holding On
M08. Rockin’ the World
M09. All of Me
M10. More Than a Man
– encore1 –
M11. Yahweh
M12. Reach Out
– encore2 –
M13. Heaven and Hell(Black Sabbath cover)
M14. Soldiers Under Command
– encore3 –
M15. Co’mon Rock

2曲披露してメンバーはステージの袖へ。短めのインターバルで登場すると、2回目のアンコールは、Black Sabbathの「Heaven and Hell」。STRYPERがハード・ヘヴィ系のバンドのナンバーをカヴァーした8thアルバム、『THE COVERING』の3曲目に収められている。定番中の定番のナンバーだけに、オーディエンスのノリも完璧だ。しかし『THE COVERING』からのチョイスであれば、同時期に来日しているIRON MAIDENの「The Trooper」(同アルバム9曲目)を!などと考えているうちに、演奏終了。そして『SOLDIERS UNDER COMMAND』の1曲目の「Soldiers Under Command」の歌を、MICHAELがアカペラで歌いだす。オーディエンスも今日一番の大きな声でシンガロングして、バンドへ気持ちを伝える!ゾクゾクする瞬間だ!ROBERTはポリスキャップを被って、スティックでオーディエンスをあおる!
 
おそらく「Soldiers Under Command」からSTRYPERにハマった人が多いのではないだろうか。オーディエンスの熱気が普通ではない!MICHAELはギターを手にすると、拳を強く突き出し、気合いを入れているかのようだ。ギターソロのフレーズも、そらで歌えるオーディエンスが多く、すごい状態だ!まさにクライマックスへ向かう最高の空気が漂っている!エンディングのハイトーンシャウトも完璧、MICHAELの歌の安定感は抜群だ。最後のメンバー紹介、MCから記念撮影。ステージの袖はメンバーが消える。鳴り止まないWe Want More!コールから3回目のアンコール。ROBERTのラメ入りのスパッツや、BOSCHやFerrariのワッペンをつけたTIMのスリムなジャンプスーツがセクシーだ。ステージに登場したMICHAELは衣装を前列のオーディエンスにプレゼント。
 
そして今夜本当の最後のナンバーは、1stアルバム『THE YELLOW AND BLACK ATTACK』の6曲目「Co’mon Rock」だ!思い残すことがないように、オーディエンスも激しいヘッドバンギングで応じている!Co’mon rock, rock, rock! Co’mon never stop! 嗚呼、終わって欲しくない!しかし熱きエンディングからその時が来てしまう!これにて終演という会場アナウンスが流れ、灯りがつけられる。約1時間半のステージ、『To Hell With the Devil』の完全再現とベストヒットという内容。ベストヒットの方にもう少しボリュームがあれば最高と思うが、Day1とDay2のオールタイムベストの日と合わせて考えれば、練られたステージ構成なのかもしれない。『To Hell With the Devil』の完全再現の貴重な場に居られたことを素直に喜び、MICHAELがMCで言っていたように、メンバー全員が元気で、また来日をしてくれる日を待ちたいと思う。そして次の完全再現では、『In God We Trust』を観たいと思いながら会場を後にする。

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