演奏

lead_doom

TEXT:桜坂秋太郎
DOOM 2015.5.3 @新代田FEVER

DOOM藤田タカシ(Vocals & Guitars)、古平(Bass)、PAZZ(Drums)

遂に再始動を果たしたDOOM。そして数十年振りの東名阪ツアー『NO MORE ATTITUDE TOUR』を発表。この日を待っていた熱狂的なDOOMファンに支えられ、すべての会場が大盛況となった。再始動のメンバーは、DOOM藤田タカシPAZZ、そして元CASBAH古平を加えたラインナップだ。今回は、その最終日、東京公演(新代田FEVER)を、レポートしてみよう。
 
DOOMの結成は1984年までさかのぼる。唯一無二という表現は、よくロックバンドの紹介に用いられるが、本当の意味で二つとないバンド、それがDOOMだと思う。当時、まだDOOMの名前もよく知らない時に観た、神楽坂のライブハウスのインパクトは、今でも忘れられない。天才ベーシストの諸田コウが急逝した後、もう観ることもできないと思っていたファンも多いと思うが、DOOMの本格的な再始動が決まったのだ。
 
ジャンルなど関係ない!これがDOOMの音楽だ!という強い個性は、逆に真似をしようと思っても、誰も真似ができないサウンドだったのだろう。振り返ってみると、特にミュージシャンから愛されているバンドだった気がする。いつまでも語り継がれる、ミュージシャンズミュージシャンの素晴らしいバンド。2015年に生のライブを体験できるとは、大変幸せなことだ。

0102

DOOM『NO MORE ATTITUDE TOUR』新代田FEVER ダイジェスト映像

1112
1314
15s

諸田コウが愛用した銀色に輝くベースを抱える古平は、多くのオーディエンスの視線を集める中、黙々と難解かつエモーショナルな諸田フレーズを奏でる。DOOMの再始動、それはつまり天才ベーシストの役割を誰かが担わねばならないという事。この大きなプレッシャーを楽しむかのようだ。アルバム『Complicated Mind』の1曲目に収録されたタイトルナンバー「Complicated Mind」へ。
 
藤田タカシのザクザク迫るギターサウンドに血がたぎる!シンプルなドラムセットが流行っている昨今だが、要塞と化したドラムセットをフル活用するPAZZのドラミングは圧巻の一言。トリオ編成でも音色が多彩な印象を受けるのは、ドラムの威力に他ならない。続いて『Complicated Mind』の2曲目に収録された「Fall,Rise And…」。曲間の変拍子から歌メロに戻る瞬間、藤田タカシがオーディエンスに対してニヤリ。まるで“どうだい?今のDOOMは?”とでも言っているかのようだ。

2122
2324
2526

ニューヨークでレコーディングされたアルバム『Incompetent…』の1曲目に収録された「I Can’t Go Back To Myself」でショーがスタート。フロアのオーディエンスは、待ち焦がれたDOOMのサウンドシャワーを浴びて、後方までが揺れている。よくライブ会場で見かける、腕組みをした関係者風の人間も居ない。全員がこのDOOMとの空間を楽しんでいる。
 
『Incompetent…』の6曲目に収録された「Death Of False ROCK !」から、諸田コウ最後の作品となったアルバム『ILLEGAL SOUL』のナンバーへ、3曲目に収録された「Blood On The Rise」と2曲目に収録された「水葬」が続く。メロウなベースフレーズにオーディエンスの肩が揺れている。メジャー一作目となったアルバム『KILLING FIELD…』の1曲目に収録された「Rocking Russian」のリフが始まる。この曲でDOOMのカッコ良さにヤラレたファンも多いのではないだろうか。たまらない!という表現しか思い浮かばない、最高の瞬間だ。

3132
3334
3536

『KILLING FIELD…』から続けて、2曲目に収録された「Killing Field…」そして5曲目に収録された「Fence And Brricade 」。MCを挟まず、怒涛のようにDOOMのサウンドシャワーをオーディエンスへ浴びせる。アルバム『Human Noise』の5曲目に収録された幻想的な「Lyrics」から、3曲目に収録された「Stupid Man」に繋がる。DOOMDOOMでしかなく、似ているバンドも居ない、本当の意味でオリジナルなロックバンドだったことを、誰もが再確認しているに違いない。
 
本編最後は、『Human Noise』の9曲目に収録されたタイトルナンバー「Human Noise」だ。ステージに目が釘付けのまま、ステージが終了。DOOMのすべてのナンバーに言える事は、楽曲構成のセンスがずば抜けている事だろう。唯一無二のエナジーを放っているのは、このセンスが誰にも真似できないからかもしれない。テクニカルを自称するロックバンドは、DOOMの爪の垢を煎じて飲んでから作曲すると、名作が生まれるかもしれない。アンコールを待つ間、頭にそんな事が浮かぶ。

41s
 

◆Setlist
M01. I Can’t Go Back To Myself
M02. Complicated Mind (s)
M03. Fall,Rise And…
M04. Death Of False ROCK !
M05. Blood On The Rise (s)
M06. 水葬
M07. Rocking Russian (s)
M08. Killing Field… (s)
M09. Fence And Brricade (s)
M10. Lyrics
M11. Stupid Man
M12. Human Noise
– encore –
M13. No More Pain (s)
M14. Last Stand To Hell (intro)~Dooms Days
M15. Death To Wimp ! (s)
M16. Why!?
(s)=short version
◆DOOM Official Website
http://www.doom-real.com/
 

メンバーが再登場し、DOOM初のアルバム『No More Pain…』の5曲目に収録されたタイトルナンバー「No More Pain」。スリリングでアグレッシブな展開に、魂が共鳴する。「Last Stand To Hell 」のイントロから、アルバム『Killing Field…+4』にボーナストラックとして収録された「Dooms Days」へ。会場の熱をヒートアップしたまま、『No More Pain…』の1曲目「Death To Wimp ! 」に続く。そして本日初めてのMC。藤田タカシが来場の御礼と、DOOMの今後について語る。本日のラストナンバーは、『No More Pain…』の2曲目「Why!?」。アンコールは初期のナンバーで燃え尽きる!
 
ツアーファイナルのワンマン。熱いステージを展開したバンド、全身でDOOMを感じようと根っからのDOOMファンが集う最高の夜。歴史や時代に“もし”は無いのだが、天才が今も存在していたら……、DOOMは世界をノックアウトしていたのではないだろうか。ミクスチャー系などの言葉が生まれる前から、ずば抜けたテクニックと楽曲クオリティを持って活動していたDOOM。この数年、クールジャパンとして日本のバンドなども海外に紹介されているが、DOOMこそ、日本が胸を張って、誇るべきバンドだと思う。彼らの登場が早かったのではなく、“時代”がついてくるのが遅かったのだ。“時代”が時代遅れだったのだ。
 
もし、この記事でDOOMを初めて知った若きロックファンは、1曲でも多くのDOOMに触れてほしい。そして次回のDOOMのショーを体験してほしい。言葉にならないほどの衝撃を受けることは間違いない。伝説のバンドが帰ってきてくれた。このチャンスを逃してはならない。過去に戻る事はできないが、DOOMは今を生きる事を選択した。これから先、DOOMがどのような活動をしてくれるのか、楽しみに発表を待ちたいと思う。DOOMのサウンドシャワーの余韻に浸りながら、今夜の会場となった新代田FEVERを後にする。今夜の酒は絶対に旨いはずだ。
Live Information
『音楽人達の魂2015』 ※詳しくは http://ongakubito.publog.jp/ にて
・2015年09月20日(日)札幌 susukino810
・2015年09月21日(月祝)札幌 susukino810
・2015年09月23日(水祝)旭川 MOSQUITO