演奏

高木フトシ ソロライブ“CORE”

TEXT:山崎光尚 PHOTO:高水秀人

時には力強く、時には切なく…心の底から、腹の底から歌い上げる魂のシンガー・元HATEHONEY高木フトシ。バンド解散後、ソロやユニットなど様々な形態で音楽活動を続けてきているこの男のアコースティックギターの弾き語りによる、ソロワンマンライブをレポートします。8月より3部作シングルを毎月連続リリースした、“本物の男”の叫び。その模様を読者のみなさまに伝えたい!

静まり返った場内——。ごく自然体な雰囲気で、男は現れました。イスに座り、ギターを抱えチューニングを合わせると、波の音と街の雑踏が混ざりあったSEが流れ、ゆったりとしたコードストロークでまず、第一音を鳴らし始めます。このワンマンライブのタイトルでもあり、3部作シングルの最終章「CORE」の最後を締める「CORE.〜THE END〜」から彼の闘いはスタート。

PhotoPhotoPhotoPhoto


しゃがれた声で語りかけるように歌う…。高木フトシの“CORE”とは…?その答えを確認するかのような気持ちで耳を傾けます。そして大きなノイズ音が鳴り響き、力強いカッティングから表題曲「CORE.」へ。“ゆこう 空へ”という締めの一節は鳥肌の立つような雄叫び。「ありがとう」と静かにつぶやき、「Perfect life」へ。歌声の重厚さとギターの浮遊感の絡み合いが心地いい楽曲です。そして、陰サイドなナンバー「Underground」を終えると、街の雑踏がBGMとしてかすかに流れる。クリーントーンのアルペジオから感情を抑えるような声で「Story of Soul」を、切々と歌い上げます。

「Unbirthday」では、上体を揺らしながらゆったりとまるでギターと戯れるかのように、時には闘うように演奏していました。心臓音がBGMとして刻まれる。そしてちょっと笑みを浮かべるように歌った「No angel’s here」。この男の優しさが伝わってくるような声に、安著の表情を浮かべるファンの姿も多かったです。

「今夜はこんなにたくさん来ていただきありがとうございます!一応、3部作(の曲)はここまでということで…いや、自分で自分を誉めたいと思います…。俺、頑張ったよ!今年(笑)!…俺が愛と平和を語る資格なんてないのは知ってるよ。でも、何を歌えってことになると、昔はぶっ殺せ!とか歌ってたけどさ(笑)。まあ、きっかけは“So”という曲と“Death in the snowstorm”って曲をやったり、教会でやらせてもらったり。9.11のイベントで歌ってくれと言われたりとか。俺にそんな資格があんのかとも思ったし、でもせめてやりきろうと。で、やってよかったなと。それからぶっちゃけ、色んな人から違うんじゃねーの?とか言われたりもしたけど、やってよかったなと。…どう?」(拍手&声援)

PhotoPhoto


「ソロで初めて作った曲を」と、第2部の幕を開けるように「グレイトフルデイズ」へ。「拍手とかしていいんだよ。いいかげんさ、この曲とかやったら盛り上がってもいいんだよ(笑)!」曲を終え、そう言うと笑いと大歓声が起きました。そして、幻想的な「街の影と眩しい朝」、雄々しい歌い方が栄える「skech of pain」、女性視点の歌詞が新境地の「Real love」を歌い上げました。

「最近世の中、不況だと言っているけど、俺は生まれてからずっと不況でさ。やっと時代が俺に追いついてきたな(笑)。新曲やっちゃうよ」と、ブルージーな「The Taurus,,,」を披露。さらに手拍子を促し、「クリアーウォーターダークネス」へ。すると颯爽と歌う中、ギターの5弦が切れるアクシデント!しかしそのまま笑いながら歌い続ける。弦が一本切れようと、力強いカッティングは変わらない。ギターを交換し、「折れた翼」へ。この曲は高木フトシの曲の中でも1、2を争うくらいメロディアスで爽やかな曲だと思います。

そして一転し、ノイジーなギターサウンドで「ふたつの月へ」を奏で、再び絶叫を聴かせます。雄叫びはどんどんヒートアップし、「イエー!!!」と締めると、大きな拍手。そのまま「帰る場所」を淡々と、オーディエンスの目をしっかりと見ながら歌います。

「今回想いの詰まったシングル3枚作ったんだけど、俺の思っていることは昔から変わってなくて、笑ってたいじゃん?できれば世界で。四の五の言うのは散々書いたけど、地球と俺のコアを(自分の胸を指差しながら)全部そぎ落としたら残ったのは、もうめんどくせえ!この空をブチぬこう!問題はこの先だ!…って、結局叫んだんだけど(笑)。…まあ、うん…熱い曲を」。かすれた繊細な声と力強い声の抑揚が印象的な大作「Death in the snowstorm」へ突入。かきむしるようなストローク、大絶叫、訴えるような語り…その有無を言わせぬ展開は、大迫力でした。

PhotoPhoto


「さあ、はじめようか」との一言でこの曲を締めると、じっと聴いていたオーディエンスたちも、思わず大歓声!続く「EisWein song」では、さらに腹の底から声が出てくる強靭さを見せ、放心状態のように「Radio Star」へ。本当にアコギ一本なのかというくらい重厚なコードストロークです。そしてタバコを吸いながら、「シブい曲やっていい?コールアンドレスポンスがほしいな」と、“チャッチャッ”と手拍子をもらうと、「赤く濁る水」をジャジーにセクシーに歌い、「Satellite to tell」では、やわらかく低い歌声を聴かせます。さらにやさしい声で「空の糸」を歌い終えると、気付けば開始から2時間半が経過しています。

アコギ一本の弾き語りで、ここまで時間を忘れさせてくれるライブを演れる男は、そうはいないと思います。そしてラストソング「So」へと突入。この曲の「せめて歌うよ 愛を」という一節に、この男の、自分にできることはただそれだけという、根本的な想いが込められているような気がします。バックステージに退いた後も、鳴り止まない拍手…。しばらくするとタバコを吸いながら戻ってきて、「…なんにしろ世の中、戦争があろうがテロがあろうが、太陽はまた上がってくんじゃん。それについてどう向き合うかだけじゃね? 気合い入れてこいよー!」と、「SLIDE」を、少しディレイをかけた声で力強く歌い上げます。

「イエー!!サンキュー!!」と締めると、「フトシーー!!」と、大声援が起こりました。「…今日は本当にどうもありがと…。最後にった一つ…。俺の中で違うと思うのは、どうしても核兵器だけは違う気がして…。3部作では触れたくなかったんだけど、でも、長崎と広島で起こったことは事実だと思うんだ…。最後にそれについて書いた詩を朗読して歌います…」。アルバム「War Seat」の最後に収められた「君へ」を、右手を時には胸に当て、時には客席に向け、一つ一つの言葉を噛みしめるように語ります。「…ありがとう」。今まで何度となく言ってきたであろうその言葉を朗読後、今一度放ち、男はステージを去ります—。

PhotoPhoto


この男の魂は、想いは、きっとここにいた全ての人たちに伝わったことでしょう。この記事を読んでいるみなさまにも、是非体感してほしい本物の男の歌です。叫びを、声を、これからもどこかで鳴り響いているはずだから——。

【高木フトシ 公式サイト】
http://akuh.seesaa.net/

【インフォメーション】

gonvutライブ(高木フトシとゴンダタケシによるアコースティックユニット)
2009年12月31日(木)渋谷HOME
2009年12月31日(木)新宿Loft

【セットリスト】
01:CORE.〜THE END〜
02:CORE.
03:Perfect life
04:Underground
05:Story of Soul
06:Unbirthday
07:No angel’s here
08:グレイトフルデイズ
09:街の影と眩しい朝
10:skech of pain
11:Real love
12:The Taurus,,,
13:クリアウォーターダークネス
14:折れた翼
15:ふたつの月へ
16:帰る場所
17:Death in the snowstorm
18:EisWein song
19:Radio Star
20:赤く濁る水
21:Satellite to tell
22:空の糸
23:So
24:SLIDE(アンコール)
25:君へ(アンコール)