演奏

TEXT:桂伸也

ロックの偉大な歴史の中で、幅広い活動を続けているJohn Wetton(以下、John:Bass,Vocal)。元King CrimsonASIAと、プログレッシヴ・ロック界での活躍で多大な功績を残している彼だが、活動暦はプログレッシヴ・ロックに留まらず幅広いジャンルでの活躍を続け、その類まれな才能を発揮し続けている。昨年春、U.Kのヴォーカリストとして来日した彼だが、今回は同じく昨年発表されたソロアルバムのリリースに伴うツアーとして単独来日。常に新しい音を追求し続けるその姿勢が注目を浴び続けているJohn。彼のステージでの活躍ぶりを追った。
 
◆メンバーリスト
John Wetton(Bass,Vocal)
John Mitchell(Guitar)
Martin Orford(Keyboard)
Steve Alexander(Drums)

すっかり人で埋まった渋谷CLUB QUATTROのフロア。やはり往年の姿を追いたいと願う、年配のファンが多かったようにも見えた。それ故にロックという音楽の遍歴を改めて感じさせる。どちらかというと、「今日も暴れるぞ!」というくらいの気負いを見せるロック・ライブのイメージに反し、全体にリラックスしてライブを楽しみに待つ人々。
ゆったりとリラックスムードで始まった「Heart of Darkness」。特別ベースのプレイに、難しいテクニックを見せるわけでもないが、シンプルな単音のベースラインにも、コードとメロディのセンスを感じる。
 
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「Hello!コンバンワ!キミタチサイコウダヨ!!Welcome to Heaven!!」
彼の声に、大きな拍手が上がり、続いて手拍手より曲が始まる。そのはつらつとした声と、シンプルなベースラインが織り成すハーモニーの妙を感じる。特に激しいアクションもなく、直立不動で進んでいくライブは、とにかく聴こえてくるサウンドに魅力を感じる。綺麗なコーラスで始まるロックナンバーが続く。プログレッシヴ・ロックの遍歴を歩んできたJohnが紡ぎ上げる楽曲は一見、難解でありながら、実はキャッチーなイメージが前面にある。中でも最高のポイントは、大音量で映えるサビのメロディ。まさに、ライブを聴きに来ることで初めて感じられる彼の音楽的側面、最大の魅力といえるだろう。どんなに音質のいいオーディオ機器であろうと、この魅力を映し出すプレイ、サウンドは表現できないに違いない。そして、曲が終わるたびにエンディングをそろえようと、メンバーに指示をするジョン。その姿は、まるで壮大なオーケストラを率いる指揮者のようだ。
 
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六曲をプレイし終えると、Johnは楽器を置いた。エレクトリック・ギターを弾いていたJohn Mitchell(以下、JM:Guitar)が楽器をアコースティック・ギターに持ち替え、ビートの効いたバンドサウンドから、繊細で心地よいアコースティック・サウンドに転換したのだ。途中、今日の謝辞を告げながら、美しい音色とハーモニーを会場中に広げ、心地よい空間を演出する。Martin(Keyboard)が奏でる、民族楽器のケーナのような音色が、アンデス民謡っぽい雰囲気を醸し出し、またサウンドに彩を与えていく。時にギター、キーボードに同じメロディをユニゾンさせながら、全体に芯を感じさせるハーモニーの中で、大きな幅を与える。そして、温まってきたこのセクション三曲目「Real World」では、70年代ポップスのような爽やかさを醸し出す。薄さを感じる音圧の中で、手拍子が会場の温度を徐々に上げていく。手拍子がこだましていくようなフロア、そしてコーラスと更なる手拍子をあおるJohn
 
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そしてステージは後半へ。「Battle Lines」よりクライマックスに向けてのラストスパートを掛ける。コーラスでギターのJMと歌を交代、そのバックで、動きのあるベースラインを追うJohn。サビの伸びやかな声はさすがジョン。何か感情を揺り動かす魅力が発揮されるラストのサビで腕を上げると、「いいぞ!」とばかりにまた大きな歓声がステージを包んでいく。そして被災に対して贈ると語られた曲「After All」へ。ベースと共に歌っている姿には、単に歌、ベースという二つの演奏を、一人で行っているというだけでは済まされない驚異的なセンスを感じられる。それぞれのメロディは非常にシンプルだが、お互いがまるで干渉し合い、そのメロディに何倍もの歌心を構築していくようにも見える。それは単純なベース一音の白玉フレーズにも感じられるほどだ。
 
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更に劇的なドラムのフィルからへヴィなロックナンバー「Don’t Cry」へサビへのブリッジの部分、高らかなトーンを歌うジョンの笑顔が、ノッてきたことを示す。そして続くのはレイドバックした、スゥインギーな8ビートの曲「Don’t Wanna Lose You Now」。思わず飛び交う拍手、そしてラストは代表曲「STARLESS」へ。ギターソロからいろんな展開を見せるジョンの巧みなベース。その奇抜なリズムには、彼が本来持ち合わせた強烈な個性を感じる。不協和音を要所で入れるキーボード、一風変わったコード進行、ハーモニー。変拍子や複雑なキメを存分に入れ、聴き所たっぷり。最高の盛り上がり場所で、ライブのクライマックスを迎える。更に同調するJMの速弾きギターが冴える。まさに彼の真骨頂、プログレッシヴなロック・ワールドがそこに展開される。そして、終焉。「God Bless you!」心からの謝辞を込めた、Johnの言葉、惜しまれながらの退場。
 
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そしてアンコール。再び「ドモアリガトウ!」という彼の感謝の一言。キメのメロディにに合わせて拍を作る、プログレ特有の自由な発想が冴える「Heat of the Moment」へ。全身でそのリズムを受け止めたファン達は、最後まで全力で彼の世界観に浸り、彼の声一つ一つに歓声と拍手で答えた。
 

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◆TOKYO ONKYO ROCK SITE
http://ameblo.jp/tokyoonkyorock/
◆John Wetton 公式サイト
http://www.johnwetton.com/
◆セットリスト:
M01.Heart of Darkness
M02.Only Time Will Tell
M03.Where Do We Go From Here?
M04.Cold Is The Night
M05.Another Twist of the Knife
M06.Space and Time
M07.Arkangel (John:Vocal/JM:Acoustic Guitar,Chorus/Martin:Keyboard,Chorus)
Steffi’s Ring (John:Acoustic Guitar,Vocal/JM:Acoustic Guitar,Chorus/Martin:Keyboard,Chorus/Steve:Drums)
Real World (John vo,acg/JM acg/:Keyboard,Chorus)
M08.Battle Lines
M09.After All
M10.Don’t Cry
M11.Don’t Wanna Lose You Now (JM acg)
M12.Starless
(encore)
M13.Heat of the Moment

 
往年の「プログレッシヴな」ロックスタイルという、一件矛盾した表現が良く似合う彼のサウンド。その真意は彼のサウンドに触れることで多くのロック・ファンにも理解されるに違いない。伸びやかなヴォイスとベースラインの倍音が絡み、絶妙なメロディを繰り出す様は、今回のステージでも遺憾なく発揮され、観衆を魅了した。常に第一線で新しい音楽への挑戦を続けるJohn Wetton。新しいサウンドを求めるロックファンとして、これからも人々は、その彼の軌跡を追い続けていくことだろう。

東京音協主催 今後のライブ予定
 
1)Michael Schenker 『TEMPLE OF ROCK JAPAN TOUR 2012』
日付・曜日:2012年3月29日(木)・30日(金) 19:00開演
会場:中野サンプラザ
席種料金:全席指定-8000円
[来日予定メンバー]
Michael Schenker : Lead Guitar (MSG, ex Scorpions/UFO)
Herman Rarebell : Drums (ex Scorpions)
Michael Voss : Vocal
Elliott Rubinson : Bass (Owner of Dean Guitar)
Wayne Findlay : Keyboards/Guitars (MSG)
 
2)『ATTACK OF THE DOUBLE AXEMEN Vol.2』
日付・曜日:2012年4月21日(土) 18:00開演
会場:SHIBUYA BOXX
席種料金:立見-4500円
[出演バンド]
Concerto Moon,  Kelly SIMONZ’s BAD TRIBE
詳細内容
※入場時ドリンク代別途必要。
※未就学児入場不可。
 
3)ROYAL HUNT 『20th ANNIVERSARY JAPAN TOUR 2012』
日付・曜日:2012年5月16日(水) 19:00開演
会場:Shibuya O-EAST
席種料金:立見-7000円
詳細内容:
※入場時ドリンク代別途必要。
 
4)RAGE 『JAPAN TOUR 2012』
日付・曜日:2012年5月24日(木) 19:00開演
会場:Shibuya O-EAST
席種料金:立見-7000円
[メンバー]
Peter “Peavy” Wagner(Vo,B)
Victor Smolski(G)
Andre Hilgers(Ds)
詳細内容:
※入場時ドリンク代別途必要。
※未就学児入場不可。
 
お問合せ:t-kaiin@t-onkyo.co.jp