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【NEWS】中国の鬼才・ロウ監督『二重生活』トークイベントに曽我部恵一も参戦

2015年01月28日

曽我部恵一、ロウ・イエ監督『二重生活』トークイベントに登場
劇中歌のアンダーグラウンドミュージックがお気に入り?

sokabe

1月24日(土)より公開となった映画『二重生活』のロウ・イエ監督が来日し、26日に東京・渋谷のアップリンクでトークイベントを行った。トークイベントにはロウ・イエ監督作品の大ファンを公言する曽我部恵一も出席。「何か近いものを感じる」というロウ・イエ監督と、時折ユーモアを交えながら、愛について、音楽について、映画について、さらには現代中国の実態について、熱く語り合った。

本作は、天安門事件を扱った『天安門、恋人たち』で映画の製作・上映禁止処分を受けたロウ・イエ監督が、禁止令解除後、5年ぶりに中国で製作したメロドラマ・ミステリー。経済発展が著しい武漢市を舞台に、事故死した女子大生、彼女と最後に接触した男、その妻と愛人が織り成す複雑な人間模様をスキャンダラスに描く。

main曽我部恵一といえば、自身のアルバム『PINK』に収録されている「春の嵐」はロウ・イエ監督の2010年の作品『スプリング・フィーバー』に感銘を受けて作ったというほど、筋金入りのファン。「今回の映画のエンドロールに流れるあの曲、いいですよね」と、ミュージシャンらしい感想を述べると、ロウ・イエ監督は「中国のインディーズバンド『沼泽乐队(Zhaoze/The Swamp)』の「惊惶」(fear)という曲です。私の映画と彼らの音楽は『アンダーグラウンド』という点で共鳴し合っている」と返した。

肝心の映画について曽我部恵一は、「ロウ監督の作品は、毎回、深いところをグッとつかまされる。本作に関しては、恋愛や人生について、誰が幸せなのか、誰が良くて、誰が悪いのか、友人と議論になりましたね」と、一筋縄ではいかない内容に興奮を覚えた様子。「この主人公は重婚に近い感じですが、決してダメなこととして描かれていない。むしろしょうがないことのように描かれている」と指摘すると、ロウ・イエ監督は、「二重生活まで行かなくても、愛人や一夜だけの関係など、中国では普通に起きていること」と説明した。

さらに、映画に出てくる遊び相手の女子大生シャオミンについて、「彼女のような子たちを中国では『緑茶女』って言うんですよ」という発言が飛び出すと、会場からは笑い声が。「なんで『緑茶女』って言うんですか?」と曽我部恵一が食いつくと、「見た目は清楚で飾り気がないが、裏では複数の男たちを喜ばせているから。一方、ヨンチャオのように、妻や愛人の力を利用して、自分は悠々自適に暮らしている男は『フェニックス男』と呼ばれています」と、中国の最近の流行を教えた。

main2ロウ・イエ監督作品の最も特徴的なところは、天安門事件やセクシャルマイノリティ、本作のような現代中国人のモラルなど、社会的問題と愛憎劇が一体となって描かれているところにあると言われる。曽我部恵一もそこが一番気になるようだが、ロウ・イエ監督は「社会的問題とラブストーリーは一つのこと、相互に反映し合っている。時代が違えば、愛のカタチも違ってくる。本作で言えば、ヨンチャオが本妻に、『君を愛している』と言うが、本心ではない。愛しているという言葉が変質してしまっているんですね、つまり、『愛』にも社会性があるということ」と、持論を展開。

すると曽我部恵一は、「最近、中国の要人たちが若い女の子を囲っているとか、ニュースなどでよく見かけますが、政治家と愛人の話がロウ監督の手にかかると、どうなるんでしょう?」と問いかけると、ロウ・イエ監督は苦笑いしながら「政治家の性愛なんて興味ないですね。第一、面白くないでしょう?」と返答。会場は爆笑に包まれた。

映画『二重生活』は新宿K’s cinema、渋谷アップリンクほかで公開中。


◆映画『二重生活』 作品紹介
とある事件。被害者の女性と数時間前まで一緒にいた男は、二つの家庭を持っていた。
中国の鬼才ロウ・イエによる、予測不能の<メロドラマ・ミステリー>

flyer_omote優しい夫と可愛い娘。夫婦で共同経営する会社も好調で、なにも不自由のない満ち足りた生活を送る女ルージエ。愛人として息子と慎ましく生活しながらも、いつかは本妻に、と願う女サンチー。流されるまま二人の女性とそれぞれの家庭を作り、二つの家庭で生活する男ヨンチャオ。いびつながらも平穏に見えたそれぞれの日常は、ほんの少しの出来事でいとも簡単に崩壊し、その事件は起きた。3人の男女、事件を追う刑事、そして死んだ女。それぞれの思わくと事情が何層にも重なりあい、物語はスリリングに進んで行く。

監督・脚本:ロウ・イエ
脚本:メイ・フォン、ユ・ファン
撮影:ツォン・ジエン
編集:シモン・ジャケ
音楽:ペイマン・ヤズダニアン
出演:ハオ・レイ、チン・ハオ、チー・シー、ズー・フォン、ジョウ・イエワン、チャン・ファンユアン、チュー・イン
配給・宣伝:アップリンク
(2012年/中国、フランス/98分/1:1.85/DCP)

新宿K’s cinema、渋谷アップリンクほか全国順次公開中

 
◆ロウ・イエ監督 プロフィール
1965年劇団員の両親のもと、上海に生まれる。1985年北京電影学院映画学科監督科に入学。
『ふたりの人魚』(00)は中国国内で上映を禁止されながらも、ロッテルダム映画祭、TOKYO FILMeX2000でグランプリを獲得。1989年の天安門事件にまつわる出来事を扱った『天安門、恋人たち』(06)は、2006年カンヌ国際映画祭で上映された結果、5年間の映画製作・上映禁止処分となる。禁止処分の最中に、中国では未だタブー視されている同性愛を描いた『スプリング・フィーバー』が、第62回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞。パリを舞台に、北京からやってきた教師と、タハール・ラヒム演じる建設工の恋愛を描いた『パリ、ただよう花』は第68回ヴェネツィア国際映画祭のヴェニス・デイズ、および第36回トロント国際映画祭ヴァンガード部門に正式出品された。
2011年に電影局の禁令が解け、中国本土に戻って撮影された本作『二重生活』は、第65回カンヌ国際映画祭ある視点部門に正式招待。ほか、第7回アジア映画大賞(アジアン・フィルム・アワード)で最優秀作品賞ほか3部門を受賞。中国現代文学の代表的作家でありロウ・イエと親しい友人でもあるピー・フェイウー(畢飛宇)の小説を原作にした『ブラインド・マッサージ(英題:Blind Massage/原題:推拿)』は第64回ベルリン国際映画祭銀熊賞(芸術貢献賞)を受賞。日本では2014年9月にアジアフォーカス・福岡国際映画祭にて先行上映された。

◆映画『二重生活』 公式サイト
http://www.uplink.co.jp/nijyuu/

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