演奏

超・ライブへの道 Vol.3

TEXT:堺 琢哉 PHOTO:株本和美

HipHopミュージック・・・一見Rockミュージックと離れて思われがちだが、かつてRunDMCAerosmithの「Walk This Way」をフィーチャーリングして新しい楽曲が生まれたように、RockやJazzなど既存の曲をサンプリングしたり、オリジナルトラックのビートに言葉をのせて表現することで、どのようにも変化できるスタイルだ。

時には即興で言葉巧みに韻を踏みリズムにのせるフリースタイルは、ライブの醍醐味の一つであり圧巻である。RockもHipHopも“スピリットオブフリーダム”自由を謳歌する手段にかわりない。そんな表現の垣根を超えて楽しめる「超・ライブへの道」は実にバラエティにとんだスタイルの海だ。

2010年3月21日、SHIBUYA PLUGにて「超・ライブへの道 Vol.3」は開催された。青山テルマ初音清水翔太といった共演で、いまやヒップホップ界の時の人であるKEN THE 390が主催するライブイベント。このイベント初回から参加するRomancrewが、ラップにポエトリーを織り交ぜたバンド、SUIKAとともに出演。そして、The Grasshopper SetBlack Mont Blancともに初参加。開場待ちのファンが入口に集まりだし、出演者達の人気の高さを感じた。

オールスタンディングのフロア内には、KEN THE 390のニューアルバム『NEW ORDER』収録曲が流れ、本人自らMC&DJをこなしていた。ドリンクを片手に彼の説明に耳を傾ける観客。穏やかな談笑が辺りを包み、開演を心待ちにしているようだった。いつのまにかフロアには、溢れんばかりの人数となり体感温度が急に上昇してきた。いよいよだ。高鳴る鼓動を抑えつつ、手に持つペンを握り締めた。

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照明が落ちDJ TOKNOWがアカペラの女性コーラスを流れるなか、光に照らし出された先にはRomancrew With SUIKA BAND。中央の3人のMC、エムラスタALI-KICK将絢が三者三様のジャケットに身を包み、3人が人差指を掲げると、一杯になった会場内も前から後ろまで、いっせいに人差し指を掲げ歓声を上げた。キーボード(タケウチカズタケ)、パーカッション(高橋結子)、ベース(石村順)とSUIKA
BAND
の面々が並び迫力のあるステージ。ソウルフルな楽曲やクラブ色のある楽曲、キーボードのフレーズが映える楽曲で構成され、最初とは思えないほどの盛り上がりをみせた。バンドならではの各楽器のソロも入り、いっそう輝きがましているようだ。なにより、ステージ上のメンバー達が顔を見合わせながら、曲を奏でている様子が、実に楽しそうだとその場にいた皆が感じたのではないだろうか。その楽しさが伝わったかのような場内。最後の曲「虹の交差点」で終わりに近づくと、ひときわ大きな拍手や歓声の中、ひとりずつメンバー紹介がなされ、照明が落ちてもなお拍手が止まなかった。

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【Romancrew 公式サイト】

http://romancrew.jugem.jp/

【セットリスト】

M01 First Song
M02 Crossroad
M03 異国の匂いのする女
M04 Dream
M05 Circus
M06 RJQ〜Fly High
M07 Galactica
M08 F.R.E.E.D.O.M.
M10 Love Comes&Goes
M11 虹の交差点

【インフォメーション】
7月にRomancrew With SUIKA BAND でライブ予定(詳細はブログにて)
ポッドキャスト「エムラスタ&将絢の西小山SHOW店街」からラジオCDを発売(詳細はブログにて)



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暗がりのステージ。DJ H!ROKiがブースに入り、「Black Mont Blanc in the house !! 」というコールのなか、照明が入り3人のMC、TORY the 3rd死男家康(三人で闘将宮というグループ)登場。90年代のNYヒップホップシーンを思わせる、体に響く重低音にきれいなメロディーがのるといった曲の数々で構成されたライブ。1曲目「東京上京Story」。2曲目「逆流する鮭」のイントロが流れるとともにKEN THE 390TARO SOULとの「超・ラップ への道」でもお馴染みのDEJIが登場。3曲目「Black Light」でTany the Valleyが登場し、6人になってからの4曲目「Black Mont Blanc」。以降、5人のMCがそれぞれ特徴のある声とリズムでラップをしていく様には驚かされた。なにより、5MCによるフックの合唱には圧巻。観客もその迫力に圧倒されたかのように歓声をあげ、手を上げて答えていた。このステージで怒涛のマイクリレーをみせた彼ら。大きな拍手とともにライブを終えた。

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【Black Mont Blanc 公式サイト】

http://ameblo.jp/33records/

【セットリスト】

M01 東京上京Story
M02 逆流する鮭
M03 Black Light
M04 Black Mont Blanc
M05 DownTownBoogie
M06 My Way
M07 仏舎利塔で一服.
M08 Ge Da Passports
M09 33Rec On The Mic

【インフォメーション】
2010.5.30(日)「げんこつ風」@渋谷HAZARD
[発売]BLACK MONT BLANC(ブラックモンブラン)
1stアルバム「SULLEN FACES」(詳細はwebにて)



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照明が落ちた中、ファンファーレのような曲が鳴り登場した本日3組目のThe Grasshopper Set。中央にはバケラッタSHINOの2MCそしてDJブースには、DJイーグル藤田。アグレッシブでファンキーな曲の数々で構成されたライブ。パワフルな声から発せられる「 騒げー ! 」というコールに観客たちも歓声でこたえ、その流れからテンポ良く2曲目の「SOULMAN STANDING」に入る。その後の世間話のようなリリックやMCが向き合いながら定番ブレイクビーツ「JUST BEGAN」で掛け合うなど、飽きさせない仕掛けも満載。曲間のトークで歯の浮きそうなかっこいい言葉を連発するバケラッタに、冷静にツッコミをいれていくSHINO、二人のやりとりに会場からは笑い声がこぼれていた。サビ部分のわかりやすい言葉選びとパワフルな声が印象的で場内もそれにあわせて口ずさみ、ヒートアップしていった。ラスト曲「A.B.C.」。「A.B.C」のコール&レスポンスで盛り上がりも最高潮となった。暖かな拍手に見送られステージを後にした。

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【The Grasshopper Set 公式サイト】
http://ameblo.jp/thegrasshopperset/

【セットリスト】

M01 イントロ
M02 SOULMAN STNDING
M03 Radio Station Attack
M04 just began
M05 人生の主役 remix
M06 レコブクロ
M07 Navigation
M08 A.B.C.

【インフォメーション】
The Grasshopper Set ( グラスホッパーセット )
1st album「跳躍」絶賛発売中!



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ただでさえ溢れそうなフロア内。そんな中さらに人が入り満員電車さながらだ。もうすぐ、本日のメインアクトであり、オーガナイザーであり、MC & DJをこなすKEN THE 390の登場が近づく。待ちわびている観客をなだめるかのようにDJ 大自然の選曲が流れる。ステージの照明が明るくなり、音が少し小さくなったかとおもうと、じつにリラックスした様子でステージにKEN THE 390が登場し、「調子はどうですか?」と話しかけるようにいうと、ものすごい歓声で答えるフロアに人気の高さを感じた。1曲目「THE DOOR」、“…GO BOYS go go GO LADYS…”軽快なフックでますます熱気を帯びる会場内。曲に対する思いを交えながら数曲進み、4曲目「続・超・ラップへの道」でTARO SOULDEJIが登場。3人のマイクリレー&パフォーマンスに会場内は、跳ねたり両手を挙げたりと、ステージが見え辛くなってしまうほどの盛り上がりをみせた。

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DJ Watarai提供曲で、東京は甘くないってことを教えてくれているようだと曲の合間に紹介された4曲目の「東京 東京」。7曲目の「ONCE AGAIN」では、DARTHREIDER(ダースレイダー)が登場し、彼独特の声でなされるラップが印象に残った。ヒューマンビートボックスのAFRA(アフラ)がビートを刻みながら現れ、KEN THE 390はそのビートにラップをのせた。B-BOY PARK等のMCバトルで数々の戦歴を収め、フリースタイルの貴公子と異名を持つ彼の真骨頂を垣間みられる9曲目の「AFRAと390」。どよめきの歓声が場内を包む。スローテンポの曲へと移行していき、「…自分だけの道を探そう いつか自分だけの花を咲かそう…」と唄われる12曲目の「HEY BOY」。ピアノのフレーズが暖かさを感じさせる13曲目の「ONE DAY」で幕を閉じたのだが、会場からはアンコールが湧き、ラストソング「ONESTORY」のリミックスが披露され、大きな拍手と歓声の中、フィナーレを迎えることとなった。

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【KEN THE 390 公式サイト】
http://www.kenthe390.com/

【セットリスト】

M01 THE DOOR
M02 IM BACK
M03 LESSON
M04 続・超・ラップへの道(ft.TAROSOUL DEJI)
M05 東京 東京
M06 CHANGE
M07 ONCE AGAIN(ft.darthreider)
M08 Stay
M09 AFRAと390
M10 DUCK ROCK FEVER 2010
M11 FANTASTIC WORLD
M12 HEY BOY
M13 ONE DAY
アンコール
M14 ONESTORY REMIX

【インフォメーション】
2010.4.07 Major 1st Album[NEW ORDER]が発売!



まわりを見渡すと充実感に満たされた表情が浮かぶ観客たち。そんな彼らに揉まれながら会場を後にするなか、ライブというのは気持ちを高揚させてくれるものだとあらためて感じさせられた。ジャンルを問わず、この高揚感は現場でないと味わえないことは言わなくてもいいだろう。身体が軽くなったような気がして、スキップ交じりに歩いた瞬間を人にみられなかったことを祈る。

なお、今回のイベントでは“Ustream”を導入し、インターネットを介してライブ中継を世界中に配信するといった試みを行なっていた。技術の発達とともに、時の流れの速さを痛感した。今まで、録音や撮影の禁止・許可などは聞いたことがあるが、Ustreamの可否などは聞いたことがない。古い概念が崩され、逆にオーディエンス側が配信する形があるかもしれない。新しい時代が確実に来ることを予感した夜だった。