演奏

ANTHEM 25th Anniversary『PROLOGUE 1』『PROLOGUE 2』

TEXT:桜坂秋太郎

ANTHEM、1980年代初頭から活躍しているベテランヘヴィメタルバンド。ANTHEMの歴史はすでに第8期だが、いつどのようなメンバー構成でも、一貫してANTHEMであり続けてくれる素晴らしきバンドだ。まるで「アンセム」という一つのジャンルのようでもある。今年のANTHEMは25周年の記念イヤーということで、プロローグと題したライヴを3本やった後、記念ツアーがスタートする。まずは2DAYSで行われる『プロローグ1』『プロローグ2』の両日に足を運ぶことにした。
 
ヘヴィメタルのライヴに2夜連続で行くのは久しぶりだ。駐車場に車を停め、会場の渋谷BOXXへ。すでに開演時間が迫っているため、会場の外にはオーディエンスの姿はない。会場内に入るとすでに客席は満員状態。さすがソールドアウト、入口の扉付近まで人であふれている。
 
関係者ブースまで人をかき分けて進んでいると、オーディエンスは優しく道を作ってくれる。しばらくして昔聴いたようなSEが流れる。懐かしさを感じていると、歓声の中に女性の声がかなり混じっていることに気がついた。見渡すと思いのほか女性オーディエンスの姿があり、背伸びをして大きく手を振っている。目の錯覚かもしれないが、体の大きい男性が多いような気がする。背が小さい人にはどうやっても不利なのがスタンディングの宿命。それでも女性オーディエンスの多くは「ANTHEMよ!早く来い!準備はできてるぞ!」と言わんばかりに大きなアクションと熱い声援を続けている。
 
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メンバーが登場し「Venom Strike」でライヴスタート、「Renegade」「Mr. Genius」「Do You Understand」とプレイ。このドラムのパワフルさはいったい何だ?圧巻の一言。ベースも良く聴こえて、細かいフレーズまでわかるのが気持ちよい。さかのぼること18年前の1992年2月25日、その日はANTHEM清水昭男(Guitar)が加入した最初のライヴということで、今日のプロローグ1の第一部コンセプトは1992年ということらしい。当時のフロントマンは森川之雄(元Vocal)が務めていたが、坂本英三(Vocal)はそれを意識して、森川之雄のイメージである革ジャンと革グローブのハードな印象の衣装を着ているようだ。
 
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「Shadow Walk」「Voice Of Thunderstorm」「Head Strong」と続きラストナンバーは「Wild Anthem」。オーディエンスはシンガロング(※サビ等をアーティストと共に歌う行為)はもちろん、強烈なヘッドバンギンングでANTHEMのプレイを全身で受け止めている。本間大嗣(Drums)の正確なリズムとパワフルさは、FLATBACKERE・Z・O)時代からずば抜けていた才能だが、歳を重ねてもまったく色あせず衰えない。それに絡みつく柴田直人(Bass)のフレーズと音は最高だ。ライヴでのリズム隊の安定感は、オーディエンスの腰に直結する大きなところ。
 
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第二部は4thアルバム『GYPSY WAYS』の完全再現だ。15分のインターバルの後、メンバーが衣装を変えて登場。アルバム通りに「Gypsy Ways」から「Night Stalker」までを再現。この『GYPSY WAYS』は、森川之雄が歌っているアルバムだが、坂本英三は自分の歌のように消化している。あっと言う間にアンコール。アンコールはANTHEMのメンバーの遊び心、パートチェンジをしてプレイする“CATS IN 靴下”が登場。本間大嗣が歌い、坂本英三がギター。清水昭男がベースでドラムは柴田直人。うまい!その辺のライヴハウスに出ているバンドよりはるかにうまい。パートチェンジしてもこれだけの演奏力というのは、メンバーの力量のすごさを肌で感じる。通常の編成に戻って「Black Empire」「Heat Of The Night」をプレイして「プロローグ1」は幕を下ろした。
 


 
翌日、夕方の打ち合わせが延びて、駐車場へ車を停めたのは開演時間ぎりぎり。ダッシュで会場へ入ると「Bound To Break」のリフ!会場は一気にヒートアップしたようで熱気が凄い。今夜もソールドアウトなので会場は満員御礼状態。昨日と同じく関係者ブースまでの道を作ってくれる優しいオーディエンス。ANTHEMが素晴らしいだけでなく、ファンも実に素晴らしい。見渡すと昨夜と同じくらい女性がいて、熱い声援を送っている。
 
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これぞメタル!というライヴは、シンガロングや拳をあげるところで一体感がある。ANTHEMのライヴはまさにオーディエンスが完全に一体化する。このシンクロは観ていても本当に気持ちよい。今夜は2001年がコンセプトということらしい。2001年といえばANTHEMが再始動して、私の好きな『SEVEN HILLS』のアルバムがリリースされた年だ。セットリスト上も『SEVEN HILLS』が中心になっている。「THE MAN WITH NO NAME」後の清水昭男のギターソロは鳥肌物。私は日本で過小評価されているギタリストの筆頭だと思っている。これだけのギタリストはなかなか居ない。もっともっと清水昭男は大きな評価を受けて欲しい。
 
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「XTC」の後は、安定感とパワー感は日本屈指と言っても過言ではない驚異的なドラマー本間大嗣のドラムソロ。それにしてもANTHEMのナンバーというのは、どれも独特の様式を持っていて飽きがこない。メインソングライターの柴田直人の才能に感服。昨夜同様に15分のインターバルを置いて、第二部は5thアルバム『HUNTING TIME』の完全再現。アルバム制作時のメンバーは柴田直人のみだが、現メンバーの再現は思った以上に素晴らしい。「THE JUGGLER」から「BOTTLE BOTTOM」までを熱く一気にプレイ。オーディエンスの拳は、まるで拳で歌うかのように、坂本英三のメロディに重ねて振り上げられる。
 
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2DAYSの後半戦なのに坂本英三の歌もよい。歌だけでなくMCも一級品だ。2DAYSで40曲を歌うということだが、ANTHEMの40曲は並大抵のことではないのは言うまでもない。恐ろしいロックヴォーカリストだ。アンコールでは昨夜に続いてパートチェンジの“CATS IN 靴下”が登場。本間大嗣が歌うのは同じだが、今夜は柴田直人がギターでベースが坂本英三、ドラムは清水昭男だ。これまたうまい。昨夜とは違うパートチェンジなのにこれまたハイレベル。ANTHEM、どこまですごいミュージシャンぞろいなのだろうか。爪の垢を煎じて、プロ志向の若手メタルバンドに飲ませたい。
 
『プロローグ1』『プロローグ2』、ANTHEMというバンドをしっかり堪能できる内容にオーディエンスも大満足だったと思う。坂本英三のMCで、渋谷BOXXに両日来たというオーディエンスが手を挙げたが、7割程度は手を挙げていた。2DAYS通ったファンの首や腕の筋肉痛が心配になるほど、熱いプロローグだった。25周年を迎えて、アルバムを13枚もリリースしているANTHEMは、各メンバーのスキルが高いだけでなく、リーダー柴田直人の情熱が形になって表れている。終演後、『プロローグ3』のチケットを求めるファンの列が長く続いていた。『プロローグ3』は趣向を変えて、過去にANTHEMに在籍したメンバー達のバンドとガチンコ勝負とか。これは絶対に見逃せない!
 

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【ANTHEM 公式サイト】
http://www.jvcmusic.co.jp/anthem/
【25tn Anniversaryスペシャルサイト】
http://anthem25.metalalerts.com/

25tn Anniversary PROLOGUE 3
2010年4月10日(土)【川 崎】CLUB CITTA’
出演
ANTHEM
柴田直人(Bass)/坂本英三(Vocal)/清水昭男(Guitar)/本間大嗣(Drums)
TYO
大内”MAD”貴雅(Drums)/広瀬”HEESEY”洋一(Bass)/前田”TONY”敏仁(Vocal)/岡田”OKAHIRO”弘(Guitar)
THE POWER NUDE
森川之雄(Vocal & Guitar)/ZIN(Guitar)/Shoyo(Bass)/沢木 優(Drums)
DEADCLAW
HIROYA FUKUDA(Guitar)/RYOTA ITO(Guitar)/SEIICHI UOZUMI(Vocal)/KUMA(Bass)/HIROSHI SAKAKIMA(Drums)

ANTHEM 25tn Anniversary Tour
2010年7月10日(土)【仙 台】MACANA
2010年7月11日(日)【札 幌】cube garden
2010年7月16日(金)【福 岡】DRUM Be-1
2010年7月17日(土)【大 阪】BIG CAT
2010年7月18日(日)【名古屋】ElectricLadyLand
2010年7月24日(土)【川 崎】CLUB CITTA’



■25tn Anniversary PROLOGUE 1
2010年2月25日(木)セットリスト

●第一部
M01. Venom Strike
M02. Renegade
M03. Mr. Genius
M04. Do You Understand
M05. Shadow Walk
M06. Voice Of Thunderstorm
M07. Head Strong
M08. Wild Anthem
●第二部
【4thアルバム「GYPSY WAYS」完全再現】
M01. Gypsy Ways (Win, Lose Or Draw)
M02. Love In Vain
M03. Bad Habits Die Hard
M04. Legal Killing
M05. Cryin’ Heat
M06. Silent Child
M07. Midnight Sun
M08. Shout It Out!
M09. Final Risk
M10. Night Stalker
●encore1
M01. Demons’Ride(※CATS IN 靴下)
M02. Black Empire
●encore2
M01. Heat Of The Night

■25tn Anniversary PROLOGUE 2
2010年2月26日(金)セットリスト

●第一部
M01. BOUND TO BREAK
M02. NIGHT AFTER NIGHT
M03. RAGING TWISTER
M04. THE MAN WITH NO NAME
  〜 Guitar Solo 〜
M05. XTC
  〜 Drums Solo 〜
M06. GRIEVE OF HEART
M07. RUNNING BLOOD
M08. WARNING ACTION!
●第二部
【5thアルバム「HUNTING TIME」完全再現】
M01. THE JUGGLER
M02. HUNTING TIME
M03. EVIL TOUCH
M04. TEARS FOR THE LOVERS
M05. SLEEPLESS NIGHT
M06. JAIL BREAK
M07. LET YOUR HEART BEAT
M08. BOTTLE BOTTOM
●encore1
M01. IGNITE(※CATS IN 靴下)
M02. IMMORTAL BIND
●encore2
M01. HEAT OF THE NIGHT