演奏

NEXUS RESPECTABLE 80's ~渋公リターンズ

TEXT:鈴木亮介

「いい大人の…」というフレーズのCMが最近流れている。「いい大人がそんな幼稚なことを…」「いい大人のくせにそんなこともできないのか…」平生は否定的な意味で使うこの言葉を敢えて開き直ったように使ったそのCMは、「大人」も案外「大人」じゃないんだということを気づかせてくれる。
 
11月21日、日曜の渋谷。バンドブーム、ホコ天、イカ天…80年代の音楽シーンを彩ったオールスターによるライブイベント「NEXUS RESPECTABLE 80’s ~渋公リターンズ」が開かれた。今年6月以来2回目となる開催で、ステージは80年代邦楽の聖地・渋公。今はネーミングライツで渋谷C.C Lemonホールと呼ばれているが、今宵に限っては渋谷公会堂という名前以外は認められないだろう。
 
出演者と演奏曲目は事前に発表されており、その中にはBEEAST読者にはおなじみの森重樹一森若香織浜崎貴司MAGUMI杉本恭一宮田和弥森純太水戸華之介…あまりにも豪華すぎて書ききれないほど!!しかも、ほとんどのバンドがデビュー曲や代表曲を演奏するという、夢のような企画だ。いったいどのようなステージが展開されるのか。

プロデューサー・スマイリー原島コメント
6月に大反響を巻き起こしたネクサスバトル80sライブショウがふたたび!バンドブーム、ホコ天、イカ天、インディーズドリーム………80年代に生まれ出たキラ星のごときバンドやアーティストが一同に集う、ドリームライブショウ“リスペクタブル80s”。
今回は元祖日本のロックの聖地、「渋公」こと渋谷公会堂に凱旋!?今なおその輝きを放ち続けるロックアイコン達が80年代を彩ったあの名曲この名曲たちを歌い繋ぎ、まるであの80年代後期から90年代初期の夢のようなロックファンタジーを繰り広げる一大ロックエンターテイメント。
今なお色褪せない時代を彩った名曲と歌声は、オーディエンスの持つ各々の時代のフレームを呼び覚まし、今を生きるための勇気と力を与えてくれるでしょう。前回も大好評だったロックスターに加えて、新たな参加アーティストも進行中。まさに“ロックの現在、過去、未来が地続きであることをまざまざと感じさせる、最高のロックストーリーを体感してください!そして時代を超えてますます輝きを放つ時代の音楽の真実を思いっきり味わってください。

午後4時、渋谷。日曜ということもありPARCOからNHKへの坂は相変わらずの人ごみだ。顔を上気させながら渋公に到着すると、既に多くの人が開場を待ち望んでいる。見れば、30~40代が多い。「いい大人」が、いい表情で、談笑したむろしている。
 
会場に入ろうとしてまず目に飛び込んできたのは、お宝表紙の数々だ。今日の出演者たちが表紙を飾った音楽雑誌の表紙がロビーに飾ってあるのだ。入口から80年代にタイムスリップしてもらおうという粋な計らいだ。iPadもケータイもこの瞬間は忘却して、渋公のホールに吸い込まれていく人々。
 
午後5時。突如暗転したかと思うと、大音量で「ワルキューレの騎行」がかかり、本日のMC2人がド派手な入場。ちわきまゆみは黒のドレスに身を包み、対照的にスマイリー原島は前身真っ白なスーツでコーディネート。「ようこそ、”元”渋公へ!」の掛け声で、のっけから場内は笑いと懐古の渦に包まれる。
 
冒頭、今日のライブイベントの趣旨が説明され、続いてバックバンドを務める玉城宏志(Guitar)、TOKIE(Bass)、小田原豊(Drums)、Dr.kyOn(Keyboard)が入場。いよいよショーの開演だ!
 
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トップバッターを務めたのはPEARLのボーカリスト、田村“SHO-TA”直美!とにかく元気!「今日出てる人たちの曲はほとんど歌える!」と、誰よりも自分自身がこのライブを楽しんでいる様子。「Cool Down―特別な愛の歌―」「永遠の一秒」の2曲を披露。

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2番手はGENより源学(Vocal)とSHIGE(Guitar)が登場!源学は保育園の園長を務めながら地元・金沢で精力的に音楽活動中。渋公は22年ぶりで、「デビュー前に一度やって失敗しているのでリベンジを」と。「2人のセレナーデ」「バラ色の人生」の2曲を披露。

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3番目の登場はマルコシアス・バンプアキマツネオ(Vocal)!楽屋で森若香織に「その髪の毛、ズラ?」と疑われたというエピソードを披露(正真正銘、地毛です)。「オレンジ色の月」「バラが好き」の2曲を披露し、会場を一気に妖艶な雰囲気に包みこむ。

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アキマツネオがそのままギターで参加し、かつてUP-BEATとして組んでいた広石武彦(Vocal)と水江慎一郎(Bass)が登場!解散以来という渋公のステージだけに、思い入れの強い様子がMCの端々から伝わる。「ONCE AGAIN」「BLIND AGE」の2曲を披露。

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続いて、DER ZIBETよりHIKARU(Guitar)、そして赤いマントのISSAY(Vocal)が登場すると会場からは一挙に黄色い歓声が上がる!「ONLY ”YOU”,ONLY “LOVE”」を歌い終えると、ステージにはMCのちわきまゆみが登場。「Baby I want you」をともに熱唱。

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前半のトリを飾るのはZIGGYのボーカリスト、森重樹一!「一番好きな会場」という渋公の思い出を語りつつ、「酒飲んでケンカしたり色々やったけど、そうしたものは途中で全部落としてきて、音楽だけが残った。歌が大好きだから」と熱いMCで観客を魅了。「みんなが一番知っている曲を」と、「I’M GETTING’BLUE」「GLORIA」の2曲を披露。

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前半6組がまさに怒涛という言葉のように一挙に押し寄せ、あっという間に2時間が経過。15分の休憩を挟み、ステージ再開!MCのスマイリー原島はNEXUSロゴ入りのヘルメットをかぶって登場。

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後半1組目はKUSU KUSUのボーカリスト、川上次郎がド派手なインディアンスタイルで登場!地中海岸の如き陽気な「オレンヂバナナ」「世界が一番幸せな日」の2曲で会場を一気にヒートアップさせる。MC陣もステージに出て一緒にステップを踏む。

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2組目はライク・ア・バージン風の80’Sファッションで可愛らしく登場の森若香織!「古い曲だけど、古いままではなくやる度にリニューアルされていく!」と興奮気味に話し、ステージを縦横に動き回って「スペシャル・ボーイフレンド」「ざまあカンカン娘」「あいにきてI・NEED・YOU!」の3曲を熱唱。

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3組目はFLYING KIDSのボーカリスト、浜崎貴司!陽気な前2組とは打って変わってムーディーな雰囲気に。「初のホールコンサートも解散コンサートも渋公だった」と懐かしエピソードを話しつつ、「ディスカバリー」「幸せであるように」の2曲を披露。

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4組目はJUN SKY WALKER(S)森純太(Guitar)がステージに上がると、それまで控えめだった観客も一挙に総立ちし、宮田和弥(Vocal)の登場でボルテージは最高潮!単独ライブさながらの熱気で「MY GENERATION」「白いクリスマス」の2曲を披露。

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5組目のLÄ-PPISCHが登場すると、またしてもオーディエンスは大熱狂!80年代の縦ノリを完全に再現している。出演はMAGUMI(Vo&Tp)と杉本恭一(Guitar)。「パヤパヤ」と「Magic Blue Case」、立て続けにノリの良い曲を披露し、観客を狂喜乱舞させた。

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そして全12組のトリを務めるのはANGIEのボーカリストとして一世風靡した水戸華之介だ。スマイリー原島らに担がれて登場。「蝿の王様」「銀の腕時計」と濃厚な2曲を暴走。「銭ゲバ!銭ゲバ!」の絶叫が渋公の天井に響き渡る!

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水戸華之介は、オーディエンスに問いかけた。「みんなに聞きたいことがある。相変わらず馬鹿か?」騒然とする会場。そしてこう続けた。「この、10年、20年はびっくりするくらいあっという間。成長する余裕なんてなかった。普段はみんな、ちゃんとしなきゃとか、上から目線で偉そうに言ったりとか、みんな成長したふりをしてるんだよ。だけど、たまにこういう風に、馬鹿をさらけ出す場があってもいいよな!」
 
80年代。そこに青春を注ぎ込んだ大人たちは、時に牧歌的に、時に自嘲気味に、当時を振り返る。今回、出演全12組のアーティストが、個々に80年代を定義づけていたのが印象的であった。例えば宮田和弥は「思い出はたくさんあるけど、オレは今が好きです」と語る。森若香織は「20年前の一つの曲で、20年間みんなとつながっていたのはすごいと思う」と語る。森重樹一は「今思うに、大切なことはいかに一番になるかではなく、いかに次に伝えるかだ。自分のできることを自分のできるやり方で伝えていきたい」と語る。
 
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どの言葉にも、四半世紀を超えて邦楽の第一線で活躍し続けるスターたちだからこその含蓄がある。一概に優劣はつけられないが、個人的には森重樹一の「次に伝える…」という言葉にグッときた。そうだ。これは80年代の同窓会であり、今の自分を確認する場であり、同時にこれからの世代へ80年代の輝かしい軌跡を伝える場なのだ。そう考えると、客席に10代、20代がほとんどいなかったのは残念でならない。こういうイベントこそ、親子で見に来るべきなのに…そんな思いを少し、心に留め置きつつ…。
 
最後は、水戸華之介が「紹介します。”みんな”です!」と全出演者をステージに呼び、ANGIEの名曲「天井裏から愛をこめて」を全員で熱唱!これだけの豪華な顔ぶれが一堂に会するステージが他にあるだろうか?プロデューサーでありMCを務めたスマイリー原島によれば「来年もまた開催したい」とのこと。どうか是非、たとえみんなが歳をとっても、渋谷公会堂の名前が変わっても、ここで生まれた素晴らしい音楽と感動した思い出、それを確認し、次の世代に伝えることができる場は今後も続いてほしい。
 

◆NEXUS-web
http://www.nexus-web.net/
◆田村“SHO-TA”直美 公式サイト
http://www.tamuranaomi.com/
◆源学 公式サイト
http://gengaku.jp/
◆SHIGE(ROBO+S) 公式サイト
http://www.robots-web.com/
◆アキマツネオ 公式サイト
http://ramaamoeba.com/
◆広石武彦 公式サイト
http://www.hiroishi.net/topindex.html
◆水江慎一郎 公式サイト
http://www.mizwe.com/
◆ISSAY&HIKARU(Derzibert) 公式サイト
http://derzibet.com/
◆森重樹一 公式サイト
http://www.morishigejuichi.jp/
◆川上次郎 公式サイト
http://www.jirokawakami.com/
◆森若香織 公式サイト
http://www.moriwaka-kaori.com/
◆浜崎貴司 公式サイト
http://hamazaki.org/

◆宮田和弥 公式サイト
http://www.miyata-kazuya.com/
◆森純太 公式サイト
http://morijunta.com/mj/
◆MAGUMI 公式サイト
http://magumi.jp/
◆杉本恭一 公式サイト
http://kyoichi-s.com/
◆水戸華之介 公式サイト
http://www.netlaputa.ne.jp/~unlimi/310/index.html
◆Dr.KyOn 公式サイト
http://www.livemedia.co.jp/kyon/
◆小田原豊 公式サイト
http://www.yutakaodawara.com/
◆TOKIE 公式サイト
http://www.breast.co.jp/tokie/
◆玉城宏志 公式サイト
http://www.geocities.co.jp/miyanet07/paraisosinkan.html
◆スマイリー原島 公式サイト
http://www.smileys.co.jp/harashima.html
◆ちわきまゆみ 公式サイト
http://www.hipland.co.jp/chiwaki/