演奏

松井常松『20TH ANNIVERSARY LIVE HORIZON』

TEXT:山崎光尚 PHOTO:KOJI

伝説のBOØWYのベーシスト。80 年代に鬼のダウンピッキングでBOØWYのビートを創り出してきた男、松井常松。解散後はソロアーティストとして、近年はアコースティックギターを弾きながら歌うというスタイルで活動をされていました。しかし、久しぶりにベース&ヴォーカルというスタイルでシーンに登場!ソロワーク20 周年記念として、10 月に集大成的なニューアルバム『HORIZON』を発表。表参道FAB にて行われたライブの模様を、完全レポート!

SEと大歓声の中、ステージに登場する松井常松。ベースを構え仁王立ちし始まった1曲目は「BIBLE OF THE DREAMS」。打ち込みのサイバーサウンドと生演奏の融合、特にベースラインがグルーヴィーな、インストナンバーです。さらに『HORIZON』に収録されている往年の名曲「YOROKOBI NO UTA」のインストヴァージョンへとつながり、松井常松は正に封印を解くかのようなベースプレイ!私はベースを弾く松井常松を生で見るのは初めてだったのですが、その立ち姿、切れ味鋭いサウンドには、とにかく圧倒されるばかりでした。

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…思い返せば数年前、松井常松は街のごくありふれた飲食店で稲葉智と二人、アコースティックギターの弾き語りによる、シークレットライブを慣行していた時期があります。幸運にも私はそのうちの一本を目撃したことがあるのですが、一瞬その時の光景が不思議な感覚でフラッシュバックしてきました。あの時、特に松井常松の曲を知っているわけではないお客さんを相手にし、結果、大喝采を浴びて小さな街でも伝説を作っていたお方。その人が今夜は当然、大ファンたちを相手に久々のベースを鳴らしている…。この言ってみれば全く真逆の状況をどちらも目撃できるということはとても貴重なことですし、松井常松にとって“修行”でもあったであろうシークレットライブの旅を経た上でのライブが始まったかと思うと、身震いも起こりました。

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間髪入れずにファンにはお馴染みの「抱きしめたい」の『HORIZON』ヴァージョンへ。松井常松の艶のある歌声が響きます。歌いながらベースを弾いているパートと、同期のベース音の上で歌唱のみになるパートを織り交ぜた松井常松ならではのライブスタイルが打ち出されます。「どうもありがとう!久しぶりですね。10 年ぶりにベースを持ってステージに立ちました!」とのMC に、「11 年ぶりだよ!」というファンのツッコミが入り、場内大爆笑!なるほど、往年のファンたちは本当に待ちわびていたのだなと、彼らの想いを痛感し、松井常松という人のキャリアの深さを垣間見たような瞬間でした。

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そしてBOØWY の楽曲で松井常松の作詞による「RAIN IN MY HEART」、「LIKE A CHILD」を続けてプレイ。後者はアップテンポの新たなヴァージョンです。前述のシークレットライブでこの曲のアコースティックヴァージョンを聴いた時、BOØWYの曲を松井常松が歌うとこういう風になるのか!と新鮮な驚きがあったのですが、今回のヴァージョンはバンド編成の演奏では特に栄えるアレンジだと思いました。メンバー紹介をすると、「SHADOW OF THE MOON」、「ILLOGIC」をセクシーに歌います。比較的最近のナンバー「NUDY」では温かくシブい歌声の中で、一瞬ファルセットになる部分が実にカッコいい!「キーボードと一緒にバラード的なことをやらせて。ベーシストだけど歌も好きなんで」とベースを置き、松井常松としては非常に珍しい純粋な“ヴォーカリスト”の姿になると、激情のバラード「時の渚」を歌い上げます。さらに「WEDNESDAY」を切なく、優しく、高らかに響かせました。この情感豊かな2曲のバラードに、ファンたちは思わず目を潤ませています…。私はシークレットライブと2007年の9月に青山の「月見ル君想フ」で行われたライブと、まだ過去に2本のライブを見ただけなのですが、その2本と比べてもヴォーカリスト・松井常松としての表現力がさらに広がってきていると強く感じました。歌のみに専念する立ち姿からも、雄々しいオーラを放っています。

Photo大きな拍手の後、「PVも撮ったあの曲、ライブでもやらなきゃいけないよな?“WORKING MAN”!」。このタイトルを聞いて、ファンたちが黙っているわけがありません。BOØWY 時代の松井常松と言ったらこの曲!と思う30 代以上のファンは絶対多いはず!イントロが始まり、場内全員で「ワン、トゥー!!」と叫びます!もちろんサビでは「HEY MAN! HEY MAN!」と、これまた一斉にシャウト!そして遂に出ました!鬼のダウンピッキングによる必殺のベースソロ!これにはファンも「オイ!オイ!」と怒号で応戦。松井常松もその声援に答えるようにさらにヒートアップし、ピックを弦に叩きつけます!…実はライブ後、ご本人と少し話す機会があったのですが、「あのソロは本番の興奮した状態だから弾けるんだ。リハだと、あんなに速く弾けない(笑)」と言っていたのが印象的でした。間髪入れずにスピード感溢れる「密室のBALLERIE」、さらに攻撃的な「WORK!WORK!WORK!」が炸裂!そしてニューアルバムから「It’s Alright,Daddy」をプレイ。キャッチーで爽やかで、どこか懐かしい雰囲気もする松井常松の真骨頂が詰め込まれたようなナンバーは、これからのライブでも期待できる名曲です。そして遂にラストナンバー「Do-It-Again」へ。合いの手的なコーラスを入れる楽しみもある、ラストにふさわしい楽曲。そして「どうもありがとう〜!」と立ち去る松井常松

「アンコール!」と野太い声が響く中、再び松井常松が登場すると、場内大喝采!「みんなが聴きたいと思っている曲で、まだやってない曲があると思うので、20 周年だからやります」と、ソロワーク初期の名曲「あのころ僕らは」を温かく、力強く歌います。BOØWY 時代からのファン、ソロになってからのファン、それぞれが各々の想いで“あのころの僕ら”を思い出していたと思います。演奏が終わるとステージを去りますが、ファンたちは「アンコール!」と、許してくれません。すると再び登場し、60 年代洋楽のロックンロールのカヴァー集を出すことを告げると、その中からBuddy
Holly
の名曲「Rave On」を披露。ドライブ感溢れるアレンジに仕上がっており、英詩を歌う松井常松の姿も新鮮です。この名曲でラストを締めると、惜しまれながらステージを後にしました。

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長年のキャリアに裏打ちされた安定感と存在感…そして今を、これからも現役で生きよう
とする、現在の松井常松を感じることができたライブでした。この御大のシブさと優しさに溢れたロックは、これからもさらに進化し続けることでしょう!

【松井常松 公式サイト】
http://matsuitsunematsu.com/

【インフォメーション】

松井常松 ソロデビュー20 周年記念リリース

▼2009 年10 月21 日(水)『HORIZON』
BOØWY セルフカバー3 曲を含む待望の新録CD と、歴代PV 全タイトルを網羅したDVD の豪華2 枚組!

▼2009 年11 月19 日(木)自叙伝『記憶』
伝説のベーシストが語り下ろす初の自叙伝。「音楽」「人生」「現在」そして「BOØWY への想い」。

▼2009 年12 月24 日(木)『RAVE ON』
BOØWY サウンドの核となったあのダウンピッキングが、洋楽の名曲とともに蘇る「本物のロック」がここに誕生。

【セットリスト】
01:BIBLE OF THE DREAM
02:YOROKOBINO UTA
03:抱きしめたい
04:RAIN IN MY HEART
05:LIKE A CHILD
06:SHADOW OF THE MOON
07:ILLOGIC
08:NUDY
09:時の渚
10:WEDNESDAY
11:WORKING MAN
12:密室のBALLERIE
13:WORK!WORK!WORK!
14:It’s Alright, Daddy
15:Do-It-Again
16:あのころ僕らは(アンコール)
17:Rave On(アンコール)