特集

TEXT:河南太郎 PHOTO:齋藤明

国内のロックシーンの最先端を駆け抜け、輝き続けるフロンティアたちの横顔に迫るインタビュー特集「ROCK ATTENTION」。通算29回目に登場するのは後藤まりこだ。
 

◆後藤まりこ プロフィール
大阪府出身。2003年に結成したロック・バンド、ミドリでヴォーカル・ギターを担当し、その過激なパフォーマンスでカリスマ的な人気を集める。
2010年にバンドを突然解散し、その後はソロとして活動。2012年7月にソロデビューアルバム『299792458』をデフスターレコーズよりリリースする。
そして大人気映画『モテキ』コンビが手がけた話題のロックミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(主演:森山未來、演出:大根仁)で初の舞台に挑み、堂々たる存在感を見せた。
2013年4月20日公開の『ペタル ダンス』(監督:石川寛)では、映画初出演も果たしている。

 
2010年12月、『さよなら、後藤さん。』と題したライブを最後にミドリとしてのバンド活動を終えた彼女。その1年後に自主企画イベントを行い、ソロ活動を始めた。2012年にはロックミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』の舞台に挑み、今年に入っても4月20日に公開された映画『ペダル ダンス』に出演。7月から放送開始したドラマ『たべるダケ』(テレビ東京系)ではドラマ初出演ながら、主演に抜擢された。
 
女優としての活動がクローズアップされながらも、今年の7月にお台場で行われた世界最大級のアイドルフェスティバル『TOKYO IDOL FESTIVAL 2013』への主演や、『BAYCAMP 2013』などの野外フェスに主演。また9月にはSCANDALtricotを招いて赤坂BLITZで自主企画『シブヤコ』を開催し、大盛況に終わった。
 
そして12月4日にソロ活動アルバムでは2枚目となる『m@u』(読み:まゆ)が発売される。1stアルバム『299792458』から約1年半ぶりとなる本作。主演ドラマ『たべるダケ』のエンディングテーマとなった「sound of me」を含む全12曲が収録されている。彼女自身の幅広い音楽性に加え、SerphスガダイローHARCOKovacsといったミュージシャンとの共演・リミックスも手伝い、バラエティーに富んだ後藤まりこイズムを感じることができるアルバムになっている。そんなアルバムの制作秘話はもちろんのこと、自身の音楽のルーツや、音楽観についても話を聞いた。

【後藤まりこと音楽】
 ~あっこれ良いんちゃう?ってギター弾きながらやっていましたね。~
—まずは後藤まりこさんの音楽的なルーツを伺えればと思います。最初に音楽を始めたきっかけを教えてください。

 
後藤:音楽を始めたのは高校生の時です。他校の友人に誘われてバンドを始めました。
 

—そこから音楽を続けている原動力は何ですか?

 
後藤:楽しいからですかね~?ライブの時のよくわからない感じとか?なんで続くんやろ?わからへん。
 

—曲作りを最初にした時はいつですか?

 
後藤:コピーを少しやった後くらいですね。なんかふんふんってやって。大阪って何でもメロディになってるんですよ。CMソングとか。あっこれ良いんちゃう?ってギター弾きながらやっていましたね。友達とのお喋りをそのまま曲にしちゃう、みたいな。
 

—曲の作り方を誰かに教えてもらう、みたいなことはなかったのでしょうか。

 
後藤:ギターのコードが載っている本とかは読みました。この曲はこのコードですよみたいなやつ。
 

—曲のアイデアはどういう時に浮かびますか?

 
後藤:お風呂に入っている時が多いです。最近よく近くの銭湯に行くんです。サウナ入っている時に浮かびます。
 

–浮かんだアイデアをお風呂から上がるまで覚えておくのは大変そうです(笑)

 
後藤:昔は浮かんだ時に銭湯のトイレにこっそり行って、携帯にメモっていました。でも最近は1つのことをずっと考えているようにしているので、忘れないです。
 

【後藤まりこと演技】
 ~気づいたことは「自分は自分でしかない」ということ。~
—ミュージカル、映画に続いて今夏は連続ドラマ「たべるダケ」に出演されましたが、演技することと歌うことの違いについてはどのように考えていますか?

 
後藤:全く違う気がしていますー。
 

—ドラマを経て、変わってきたこと、気が付いたことはありますか?

 
後藤:気づいたことは「自分は自分でしかない」ということ。そういうことを改めて気が付かせてもらったなって。
 

—ドラマの撮影後に曲作りをする機会もあったと思いますが、以前と比べて「演じる」「魅せる」といった意識は入ってきましたか?

 
後藤:音楽において「演じる」というのは全くないです。自分の好きな音に探究心のベクトルをつぎ込むようにしているので、その他の要因が入ることはないです。
 

—演技を経験して自分の音楽への姿勢が変わったということはなくて、改めて見つめなおす機会になった、ということでしょうか。

 
後藤:そうですね。ライブでも「ちゃんと歌おう」っていうことは以前から心がけてますが、それ以上に「ライブでほとばしりたい」という思いがあります。
 

—「ライブパフォーマンスをどう見せよう」みたいなことよりも…

 
後藤:気付いたら動いていますね。
 

—今後、演技についてはどうですか?

 
後藤:お話があれば是非やりたいです!今回のドラマではセリフがなかったので、できればセリフがある役で(笑)
 

—憧れる役柄やシチュエーションはありますか?

 
後藤:憧れるものですか?う~ん…お婆ちゃん!死にそうな。床に伏せているような。でも裏の顔は超強いんです!街の平和を守っているみたいな。
 

【後藤まりこと『m@u』】
 ~本当に意味のないものにしたかったんですよ。~
—それでは今回リリースされるアルバム『m@u』について伺います。制作期間はどれくらいかかったのでしょうか?

 
後藤:結構時間かかりました。ドラマを挟んだこともあったので、その間は録音はお休みしていたので。。
 

—ずばり今回のアルバムのコンセプトは?

 
後藤:ないです。
 

—アルバムのタイトルにもなっている2曲目「m@u」という曲名について、教えてください。

 
後藤:深い意味はないのですが…この曲の一番最後のAメロの繰り返しの時に「繭にくるまる 私はあなたです」という歌詞があって。最初はその糸へんの繭だったけど、そのまんまの字面でつけると重いでしょー?意味が直結してしまうし。だから「m@u」にしました。見た目もそのほうが良いかなって。
 

—アルバム全体の印象として、柔らかいものを連想できるような「m@u」なのかな?と思いました。

 
後藤:本当に意味のないものにしたかったんですよ。
 

—この曲順にした理由はありますか?

 
後藤:夜通しずーっと考えて、曲のつながりが良いなって思えたから、これにしました。
 

—最初に録り始めたのはどの曲ですか?

 
後藤:「sound of me」(8曲目/初主演ドラマ「たべるダケ」主題歌)と「ふれーみんぐりっぷす」(11曲目)です。「sound of me」は、バーンと音を出した時に”sound of me”っていう言葉とメロディーが出てきました。
 

—その他に、ドラマ「たべるダケ」の撮影が始まる前に完成した曲はどの曲ですか?

 
後藤:「す☆ぴか」(3曲目)と「大人の夏休み」(10曲目)ですね。
 

—そうすると、今回のアルバムに収録された曲の多くはドラマの撮影後に制作されたんですね。

 
後藤:そうですね。
 

—1曲目の「4がつ6日」の中に「日本語ロック」という歌詞が登場しますが、後藤まりこさんご自身で日本語ロックというものについてどのような考え方を持っていますか?

 
後藤:えぇーわからへん(笑)。日本語の、ロック。うーん、幅が広いですし、ボクも「わからへん、なんだっけ」ってなっています。でも掘り下げれば長くなるんですけれど、簡潔に言うとボクは「商業音楽」に憤りがあるんですね。(この曲の中では)それを総称して「日本語ロック」という言葉に置き換えているのだと思います。
 

—ジャズピアニストのスガダイローさんとの曲「だいろーちゃんとまりこちゃん」はどういう経緯でできあがったのでしょうか?

 
後藤:ダイローとはレコーディングの日が「初めまして」で、当日ダイローがスタジオに来て「なんかやろう」「いいよー」って。それでマイクを立てて1個目のテイクでできあがりました。
 

—歌詞も用意していなかったのですか?

 
後藤:はい。
 

【後藤まりことこれから】
 ~音楽は音楽でしかないんで。それ以上でもそれ以下でもないです。~
—ソロ活動をされていて、ミドリと違うところを意識したり、こういうところ変わったなって思うところはありますか?

 
後藤:変わったなと思うところは制作過程でもたくさんあります。ダイローを筆頭に、色々な人たちとやる機会がバンド時代ではなかったので。バンド時代は各々フレーズを持ち寄ったり、ボクも頼っているところがあったし。だけど今は口で言ったフレーズとか「こういう感じ」って言ったら管楽器の人が弾いてくれたり、ボクじゃない人が歌ってくれたりするのはすごく楽しい。
 

—どういう時に「あ、これ曲になりそう」とか「歌詞になりそう」と思いますか?

 
後藤:そういうことを思って作ったことはないかも。「だいろーちゃんとまりこちゃん」の時みたいに、音を鳴らして会話のように音楽を作っていくことが好きです。どこにでもポップスの片鱗は散らばっていて、その端っこを掴むようにしています。
 

—歌詞についてはどうですか?音を収録している時に歌詞が出てくることが多いでしょうか。

 
後藤:「m@u」の時は最初に、メロディーと歌詞をジャーって同時に作りました。頭の中で「なんか歌えそう」と思ったら歌えて。その後にそれを聴きながら歌詞を紙に書き写す作業をしました。逆に、「浮かれちゃって、困っちゃって、やんややんややん」はメロディーが先にできて、その後に歌詞を乗せていきました。
 

—曲作りの最中にスランプに陥ったことはありますか?

 
後藤:短期間ならありますが、大きいスランプというのは特にないです。
 

—こだわったところ、聴いてほしいところなど教えてください。

 
後藤:決して聴きやすい作品ではないと思うんですよ。売れたいけれど、でも売れるために作ったものではないので。だから温かい目線で聴いてほしいです。ちょっとでも疑問があったらもう一回聴いてほしい。
 

—後藤まりこさんの中で音楽の最終地点はどこにあるのでしょうか?

 
後藤:最終地点かー。最終地点は音楽なんですかね。音楽の最終地点は音楽だと思います。
 

—それは結果として、自分の好きな曲をどんどん作っていくというところですか?

 
後藤:音楽は音楽でしかないんで。それ以上でもそれ以下でもないです。
 

インタビューを終えて、後藤まりこは等身大で音楽を作り続けるアーティストだということを改めて感じた。それは制作された音楽ももちろん、飾らずにありのままを見せる彼女の本能的なライブパフォーマンスからも感じ取れることだろう。今作を引っ提げてのリリースイベント、そして来年1月の東京・大阪のワンマン公演は見逃せない。
 
「決してわかりやすいアルバムではない」ということだが、何回も何回も聴いて、彼女の音楽の世界にどっぷりと浸かりたくなる作品であることは間違いないだろう。「音楽は音楽でしかない」。それを追求していきながら、演技など幅広く活動をしていく彼女の姿を、リスナーである私たちも真っ直ぐに追い続けたい。
 

◆後藤まりこ 公式サイト
http://www.gotomariko.com/
 
◆リリース情報
2ndフルアルバム『m@u』
2013年12月04日発売
DFCL-2036/2,800円(税込)


◆「後藤まりこ×TOWER RECORDS」インストアライブツアー
・2013年12月06日(金)【大 阪】タワーレコード梅田NU茶屋町店
・2013年12月08日(日)【名古屋】タワーレコード近鉄パッセ店
・2013年12月13日(金)【福 岡】タワーレコード福岡店
・2013年12月14日(土)【札 幌】タワーレコード札幌ピヴォ店
・2013年12月15日(日)【渋 谷】タワーレコード渋谷店

 
◆2013年 ライブインフォメーション
・2013年12月16日(月)【渋 谷】CLUB QUATTRO
 w/Occappers / bomi / 小南泰葉
 
◆2014年 ワンマンライヴ(タイトル未定)
・2014年01月05日(日)【恵比寿】LIQUIDROOM
・2014年01月11日(土)【梅 田】Shangri-La

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