特集

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TEXT:桜坂秋太郎

2013年5月7日、中野サンプラザに足を運ぶ。ハードロックバンドの来日としては定番の会場だ。歴史あるこの会場では、数々のバンドが伝説的な演奏を繰り広げている。今夜のアーティストは、WHITESNAKE。2013年の来日公演の中日だ。新しくなった中野駅はとてもオシャレで、中野サンプラザへのアプローチが以前とは違う気がする。駅前の信号を渡ると、昔はダフ屋だらけだったものだが、今は見る影も少ない。これも時代の流れなのだろう。
 
開場時刻になると、長蛇の列をなしたオーディエンスが会場へと入っていく。物販ブースが人で埋め尽くされて、飛ぶようにグッズが売れている。数種類用意された定番のTシャツの一つには、日本語が書かれているデザインが目に入る。私も一ファンとして会場に居れば、間違いなく物販ブースへと走っているだろう。しかし早目に席に着いて、取材の準備に取り掛からねばならない。

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WHITESNAKE JAPAN TOUR 2013

members
David Coverdale …Lead Vocals
Doug Aldrich …Guitar, Backing Vocals
Reb Beach …Guitar, Backing Vocals
Michael Devin …Bass, Backing Vocals
Tommy Aldridge …Drums, Percussion
Brian Ruedy …Keyboards, Backing Vocals


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そしていよいよ開演時刻。オーディエンスの誰もがショー直前の何とも言えない空気を感じている。BGMのThe Rolling Stones「Start Me Up」が終了し、より大きな音量で流れるSE的なThe Who「My Generation」。開演は秒読み段階に入り、WHITESNAKEのメンバーはすでに舞台袖にスタンバイしている。オーディエンスの大声援に迎えられ、メンバーが一人一人登場する。
 
David Coverdaleの定番シャウト「This’s a song for ya!」でショーはスタート!オープニングナンバーは「Give Me All Your Love」。1987年の名盤『Whitesnake』(邦題:白蛇の紋章~サーペンス・アルバス)アルバムの5曲目に収録されたブルージーなフィーリングがたまらないナンバーだ。驚く事に、唄い始めの「When I first saw you baby~」の歌詞から、オーディエンスのシンガロング(sing-along:皆で一緒に唄うこと)がすごい!正面から聴こえるDavid Coverdaleの唄が、まるでサラウンドシステムを装着したかのような360度からの大合唱!
 
サビの大合唱は想定内だが、全歌詞を唄えるファンがこれほど多いとは想定外だ。ヒットソングを多く持つ老舗のHARD ROCKバンドとはいえ、やはり日本でのDavid Coverdale人気は、間違いなく本物である。深みのあるシビレルようなセクシーヴォイスに、一曲目から腰が砕けそうになる。そう、これがDavid Coverdaleなんだ!唯一無二のソウルフルシンガー!
 
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Tommy Aldridgeのお馴染みのスティックを頭上に上げるアクションに、生でWHITESNAKEを観ているという実感が込み上げてくる。ギターソロは下手側で笑顔を振りまくReb Beachが担当だ。David Coverdaleを除くフロントに立つメンバーも、ハーモニーをちゃんと唄えるということが、何より分厚いコーラスワークへと繋がり、オーディエンスはより大きな声で唄わざるを得ない!
 
続いて「Ready an’ Willing」へ。私の大好きな『Ready An’ Willing』(邦題:Fool for Your Loving)アルバムの、3曲目に収録されたタイトルナンバー。1980年のリリース時に、予約してレコードを購入した事を今でも覚えている。そのナンバーを33年後に生で聴けるとは、生きていて良かった!David Coverdaleは高音までよく声が出ていて、実に最高だ!
 
オーディエンスの大きな手拍子を、よりあおるDavid Coverdale 。定番のマイクスタンドアクションもキマッて健在ぶりを魅せつけてくれる!年齢的な物を感じさせないステージングに感動だ。ギターソロは、上手側でクールにキメルDoug Aldrich!そして掛け合いのフレーズ「Sweet satisfaction」では、会場のホールに大きなウネリを生み出し、HARD ROCKコンサートの醍醐味を、存分に味わうことができる。
 
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Tommy Aldridgeのカウベルから「Can’t You Hear The Wind Blow」。2008年にリリースされた『Good to Be Bad』(邦題:グッド・トゥ・ビー・バッド)アルバムの2曲目に入っている80年代の香りを21世紀風に仕上げたナンバーだ。ギターソロはReb Beachが担当し、そのまま「Don’t Break My Heart Again」へと流れ込む。1981年の『Come An’ Get It』の3曲目の伝説的なヒットナンバーだ。David Coverdaleは、前列の女性にへ投げキッスをしている。なぜかこのナンバー当時のWHITESNAKEメンバーの顔が、フラッシュバックしてくる。
 
続いて「Is This Love」。世界の財産、歌姫Tina Turnerへ捧げた名バラード。80年代を象徴する名盤『Whitesnake』(邦題:白蛇の紋章~サーペンス・アルバス)アルバムの6曲目の大人気のナンバーを、メンバーも楽しんで演奏している様子。Tommy Aldridgeはスティックをグルグルと回し、Doug AldrichReb Beachはステージセンターに歩み寄って笑っている。Michael Devinも終始笑顔だ。
 
どんなに素晴らしく甘いバラードでも、さすがに日本のホールなので、ライターの炎やペンライトは揺れない。しかし、この色あせない至極のメロディに、すべてのオーディエンスが心の灯を揺らしている!そうこの瞬間には、80年代後半の“あの”空気が漂っている!分厚いハーモニーに、Doug Aldrichのギターソロが華を添える。David Coverdaleはオーディエンスへマイクを向けて空間を一つにしていく。
 
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他界してしまった元メンバーの名前を口にするDavid CoverdaleMel GalleyCozy PowellJon Lordへ捧げるというMCから、Brian Ruedyの幻想的なキーボードフレーズ。曲は「Gambler」へ。1984年の『Slide It In』アルバム1曲目のナンバーだ。このアルバムは、女性がスカーフのように蛇を巻いたジャケットが話題になり、Cozy Powellの素晴らしいドラムプレイが収録されている。私の中ではWHITESNAKEのNo.1アルバムだと思っている作品だ。
 
大きな手拍子の中、Reb Beachにからむように唄うDavid Coverdale。ギターソロはDoug Aldrichの担当だ。WHITESNAKEのステージは何度も観ているが、このナンバーを今のメンバーで聴くのは実に新鮮。Michael DevinReb Beachが時にじゃれ合うようにして奏でる姿も悪くない。これが今のWHITESNAKEなのだ。長年ロックシーンを生き続けている白蛇の今なのだ!
 
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続いて「Love Will Set You Free」。2011年の『Forevermore』(邦題:フォーエヴァーモア)アルバム、3曲目のナンバー。Doug AldrichReb Beachのギタリストになってからのナンバーだけに、両ギタリストのプレイにも余裕があるように感じる。圧倒的なサビのハーモニーが気持ちいい!そのままDoug Aldrichのソロギタープレイコーナーへ突入し、ゴールドトップのレスポールから発せられるエモーショナルなフレーズが会場を包み込む!
 
そしてReb Beachにソロギタープレイコーナーをバトンタッチ。エキサイティングなハーモニクスを多用し、アーミング満載のフレーズを笑顔で弾きまくり!Reb Beachは色々なバンドで来日しているが、こんなに楽しそうに弾いているのは初めて観たかもしれない。Doug Aldrichが再び登場し、ソロギタープレイはバトルへと発展!Reb Beachとの掛け合いが始まる!その後Brian Ruedyのキーボードをバックにしたツインリードのハーモニーなどで魅せてくれた後は、Michael Devinがなんとブルースハープを披露!Doug Aldrichがスライドギターをキメる!
 
大きな手拍子が会場を揺らしたまま、ショーは後半戦がスタート。『Forevermore』(邦題:フォーエヴァーモア)1曲目のナンバー「Steal Your Heart Away」へとなだれ込む。拳を振り上げる人、体を揺らす人、手を叩く人、それぞれにオーディエンスはWHITESNAKEを楽しんでいる。Doug Aldrichのギターソロから「Oh…」の大合唱、そしてTommy Aldridgeのドラムソロへというツボを押さえた構成。シンバルを手で止める仕草や、スティックさばき、スネアやタムを手で叩いた後は立ち上がってオーディエンスをあおる!ハードロックのドラムソロのお手本と言える流れに大興奮!
 
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◆Setlist
M01. Give Me All Your Love
M02. Ready An’ Willing
M03. Can’t You Hear The Wind Blow
M04. Don’t Break My Heart Again
M05. Is This Love
M06. Gambler
M07. Love Will Set You Free
M08. Pistols At Dawn
M09. Steal Your Heart Away
M10. Ain’t No Love In The Heart Of The City
M11. Guilty Of Love
M12. Forevermore
M13. Fool For Your Loving
M14. Here I Go Again
-encore-
M15. Still Of The Night
 
◆WHITESNAKE Official Website
http://www.whitesnake.com/
 
◆WHITESNAKE Label Website
http://wmg.jp/artist/whitesnake/
◆Works
   


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思えばTommy Aldridgeのドラムソロもかなりの本数を観ているが、それこそ約30年前のOZZY OSBOURNEバンドの来日時と印象がほぼ同じだ。遠目に見る分にはという条件があるものの、ルックスやテクニック、年齢を考えると驚異的なことだと思う。ドラムソロからのカウントで、メンバーがステージへ呼び戻される。ショーはすでに1時間を超えているが、メンバーは誰もがエネルギッシュだ。「Steal Your Heart Away」が終わると長めのMCをはさみ、「Ain’t No Love In The Heart Of The City」へ。
 
キラキラしたバブル期に入る前の、シブいWHITESNAKEが好きなファンに好評の「Ain’t No Love in the Heart of the City」。このナンバーが大好きだ!というスネイクファンは多いが、このナンバーはWHITESNAKEには珍しいカヴァーナンバーだ。カヴァーと言っても、ブルースシンガーBobby Blandのオリジナルとほぼ変わらないアレンジとなっている。しかし大御所と言われる海外のハードロックバンドは、このようなカヴァーソングをうまく自分達の中に取り込んで、大成功しているケースが非常に多い。日本のハードロックバンドは、残念ながらその成功事例が無いかもしれないが、一つのヒット手法であることは間違いない。
 
サビの大合唱から、Doug AldrichReb Beachのアコースティックギターの余韻に、David Coverdaleが最後はアカペラ状態で終える。このアレンジはとても良いフィーリングだ。そのままアコースティックギターがかき鳴らされ、「Guilty Of Love」へ。アルバム『Slide It In』最後を飾る10曲目のナンバー。Micky MoodyMel Galleyが輝いていたWHITESNAKEの6人メンバー時代の中では、最後の名曲と言っても良い作品だと思う。今夜のシンプルなアコースティックバージョンの「Guilty Of Love」が、クオリティの高さを証明している。
 
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アコースティックセットは続いて「Forevermore」へ。アルバム『Forevermore』(邦題:フォーエヴァーモア)のタイトルナンバーにして13曲目のラストソング。WHITESNAKEの魅力は、静と動の躍動感がずば抜けていることかもしれない。後半はバンドアンサンブルに戻り、Doug Aldrichがエモーショナルなギターソロを奏でる!そのままの熱気を持って、「Fool For Your Loving」へと突入。アルバム『Ready An’ Willing』(邦題:Fool for Your Loving)の1曲目、オープニングを飾る魂が揺さぶられるナンバーだ。
 
Michael Devinが分厚いハーモニーとグルーヴを生み出し、Tommy Aldridgeは細かいスティック小技アクションをキメる!Doug AldrichReb Beachは上手側と下手側の立ち位置をチェンジして弾きまくる!ショーはクライマックスへと加速している。そしてBrian Ruedy が“あの”イントロを奏でると大歓声が!「Here I Go Again」だ!『Whitesnake』(邦題:白蛇の紋章~サーペンス・アルバス)の4曲目にして、80年代後半のMTVを象徴するかのようなPV(ミュージックヴィデオ)は、世界のハードロックファンが忘れることが無い作品の一つ。キラキラしたバブル期なWHITESNAKEの美味しいところが詰まっている。
 
セットリストはここで終了。さっそくアンコールを求める声。早目にステージへ戻ってくるメンバー。アレが聴きたい!というオーディエンスの心の声が聞こえる。そう絶対に外せない「Still Of The Night」だ!アルバム『Whitesnake』(邦題:白蛇の紋章~サーペンス・アルバス)の3曲目にして、アルバムを代表する大人気のナンバー。日本にはこのアルバムの功績者であるJohn Sykesのファンがとても多いが、そのキッカケになったのは、間違いなくこのナンバーだと思う。1987年当時、グーで殴られたような、そんな度肝を抜かれた想い出が私にもある。HARD ROCKの歴史に輝く逸品は、“カッコイイ”その一言しかない。
 
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Reb Beachは大きく首を振り、ヴァイオリン奏法を披露する。Doug Aldrichは足を開いてテレキャスターでギターソロを奏でる。あっという間に、アンコールナンバーが終わり、メンバーがステージへ集合。これで終わりなんだ!という空気が会場へ流れる。物足りない!もっと聴きたい!それがオーディエンス全員の素直な感想のはずだ。しかし、肩を並べて終演の挨拶をするそれぞれのメンバーは、とても充実した顔をしている。今回の日本ツアーは追加公演まで入れると、それなりの本数をプレイしているので、あまり無理も言えないところではある。
 
若いメンバーは別にして、WHITESNAKEのステージセンターに位置する還暦を超えた二人のステージングは、思った以上のパフォーマンスを魅せてくれた。退場するオーディエンスでごった返す中野サンプラザの隅で、私は今夜の余韻にひたっている。体力を大きく消費するハードロックのショーだが、いつまでもWHITESNAKEは現役であり続けて欲しい。そしてDavid Coverdaleは、自身の命がある限り、それを実行してくれるに違いない。私は一ファンとして、白蛇と同じ時代を生きていることに感謝をしたい。
 
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WHITESNAKE JAPAN TOUR 2013


01 May 2013 (Wed) Kagawa 【サンポートホール高松】
02 May 2013 (Thu) Kagoshima 【市民文化ホール】
04 May 2013 (Sat) Aichi 【名古屋市公会堂】
06 May 2013 (Mon) Tokyo 【SHIBUYA-AX】
07 May 2013 (Tue) Tokyo 【中野サンプラザ】The date of this report.
09 May 2013 (Thu) Tokyo 【中野サンプラザ】
10 May 2013 (Fri) Osaka 【オリックス劇場】