特集

TEXT:桂伸也 PHOTO:ヨコマキミヨ

多彩な活動を続けるアーティストの複数の活動をそれぞれの視点で追い、新たなアーティスト活動のあり方を考える『Watch the Outside』。今回はその第二弾として、シンフォニック・メタルLIV MOONのヴォーカリストであり、且つ舞台女優として活躍するAKANE LIVにスポットを当てる。
 
2009年のLOUD PARK初出演から急速にそのスタイルを進化させ、日本のシンフォニック・メタルというジャンルでは、既に抜きん出た存在といっても過言ではないLIV MOON。そのシンフォニック・メタルというスタイルのベースを保ちつつも、プロデューサーでありバンドのキーボード・プレイヤーでもある西脇辰弥(以下、西脇)をはじめとした個性派が集い、新作のリリースごとに世をアッと言わせるほどの高い評価を得ている。そしてこの9月には4枚目の新作『THE END OF THE BEGINNING』をリリースすることとなった。今回はヴォーカリストであり中心メンバーのAKANE LIVをはじめとした主要メンバーとともに、作詞/作曲陣として前回に引き続き登場したKAZSIN、zopp、丘ナオキ、Alice ice、そしてゲストミュージシャンとして元EUROPEで活躍したKee Marcello(以下、Kee)、ANGRAKiko Loureiro(以下、Kiko)、AKANE LIVの幼馴染みであり、元HammerFallのベーシストとして活躍したMagnus Rosen(以下、Magnus)と豪華な顔ぶれが出揃い、さらに個性に磨きを掛けた大作を作り上げた。今回はそんなLIV MOONとしてのスタンスを確立しつつあるAKANE LIVの、新作に対するエピソードと合わせ、シンガー/舞台俳優という彼女自身にある2つの面を自身がどう捕らえているか、その思いを紐解いていこう。

 

AKANE LIV(LIV MOON)
宝塚歌劇団に所属。同劇団を退団後、活動の幅を広げる為、英国に留学しシェイクスピアと歌を学ぶ。
2004年、ロンドンでのBeckenham FestivalにてSinger of The Yearを受賞。
2005年には、ポーランドにてソロリサイタルを行い、様々なメディアから注目を浴びる。
2009年秋、従来の舞台での活動と並行して、シンフォニックメタルバンドLIV MOONを結成、国内最大級のヘビーメタルフェスティバル『Loud Park 09』で衝撃のライヴデビューを飾り大絶賛を浴びる。同年12月 ビクターエンタテインメントよりメジャー・デビューアルバム『DOUBLE MOON』をリリースし、各方面から高い評価を得る。
2010年3月に初のワンマンLIVE(SHIBUYA O-EAST)を成功させた後、6月にカヴァーアルバム『COVERS ~Scream As A Woman~』をリリース、10月には東京・大阪でワンマンツアーを実施。
2011年3月に待望の2ndアルバム『GOLIDEN MOON』をリリースし、4月には自身2度目となるSHIBUYA O-EASTでのワンマンLIVEも大成功を収めると共に、そのワンマンライブの模様を収めたライブDVDを6月に発売。併せて5月~6月にミュージカル『MITSUKO』への出演や9月の京都市交響楽団とのクラシックコンサートへの出演と、ミュージカルやクラシックイベントなど舞台での活動も精力的に展開。
 
2012年は1月18日に3rdアルバム『Symphonic Moon』をリリース。その後1月26日~2月12日まで青山劇場と梅田芸術劇場で行なわれる『CHESS in concert』にスヴェトラーナ役での出演が決定。また3月3日&4日には恵比寿リキッドルームにてLIV MOONのワンマンライブ2daysも決定している。 今後もクラシカル・ミュージックとロックが融合した新ジャンルでミュージックシーンの新境地を切り開いていく。

 
hana
 

今回のテーマは、“北欧神話”をモチーフにした自分の原点回帰。もう、どんな方向にも進めると思います。

—前作までのジャケットに比べると、情景が入った画になって、ちょっと感じが違いますね。現地に直接行かれて撮影されたのでしょうか?

 
AKANE LIV:そうです。スウェーデンのイエテボリの方ですが、要塞の遺跡ですね。小さい頃から私には、凄く馴染みのある場所なんです。
 

—今迄のLIV MOON単体に焦点を当てたジャケットデザインとはまた違いますよね。

 
AKANE LIV:そうですね。空や空気感が、北欧独特の向こうでしか出せないものなので、その中のショットや木々の細かい感じなんです。そういう色を出したいと思って、このデザインを考えました。このアルバム製作が決まったときに、スウェーデンの自然の中で感じたことをアルバムに投影したいと思い、向こうで撮りました。
ただ、もともとジャケットにすることは考えていませんでしたが、自分のルーツに戻るという意味でこの画にしてみました。この中のショットもそうですけど、いつもの作り込んだジャケットに比べると、“飾ってない、素の自分”っていう感じを、表現できるので面白いと思って。
 

—全体のサウンドから雰囲気を感じたあとに、改めて聴きなおして詞の雰囲気をたどってみると、味わい深いというか面白い感じがしますね。

 
AKANE LIV:そう、さらに結構今回はブックレットも歌詞が読みやすいように字体を大きくしたり、ルーン文字っていう北欧の文字を使ったり、北欧独特の世界観をブックレットでも楽しんでもらえたらと思って作ってみました。例えばジャケット写真でも、全体的な色味で古っぽい感じを出してみたり、黄色っぽい昔の書物を見ているような感じを歌詞カードに入れてみたり、かなりこだわって作りました。やはり前作迄の洗練されたデザインは、それはそれで楽しかったのですが、そこでは本当に別人になって綺麗に演じるキャラクターだったので、今回はもっと奥にあるものを出したかったんです。
 

—なるほど。タイトルが、今迄『DOUBLE MOON』『GOLDEN MOON』『SYMPHONIC MOON』と、“MOON”というキーワードがあったのに対し、『THE END OF THE BEGINNING』と、全く異なる傾向の名前になったのはなにか新しい意図があったのでしょうか?タイトルの意味からして、なにかの区切りのようにも感じられますよね?

 
AKANE LIV:前回は白LIV/黒LIVというテーマを取り上げたり、その前にもヴァンパイアとか、いろんなものを演出したりしてきましたが、「もう“MOON”にこだわらなくても、LIV MOONはセカンド・ステージを迎えたかな」って思ったんです。だから自分の中で、とても自然に「“MOON”じゃないタイトルがいい」っていう思いがありました。もともと今回のコンセプトが自分のルーツに戻るというテーマでジャケットのデザインも合わせてかなり雰囲気が出たので、これが一番ぴったりなタイトルだと思いました。
 

—それは逆に一つのテーマにこだわらなくても、LIV MOON固有のサウンドや世界観が作れる形が見えてきているという現れなのでしょうか。

 
AKANE LIV:そうですね。今迄3枚アルバムを出して、最初はシンフォニック・メタルっていうものを自分の中でも手探りで探していましたが、例えば前回の楽曲で「Kiss me,Kill me」っていう楽曲で、今迄メタルを作られている方ではない方に楽曲を提供していただき、それがメタル・ファンの方にキラー・チューンとして好評を頂いたので、ドラマチック且つメロディアスなものであれば特にメタルであることを強調しなくてもいいのではないかと思いました。それにこだわりすぎると面白いものができなくなっちゃうんじゃないか?だったら自分達の特色を生かしてやっていけばいいって。もちろんシンフォニックメタルというジャンルの中にはありますが、私もミュージカルや舞台が出身なので、私にしかできない音楽をやった方が面白いと思ったことで、逆に自分達の形っていうのが、ある程度見えてきたと思います。
 

—今回のアルバムの主題についておうかがいしたいのですが、“北欧神話”をモチーフにされたとのことで、曲ごとにテーマがありますよね。そのモチーフって、なにか出展元があるのでしょうか?

 
AKANE LIV:最初に一つの大きな物語を作ろうと思って、それには何が良いのか?と考えたときに、折角北欧のスウェーデンが自分のルーツで、そこにあるいろんなエピソードをエッセンスとして使いつつも、現代に置き換えても聴けるような楽曲にしたいなと思いました。北欧神話の時代が色濃く出ているものもあれば、どんな風にも調理できる題材だなと思ったんですよね。例えば“小人と巨人の国”っていうテーマがあれば、6曲目の「The End of the Beginning」っていうのは7つのキャラクターを私が演じてたりするんですよね。そういうものもあれば、フレイアっていう女神様がいたり、面白いエピソードがたくさんあります。
 

—それはなにかスウェーデンにおられた頃に聞いて覚えていたものですか?

 
AKANE LIV:それもありますね。それと例えば幼少期に花を摘んで冠にして川に流したりしていたというようなことが、実はバイキングのならわしから残っているものがあったり、北欧神話をやると決めてから北欧神話の本を読んでいたら、子供の頃から知らないうちに慣れ親しんでいたものと共通する部分があることを知ったりしました。
 

—今これを作ろうと思ったときに、そういう小さい頃から親しんだものや新しく知ったお話というものを、自分なりに整理してこういうイメージを作り上げたということでしょうか?

 
AKANE LIV:そうですね。今回珍しくアルバムのレコーディングに入る前に、全ての曲順と「この楽曲はこれをモチーフにして」っていう内容を書き出し、それからそのイメージに合う製作者に作詞/作曲をお願いしました。例えば、先ほど取り上げた「小人と巨人の国」というテーマは、メタルでもありオペラでもあり、ミュージカルでもあるような面白い曲にしたと思ったら、やっぱり西脇さんがとても得意としているものなので(笑)「もうこれは彼をおいて書いてくれる人はいない」って、お願いしたんです。逆にオープニングは壮大な北欧神話の世界観を感じるものを最初の1曲目、2曲目で表したかったので、そういったときに前回「Kiss me Kill me」を書いていただいたKAZSINさんにお願いしました。オーケストレーションのアレンジがとても素晴らしい方なので、「これはKAZSINさんの曲で幕開けをしたい」と思いました。そんな意味で、スタートする際に自分の中でイメージが明確になっていたので、とてもやっていて楽しめたし、自由にできる部分が凄くありました。
 

多彩な製作陣の中、とにかく作っていくのが楽しくてしょうがなかったです。

 

—例えば前作西脇さんが作られるようなかなりインパクトのある曲調等で独創性を前面に出していたようなカラーが、今回は割とスムーズに流れるような感じに印象が変わったようにみられます。

 
AKANE LIV:そうですね。みんな私と馴染みのある方ですが、さらにゲストギタリスト/コンポーザーとしてKeeKiko,Magnusが入ってくれたことによって、幅も広がりました。KeeMagnsの紹介で今年出会ったのですが、そのときにLIV MOONの楽曲を会う前から聴いてきてくれていて、「曲を書きたい」言ってくれたんです。
私は去年、京都市交響楽団っていうオーケストラと一緒に歌ったのですが、MagnusKeeもそういうオーケストラと一緒にプレイした経験があったので、みんなで共通の話ができることも一杯あって、「こういう音楽をやりたいんだ」って言ったら、Keeが「AKANEに合う楽曲を今思いついた!」って(笑)早々に「And Forever More」を書いてきてもらいました。これはデュエットが欲しいっていうことと、いろんな“身分違いの恋”みたいな、一緒になれない人のイメージをお願いしたら、Keeがデモを送ってくれてそのデュオパートが余りにもカッコよかったので、Keeにそのまま歌ってもらいました。
 

—歌われているのは、Keeさんなんですね。この楽曲はシンフォニックというよりは、どちらかというとストレートなバラード風ですよね。

 
AKANE LIV:その通りですね。だからそれは今までのLIV MOONにない感じで凄く面白かったですね。シンプルだけど、どこか哀愁味があって、私達日本人が聴いてもどこか懐かしい香りがするテイストがあって。例えば日本の神道にも、やおろずの神やいろんな神々がたくさんいますし、北欧神話でも一つの神様じゃなくて、大地や自然の中にいろんな神様が共存しているという点では、日本と北欧は離れていても、なにかどこかに繋がるところがあるから、そういう面でも理解しやすいのかと思います。例えばこの曲にしてもなにかシンフォニックっぽくなくても、メロディが凄くスムーズに入ってくるものばかりです。
また、作曲はいろんな人に振りましたが、今回は作詞を大事にしないと散らかっちゃう感じになると思って、、自分の中にあるそれぞれのイメージを最初に作詞家の方に「例えば霧の世界だったら、霧の世界の住人がこういう感じでこういうイメージなので、こういう風に歌詞を書いてください」ってイメージを細かく指示しお願いしたので、それが反映され、最初から最後までスムーズに流れるアルバムができたと思います。
 

—Kikoさんはどのような経緯で今回参加をお願いされたのでしょうか?北欧イメージの中でお一人だけブラジル出身というのも興味深いですが

 
AKANE LIV:彼は日本でのレーベルが同じということで紹介していただいたのですが、もともと私が尊敬するNIGHTWISHTarjaとプレイした経験もあり、今フィンランドに住んでいるということもありましたし、繋がりはありました。
 

—彼の曲もKeeと同じようにまたシンフォニックとは異なった雰囲気の楽曲を提供してくれましたよね。

 
AKANE LIV:そうですね。Kikoの曲は最初、もっと激しいメタルという感じでした。でも今回のアルバムのコンセプトと、私がこの曲を歌うということに関して、もっとバラードが欲しくて、このアレンジに進めました。
アルバムの最後の方に締めで曲が入り、そのあと『Voyage』っていう波の音を入れた隠しトラックを入れたのですが、その部分であまりガーッと激しい感じにしたくなかったので、Kikoに聞いてOKを出してもらって、さんにアレンジしてもらったら、Kikoの作ったメロディを生かしつつ素敵なバラードに仕上げてもらいました。さんのそのアレンジをKikoもとても気に入ってくれたし、これも彼にはギターで入ってもらったり、皆さんにとても柔軟に対応していただきました。
 

—丘さんと、新たに作曲で参加された大間々さんの楽曲は、全般と比べるととてもキャッチーな感じで、また楽曲群の中でバラエティ性を一層強くしていますよね。

 
AKANE LIV:そうなんです。大間々さんも凄くキャッチーな作風ですね。彼のオーケストラアレンジをした楽曲はとても素晴らしくて、今回作曲をお願いしたらとてもキャッチーな仕上がりの「Black Fairy」を作っていただきました。オープニングが結構畳み掛けるように始まるのに対してサビはとても分かりやすい感じだったので、とてもスムーズな感じです。やっぱり全部が難しい感じだけでなくて、分かり易さとかキャッチーさを混ぜ合わせたかったので、この楽曲はとても面白くなりました。
 

—その中でもやはり強いアクセントになるのは西脇さんの楽曲ですね。特に「The End of the Beginning」。これはタイトルチューンですよね?展開がとても複雑で、いろんなキャラクターを演じられていますよね。まるで1曲の中で舞台を見ているような感覚に陥ります。

 
AKANE LIV:そうですが、実はたまたま同じタイトルになったんです。皆で打ち合わせをして、アルバムのタイトルをこれにしようと決めた日に、この曲で作詞をしていただいたzoppさんの歌詞が上がってきて、「このタイトルで」って同じものを持ってこられたので、なにかこう導かれるように決まったんです。この曲は7つのキャラクターを私が演じて、“小人と巨人”っていうい現代に置き換えられないような北欧神話の登場人物をちりばめているので、アルバムのポイントとなる曲になると思っていました。
 

—作詞の方は、全般的には大まかにzoppさんが書かれたものと、AKANE LIVさんご自身がかかれたものがありますが、頭と終わりにご自身が書かれたものがあるというのはなにか「ここで言いたいことは自分で書きたい」という意図があったのでしょうか?

 
AKANE LIV:そうですね。今回は自分の中でルーツに戻る、ルーツに自分が北欧に戻る、生まれた国に行き、いろんな自然の中に身を置いたことをリスナーにも共有してもらいたいし、楽しんでもらえたらと思っていたから、本当に最初と最後は大事だと思って、自分の言葉で伝えたいと思っていました。
 

—AKANE LIVさんの表現が割とストレートな北欧神話の模様を描いているのに対し、zoppさんの方はかなり妖しい雰囲気を詞から感じます。そのコントラストも面白いですね。

 
AKANE LIV:私はもともとミュージカルでいろんな役をやっているので、他の方が作った歌詞でその役になりきるのも凄く好きなんです。そういう意味ではzoppさんはそういう楽しみを凄く与えてくれる詞を作ってもらえるんです。前回のアルバムに収録された「Kiss me Kill me」は『ジキルとハイド』をモチーフにした楽曲なのですが、私も舞台の『ジキルとハイド』に出演したことがあって、その中のキャラクターであるルーシーというキャラクターがジキルとハイドの狭間の中でおびえたり、愛に伏したりすることもあってか、曲の中のキャラクターが自分にスッと入ってくる感じを覚えました。そういう部分がzoppさんの歌詞はたくさんあり、彼に詞を書いてもらえるのはいつも楽しみなんです、「何が出来上がってくるんだろう」って。「小人と巨人の国」でも、「このキャラクターは…悪戯好きの神ロキはこんな性格で、こんな感じで….お願いします」ってお伝えしていたんですけども、想像していた以上に膨らませて戻してくれたので、これもzoppさんでなければ書けない詞だと思いました。
 

—プレイしている中で、これだけ豪華なギタリストが揃うというのも、楽しかったのではないかと思うのですが…それぞれにどんな印象を持たれましたか?まずKeeさんはいかがでしょう?

 
AKANE LIV:もちろん彼はいろんなテクニックを持っている人ですが、今回作っていただいた2曲に関してはとてもシンプルだけどノスタルジックなソロをプレイして、より音楽に集中できる感じでした。もちろん、超絶技巧も好きなんですけど、今回は本当に作曲された曲をやっているだけあって、「シンプル イズ ザ ベスト!」な曲だと思いました。彼は一番年長者だし(笑)その重み、深みがあると思いました。
 

—この曲のレコーディングは別々に行われたんですか?

 
AKANE LIV:そうです、Keeはスウェーデンで、私は日本で録りました。デュエットも別々で。ミキシングもスウェーデンチームが行ってくれたんです。だから本当にほぼ変えずにマスタリングだけこちらで行ったので、よくこれだけぴったりという感じができたな、という面白さはあると思います。そんな意味でKeeの作った2曲はちょっと他の楽曲と違う感じですね。
 

—Kikoさんはいかがでしょう?

 
AKANE LIV:彼はブラジルの生まれということもあって、独特の明るさと暖かさがあるんですよね。それは今回バラードっていうこともあって、余計に彼のぬくもりのようなものを感じながら歌うことができました。KikoKeeも、どちらとも世界的に有名なアーティストですが、なにかテクニックだけじゃない深さみたいなものを見せてくれました。
 

—そのお二人と比べて、LIV MOONのオリジナルメンバーである大村孝佳さんはいかがでしょう?

 
AKANE LIV:大村くんは、「俺が大村だ!」っていう感じが(笑)凄く出てきたな、っていう感じがします。彼自身の自覚も強くなって、それを凄く前に出してくれているというか。彼自身がKeeKikoを聴いて育ったギタリストだから、その二人と一緒のアルバムでプレイできることをとても喜んでいましたし、彼らのフレーズをちょっと入れつつと、今まで以上に凝ったこともプレイしてくれました。彼はなにか凄く考えてプレイするタイプで、そのプレイには毎回ビックリさせられますが、そんな驚きのポイントがありながらも彼らしさを残して今まで以上に前に出るプレイをしてくれました。かつ、それでヴォーカルを邪魔するのではなく、良い具合にメリハリを付けてくれたんです。
 

—ギタリストではないですが、Magnusさんが作られた曲で、ベースがメロディを弾いているパートがありますが、これはMagnusさんのプレイですか?

 
AKANE LIV:そうです。この曲はもともとアルバム用の曲ではありませんでした。ちょうど私が2週間ほどスウェーデンに行ったときにMagnusが持っている、森の中にあるゲストハウスに行くことがあり、そこに滞在させてもらったときにちょっと「プレイしてみようよ」っていう話になって、彼の曲をいくつかハミングしたりしていたんです。彼いわく、「北欧の大地を想って作った曲だ」と語っていて、その中でこの曲はアルバムにぴったりだと思ったんです。そういうものを今回のアルバムに入れると一つのスパイスになると思い、短いバージョンだけどこれをアルバムで歌ってもいい?と聞いたら「是非使ってくれ!」って言ってくれたから、アルバムに収録することにしました。
あと余談ですが、「Voyage」っていう曲はもともと、漫画『北斗の拳』に出てくるラオウのテーマとしてKAZSINさんが作曲されていた曲なんです(笑)
 

—そうなんですか!?なるほど荒々しい感じですね。

 
AKANE LIV:そうなんですよ(笑)。前作のときKAZSINさんと知り合うきっかけとしてこの曲を私が聴いて、「この曲凄く好きです!」っていうお話をしたら、「この曲でAKANE LIVさんに歌詞を書いてもらいたい」っていうお話を前回いただいていて、今回アルバムを作るにあたってこの曲がバイキングを表すイメージとして頭に思い浮かびました。荒波を航海して、みたいな。人間の世界を表すイメージが欲しかったのでそれがぴったりだと思いました。船の中から、ちょっとして波の音がして、アルバムの頭の、大地の歌に戻る、みたいなストーリーが見えて、これで行こうと思ったんです。本編としてはM13で終わっているのですが、M14のこの曲は“新たな旅立ち”っていうことで、元に戻るイメージを作りました。アレンジは今回用に変えていただいて。
 

—なるほど、そういったストーリーを描いてたのですね。聴いていると確かにM13で一区切り置いて、最後になにか次の展開への序章的なサウンドを作っているようにも聴こえました。

 
AKANE LIV:そう、あえてそこで。順番は最後まで悩みましたが、聴いてスッと終わる感じも良いけど、なにか希望とか前向きな思いでアルバムの頭に戻るようにしたいと思いましたので。
 

—それは例えばLIV MOONとしても、次の展開に向けて乞うご期待!みたいなところもあるのでしょうか?

 
AKANE LIV:どうですかね…今は本当にこのアルバムを作っていくのがものすごく楽しくて、ライブでどう表現しようかっていうことを考えているんですけど、いろんなことを考えていて凄く楽しいから、「次はどう行こうかな?」って、自分自身で分からないけど凄く楽しみにしています。これだけ思った以上に素晴らしい曲と、詞が集まって、素晴らしいものができたので、ままだとにかくこれにどっぷり浸かっていたいんですけどね(笑)。
 

—でも、例えば次はまた違う新しい展開も期待できそうですね。

 
AKANE LIV:そうですね。どんな形にもできると思います。シンフォニック・メタルは自分のバックグラウンドを生かせるしとても好きだから、ベースとしては持っていますけど、それでもなにかジャンル分けしてしまうと、それも勿体無い気もするので…
 

両方を行うことで、それぞれに生かせることがある。エンターテインメントとして共通している部分って多いと思います。

 

—今回のリリースに合わせて、11/30にライブを行うことが決まっていますね。

 
AKANE LIV:はい、品川のステラボールで行います。今までのライブハウスでのプレイよりも、もっとシアトリカルな感じの雰囲気があるので、それを生かした作り方を構成したいと考えていて、オープニングから「え?こんな風に始まるの?」って思わせたいし、合わせてそこにも自分が経験したことを生かしたいなと思っているんです。
 

—今年の3月に行った2daysライブよりもさらにバージョンアップした格好ですかね?

 
AKANE LIV:そうですね。バージョンアップしていると思います!今度は1日に集約するので、皆がこのアルバムを聴いてそれをその目で「あ、こういうステージがあるんだ」っていうのを見てもらい、物語の世界に入っていける感じにしたいと考えています。サウンドと共に、船に乗り込むみたいな、そんな感じを楽しんでもらえたらいいですね。
 

—そではとても楽しみですね。では、内容はあくまで「乞うご期待!」ということで。

 
AKANE LIV:そう!これはもういろいろ考えているんですよ。本当に乞うご期待!です(笑)
 

—少し視点を変えて、AKANE LIVさんのシアトリカルな部分、舞台女優という面とLIV MOONというシンガーとしての面との関わりについてお話をうかがえればと思います。具体的な話ですが、今は舞台の活動とLIV MOONの活動は、どれくらいの比率で活動をされているのでしょうか?

 
AKANE LIV:基本的にはLIV MOONがべースですね。LIV MOONのスケジュールに支障のない組み方で、舞台を入れています。舞台の活動って、LIV MOONでは経験できない、自分の楽曲ではない曲を使うわけですから、外の世界っていうイメージがあって、そういうところから新たな自分を知ったり、例えばライティングとか「LIV MOONではこんな感じが使える」とか(笑)いろいろなことを学ぶことができるので、なにか外で自分を磨くことができる機会としてやっていきたいと思っています。
 

—でも結構舞台活動って、期間や労力を使う部分はありますよね?スケジュールってうまく組み込めるものなのでしょうか?

 
AKANE LIV:確かにリハーサル期間は長いですね。1週間の公演でも1ヶ月くらいはリハーサルを行いますからね。でも、皆様のお力を拝借して(笑)「ここだったら入れられるかな」っていうスケジュールを組みつつやっていますね。でもリリースが近いときには「こっちを優先させてください」って言ったりもしていますけど。
 

—AKANE LIVさんのバックグラウンド的なところをおうかがいしたいのですが、もともと音楽的な部分に触れたきっかけっていうのはどのようなものだったのでしょうか?

 
AKANE LIV:音楽は小さい頃からとても好きで、音楽の授業ももともと好きでした。初めて見た生のエンターテインメントが実は宝塚だったので、そこからステージにはまってしまい、宝塚の主題歌が常に家に帰っても鳴っているような状態でした。
 

—その幼い頃の音楽っていうのは、あまり「宝塚が好き」「クラッシックが好き」っていうよりは、もっとボーダレスな感じだったのでしょうか?

 
AKANE LIV:そうですね。歌っているときが一番楽しくて、嫌なことも忘れられて。例えば歌詞が凄く感動的だったら、歌いながら泣いちゃうような変な子だったんですが(笑)人それぞれ自分を表現できて幸せになれるものってあると思いますが、それが自分には音楽でした。
 

—それが、歳を経て舞台女優や歌手という方面に進みたいと思ったきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

 
AKANE LIV:最初に見たのが生のミュージカルで、あの空間の中で歌ったり踊ったりしてみたいと思ったので、子供の頃から、最初の夢は宝塚!って思っていたんですけども、いざ宝塚に入ってみると自分には高音があったり、いろんなものがある、っていうことに気が付きました。宝塚を退団後に留学してオペラやクラッシックを学んでそれはとても楽しかったんですけど…面白いもので、宝塚で男役をやっているとソプラノが使いたくなったり、外に出てソプラノばかり使っていると逆に地声が使いたくなったり。
 

—では、もともと舞台や歌手活動を行われた中でLIV MOONというシンフォニック・メタルを行おうと思われたきっかけって何だったのでしょうか?

 
AKANE LIV:きっかけは、イギリス留学から帰るタクシーの中で、「オペラ座の怪人」が流れたのを聴いたときでした。「なにかいつも聴いているオペラ座の怪人と違う!?」って思って、タクシーの運転手さんに聞いたら、NIGHTWISHのプレイだと教えてもらったんです。もともと「オペラ座の怪人」って、純粋無垢な女性がとてもキレイに歌っているっていうイメージがあったのに、ヴォーカリストTarjaのプレイは、なにかファントムと同等位の勢いで凄くパワフルな女性が歌っているバージョンで、「これ、凄く面白い!」って衝撃を受けました。
日本に戻っていろいろ調べたら、シンフォニック・メタルっていうジャンルがあって、Tarjaの歌唱法は自分のオペラチックな歌唱法と共通する部分もあり、面白そうだと思っていたら、たまたま舞台で共演した方から「レーベルの方で、シンフォニック・メタルのヴォーカリストを募集しているらしい」というのを聞いて、ちょうどTarjaのことを知っていた頃だったので運命的なものを感じました、自分でもやってみたいと思っていたし、レーベルも着眼点は一緒でしたから。ただ、やっぱりメタルを全く知らなかったので、ちゃんとメタルを聴いて学んだのはLIV MOONを始めてここ3年くらいだと思います。BON JOVIQUEENは好きだったけど、それはもっとメタルというよりはストレートなロック的要素ですし。
 

—かなり遅咲きなメタル・ファンですね。

 
AKANE LIV:もう凄く遅咲き(笑)ただ、今ガールズ・バンドって一杯出てきているけど、その子達はもともとメタル好きじゃないですか?そういうわけではなかったから、私には余計に新鮮ですし、だからこそ私にしかできないシンフォニック・メタルってできると思います。一緒にやっているメンバーは、メタルをやっているメンバーだったり、そういう人たちと一緒にいろんなことを学びつつ楽しんでいます。でもシンフォニック・メタルに出会うと、バックボーンであるミュージカル的要素を演じたり、普通の歌手よりシアトリカルな表現が使えたりするので、正しく自分が行かせるジャンルだと思っています。
 

—舞台をやられていることがシンフォニック・メタルに生かせているというお話をうかがいましたが、逆にシンフォニック・メタルをやっていることが舞台に生かせるポイントってありますか?

 
AKANE LIV:ありますね。どうしても舞台ってお客さんはお客さんっていう状況の中で、自分はステージの上で物語を演じているわけじゃないですか?でもライブではもっと自分とお客さんとの壁が低くて、そこにいる一人一人のお客さんにパワーを渡さないといけない。そういう部分では自分でも舞台の立ち方が変わりました。ステージに立っていても、ここにいるお客さんにエネルギーを与えないといけないし、一緒にこういう活動を行うことでどちらにも生かせる部分って出てきていると思います。
 

—単に演じているというところから、ステップアップしたということでしょうか?

 
AKANE LIV:しましたね。シンフォニック・メタルっていう音楽をやっているときは、歌の中で自分の表現方法として強さとか、ミュージカル的でない歌唱法とか、そういう変わったことも見せられるので、それに対してミュージカルを見に来てくれたお客さんが“この人は何をやっているんだ?”って新鮮に思ってもらえるような歌い方をして、LIV MOONを知ってもらうようなきっかけになったらいいなと思っています。
 

—そういう意味では、あまりLIV MOONと舞台活動というものを分けて活動をしているという印象は、実はご自身には無いのでしょうか?

 
AKANE LIV:そう、年々壁は減ってきていますね。なにかどちらも生かせればいいのではないかと思います。演じているのは私だし、歌っているのも私ですから、そこを分けちゃうのは勿体無い。前回初めて2daysを行ったときに、自分がそれぞれの役なり歌の人物になりきってプレイしたことはどれも一緒だから、分けない方がいいですよね?そんな風に自分自身思うようになりました。
 

—周りからすると、AKANE LIVさんという方は“元宝塚の人”、そしてそこからシンフォニック・メタルに移行してきた人として、2つの面に分けて見られるということは避けられないですよね?

 
AKANE LIV:まあ、カードは多い方が楽しいですよ。元宝塚っていうカードもあれば、今はメタルもやっているよ、っていうことが今の私の要素で、そのどれかに興味を持ってどちらかを見てもらえばいいので、そのことに対して自分自身今はそれはそれ程気にはしていないです。面白い話なんですが、シンフォニックメタルのシンガーとして活動していると、LIV MOONのファンの方がミュージカルを見に来ていただけるんです。舞台を見に来てくれる男性が多いっていうところが面白くて。
もともと舞台って宝塚もそうですけど、ほぼ8~9割が女性で、男性の方も見に来ていただければとても楽しいと感じていただけると思いますが、なかなかそうなるきっかけがありません。でも例えば今年の頭に私が出た『CHESS in concert』っていう舞台は、実は舞台中に使われた楽曲全部をABBAが作った曲なんですけど、そのLIV MOONのファンである男性の方々もみんなABBAを見てきた世代の方が多くて、みんな「こんなミュージカルをABBAが作ったんだ!」って楽しんでもらえたようです。オペラもロックも、いろんな要素が入っているミュージカルだったので、そういう部分でも皆に新たな扉が開かれて、皆に楽しんでもらえたらいいですね。やっぱり、エンターテインメントが好きであれば、どこかに共通点があると思います。
 
hana 
LIV MOONにおける彼女の位置づけは、ヴォーカリストというイメージが強いかもしれないが、実の存在としてはアルバムのイメージ作りなどLIV MOONの大きな部分を占めていることがインタビューの内容から理解していただけることだろう。もちろんLIV MOONは多くの凄腕ミュージシャン、アーティストに支えられて実現しているプロジェクトであることは間違いないが、この新作にたどり着くまでの間に、彼女が部分的な活動を行ったのではなく、彼女自身が中心となりアルバム全体のイメージを創造しその姿を具現化することに意欲的に取り組んでいる。そこには、アーティストとして活動する垣根を作らない、新しい表現に向けての貪欲な姿勢と、常に新しいものを作ろうとする前向きな姿が垣間見られる。
 
また、その具体的なベースとして、彼女がシンガーと舞台俳優という大きな活動の中の狭間にあることを有効に生かしていることも見逃せないポイントだ。いや、本来アーティストという位置づけには、役割など不要なものなのかもしれない。興味深い部分をドンドンと掘り下げ、追及する。作りたいと思ったものを作り続けるからこそ、その道が究められるのは、自明の理ともいえるだろう。幅広い表現を実現したLIV MOONは、そんなAKANE LIVの成長により実態を構成している。シンフォニック・メタルや舞台女優という部分的なキーワードからでもそれを入り口として、まずは彼女の作ったその世界の広がりを体験してみてはいかがだろうか?彼女のイマジネーションの広さを感じられれば、きっとリスナー、アーティストといった壁すら取り払った、様々な表現の楽しみを感じられるはずだ。

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「THE END OF THE BEGINNING」初回盤(CD+DVD)
発売日:2012/09/26
VIZL-489/3,800円(税込)
CD収録曲:
01.Prologue
02.Free your Soul
03.Fountain of my Pleasure
04.And Forever More
05.Black Fairy
06.The End of the Beginning
07.Valhalla
08.Midsummer Eve
09.Hell
10.霧の葬送曲(レクイエム)
11.Land of Spirit
12.Immortals
13.黄金の涙
14.Voyage
DVD収録内容:
初回限定盤のみDVD付(※「And Forever More」MV& レコーディング風景)
 


 

Photo
「THE END OF THE BEGINNING」通常盤(CD)
発売日:2012/09/26)
VICL-63914/3,150円(税込)
01.Prologue
02.Free your Soul
03.Fountain of my Pleasure
04.And Forever More
05.Black Fairy
06.The End of the Beginning
07.Valhalla
08.Midsummer Eve
09.Hell
10.霧の葬送曲(レクイエム)
11.Land of Spirit
12.Immortals
13.黄金の涙
14.Voyage

 

【オフィシャルサイト】
ビクターエンターテインメント オフィシャルサイト
http://www.jvcmusic.co.jp/-/Artist/A022867.html
AKANE LIV オフィシャルサイト
http://www.akaneweb.net/
 
【ライブ情報】
LIV MOON LIVE2012「The End Of The Beginning」
2012/11/30 品川ステラボール

 

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