特集

TEXT & PHOTO:桜坂秋太郎

デザイン・フェスタ。創作が好きな人にとって、これほど胸おどるビッグイベントはない。かく言う私も、プライベートでは3回ほど遊びに来ている。新しい感性との出会いがたまらないイベントで、広い会場の中に一歩踏み入れれば、ありとあらゆる様々なアートと出会えるのだ。公式情報によると、1994年からスタートし、毎回1万人以上のアーティスト表現を支えてきたとか。



デザイン・フェスタは、オリジナル作品であれば審査無しで参加することができるのが特徴。誰でも参加可能というのは本当で、日本にこのようなアートイベントがあることを誇りに思う。ヨーロッパのように、文化としてのアートが根付いていない日本では、新しい創造性に対してのクリエーターの表現の場が圧倒的に足りない。



私は日本の良き伝統や繊細な感性と、ユニークで自由なアート的発想が融合すれば、日本はもっと素晴らしい文化を築いていけるのではないかと思っている。そのためには、誰もがクリエーターになれる環境を整えることが大切だ。デザイン・フェスタに来ると、出展者達の感性に大きな刺激を受ける。アートとは無縁の生活をしている人でも、人生を楽しむヒントを、何か得ることができるに違いない。



ものすごいエネルギーが渦巻く東京ビッグサイトの会場内で、私の心をつかんだアーティスト達を一部紹介してみたい。実は足を止めるブースの数は100以上あったのだが、ジャンルやスタイルを問わず切磋琢磨する環境は、時間を忘れてしまうほどに魅力的な空間である。デザイン・フェスタからのアーティストコラボレーションが、日本のアートを変える日が来るのではないか?と真剣に思う。

フロムラルム(from larm)
http://2nd.geocities.yahoo.co.jp/gl/a_from_larm/

■何回目の出展ですか?
初めて出展しました。初めてなので緊張しています。
■普段からアーティスト活動を?
いえ。普段はカフェで働いています。
■唇がインパクトありますね。
もともとは折り紙の折り方で、唇があるのを知っていて、それを最初は布でやってみたら面白いかも!と思って始めました。
■苦労した点は?
折り紙は正方形のままで折ると小銭が落ちてしまうので、実用性を考えました。何回か改良を重ねて、自分のオリジナルの型紙を作って作品化しています。


紙龍-SiRYU-
http://01.mbsp.jp/siryu/

■ものすごく細かい作品ですが、全部紙ですか?
はい。すべてそうです。何度か出展していますが、展示しながら制作も同時に行っています。
■有名企業のキャラクターもありますね。
会社のキャラクターを見せていただいたら、すぐに展開図が頭に浮かびます。このパーツはこうしたら立体的にできるとか。
■いつ頃から作品を?
6歳から折り紙を始めました。高校生くらいでパーツごとに折り紙を折ったら、もっともっと凝ったことができるんじゃないかな?って思いました。そこから感覚で作品を作り始めています。
■普段は何をされていますか?
普段からアーティスト活動で生計を立てています。あと、体験教室で小さい子にも教えています。


KEI KISHIMOTO
http://www.maroon.dti.ne.jp/japonegraphica/

■クールな映像ですね。
和柄と最新テクノロジーを合体して、上品に仕上げたようなイメージです。
■普段からアーティスト活動が中心ですか?
アーティスト活動は、完全に趣味でやっています。活動という意味ではVJがメインですね。本業はサラリーマンです。
■物品もデザインが凝ってますね。
すべて一点物です。テーマがある物もあります。
■何回目の出展ですか?
今回で5回目です。フェスタVol.17の時には、映像で選ばれた事もあります。今はたまたま東京に転勤となったので、近いし、力を入れて出展しました。


蒼鬼ハル
http://blacktower.web.fc2.com/

■色使いが独特ですが、完全創造の世界ですね。
頭にパッとイメージが浮かぶと言うよりは、例えばシャボン玉を描きたいと思ったら、その中に何を詰め込んで描こうか…と考えて、ストーリーができます。
■何回目の出展ですか?
もう何回目かわからないくらい出展しています。
■常連さんですね。普段は何を?
出展はアナログ作品をしていますが、普段はフリーターやりながら、デジタルなイラスト仕事を請けています。
■主な発表の場は?
年に数回デザインフェスタギャラリーの方で、グループ展に出展しています。その他、お誘いをいただいたグループ展などへも出展してます。


SHiNPEi
http://cosmicgizmo.web.fc2.com/

■ロックなテイストのイラストですね。
マンガっぽい絵なので、外人さんが好きとよく言ってくれます。
■こだわりの部分を教えてください。
洋服のシワや、八頭身できれいなライン。そして妖艶で悪ってイメージで描いています。
■普段は何をされているのですか?
普段は本業でイラスト描いています。あと専門学校でファッションの絵も教えています。
■何回目の出展ですか?
今回は友人と一緒に出展していますが、個人では過去4回ほど出ていまして、今回5回目ですね。展示会などをやっていた関係で、出展は二年半ぶりです。


退廃浪漫
http://969.under.jp

■和をテーマにした作風ですね。
高校生くらいから6,7年やっていますが、まとまってきたのは最近です。
■何回目の出展ですか?
もう数えきれないくらい出ています。特に外国の方が興味を持ってくれます。日本的なのがウケるのが嬉しいです。
■制作作業はどのくらいかかりますか?
作業自体は一日二日で終わります。元絵を手書きして、Illustratorで作っていますが、描き起こすのは早いですね。
■データ化の作業が早いということは、イラストが本業?
普段は、グラフィックデザインやwebデザインをやっています。この作品は趣味で作っています。


Erizabeth
http://rouge2.net/

■独創的でクオリティの高い作品ですね。
自分のブランドで“ルージュ”というのをやっています。エナメル素材を中心にしたスタイルです。
■デザインから制作までを一人で?
はい。完全オーダーメイドです。今はオーダーが中心ですが、これからネットショップをやろうと思って色々と頑張っています。
■何回目の出展ですか?
今回が初めての出展です。宣伝になるかなって。
■後ろの写真はファッションショーですか?
イベントに出た時の写真を飾ってます。


真貝 栄
http://hwm3.wh.qit.ne.jp/shingai-ei/

■何回目の出展ですか?
今回で5回目です。写真を撮っていく方が多いですね。
■作品にプライスタグが付いていますが、結構売れますか?
前回は結構買っていただきましたね。今回はこれからです。
■一つの作品にかかる時間を教えてください。
息子が寝た後に描いているので、夜だけ作業して、だいたい1点に四日か五日かかります。
■制作は趣味ですか?
完全に趣味でやっています。一年に一度、個展もカフェで開いたりしています。展示会や個展に向けて作っている感じですね。


VI☆妙(変頭痛・洗濯挟美)
http://www.myspace.com/1004939503

■かなり変わったブースですね。
このスペースでライヴもやっています。5cmの高さの赤いプチステージもあります!
■プチステージ…面白い発想です。何ステージやりますか?
一日3ステージやります。今回のコンセプトはラーメン屋台で出展しています。理由はラーメンが好きだから。ラーメン関連グッズを作って売っています。
■メインは物販なんですね。
はい。物販先行型アーティストです。物販をメインにしながら、ライヴをやっています。MyspaceとTwitterもやっています!
■何回目の出展ですか?
3回目です。ここで知り合った人が主催するイベントに出させてもらったこともあります。


音楽好きにとっては、野外のライヴコーナーは欠かせない。広く青い空に、気持ち良いビートが溶け込む。屋台のフードを頬張りながら、幸せな時間を過ごすことができる。会場のあらゆる場所で繰り広げられるパフォーマンスにも、拍手喝采だろう。作品は派手に目を引く物から、深い世界を緻密に繰り広げている物まで多種多様で、才能は無限なのだと実感できる。


冒頭に書いた通り、日本はアートな文化に対するフォローが足りていない。国や行政が本腰入れてくれると、アーティスト達の表現の場も増え、活躍するマーケットができてくる。マーケットができれば、アートで食べられる可能性も高くなり、雇用や年金問題の話まで飛躍した議論が可能になる。


一つ一つの才能、それがどれほど素晴らしくても、リンクするシステムが無ければ文化は育たない。デザイン・フェスタが担うべき部分は、そのリンクするシステムだ。主催者側もそこを大切に考え、それをアーティスト達が信じることで、今回のVol.34まで定期開催されてきたのだろう。すでにVol.35がアナウンスされている。2012年5月12~13日は、今からデザイン・フェスタ行きの予定を立てることをお薦めしたい。

◆デザイン・フェスタ公式サイト
http://www.designfesta.com/