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TEXT & PHOTO:桜坂秋太郎

2年に一度の祭典“楽器フェア”。前回2009年は、ビーストマンによるギターを中心としたレポートをお届けした。2011年の楽器フェアは、パシフィコ横浜で11月3日~6日の4日間開催。早速その様子をレポートしたいと思う。しかし、BEEASTは2012年元旦からの復刊のため、細かい話はすでに他媒体にて紹介されているはず。今回は特に楽器をやらない私の目線で、独自に楽器フェアをレポートしてみよう。

 

 

国内外の楽器メーカーや、国内有名楽器店などが出展するこのイベント。楽器好きには夢のような祭典だ。貴重な逸品から、最新テクノロジー満載の新商品まで、興味は尽きないはず。プレスパスをもらい会場に入ると、流線形が印象的な小室哲哉スペシャルピアノと、YOSHIKIクリスタルピアノが目に入る。多くの人が足を止めて写真を撮り、その美しさについて語っている。

 

 

大小ブースを通り抜けると、電子ドラムだけを置いた広いエリアが登場。フリーに叩けるこのスペースでは、大人から子供まで、思うがままにドラムを叩いている。すべてのドラムセットにヘッドホンが装着されているため、パットを叩く音だけが静かにパタパタと聞こえる。老若男女、複数に声をかけてみると、全員が口をそろえて「今一番欲しい物です!」。

 

 

打楽器や管楽器のブースは、一見すると普通の方々が多く、街を歩いているだけでは楽器好きとはわからない。それに比べてエフェクターやアンプが置いてあるブースには「プレイヤーです!」と背中に貼ってあるかのようなオーラの方々が、無心に音を出している。まるで議論をしているかのような、来場者同士が熱い雑談を繰り広げているブースも見かける。

 

 

一番目立つYAMAHAブースでは、サイレントシリーズが複数展示され、長い順番待ちができている。特設ステージでもサイレントシリーズを使用したデモ演奏が繰り広げられ、多くのオーディエンスが凝視している。新発売のアンプにも、人だかりが出来ている。こうしたデモ演奏は、楽器フェアならでは。各ブースの人気は、やはり有名ミュージシャンによるデモ演奏に左右されるのではないかと思う。

 

 

別途特設ライヴステージも設置されているが、楽器フェア内に専用ステージを組んで、ライヴを展開しているブースがある。カスタマイズギターの老舗ブランドESPのブースでは、トラックの荷台を使ったステージに、人気バンドが登場する。Rolandブースでは、クローズドな空間を演出し、こちらも人気バンドによるデモ&ライヴ演奏が行われている。

 

 

楽譜売り場コーナーでは、お買い得なプライスとなった楽譜を買い漁る方々が、大きな包みを抱えて歩いている。その横では、無造作に置かれた電子ピアノでセッションをする女性達が、楽しそうな笑顔を見せる。人それぞれに、楽器への思いは違うが、“愛”は同じだと感じる。私は楽器をやらないが、弾けもしないアコースティックギターを買ってしまったくらい、楽器は好きな方だ。

 

 

全体的な印象として、ギター系のブースは人気が高く、ギタリスト人口の多さを物語っている。どこのブースも、試奏バトルの火花が散っているのは明らかだ。ギタリストではないので、私はサウンド面からのレポートは一切できないが、眺めるだけでもウットリするようなルックスのギターをいくつか画像で紹介したいと思う。芸術的な美しさを目の前にすると、本当に足が止まる。

 

 

会場は男性だけでなく、女性同士や家族連れの姿も多い。今は女性プレイヤーも増え、活躍する時代。見るからにマニアックな、何に使うのかもわからない小さなパーツを置くブースで、真剣な眼差しの女子を複数見かける。作り手の職人魂と、使い手の音に対する研究の融合が、楽器フェアというイベントの一つの意味であることに気が付く。

 

 

iPadなどを利用した新しいデバイスのテクノロジーは、思ったほど出展されていなかった。おそらく次の楽器フェアではその数を大幅に増やしてくるに違いない。さらに次の時代では、斬新なデジタル機器群が、会場を一番沸かしているかもしれない。それでも結局、音楽は人が生み出す物。楽器はそれを表現する手段にすぎないのだ。その根本は、昔も今も未来も変わることが無い不変の法則だろう。

 

 

◆楽器フェア 公式サイト
http://musicfair.jp/