特集

BEEAST密着取材_WILD_FLAG

TEXT&PHOTO:桂伸也

【密着レポート第10弾:WILD FLAG】

日本のロック・ギタリストの中で常にトップを走る続ける雄、山本恭司。日本でも伝説的な存在として名高いハードロック・グループVOW WOW解散後、彼の新境地を示したバンドWILD FLAGは、ハードロック・ファンの間で大きな話題となった。当時まだデビューしたてながら、強力なリズムセクションを司った英二、庄太郎満園兄弟との抜群のチームワークも、大いに話題になったところだ。あれから20年、山本恭司は日本ロックギタリストの頂点を更に極め、遥かにビッグな存在となった一方で、満園兄弟も方々のセッション活動でミュージシャンとして強靭なタフネスを身に付け、今やベテランの風格を持ったプレーヤーとしてその名を轟かせている。そんな彼らのミュージシャン人生の中でも、WILD FLAGというバンドは、重要な意味を持っている。この日、その彼らが結成20周年を記念すべくワンマンライブが行われた。その模様から、山本恭司と、満園兄弟によるこのバンドが放ち続ける魅力に迫ってみた。

WILD FLAG is:
山本恭司(以下、恭司:Guitar & Vocal)、満園庄太郎(以下、庄太郎:Bass)、満園英二(以下、英二:Drums)
hana
 

 

1.ライブ前(13:30~)

 
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オープニング・アクト・バンドのリハーサルが終了し、いよいよWILD FLAGの登場となる。さすがに多くのライブやセッション活動をこなしてきた英二、庄太郎だけにセッティングからサウンド・チェックには、それ程時間を掛けなかった。淡々と進む英二のドラムス・サウンドチェックに続いて庄太郎のほうも、さっと確認を終えたが、この日予備で持参したプレシジョン・ベースを手にし、スタッフに声を掛けた。「サブのベース音も御願いします!64年のフェンダーのPB!!」「倒して壊さないようにしてくださいよ。」「大丈夫だって、!フェンダーがこれで野球をしても壊れないって言ってるんだから(笑)」
 
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シンプルなセッティングの二人に比べ、大量のエフェクト類をずらりと足元に並べていた恭司。彼の音に対する追及心は、今でも衰えを知らないようだ。庄太郎がその様子を見て、彼に声を掛ける。「恭司さん、今日もなんかいっぱい挟まっています?」「挟まっているんですよ(笑)」「あれ?恭司さんまたなにか増えましたね。」「そう、これはヴォーカル用なんだよ」ヴォーカル用のハーモナイザーで、「She’s so Hot」のサビをちょっと試しに歌い、庄太郎を驚かせた。CD音源で聴かれるこのフレーズは、現在はこれにてコーラスを入れている。更に、「R&R TRAIN」のキメの部分を打ち合わせる。ディレイ、サンプラー等を駆使した複雑なギミックが盛り沢山。
 
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いよいよリハーサル。「She’s so Hot」から1曲1コーラスずつプレイし始めた。しかし途中、「Magic Woman」をプレイし始めると、突然ギターがハウリングを始めた。ここで足止めを喰らう。時間つぶしに何となく、ベースラインを爪弾き始める庄太郎。いつの間にかそのラインに合わせ、英二がリズムを合わせる。何かの曲ではないが、抜群のグルーヴを持った音が流れ始める。リーダーとして重要なポジションにある恭司の存在もさることながら、ムードメーカーである庄太郎、あくまでマイペースな英二、それぞれ全く違った個性を持ちながらも、このバンドでの位置をしっかりと確立している。三者三様のバランスはプレイの凄みだけでなく、ステージに向けての作業でもその存在感を示していた。
 
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英二のドラムソロに繋がる部分で声を上げた庄太郎、そこに突っ込みを入れる恭司。「ここでドラムをフューチャーして…」「いやいや、フィーチャーでしょ!?フューチャーって“未来”だよ!?」「え?そうなんですか?まあそこでドラムに明るい未来が…」しっかりとボケと突っ込みを作る。まるでMCの練習を聴いているかのよう。どこまでが本気か冗談か分からないが、代わりに超絶技巧を駆使したプレイの中でも、適度なリラックス感を維持したまま、リハーサルは進む。
 
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アコースティックタイムのチェック。マイペースな雰囲気で終始する3人。20年という経験がなせる業だろうか。こうしてようやくリハーサルが終了した。リハーサルは30分以上も押したが、特にスタッフやメンバーには、焦りのような様子も見られない。会場と全員の動きをある程度把握し、「今日はこんなステージになる」というところを、恭司はまるで隅々まで把握しているようにも感じられた。それが長年日本のロック界でスタートして君臨し、いかなるときでも最高のステージを行うことができる、それは別に言わなくても、といった自信の様な様子から垣間見られた。
 
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2.ライブ(19:30~)

 
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オープニング・アクトのステージも盛況のうちに終わり、いよいよ待ちに待ったWILD FLAGのステージだ。ワイルドなジャングルを表すようなSEの中、象の鳴き声が聴こえる。そのスケールの広さ、存在感の厚さが、WILD FLAGらしさを醸し出していた。そして3人がステージに現れると、大きな歓声が会場に響く。SEがブレイクすると、遂に恭司がギターをかき鳴らし始めた。ステージは「She’s so Hot」よりスタート。「燃えるような夢を見させて 俺を白い灰に変える それが全て分かっていても お前の魔力からはもう逃げられないだろう」力強い恭司の歌声は、曲の中で示す“She”よりも、WILD FLAG自体のことを示しているようにも聴こえる。猛烈に響くベースの上を、平常心をかきむしるように鳴り響くギターのリフ。そして聴くものを魅了する恭司の歌声。まさに彼らの魔力から逃げ出せない観衆、そのの視線は、ステージで繰り広げられる一挙一動にしっかりと捕らえられていた。
 
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続いた「Magic Woman」で、妖しい魅力を更に醸し出し、観衆の意識をグッと掴んで、恭司はステージのスタートをコールした。「Thank youどうもありがとう!今日は20周年記念ライブへようこそ!」彼自身には、言葉どおりの20周年を強く意識しているような様子は見られなかったが、見ている側にはその重さがはっきりと伝わってきていた。言葉に出す数字ではなく、何よりもそのプレイの凄みで、その歴史の重さをしっかりと感じさせていた。そして“ワイルド庄ちゃん”こと庄太郎が観客を煽り、更に会場の空気を暑くしていく。「Are you Ready!?」「Yeah!」「Ready!?」「Yeah!」「Yeah!」「Yeah!」感極まったところで、ヘヴィな「Live to be Wild」、「R&R TRAIN」へと続く。ドライブ感抜群のプレイに拍手喝さいが常に飛ぶ。最後のブレイクから、エフェクターとアーム技を駆使し、列車が疾走する音を模したようなSE、そして庄太郎の“杉ちゃん”ネタをもじった一言で、洒落たキメを演出した。「どうだ?ワイルドだろ?」
 
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それまでの「ワイルドな」雰囲気からは一転し、バラードでもその凄みを発揮する。4曲目の「I’m a Boy」では、アメリカン・ロックのようなスケールの広さの中で彼ららしいロックの魅力を存分に披露。中でも光ったのは、恭司がソロに表わした歌心の素晴らしさ。例えばフレーズとして譜面に、音符では表現しきれない微妙な表現が、歌声を表わしているように聴こえてくる。市販されているスコアをそのまま弾いてもそのまま同じように聴こえてこないことは目に見えている、彼がプレイすることの意味深さを、まざまざと観衆に見せ付けていった。
 
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ここで、恭司WILD FLAG結成のエピソードから、当時の様子を庄太郎と懐かしそうに語る。若かりし頃の英二、庄太郎の様子、そして知られざる彼らの、更に「ワイルドな」兄の存在、そしてここまでの彼らの道程。ミュージシャンがデビューし歩む歴史を、ほんのひと時の語りから、皆が垣間見る。そして「大きくなったぞ!」という確かな証しを見せるように、「ワイルドに」、Jimi Hendrixの名曲「Fire」を庄太郎が叫ぶように歌う。間に設けられたソロタイムではベースをフィーチャーしたり、恭司庄太郎がバトルを展開したりと、見所も満載。更なる興奮がフロアを包む。そして、猛烈なキメが会場全体の注意を引く「Hunter」でラスト寸前にドラムの英二をフィーチャー。
 
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そして英二を前に呼び込み、しばしMCタイムへ。普段それ程会話に入らない英二をイジリ倒し、またアットホームな空気にしたあとは、『マイルド・フラッグ』と銘打ち、アコースティック・タイムへと移る。オシャレなネーミングだ。アコースティック・ギターでも、ハードなサウンドに負けずグルーヴを出しているのも、さすがは恭司のギターといったところだ。泣きのギターをアコースティック・ギターでも存分に聴かせる彼の技量には、皆じっと聴き入らざるを得ない様子だった。哀愁味のある歌いっぷり、独特の歌い方を持つ恭司の歌。歌詞に鏤められた言葉の、それぞれの意味だけでは伝わらない何かが、メロディに乗ったことで伝わってくる。更にここで突然英二に無茶振りのギター・バトンタッチ。スライド音を加えたブルージーな英二のアコギプレイに皆大満足。恭司庄太郎も、タンバリンとギターで合わせ、予想外の盛り上がりを見せた。
 
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もう1曲1曲が見過ごせない、どれも注目のポイントを持ったステージは、後半に差し掛かる。再びバンドとしてセットした彼らの次のもくろみはなんと、曲から指定された音で曲を即興で作ってしまうという恐ろしい試み。指定されたのは、“シ”“ファ”“ミ”の3音。これだけにWILD FLAGの持ち味を加えただけで、いきなりヘヴィでダークな曲が一発出来上がってしまい、更にエンディングに向けて盛り上がりの場を作り上げた。
 
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「ここからNon-Stopだぜ!」庄太郎が叫ぶ。WILD FLAGが産声を上げたファーストアルバム、そのオープニング・ナンバーである「Fiction」から、クライマックスに向けてののろしが上がる。続いた「Going on」では、WILD FLAGのステージではおなじみ、庄太郎が大きな旗を、フロアの上をなでるように振る。その壮観な様子は、WILD FLAGならでは、20年の歴史を積み重ねたからこそ出来上がった風景ともいえよう。更にラスト間近で、「今年何周年?」「20周年!!」その一言を待っていたかのように、エンディング20連発を敢行。もうここからはWILD FLAGの土壇場。フロアとの掛け合いが強力なエネルギーを生み出す「Freedom」から、最後の「Count Down」まで全力投球、まるで自らの音に陶酔する恭司の姿に。身も心も奪われた観衆は、ステージからのサウンドにただ熱狂するばかりだった。
 
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セットが終わり彼らが去ると、フロアから必死のWILD FLAGコールが湧き上がる。再びステージに戻ってきた恭司庄太郎は、感謝の念を告げながら、杉ちゃんネタ連発でフロアを和ませる。アンコールではWILD FLAGのオリジナルももとより、 またもJimi Hendrixの名曲「Purple Haze」。なおもせがまれて登場したセカンドアンコールでは、ロック・スタンダード「Wild Thing」へ。恭司のリスペクトの思いを強く感じると共に、強力なグルーヴを巻き起こす3人の姿が、かつて御大、Jimi Hendrix Experienceが見せたような、お互いのプレイで触発されるケミストリーの様子が見られた。
 
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3.ライブ後(21:00~)

 
汗だくで楽屋に戻った3人。心地よい疲労感が彼らを包んでいるようだった。そんな彼らのは、一つの大きな壁を乗り越えて、ことを成し遂げたというような気負いは微塵も見られない。この日が20周年記念というイベントとは思えない、いつもの通りライブが終わり、その余韻を楽しんでいるような様子が見られた。大御所と呼ばれる域に達しても、全くおごることのない彼ら、その雰囲気がかえって彼らを、大きく見せているようにも感じられた。
 
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◆公式サイト
山本恭司 オフィシャルサイト
http://www.kyoji-yamamoto.com/

◆セットリスト:
M01.She’s so Hot
M02.Magic Woman
M03.Live to be Wild
M04.R&R Train
M05.I’m a Boy
M06.Fire
M07.Hunter
M08.Love to You
M09.New Song
M10.Fiction
M11.Magma
M12.Freedom
M13.Going on
M14.Count Down
Encore
E01.Wild Streets Corner
E02.Wild Land
E03.Purple Haze
2nd Encore
E04.Wild Thing

 
hana
 
筆者はちょうど20年前、結成されたばかりのWILD FLAGのライブを見ていた。あの頃からカッコいい、「なんてカッコいいバンドが出てきたものだ!?」と驚いていた。が、そのサウンド自体はあの頃と変わらぬ魅力を放っていた。見方を変えると、すでに20年前、彼らのサウンド、スタイルは出来上がっていたといえるのかもしれない。更にステージの最後に見せた強力な3人の結束は、他の追従を許さない円熟味を醸し出していた。この日ネタとして取り上げられたスギちゃんネタの「ワイルドだろう?」という言葉も、偶然ながらまるで彼らを讃えるがために世に出てきた言葉ではないかと錯覚するほど、妙なフィット感を感じさせたのは、彼らが大きくステップアップを果たしビッグな存在になりながらも、それを変に意識せずWILD FLAGとしてプレイすることを今でも心から楽しんでいることの現われではないだろうか?WILD FLAGの、次のディケイドには、更に“ワイルド”で“パワフル”なライブを、もっと強力な結束力と共に見せてくれることを、願ってやまない。


 

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