特集

Let The Music Do The Talking 〜テイク3

TEXT:桜坂秋太郎 PHOTO:万年平男

Photo80年代後半、その個性豊かなバンドブームの中、スーパーガールズバンドとして登場したGO-BANG’S。そのポップでキュートな3人組が飛ばした大ヒットソングの数々は、今なお色あせることなく私達の心の中に輝いています。
 
スキー用品店のCMソング「あいにきてI NEED YOU」はメガヒット。「無敵のビーナス」「Bye-Bye-Bye」「ロックンロールサンタクロース」「スペシャル・ボーイフレンド」などスマッシュヒットを連発。
 
89年と91年に日本武道館での公演を成功させるも、94年に惜しまれつつ解散。Vocal&Guitarの森若香織(以下森若)さんは、その後ソロとして「Happy Fine Day」「浮気なダーリン」「Heaven」とシングルを発表し、ドラマや舞台にラジオと活動の幅を広げました。そしてデビューから20年が経ち、新たな第一歩を踏み出した彼女に、アーティストとしての活動話を聞いてみました。
 

—昨日のテレビ出演(※)を拝見しました。テレビに出る機会を増やすご予定は?

※中山秀征MCの日本テレビ『おもいッきりDON!』第一部「あの人に逢いたい!!」コーナーに森若が登場
 
Photo森若:特にないです。私は、今は作詞家として君臨したいと思っていまして(笑)テレビは、ちょうど20年前くらいに小中学生だった人が、今ではディレクターになっていたりして、GO-BANG’Sファンだった人が呼んでくれることが多いですね。
 

—今は作詞の創作活動を主にされているのですね。

 
森若:ずっと音楽をやってきて、私は芝居でもなんでも、声をかけてもらうとやっちゃうのです。でもピンポイントで何かを追求してみたくなって。年齢的なこともあるかも。音楽をやってきて、その中でも何が一番ほめられたかな?って考えました。それが一番向いているもの、またニーズのあるものだろうと思って。 それが詞でした。歌がうまいとか、ギターがうまいよりも、詞。私にとっては残りの人生をかけて一番追求したいものです。
作詞も作曲もシンガーもやって、表現者もクリエーターもやって思ったことは、詞って「ごんべんにつかさ」っていうのは、音がないと成り立たない言葉なのだなと。シンガーはそれに言霊として魂を入れる役目の人。それが私であっても、他のシンガーでも、人の心に届くような。誰かに誘われたからやるということではなく、詞を一番やりたいと思っています。 

—詞をつける音楽のジャンルはどのような感じですか?

 
森若:ジャンルは関係ないです。お話をいただくのはこれも縁なので、男の子も女の子もオヤジも関係ないです。私の言葉を歌いたい!という人なら。私を知っているとか、知らないとかも関係なく。
 

—まったく知らないアーティストから、作詞のオファーがあっても?

 
森若:そうです。新人さんの作詞も多いので、これからデビューする人のレコーディングに立ち会ったりしています。去年から作詞家事務所にも入っているので、データだけのやり取りもあるのですが、やはり歌い手が何を考えているとか、どういうことを歌いたいかも相談しながら書いています。
Photoサウンドプロデューサーみたいに、リリカルプロデュースみたいなことを、やっています。今はそういうもののネーミングが無いので、パイオニアになれたら(笑)私の時は、音についてはアレンジャーやプロデューサーなどが、アイデアやセンスを交えて言ってくれるのだけど、歌詞についてはメンタルケアみたいなのは無かったのです。そういうのが必要とされていなかったのかも。
でも今はけっこう皆さん詞を書きますよね。小学校から作文を書くので、誰でもできると思って、皆さん書くのですが。だけどカレーライスと一緒で、誰にでも作れるけど、お店に出せるカレーライスとなると違うと思います。途中で作業に煮詰まった人が、助けてください!ということもあります。だったら最初から何を歌いたいのかを聞いて、じゃこういう言葉があるよと伝えたりできたら良いなと。そういうことを、もっとやっていきたいです。
 

—なるほど。それで今は作詞の活動に力を入れているわけですね。

 
森若:言葉を使って音楽と関わりたいと思っていますが、言葉を使った仕事、例えば小説やエッセイなど文章を書いたりもしています。実は私の中には歌い続けたいという意識がなくて。もともとボーカルがやりたかったわけじゃなく、ギタリストでバンドやっていました。でもボーカルがいなくて仕方なく歌っていたら、忌野清志郎さんに「お前、歌良いよ!」といわれて(笑)それだけを頼りに今までやってきて・・・。ライフワークとしての自分が歌う、つまり言霊を入れる作業は、「新宿ネイキッドロフト」のようなアコースティックな会場などで活動できればと思っています。
なぜかというと、私スポーツが全然できなくて、マドンナみたいなアスリート系の体力派ができないのです。はっきり言えば、体力を使わないデスクワーク派なのです(笑)スポーツはしたくないし、体を駆使して表現するよりは、言葉を使って表現することが自分に向いているなと思います。デビューしてから20年経って、これからの20年を考えると、例えば寝たきりになっていても言葉なら表現できるし。
 

—ファンの方は作詞活動も良いけど、もっと歌を歌ってほしい!とか言われませんか?

 
森若:そうですね。たくさん歌ってほしいと言われます。私の詞を、私が歌ったものが聞きたくて、それがファンの望んでいることだとは思います。
 
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—同時期にデビューされた川村かおりさんが先日亡くなりました。本人が頑張るとか頑張らないではなく、運命のようなものも何かあると思います。詞を作ることは、何かを残してく作業の一つなのですよね。

 
森若:私は思うのですが、どんな物でもどんなジャンルでも、追求をしていくと、ある一つのところに行き着くのかなと。宇宙規模。それとどう折り合いをつけるのか、みたいな。宇宙規模の愛ややさしさ、生命の神秘まで行き着きます。だけど急にスピリチュアルな人になってもどうなのよ?と(笑)
そうじゃなくて、この間抜けな現世に生きていてどうなの?楽しかったり情けなかったりするのに。川村かおりちゃんや、忌野清志郎さんが亡くなって、お葬式ですごく泣いているのに、お腹が空いちゃうような、そういう間抜けさっていうのかな。生きている素晴らしさを伝えられたら。そういう詞を書きたいです。それによって、幸せな気持ちなってもらえるような、リアルなことが書きたいですね。
 

—作詞活動以外に、作品として作りたいものはありますか?

 
森若:小説を書いています。私はこの20年のキャリアの中で、音楽だけでなく、テレビ・ラジオ・芝居含めて、ほとんどのことをやってきたのですが、小説だけはやっていませんでした。たまたま知り合いの出版社の方から話をもらって、今まさに取り組んでいます。
 

—本当に書くことが好きなのですね。

 
森若:それから完全書き下ろしで、ファンクラブだけに毎週メルマガでエッセイを配っています。それには必ず詞がついています。こういうことってあるよね!って、エッセイを書いて、そのあとに詞を付けています。「あ」からはじめて、50音順でやっています(笑)
 

—週間でエッセイと詞を書くのは凄いですね。ファンの反応はどうですか?

 
Photo森若:ファンクラブに入っている方は、詩を深読みしてくれたりして、これはこういう風にも受け取れる〜みたいな話になるようです(笑)うれしいですね。
 

—ファンクラブには、交流イベントのようなものはありますか?

 
森若:ファンクラブができたのが去年なので、まだイベントはやっていません。でも触れ合い系はやってみたいと思っています。ライフワークのライヴも、東京を中心にやろうと思っていますが、体を鍛えて全国ツアー行くぞ!みたいなのは無理かな(笑)
 

—地方のファンは、東京へ観に来てくださいと(笑)

 
森若:地方のファンの方も、東京のライヴに来てくれています。「新宿ネイキッドロフト」は、一昨年にマンスリーライヴをやったのをきっかけに、今は活動のホームグラウンドにしています。「新宿ロフト」って老舗のライヴハウスが、新しくアコースティックな会場を作ったというので紹介してもらったのが、きっかけでした。ファンも「新宿ネイキッドロフト」に集いたいと思っているみたいです。
 

—最後に、森若さんの同世代を含めた大人層に対して、何かメッセージをください。

 
森若:本当に同世代という意味では、川村かおりちゃんとデビューが一緒だし、忌野清志郎さんはデビューのきっかけを作ってくれた最初にお世話になった人だし。何ていうか、人は死んじゃうのだなと。私も振り返ってみると、今まで生きてきた時間の人生は、もう生きられないわけで。人生を折り返していて、今までよりも短い時間をどう過ごすかですけど。
川村かおりちゃんや忌野清志郎さんは、最後の最後まで歌い続けて本当に凄いなと思います。私にはちょっとできないかも。
全部を見せます!っていうようなのはできないから、何か別の方法で考えますね。言葉でさりげなく残してみたり、そういうタイプです(笑)彼女たちみたいに、何かを伝えることができる立場、場所にいるのであれば、まぁ何かやりたいとは思いますけど。
 
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—音楽をやっていない人でも何かを伝えることもありえますね。

 
森若:確かに、ミュージシャンである私たちには、音楽というのが方法論としてありました。音楽の仕事はしていないけど音楽が好きという人なら、子育てや違う仕事やらで、何かしら人に伝えるものがあるかと思います。そして音楽の力で頑張れた!ちょっとしたアイデアに繋がった!というような。そういうのをキャッチするアンテナを、私たちに傾けてもらえたらうれしいです。そういう風に私たちと繋がってほしい。
音楽って本当すごいなと思うのは、残せるということ。不思議な力。曲を聴くと、皆さん自分のことを思い出します。その時その時の自分の歴史。あの時はこうだった、ああだった・・・。映画や芝居は視覚的なものがあるので、なかなか自分には置き換わらないけど、音楽がどうして凄い力を持っているかというと、目に見えないから頭の中で主役を描けるので、自分に置き換えられて聴けるのがポイントだと思います。

 

目に見えないクリエイティブなもので音楽だけが違うのは、自分の人生とリンクできるからだという部分、森若さんと話していて、あらためて考えさせられました。
 
確かに誰もが、思い出ソングを持っていることでしょう。幼少の記憶であったり、青春の熱い記憶だったり、はたまた社会に出た時などの節目など、生きている中で思い出ソングができるのは必然です。
 
インタビューの後日、カラオケメーカーの方とお話しました。今や世界中に広まったカラオケですが、思い出ソングは必ず歌った経験があるようです。それも100%に近い経験らしく、人生と音楽のリンクを思い知らされます。
 
思い出ソングという意味では、森若さんはビーストでコラム『シングルカットラブリー』を展開されています。
 

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—ビーストのコラムニストとして活躍中ですが、率直にどうでしょう?

 
森若:はい。もう、音楽オタクっぷりを発揮したいと思います!中学生から音楽を聴き始めてラッキーだったのは、全部リアルタイムで聴けたこと。私よりもう少し前の世代だと、ローリングストーンズビートルズ。割と決まっていました。でも70年代からハードロックもパンクもニューウェーブも、80’sのダンスミュージックもディスコも全部リアルタイム。どんどん新しい音楽が出てきた時代と共に過ごせたのが財産です。
当時、お小遣いではLPレコードが買えなかったので、EPレコードを買っていました。ようするにアルバムじゃなくてシングルを集めていたのです。コラムではそのシングルコレクションを紹介しながら、私の思い出を語っています。
 

—確かにあの時代はアナログレコードで、私もレコード屋に入り浸っていました。

 
森若:その当時は私、音楽ライターになりたかったのです(笑)「A」はエアロスミスから始まって、「Z」はZZトップまで、ノートに細かく書いていました。買ったシングルも、ボズスキャッグスから、スコーピオンズまで幅広く。誕生日だとLPレコードを買ってもらえたので、フォリナーとかスティーブミラーバンドとかを町のレコード屋で悩んで買っていましたね(笑)

 

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【森若香織 公式サイト】

http://www.moriwaka-kaori.com/

2008/12/11(金)
新宿ネイキッドロフト http://www.loft-prj.co.jp/
森若香織公開ポッドキャスト「Birthday Bionic Voice&Live」

2009/12/15(火)
新宿ロフト http://www.loft-prj.co.jp/
TWANGIN GUITAR FOREVER-13TH YEARS AFTER HOURS-