特集

『ビースト耐久バトル★カート大会』

2009年9月7日 TEXT:桜坂秋太郎 PHOTO:万年平男・桜坂秋太郎

Photo太陽を身近に感じる静岡県は富士スピードウェイにて、2009年8月8日ビースト主催の初イベントが開催されました。
 
ロックとレース、この関係は実はとても深いものがあります。成功したロックバンドが、フォーミュラーレースなどへの冠スポンサーとなった事例もありますし、またテレビなどで放映されるレース(カーレース・バイクレース・自転車レースなど)の番組、BGMの多くがロックミュージックです。ニュース番組などでも、スポーツコーナーのレース紹介時は、BGMにロックが使われていることが多く、レースとロックは密接な関係と言えます。
 
ビーストは新しいメディアとして、ロックと密接なものは取り入れながらカルチャーを築いていきたいと思っています。そのため、レースはコラボレーションの相手として、ある意味もっともふさわしい相手かもしれません。それ証明するかのように、『ビースト耐久バトル★カート大会』の定員32名枠がすぐに埋まるほどの盛況ぶり。スタッフの事前準備にも熱が入ります。熱を入れすぎて、仕出しの弁当にまでゲームを導入しました。
 
まず始めに、レーシングカートについて少し説明しておきましょう。カートと言うと、一般的には「CART」をイメージされるのではないかと思います。これはスーパーマーケットの車輪付きのカゴや、ゴルフ場の電気カーを指しています。乗り物のレーシングカートは「KART」という表記になります。レーシングカートの見た目は、遊園地にあるゴーカートに似ていますが、遊戯目的のゴーカートとはまるで別物です。
 
パイプフレームにむき出しのエンジン、タイヤ、シートを取り付け、ウインカーやブレーキランプなどの装備はまったく付いていません。構造はいたってシンプルですが、立派なレーシングカーの一種です。レーシングドライバーの入門カテゴリーとして、F1などのフォーミュラーレースのドライバーのほとんどは、このレーシングカートの経験者です。オフィシャルなレースでは、未来のF1レーサーを目指す若者達がしのぎを削る激しいレースが展開されています。
 
photo photo
 
オフィシャルなレースとしては、世界選手権をはじめとしたモータースポーツ競技として確立されており、ちょっと楽しむには敷居が高いのが現実です。しかしこのレーシングカートは、ハンドルとアクセル&ブレーキ、その3つしか使わない(ギア付きを除く)基礎的なドライビングとして、運転の勉強にとても良い実態があります。普段乗っている自家用車とはまるで違う、四輪車本来の操作感を知ることで、運転に対する意識が変わったりします。
 
バイクに乗る方だと、車よりも体感速度が上というのがわかるかと思いますが、レーシングカートの場合は、バイク同様に体がむき出しの上、さらに地面に近い場所を走るため、一般的な車の約3倍の体感速度と言われています。3倍の速さを感じるわけですから、実際には50kmしか出ていなくても、150kmに感じます。70kmも出せば、体感的には200kmオーバーというアドレナリンがバンバンな乗り物です。
 
レーシングカートのあるサーキットに行くと、一般の人でも楽しめるようなレンタル用のレンタルカートというものが存在しています。サーキットによっては、車の免許の有無を問われますが、基本的には免許が無くても乗れるので、何かの機会に一度乗ってみることをお薦めします。余計な物が何も無い素の四輪の挙動感は、かなりロックです。地を這う感覚と真後ろでほえるエンジン、ライヴハウスの爆音ロックの高揚感に似たものがあります。
 
photo photo
 
『ビースト耐久バトル★カート大会』は、そんなレンタルカートを8台使い、サーキットを貸し切っての模擬レース形式で開催しました。模擬レースといっても、練習走行・予選走行・本戦走行という本格的な耐久レース形式をとっています。総走行時間にして120分の耐久勝負!普段運動をしていない人だと、筋肉痛は間違いない運動量です。通常のレンタル走行では5分程度乗るだけですから、ランナーズハイのような「レーサーズハイ」を経験できませんが、『ビースト耐久バトル★カート大会』は長い時間走りますので、参加者全員が「レーサーズハイ」を経験できたかと思います。
 
朝10時30分、続々と富士スピードウェイに集う参加読者達。友人と一緒に参加する読者もいれば、単独で参加する読者もいます。レーシングカートの経験者もいれば、未経験者もいます。未経験というか、免許すら持っていない中学生が2名、お父さん読者と一緒に参加してくれました。ビーストは親子で読めるロックマガジンなので、このような参加は本当にうれしいです。ギスギスしてしまいがちな思春期の子と親の絆が、ビーストを通じて少しでも友好に、そして時間を忘れて笑顔で一緒に楽しむ空間を提供できたら、ビーストが存在するメディアの価値があるというものです。
 
レーススタートまでの間、何度かミーティングが開催されます。まずはチーム対抗の耐久レースなので、チーム編成割りによるチームメイトミーティング。はじめましての挨拶から自己紹介に入るチームもあれば、友人や親子同士でチームになっているところもあります。レーシングスーツがロック仕様になっている、素敵なお父さんやお姉さんが目立ちます。
 
photo photo
 
午前中のミーティングが終わると、午後からいよいよレース開始ですが、その前に昼食タイムがあります。仕出し弁当が到着すると、一般的にはそのまま配布されます。しかしそこはビースト。一筋縄ではいきません。弁当争奪ゲームが急きょ開催されました。弁当争奪といっても、豪華弁当が当たるわけではありません。弁当争奪ゲームに負けたチームリーダーは、オカズの無い寂しい「日の丸弁当」を食べなければなりません。この屈辱がさらに午後からのレースを盛り上げてくれることになりました。
 
photo photo
 
弁当争奪ゲームは、子供用ローラースルーを使ったタイムアタック対決でした。いい歳をしてオカズ無しなど食えるか!と全員が意気込み、そして真剣勝負へと繋がりました。でも、勝負の世界は悲しいかな、勝者がいれば敗者がいます。残念ながら敗者の読者には、本当に「日の丸弁当」を食べていただきました。心なしかその瞳が潤んでいたような気がします。
 
午後、いよいよレースです。まずは練習走行からなので、初心者でも安心してレーシングカートに慣れることができます。十分な練習走行の後、今度は予選です。予選というだけあって、練習走行よりはどのチームもペースアップして走っていました。タイムアタックでベストラップを刻んだチームから、決勝のグリッド(本戦のスタート位置)が決まります。全体的には僅差で白熱した予選により、決勝グリッドが確定しました。
 
photo photo
 
インターバルを置いた後、いよいよ本戦。この頃になると、この日初めて顔をあわせたようなチームも、チームの輪が出来てきて、チーム一丸となって戦う姿勢になります。戦うからには意味がないといけません。勝利者には賞品が授与されるとあって、どのチームも優勝目指して頑張ります。BGMはサーキットに流れていませんでしたが、参加読者達の頭の中では、それぞれのフェイバリットなバンドのアップテンポなロックナンバーが、ガンガンに流れていたことでしょう。
 
レースにつき物の事故もなく、定刻に無事チェッカーフラッグが振られ、真夏の暑く熱い耐久レースが終了しました。安全にかつ刺激的に、レースを楽しめたようで、スタッフとしてはホッとした瞬間です。レース終了と同時に、参加読者の顔から緊張が消え、ニコニコした笑顔がこぼれます。自分のチームの順位よりも、やりとげた達成感、走りぬいた快感、それを味わう至福のひと時です。

 

[参加読者の声]


「アドレナリンが出まくりで、ヴィンス二ール(モトリークルーVocal)がバンドより、レース活動に一時期ハマってた理由がわかりました!」
 
「今回初めてカートに乗りました。自分、バンドやってるのですが、ライヴやった後みたいな感覚になってます。すっげぇ楽しいっすね」
 
「カートは何回か乗ったことありましたが、こういうレース形式のカートってやったこと無かったです。これは燃えますね!ハマりそうです」
 
「ロック雑誌が主催だと、車とか知らない女の子でも気軽に参加できるので、今度は友達と参加したいです」
 
「普段からサーキットに通っているし、経験で言えば一番かなと思っていたけど、若い子って速いね!びっくりしたよ、若さには負けるね」
 
「・・・日の丸弁当の屈辱は、次回、絶対にリベンジします!知らない人とも仲良くなれたし、カートは面白かった」
 
「全然知らない人とチームになったけど、同じレース体験を通じて友達になれました。来月、ライヴも一緒に行くことにしました!」
 
「乗ってみるまで、ロックのイメージが正直なかったけど、コレ(レーシングカート)はまぎれもなく、ロックでした!最高!次回も参加したい!」
 
「友人と参加したけど、この雰囲気なら一人でも参加する意味はあるね。単純に楽しいわ。また観たいと思うライヴを観ちゃったような感じね」
 
「今日初めてカートに乗って。お父さんと一緒のチームで走って。とても楽しかった。お父さん凄いなと思った」

順位: チーム名 周回数  
1位: モータースポーツ党 60周 Photo
2位: 三島うなぎ愛好会 60周 Photo
3位: スクーデリア・ウラヤス 59周 Photo
4位: ワカメ酒ゆらゆら 58周 Photo
5位: ダウトユー 58周 Photo
6位: U.S.D. 58周 Photo
7位: SPEAK OF THE DEVIL 58周 Photo
8位: 松江商店街代表焼鳥屋 53周 Photo

 
結果発表により、上位のチームから表彰式に移ります。表彰式では賞品を手に記念撮影。結果のリザルト(レースの競技結果を記した順位表)ペーパーを見て、あ〜でもない、こ〜でもないと、話は尽きません。他チームとも交流し、お互いのチームの健闘をたたえています。よくあるモータースポーツの一つの姿なので、レースが趣味の方には当たり前の光景かもしれません。しかしロック好きが集って、レースをやっちゃう!という意味では、大きな一歩だったのではないかと思います。
 
夕方16時、イベントはフィナーレへ。サーキットから1台そしてまた1台と、参加読者達の車が帰っていきます。今回の舞台となった富士スピードウェイは、日本の高度成長期の1966年にオープンし、伝説をいくつも作った関東の老舗サーキットです。今ではトヨタ自動車の傘下で、全面改修後の2007年にはF1も開催されましたが、今年の7月に「トヨタは2010年以降の富士スピードウェイでのF1日本グランプリの開催を行わない」との報道があり、中止と撤退が発表されています。
 
Photoビースト初の主催イベントは大成功な結果に終わりました。今回はロックと関係の深いレースを取り上げましたが、手軽に楽しめる味わえるものとなると、実際なかなか難しく、レーシングカートにたどり着きました。時間の面と費用の面で現実的なレースが出来たのではないかと思います。またこのようなレーシングカートのレースをやるかもしれませんし、違うものにもチャレンジしてみたいと思っています。
 
こんなこと普通(一般的な音楽メディア)はやらんでしょ!ということに、あえてチャンレンジをしていきたいと考えています。そのために「ロックライフ応援マガジン」というコンセプトがあるわけです。情報誌では絶対にやらない・できない企画を数々展開してみたい、そのために必要な苦労は乗り越えて実現しよう!そういう思いから『ビースト耐久バトル★カート大会』も実施しました。
 
諸般の事情から、出来ることには限りがあるとは思いますが、何事もやってみて、そして考える。失敗を恐れず、軽いフットワークで何でもトライ!そんなロックマガジンがあってもいいのではないかと思います。ビーストは読者に育ててもらいながら、読者と一緒に成長していきたい、強くそんなことを感じたイベントでした。
 

Photo Gallery(写真をクリックすると拡大します)