特集

TEXT :株本和美

2023年5月2日にFBS「めんたいワイド」でも特集され、話題となった福岡発のオリジナルエレキギターブランド「Caramel’s Guitar Kitchen(キャラメルズ・ギター・キッチン)」から、この春、ニューモデルが登場します。そこで、元ラーメン屋という異色の経歴を持つクラフトマン、片田タケシ氏にブランドの立ち上げ経緯や、ギターの制作過程でのこだわりポイント、ニューモデルの特徴などについてお話を伺いました。
 

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それもアリだなって、背中を押されたこともあり、立ち上げることを決めました。
—10代のころから独学でオリジナルギターを作成…そもそものきっかけは?

 
片田:私は佐賀県鳥栖市の出身ですが、17~18歳ごろミュージシャンになることを目指して上京したんです。お茶の水が“楽器の街”で有名だったので早速行ってみたんですよ。道の両脇から路地まで、楽器屋さんがいっぱいあって、楽しくて仕方がなくて。朝着いて、夜8時ごろまでいたのかな。その時、まだ土地勘がないので、やたら歩き回って、閉店間際の7時半すぎくらいにギターのパーツを置いている店を発見したんです。それで、「ギターって作れるんだ!夢のような場所だな~」と思えて。作れるんだったら自分で作りたいと思って、早速、店員さんに聞いて色々見積もってもらい、翌日銀行でお金をおろして買いに行ったのがきっかけです。
 

—もともと手先が器用なタイプだったんですか?

 
片田:図工は好きでしたし、絵を描くのも好きでした。あるアーティストの曲で、“今何時か知ることより/時計の中を開けて見てみたいから”(※)という歌詞があるんですが、それに近い気持ちですね。
The Flipper’s Guitar(フリッパーズ・ギター)「ラブ・アンド・ドリームふたたび / Love and Dreams are Back」
 

 

—初めて作ったギターはどのようなギターでしたか?

 
片田:その時私は、ギターの知識が全くなかったんですけど、たまたまその店員さんが渋い好みの方で、ビンテージテイストなものを推してくれたんですよ。今作っているものも、ビンテージギターという昔ながらのギターなので、それがすごくよかったですね。
 

—周りからの声に応える形で2021年4月に「Caramel’s Guitar Kitchen」が誕生。工房立ち上げの経緯をお聞かせください。

 

 
片田:東京でBARをやっていたこともあるし、その前には醤油ラーメンの美味しいお店で働いていたので、漠然とそれをこっち(福岡)に持ってきてラーメン屋さんをやりたいなと考えていた時に、東京の友人が出張で福岡に来たから、何年かぶりに会ったんですよ。そこで、「片田さん、まだギターブランド立ち上げてないの?」って聞かれて。自分の中では、バンドをやりながら、趣味……ではないけど、老後こつこつ一品一品作って~ってイメージだったんですけど、その友人が、「片田さんの作るギターは魅力的だから、もっと色々な人に使ってもらいたいじゃない?」って言ってくれて。「日本を代表するギターブランドにしたくない?」って言われて、そういう風には考えたことなかったな~って。
 

 

—その言葉がきっかけとなって……。

 
片田:はい。それもアリだなって、背中を押されたこともあり、立ち上げることを決めました。それが、2018年くらいだったかな?
 

—やると決めてからは、大変だったことは?どんな気持ちでしたか?

 
片田:もう、ワクワクしかなかったですね!
 

—ブランド立ち上げ時は、4種類を同時発売というインパクト。その後「V3 NeoAntiqueSeries」が登場。スタートしたときの反響や、ブランドの広がりを実感されたエピソードをお聞かせください。

 
片田:カタログ作りや宣伝などは、(背中を押してくれた)友人にお任せして。私は作ることに集中していたんですけど、カタログの反響はすごかったですね。ギターを知らない方に見せても「すごいね~」って驚いていて、手ごたえを感じました。つい2~3ヶ月前には、ラーメン作ろうと思っていたのにね(笑)。こないだも、千原ジュニアさんのYouTube番組で、ある東京の楽器店に入っていったときに私のギターが偶然映って。それを見た知り合いが、何年かぶりに「これ、片田くんのギターだよね?」って連絡をくれて。ちらっと画面に映っただけでもわかってもらえるデザインなんだな、と感じました。
 

Caramel’s Guitar Kitchen公式サイト:https://caramelsguitarkitchen.net/

 
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まだまだいっぱい、色・形・アイデアが詰まっています(笑)
—片田さんの作るギターはデザイン性がとても高いですし、一度見ると忘れられません。ギターを作る工程はどのように?スケッチ画から入るんですか?

 
片田:頭の中にアイデアがたくさんあるので、スケッチ画は描かないんです。ギターの基本的な構造はわかっているので、デザインと素材、材木の種類で音が変わるんですけどね。基本、頭の中に描いている感じです。今発売している種類もいくつかありますが、それは私の頭の中のごく一部で、まだまだいっぱい、色・形・アイデアが詰まっています(笑)。
 

—SNSにも制作工程の投稿が。カラーが増えているように見えたのですがこれは新作ですか?

 
片田:SNSに投稿していたカラーは、4月に発売される新作ですね。ミュージックランドKEYさんの限定カラーが3種類で、そのあと自分たちのオリジナルカラーも3種類を出す予定です。あ、もしかしたら4種類かも(笑)。
 

—現在発売中のギターのネーミングは“ピーチピンク”や“パプリカレッド”など、食べ物にちなんだ名前でおいしそうですね。

 
片田:私も、一緒にやっている友人も飲食に携わっていたのでブランド名にキッチンってつけたんです。なので特徴を出すなら食べ物に焦点をあてると、面白いかな?と友人と相談しながら決めてます。他がやってないしね(笑)。V3の “ピーチピンク”も、本当は「ピンク」を入れず“バニラピーチ”とかにしたかったけど、そこは売りやすい方に変えて(笑)。“パプリカレッド”も違う名前を想定していたんだけど、「わかりにくいよ~」となり、今の名前になっています(笑)。
 

 

—片田さんのギターは、塗装にもこだわりがあるそうですが?

 
片田:先ほども少し話に出ましたが、ビンテージギターは1950~60年代のギブソンやフェンダーは高価になりすぎて、ほとんど店頭には並んでいなくて、コレクターの元にね…。そういうギターって、塗装がものすごく薄いんですね。塗装って、なんのためにするかというと、木はそのままだと水や汚れが染みこむから、それを防ぐために膜を作るために塗るんですが、昔はあまり技術がなかったから、ニトロセルロースラッカーを何回も吹き付けて、少し染みこんでいっていたりするんですが、木の素材の質感がわかるような厚みなんです。それがなんともアンティーク家具のような感じで、触り心地がよかったり、手になじむ感じだったりして、すごくいいんです。
 
最近のギターでは、ウレタン塗装というプラスチックをペタッと張り付けたようなものが多くて、木の質感を感じられないのが嫌だな~と思ったし。要は、手になじむようなものを作りたいと思って。あとは、ラッカーは薄いから傷がつきやすいし塗装も剥げやすいけど、でもそういうのって、自分の歴史みたいだし、味や愛着がわくようなものを作りたかったので、特にそこはこだわっています。もちろんサウンド面にも顕著に出るんですけどね。
 

 

—自分だけの1本に育っていくような感じですね。新モデルが2023年5月27日(土)に発売されるわけですが、こちらの特徴についてお聞きしてもよいですか?

 
片田:新作は、MGタイプでショートスケール(ネックが短い)のギターなんです。手の小さい子供さんや学生さんや女性も弾きやすいサイズです。もともとMG(ムスタング)は、スチューデントモデルなんですよ。アメリカでは手にしやすいランクだったんですけど、日本だとCharさんとかが巧みに使われて素晴らしい音を出されていて。海外だとNirvana(ニルヴァーナ)のKurt Cobain(カート・コバーン)も使っていて。それにしか出ない音、ちょっとジャンクな音なんですけど、かわいらしさも兼ね備えたそういうギターができたらいいなと思っています。
 

 

—木材なども変えていらっしゃるんですか?

 
片田:木材は、どこの産地でないとダメということは決めていなくて。木材を変えるとサウンド面で違いが出るんですが、新作ではバスウッドというすごく軽い木材を使っています。軽いんですがそれが味となって。音も軽やかな感じになっていますね。
 

 

—木材の種類でかなり変化があるんですね。

 
片田:主に、マホガニーやバスウッド、アルダーという種類があるんですけど、今出ている「V3シリーズ」は、テレキャスタースタイルなんですが、普通はアルダーやアッシュを使うんですけど、うちは冒険してギブソンのレスポールなどに使われているマホガニーを使っています。そしたら、すごくいい音がでました。ギターにちょっとこだわっている方は、テレキャスターにマホガニー?と驚いて興味を持って購入されている方もいらっしゃいますね。弾いてみても、ギブソン系のギターって、中温がふくよか、フェンダー系はシャカシャカ、その中間で「気持ちいい中音が来るね~」って言ってもらえて。違いを楽しんでもらえたらと思います。
 

 

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これを持った時にぐっと気持ちがあがるっていうすごく大切なアイテムなんですね。
—このほか新作にはどんな特徴が?

 
片田:今回、CGKの新作のMGにはピックアップのパーツを大阪の制作家の方にオリジナルのものを作ってもらいました。何度もやりとりをして、数値を計って、素材もいくつか試して、コイルの巻き数など微妙な違いで全く音が変わってしまうのですごく苦労しましたが、やっとできた!って完成した時は嬉しかったですね!
 
前作V1、V2とSicilyセミアコは、名のあるブランドのものを使っているので、それだけでも欲しくなるという方もいて。グレッチに使われているリプレイスメントピックアップ「TV JONES」を使っているんですが、それはルックスもいいし、それが付いているだけで、このギターが欲しいと言ってくれるギタリストもいるので、それはそれで魅力なんですよね。
 

—試作品をブラッシュアップさせていくなかで、大変だった点は?

 
片田:何度も大阪の制作家から送られてきたピックアップを付けては外して、試奏してその動画を撮って、東京の友人にも送って……って繰り返してというのは大変でしたね(笑)。
 

 

—では、譲れないところは?

 
片田:まず絶対的なのは“色とデザイン”です。デザインはすごく大事だと思います。ギターって、アーティストにとって、これを持った時にぐっと気持ちがあがるっていうすごく大切なアイテムなんですね。なのでそういうものを提供できればな、と。そしてサウンドも細部にこだわったパーツ、木材、デザインの中で最良の音を目指しています。だから普通は逆なのかもしれませんけどね(笑)。
 

—ちなみに1本出来上がるまで、どのくらいかかるものなのですか?

 
片田:3~4ヶ月かかります。うちは割と早い方かも(笑)。でも、天候に影響されてしまうので塗装の工程が、一番時間がかかります。スプレーガンで塗装するんですが、湿気が多いと本来の色が濁ってしまうので、その日は作業はお休みしてしまうんでね……。
 

 

—ギター作りにおいて「これだからやめられない!」と思う魅力は?

 
片田:これを買ってくれた人がステージに立って弾く姿を想像したり、見たりすること、こういうことを思い浮かべて作ることがモチベーションにつながっています。
 

—最近はお店に行かずネットで高額のギターを買うお客さんが増えているようですが、近くに「Caramel’s Guitar Kitchen」を置いているお店がない方もいると思います。そういった方に「Caramel’s Guitar Kitchen」のオススメポイントありますか?

 
片田:デザインを誉めてくれる方もいらっしゃいますが、ギターを弾いた方が「デザインだけじゃなかった」って言ってくださることが多いです。弾きやすさも兼ねそろえているんだ、と言ってくださるのは嬉しいですね。ネックを触った時に「握りやすい!」とよく言われます。なので実物に触れなくても今はネットで動画や情報を頼りに購入いただく方が多いですから、信頼していただければ!あと、半年間の保証期間もありますので!
 
どんなジャンルに合うのかは、限定するべきではないと思っているので、弾いてみたい方は、ジャズだろうがロックンロールだろうが、パンクだろうが、使っていただけたらと思います。ちなみにこの前ROCKバンドの人とJAZZバンドの人とBLUESバンドの人に購入していただきました(笑)。
 

—「Caramel’s Guitar Kitchen」のファンの皆様と、新作を楽しみにされている皆様へメッセージをお願いします。

 
片田:とにかく手に取りたくなるような、キュートで、手になじむような、かわいらしく、かつ、かっこいいものを提供していきたいと思います!
 
 

caramel’s guitar kitchen
新作”M1 Young Chef Series”試奏動画とおまけ♪ルックス重視のハンドメイドエレキギター!!(音もいい!)

 



●新作の商品情報●

CGK_M1_Young Chef Series(読み:ヤング・シェフ・シリーズ)
発売日:2023年5月27日(土)
売価:238,000円(税別)/261,800円(税込)
付属品:ロゴ入りソフトケース/保証書付き

・CGK M1_BlackOlive (ブラックオリーブ/黒)
・CGK M1_CarmineApple (カーマインアップル/赤)
・CGK M1_NavelOrange (ネイブルオレンジ/オレンジ)
・CGK M1_BasilGreen (バジルグリーン/緑)

 
 
 
 


 
商品説明

先月4月にミュージックランドKEY限定カラーで先行発売されたMGタイプに続き、CGKカラーで新たに4種類が5月に発売!!
 
福岡発ハンドメイドエレキギターメーカーCaramel’s Guitar Kitchen(キャラメルズ・ギター・キッチン)から新作M1_Young Chef Series(エムワン・ヤングシェフシリーズ)が登場。CGKデザインによるMG型の22フレットショートスケール。特徴的なチェッカードステッチとピックガードに加えて今回の新作M1シリーズ専用に大阪のメーカーとのオリジナルピックアップを開発。 バスウッドボディとのマッチングを最良にするため細めのマグネットワイヤーで試作を重ね、ワインディングパターン、コイルテンションにもこだわったアルニコV。MG特有のハイエンドのキラキラ感をのこしつつ、中音域に出力に太さとパワーを加えて大音量でも対応できるバランスのとれたピックアップが完成。カラーは BlackOlive (ブラックオリーブ/黒)、 CarmineApple (カーマインアップル/赤)、NavelOrange (ネイブルオレンジ/オレンジ)、BasilGreen (バジルグリーン/緑)の4色。ストラップピンは激しいLIVEパフォーマンスでも落ちにくいよう一回り大きいサイズを適用。細部に渡りこだわりの詰まった1本。ショートスケールだから女性でも弾きやすい。トレモロアーム付き。
 

Body:Basswood
Body Finish:Acrylic Lacquer
(Base: Nitrocellulose Lacquer /Coloring:Acrylic Lacquer)
Neck Material:Maple
Fingerboard:Rosewood 300R
Frets:22
Fret Size:Medium wide
Scale Length:610mm (Short scale)
Nut:BoneNut
Pickups(Front):Single-AlnicoV(CGK_Original)
Pickups(Bridge): Single-AlnicoV(CGK_Original)
Switching:3-position
Controls:MasterVolume×1 /MasterTone×1
Bridge:Chrome Tremolo Tailpiece
Peg:GOTOH
Strap Pin:GOTOH Ep-B3
 


 
「Caramel’s Guitar Kitchen」公式サイト
https://caramelsguitarkitchen.net/
「Caramel’s Guitar Kitchen」公式オンラインストア
https://caramelsguitarkitche.stores.jp/
「Caramel’s Guitar Kitchen」YouTubeチャンネルにて試奏動画がご覧いただけます
https://www.youtube.com/@caramelsguitarkitchen5881