特集

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TEXT:Kyota Suzuki

本誌BEEASTが自信を持ってプッシュする太鼓判アーティストの特集、第51弾は切実系ピアノ弾き語りシンガー・ソングライター、野坂ひかり。彼女のライブを見ると、このキャッチフレーズが、そのアーティスト像を見事に表していることに驚かされる。エモーショナルな歌とピアノ。胸に刺さる歌詞。バラエティに富んだ楽曲。その音に触れる度に、“切実”というどこか抽象的な言葉の重みが増し、野坂ひかり(以下野坂)という人間と一体化してゆく。“切実系”とは野坂の生き方そのものといってよいかもしれない。
 
最新EP『サンクチュアリの魔女』は、2ndアルバム『バスルームの人魚』(2018)のリリース以降、ミュージシャンとして大きな進化・変化を遂げた野坂の集大成であり、またキャリアの新章の幕開けを飾る名曲集だ。昨年大成功を収めた、クラウドファンディングのリターンとして作られたCDRバージョンの先行リリースに続き、収録曲の異なる通常バージョンが全国リリースされる。野坂のこれまでの活動について、そしてEP『サンクチュアリの魔女』について話を聞いた。

野坂ひかり New EP『サンクチュアリの魔女』トレイラー

 


 
New EP『サンクチュアリの魔女』
2020/4/15(水) 全国流通Release
¥1,364(+tax)

 
<収録曲>
M01. 僕と猫の物語
M02. 夢の羅針盤
M03. 観覧車の天辺で(re-arrange ver.)
M04. Butterfly Effect(Bonus track/EP ver.)
 
・レーベル:FLOOD TIDE RECORDS
・品番:NQCL-1120
・JANコード:4571217144086
・JASRAC許諾番号:R-2020908
■特典付き公式通販:https://nosakahikari.theshop.jp/items/27694427
 
まるで、魔法のような音楽を。
ピアノ弾き語り“切実系”シンガーソングライター野坂ひかり、新境地を拓くNew EP。
今の野坂ひかりを決意表明する新曲「夢の羅針盤」、初期作品の中でも人気の高い「僕と猫の物語」待望の音源化に加えて、代表バラード曲「観覧車の天辺で」のpf弾き語り+gt+vn+per+cho編成でのリアレンジver.収録、さらに初音源化となる「Butterfly Effect」のEP ver.をボーナストラックとして収録した、充実のNew EPを全国流通リリース。
 
GLAYやOfficial髭男dism・柴咲コウ等メジャーアーティストの作品を数多く手掛けるレコーディングエンジニア 高津輝幸と共に作り上げた今作は、サポートミュージシャンにあいみょん・NakamuraEmiのサポートを務めるパーカッション大塚雄士、YUKIのツアーや西野カナ・aikoのRECに参加のバイオリンあすな、上原ひろみを輩出したジャズの名門バークリー音大卒のギタリスト児玉陵が参加。
くるり・sumika・岡本真夜・斎藤ネコ・布袋寅泰等のメジャーアーティストも信頼を寄せるハイスペックなレコーディングスタジオ「TAGO STUDIO TAKASAKI」での生演奏セッションで、アコースティックバンド編成・弾き語り編成のライブ感溢れる音を収録。

 


 
Online
■野坂ひかりofficial site:http://nosakahikari.com
■Blog【Sing with Piano】:http://s.ameblo.jp/singpika/
■Twitter【@nosakahikari/野坂ひかり】:https://twtr.jp/nosakahikari/
■Facebook【野坂ひかり公式ページ】:https://m.facebook.com/nosakahikari
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■公式YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/user/hikapikarin
■野坂ひかり公式オンラインショップ:https://nosakahikari.theshop.jp/
 
Live
2020/9/5(土/昼) 野坂ひかりBirthday Lunch Oneman Live
「EUPHORIA vol.7」@渋谷 7thFLOOR 開催決定!
OPEN/START:TBA ADV/DOOR:TBA
ACT:野坂ひかり+support member
※詳細は決まり次第野坂ひかり各SNS等でアップ致します。
※コロナウイルスの影響により、無観客配信ライブに変更の可能性もございます。
予めご了承下さいませ。

 
Radio
レギュラー冠ラジオ番組■2019年10月~
さいたまCity FM REDS WAVEにて
野坂ひかり レギュラー冠ラジオ番組 O.A中!
「野坂ひかりの切実ラプソディ」
87.3MHz REDS WAVE
毎週木曜日 夜21:00~ 約一時間番組
http://redswave.com/
音楽活動をやること、音楽のために行動する事がとても自然になりました。

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—アルバムのリリースおめでとうございます!素晴らしい作品になりましたね。本作は、ひかりさんにとって初めてのクラウドファンディングのリターンの一貫としてのアルバムになりましたが、製作にあたってこれまでの作品と心境の違いはありましたか?

 
野坂:ありがとうございます!そうなんです、初めてのクラウドファンディング(以下クラファン)と言う事で、加減が分からずリターンに凝りすぎてしまいまして…。お届けが遅くなってしまい申し訳なく思っています。
 

—でも、時間をかけた分リターンの内容は充実していますよね。

 
野坂:はい。内容にはかなり拘りましたので、楽しんで頂けると思います。リターンのDVDは、定点カメラではなく2カメで編集して、フォトブックもDVD収録のワンマンライブ写真を贅沢に使いました。特典キーホルダーは、きちんとデザイナーさんを入れてデザインしたんですよ。
 
そして、CDR収録の楽曲が一曲違うという点が一番のポイントで、クラファン参加の方は未発表の新曲を一曲多く一足先に聞いて頂けるように、時間も費用もかけて、気持ちを込めてリターンをご用意しました。
 
心境の違いに関しては、七年間働いていた派遣社員を辞めて音楽一本になったので、すごくリラックスした状態で製作に臨む事が出来ているという点が、一番大きいかもしれませんね。音楽一本になってから、なぜか流れが来て色々とご縁があり、どんどん音楽活動へ道が繋がっていくと言うか…やりたかった事を叶えさせてもらっている機会が増えたように思います。
 

—クラファンver.のみに収録された「素晴らしい世界」も名曲なので、クラファンに参加されなかった人にも聴いて欲しい気がします。

 
野坂:はい。リリースするのは「夢の羅針盤」収録の通常ver.のみで、「素晴らしい世界」が代わりに収録されているクラファンリターンの特別ver.は、あくまでクラファンに参加して下さった人限定でリターンCDRとしてお送りします。ただ、今持ってる冠ラジオ番組(「野坂ひかりの切実ラプソディ」 REDS WAVE 木曜21:00~21:55 )で曲を流したら「素晴らしい世界」の反響が大きくて、リリースしないのが勿体ないとの声が強いので、配信シングルとして今後リリースを検討しようかな、と考えています。
 

—『バスルームの人魚』のリリース以降、現在までの約1年半はアーティスト野坂ひかりはもとより、ひかりさんの人生にとって大きなステップの時期だったのではないかと思います。一番変わったこと、大変だったことは何ですか?

 
野坂:繰り返しになりますが、まずは仕事を辞めて音楽一本になった事が大きな変化です。大変だったことは、今まで仕事をやりながら音楽をしていたので、ライブが無い日に感情のアップダウンが最初は激しくて、それに少し戸惑いました。だんだんと慣れて来て、音楽が日常の一部にすっと溶け込んだような気はします。音楽活動をやること、音楽のために行動する事がとても自然になりました。
 

—クラウドファンディングは大成功に終わりましたが、ファンとの繋がりの強さをより感じたのではないですか?

 
野坂:はい、その通りですね。クラファンの期間(一か月ちょっと)はほぼ毎日ツイキャスで雑談配信をしていたのですが、まさか本当にこんなに盛り上がるとは思っていなくて…。びっくりしました。周りもびっくりしてました。最終日のカウントダウン配信では、配信中にクラファンの達成率が一気に20~30%もアップしたんです。それで、リターンの内容をもっと良くしよう!と言う、よく言えばサービス精神で張り切りすぎちゃって、お返しにすごく時間が掛かってしまったのですが…。ファンの皆様が内容で喜んでくれるといいな、と思っています。遅すぎる!と幻滅されたら本当にごめんなさい。

音楽の中では、現実では塗り替えられない過去を塗り替えることができるんです。

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—アルバムのタイトル『サンクチュアリの魔女』の由来について教えて下さい。

 
野坂:最初に「サンクチュアリ(日本語で聖域の意)」と言う言葉が漠然と心に浮かんで消えなかったんです。ファンクラブコミュニティにも「サンクチュアリ・ライト(聖域の光、自分の名前「ひかり」と掛けている)」と名前を付けたので、迷いもあったのですが「サンクチュアリ」はどうしても頭から消せなくて、タイトルは「サンクチュアリなんとか~」しようと思って。 色々考えたのですが、前作セカンドアルバム『バスルームの人魚』のリリース時に「ああ、私人魚になりたくて『人魚』って付けたんだ」って思い返したんです。
 
人魚の他で、私がなりたかったものって何だろう…って記憶を辿って「そうだ、私魔女になりたかったんだ!」って思い出したんですよね。はっとして。それで試しに『サンクチュアリの魔女』って付けてみたんです。“創作”って言うのは人には言えない恥ずかしいような事でも、イマジネーションの世界の中でその気持ちを膨らませてどんどん夢を叶えていくような事なので。そしたら、すとん、と魔女という言葉がハマって。
 
元々ジブリ美術館でスタッフとして働いている時に、来ていたお客さんの女の子に声を掛けられてライブ活動を始めたような人間だから、ジブリ作品の「なんとか~の~なになに(「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」等、~のが付くタイトルが多い)」みたいに~のって言うのが良いかなって思ったんです。 そしたら、これは本当に偶然なんですが今回のEPに収録される楽曲の歌詞には<魔法>という言葉が出て来るんですよね、なぜか。「夢の羅針盤」の<どんな事もまるで魔法みたいに出来るようになれたらいいのにね>とか「Butterfly Effect」の<私だけに使える魔法で 怖い未来 辛い過去も塗り替えて見せるから>とか。これは偶然だけど意味があるなぁと思って、タイトルを『サンクチュアリの魔女』
に決めました。
 

—そういえば、今朝ひかりさんのCDを聴いていたら「夢で逢えるから」(※未発表曲)にも魔法という言葉が出てきました。ひかりさんにとって音楽のもつ魔法って何でしょう?

 
野坂:私は「音楽は魔法である」と言う言葉を、今はっきり言い切る事は出来ないのですが、過去に自分が音楽を聴いていて、魔法としか言えないような体験をしたことはあるんです。音楽には、時間軸が存在しないんですよ。音楽の中では、現実では塗り替えられない過去を塗り替えることができるんです。音楽の中で過去を塗り替えると、現実の自分の気持ちが変わる。現実の自分の気持ちが変わることによって、その先に訪れる筈の未来も自ずと変わっていく。これが音楽の魔法と言えますね。音楽活動を続けることによって、自分の音楽にも本当にその魔法が備わっているのかどうか、自分の人生の中で試しているのだと思います。

音源はボーカルも楽器も一か所も修正を加えていないです。
—『サンクチュアリの魔女』に参加したレコーディング(REC)・エンジニア、ミュージシャンの方々について紹介をお願いします。

 
野坂:まずRECエンジニアに、前作セカンドアルバム『バスルームの人魚』、前々作ファーストアルバム『クリスタロス』と野坂ひかりの全ての作品を録ってくれている高津輝幸さんが参加して下さってます。高津さんは、元々ビクターのスタジオに居た方で、今もメジャーの仕事(GLAYofficial髭男dism等)もされているプロの方で。私が好きで学生の頃聞いていたCoccoのCDにもアシスタントとして参加されてたり、私が音楽をやるきっかけになったBUMP OF CHICKENを録ってる牧野さんと言うエンジニアさんのお弟子さんらしくて。この人に出会えたから、私は音楽の道が開けたと言うくらい、お世話になってる方です。サポートミュージシャンは前作『バスルーム~』に参加してくれたのと同じ方々で、上原ひろみさんを輩出しているジャズの名門、アメリカボストンのバークリー音大卒のギタリスト児玉陵さん、バイオリンにYUKIのライブや西野カナaikoヒグチアイのレコーディングに参加のあすなさん、パーカッションにあいみょんNakamuraEmiさんのサポートとして横浜アリーナのステージにも立たれた、大塚雄士さんにお願いしました。
 

—ライブ会場限定で毎月リリースされているライブCD(『Manthly Live CD』)を聴いても、未発表曲の多さがよく解りますが、ひかりさんというと多作で、膨大な数のオリジナル曲を持っている印象です。『サンクチュアリの魔女』の収録曲を5曲に絞るのは難しかったですか?

 
野坂:実は、この収録曲以外にもレコーディングでは楽曲を次のアルバム用に録りだめしてあるんです…。 二日間レコーディングをしたのですが、一日目はピアノ弾き語り中心にギター児玉さんと5時間で7曲録って、二日目はアコースティックバンド編成で4曲録ってます。 予定していた楽曲は全て録れて、さらにコーラスもその場で録れました。 以前よりは成長出来てるんだ、と実感して嬉しかったですね。 それでも歌詞有りの楽曲は100ちょっとしかないので、もっと曲を作りたいなぁとは思います…。 あと書いてライブで演奏してない曲もいっぱいあるので、どんどん掘り返していきたいですね。 割とこの5曲にはすんなり決まったような気がします。何となく、直感です(笑)
 

—たった二日間で11曲録音って、凄いですね!今、ライブとは別にレコーディング音源はきっちり作りこむミュージシャンが多い中、ひかりさんの作品のレコーディングは珍しいと思います。

 
野坂:そうなんです。一日目も、二日目も全てライブ録音で、音源はボーカルも楽器も一か所も修正を加えていないです。(※現在洋楽・邦楽含む世界の音楽業界でリリースされる音源のおよそ9割が修正済みの物の為、無修正は珍しい現状) クリックも使っていません。参加ミュージシャンがとても卓越した演奏力を持った人たちばかりで、また一度レコーディングをご一緒してるので、息の合ったコンビネーションで、私に合わせて演奏してくれるのが大きいですね。
 

—『サンクチュアリの魔女』は演奏、アレンジのクオリティも去ることながら、ひかりさんの歌声が素晴らしいですね。ボーカル・パフォーマンスはこれまでの作品でベストではないかと思ったのですが如何でしょう?

 
野坂:実は、二日目のアコバンド編成RECの日は最初私の声が全然寝てて、上手く出なくて。少し休憩を挟んで、午後から改めて仕切り直しました(苦笑)だからすごくボーカルに不安があったのですが、そう言ってもらえて嬉しいです。エンジニア高津さんの力がとても大きいと思います。野坂ひかりの声の良さを完璧に把握して、それを生かすように録ってくれて、ミックスやマスタリングしてくれてるんですよね。私のボーカルテイクは、前述したように今時珍しく無修正なのですが、機械で修正していないのが持ち味となって、良さが出ているのかも。感情の入った音に聞こえるため、聞く人の心の奥深く、深層心理まで届くように作用したらいいなと思います。
 

—サンクチュアリの魔女』は全5曲とも曲調、歌詞のテーマともバラエティに富んでいて、ひかりさんのソングライティングの多彩さが凝縮されていると思いますが如何でしょうか?

 
野坂:曲については、よく「同じ人が書いたんだとは一聴しただけでは分からないくらい、バラエティに富んでいる、違い過ぎる」とのお声も頂きます(笑)あくまで本人的には「全部違う曲を書こう!」と意識したり、意図して書いている訳ではなく、出来上がってみたら全然違うものになってる、と言うだけなんです。 私の感覚では、曲を書く行為は、デッサンに近いと思っています。私の脳裏だか精神世界だかの、ここに見えている現実の世界とはまた違う場所で、物理的じゃなくても目の前に‟見えて”いる物を、ただ忠実に書き写す、確かに自分が出会ったその曲を、私が形として再現して現実の世界に持って来て、皆に見てもらう、伝える、それが私の役割だと思っています。

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この曲が生まれたのは、その夢が原因かもしれませんね。
—オープニング曲の「僕と猫の物語」はファンタジックな世界観を持った曲ですね。この曲は何をモティーフに、何がテーマになっているのでしょうか?

 
野坂:よくぞ聞いてくれました!(笑) この曲は、昨年末に実際ご本人様にお会いしたのですが、『テガミバチ』と言う漫画を描かれている漫画家・浅田弘幸先生のイラストのイメージが、すごく頭の中にあって…。 浅田先生が宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』文庫本の表紙イラストを描かれているんです。帽子を被った少年と、夜空を走る汽車が描かれている素敵な絵…。あの絵のイメージが自分の心の中に在って、生まれた楽曲なのかな、と思います。間違いなくインスピレーションは受けてます。
 
『テガミバチ』が、私本当に大好きで、あの漫画と出会っていなければ音楽を続けるのが難しかったくらい。あの青の色が表現されているイラストが本当に好きです。 この曲は歌詞の中に猫が出て来るのですが、私の脳裏に映ったイメージでは、黒猫なんです。金色の目をした黒猫。ヨーロッパとか、そういうイメージが近いかも。 モティーフやテーマと言うのは、改めて言われると難しいのですが…。前述した曲の書き方の所と一緒で、出てきた曲がただこの曲だった、と言う側面は有ります(笑)
 
…私、電車の夢をよく見るんです。電車の中や電車のホームが舞台になってる夢なんですけど。 そこである人と会うんです、夢の中で。電車に乗ってて、「君が頑張ってこっちの世界に来れたら、また会えるよ」と言われて、夢の中で切符を渡される夢を見た事があって、ずっと前に。その人はそのまま電車に乗ってずっと先の駅まで行くんだけど、私だけその途中の駅のホームで降りるんです。渡された切符を持って。 この曲が生まれたのは、その夢が原因かもしれませんね。ずっと覚えてます。忘れない夢です。
 
音の面では鈴の音が要所要所に入っているのですが、これは私は猫が付けている鈴の音だと思ってます。 猫が所々導くように出て来て、鈴の音が鳴り、主人公を物語の先へと道案内のように連れて行ってくれる。 ぜひ、皆さまには主人公の目線になって、曲の中で猫と出会って進んで行く物語を追体験してほしいです。 この世界で生きる事は、まるで物語を生きる事のようにドラマティックで素敵な事に満ち溢れているんです。それは現実でも。
 

—ひかりさんの曲のテーマは、本・漫画、映画、ゲームの世界を人生に投影させたようなファンタジックなものと、リアルな自分の心情を訴えたものとありますが、作品をつくるうえで曲順や構成のバランスはどう考えていますか?

 
野坂:まっっっっったく何も考えてません、すみません(笑)ただ出てきた曲を書いて、それが直感?でこの形に自然となっただけ、です。
 

—そうでしたか(笑) 既にライブではお馴染みの「夢の羅針盤」や「Butterfly Effect」は、暗いニュースが続く2020年の今、前を向いて必死で生きている人たちに光を与えてくれる曲ではないかと思うのですが?

 
野坂:そう感じて下さって、嬉しいし有難いですね。まさか今こんな事態になるとは皆が思ってなかったかと思うので…。 今回リリースする曲は(クラファン版のみ収録の「素晴らしい世界」も含めて)、何か、光が見える曲が多いですよね、なぜか。「素晴らしい世界」も「生きる事は素晴らしい」と歌ってますし。 未来に向かって、未来を変えて行こう、と行動するような歌詞の曲ばかり揃ったと思います、今思うと。
 
私は自分がちゃらんぽらんで、曲の方がちゃんとしてると自負しているのですが、曲が言っている事が今の自分になぜか当てはまって、と言う事が良くあるんです。これまでもありました。 未来の自分を予言していると言うか、歌っている歌が今教えてくれることが自分へのメッセージになると言うか…。不思議ですね。今ちゃんと未来のために明るい方へ向かって行動してみろ!と曲に言われてる気がします(笑)

この曲はこれからも私を救っていってくれる曲だと思います。

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—再レコーディングされた「観覧車の天辺で」は、ライブで大切に歌われてきたひかりさんを代表する曲の1曲ですが、素晴らしい出来に仕上がっていますね。オリジナルのスタジオ・バージョンの完成度が高いだけに、求めるものも大きかったのではないかと思いますが、久々にレコーディングされて如何でしたか?

 
野坂:「観覧車の天辺で」のリアレンジは、実はずっとやりたかったことで。ファースト『クリスタロス』の楽曲の出来が、自分では納得出来てない部分も実はあって。この曲のポテンシャルはこんなんじゃない!と思っていましたし、なので今までMVも作ってなかったんです。作る話はあって実際に撮影もしたのですが…。(お蔵入り)バイオリンの入ったデュオでライブではよく演奏してきて、それがすごく良くて。あと今のギターの児玉さんなら、「観覧車」にぴったり合わせて入ってこれるし、全然違和感なくプレイ出来て。今のメンバーだから出来た事も大きいです。ずっとやりたかったんです。絶対達成したい一つの目標であり、小さな夢で。実はセカンドアルバムのRECの時にも、時間があったら「観覧車」を弦の入ったver.で録り直す案も予定に入っていて。やっと自分の望む形で録れました。続けているとこう言う風に目標を達成できて嬉しいですね。さらにまた次の目標に向かって行くし、自然と。流れって不思議で。
 

—ビリー・ジョエルの「Piano Man」をモチーフにした「素晴らしい世界」凄くユニークな曲です。この曲の生まれた背景を教えて下さい 。

 
野坂:この曲は、私のピアノの先生に向けて書きました。前作『バスルームの人魚』のちょうどその発売日前後に、私にピアノを教えてくれた恩師が亡くなっていたんです。 もしかしたらちょうど私がCDリリースのインストアライブをやってた日だったかもしれなくて。 私にとってピアノを教えてくれた先生は、人生でただ一人、その先生だけです。 それもゴッホカート・コバーンと同じような、まあ言ってみたらロックな亡くなり方で、まさか、って。びっくりして一か月は何もできませんでした。ショックが大きすぎて。一年半経ちましたが、急に思い出して涙が止まらなくなったりということが今でもあって…。
 
私は音楽に自分の感情を託して、曲にその感情を持ってもらって、引き受けてもらう事で自分が軽くなって生きて来れた、感情を曲を書いて手放すことで折り合いを付けて来た人生だったので、やはり曲を書く事しか出来ませんでした。 悲しすぎて自分の中から0から作り出せなかったんでしょうね。曲をオマージュして書くことによって、自分を保てたんだと思います。 でも、そのやり方が自然と出来た事によって、こんな風に曲を書くやり方もあるんだ!と経験値が確実に増えました。 書いてからもライブで歌いながら泣いてましたし、家で初めてピアノを弾いて歌った時も、涙が止まらなくなりながら、曲と一緒に乗り越えて来れた。思い入れは、やっぱり深いです。
 
ビリー・ジョエルの「ピアノマン」をオマージュしてますが、私にとっての「ピアノウーマン」に向けて書きました。本音を言うと、「死にたくなるような世の中、でも心はまだ死んじゃいない、どうにかこうにかあがこうよ、生きる事は素晴らしい、生きていればそれで良い」と言う言葉は私がピアノの先生に言いたかった言葉です。 生きていて欲しかった。もう一度会いたかった。私がもっと売れていれば、先生がテレビに出る私を見て、思いとどまってくれたかもしれない、と思いました。今売れてない自分が情けなかった。この曲はこれからも私を救っていってくれる曲だと思います。そういうパワーを秘めてしまった曲だと思います、こんな背景が在ると。
 

—ひかりさんの曲の歌詞は、パーソナルで厳しい現実を歌いながらも微かな希望を捨てない。救いがテーマにあると思います。自分を鼓舞することで、それに共感するリスナーに力を与えているように見えますが如何ですか?

 
野坂:以前は自分がネガティヴな要素を持った人間だと思っていたんです、自分では。でも私から出てくる曲は、本当に絶望してはいない、光は在る、と私自身に問うてきます、何度も、何度も。意図して自分を鼓舞している訳ではないのですが、自然と‟光は在る”と歌う楽曲が自分の中から何故か生まれて来る事によって、曲を書く事は曲の中で起こっている事をまるで映画を見るように目撃する、何度も追体験する事だと思うので、私自身が生まれて来る楽曲によって救われているんだと思うんです。まず自分が救われる第一号なので、その曲の持っている‟誰かを救う力”を、必要としている人の元まで届けたい、それが私の言ってみたら使命、のようなものなのかも、と思います。あんまり深く今は考えてませんが(昔は売れないと意味がない、と頑なに考えすぎて全然楽しくなかったので)、今は普通に音楽をやる事が楽しくて、意味も自然と付いて来てくれたように思います。

どこから出て来るんだろう…と自分でもたまに不思議です。

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—曲を作る際はどういったプロセスで書かれるのでしょうか?

 
野坂:携帯のボイスレコーダーで鼻歌みたいに録音しながら、メールの下書きフォルダに歌詞を書いていきます。大体同時です。ピアノを弾きながら作る事もあれば、お風呂場の中で頭の中にメロディーが流れてきたり、朝起きた時に頭の中にメロディーが鳴っている時もあります。夢の中で曲を作っていて、朝起きてすぐにそれを忘れまいとボイスメモしたり。曲が中々出てこないと具合(精神や体調も)が悪くて、曲が出て来ると急に視界が晴れ晴れとするので、「ああ、これだったのか!」と思ったりします(笑)曲を書くことを「出産」と呼んでます(笑)でもその前に、ノートに言葉をひたすら書き綴ったりしてる時もあります。ノートの中に出てきた言葉が歌詞の中に入っていたりもします。基本的に「誰々のこんな風な曲を作りたい!」とコード進行を真似るみたいなのはなくて、あくまで出てきたらそんな感じになってた、って言う事がほとんどです。どこから出て来るんだろう…と自分でもたまに不思議です。
 

—ひかりさんのライブに行くと、物販のアイテムの豊富さ、特にCDの種類の多さにいつも驚かされます。これまでトータルでCDを1500枚販売されたと聞きました。現在、音楽はサブスクが主流になり、CDは衰退してしまいましたが、ひかりさんのフィジカルのアイテムへの拘りをお聞かせ頂けますか?

 
野坂:私は、インディーズのライブシーンでずっと13年間活動を続けて来ました。 やはりライブ中心に活動するアーティストだからこそ、現場で実際に音を聞いて良かったからCDをその場で手に取って帰って頂けると言う、流れが着実にあったんですね。 CDは実際にアーティストの手から渡してもらえるとやっぱり嬉しいですよね。 かのシンディ・ローパーも、インディーズになってからショッピングモールを自分で回り、インストアライブを繰り返すことによってメジャーシーンに居た頃と変わらない程の売り上げを叩き出した、と聞いて、やっぱり自分の気持ちを込めて、音楽を届けたいと言う想いで本人が頑張って活動をすることが一番大事なんだな、と思いました。 あんなに有名なシンディ・ローパーでさえ手で自分のCDを売っているんです。私も一人ひとりに向けて歌って、CDを手に取ってもらえたら、と思っています。 トータルセールス1500枚以上は自分で数えてびっくりしました…。私は応援してくれるファンの皆様に恵まれたので、ファンの皆さんのおかげだと思っています。
 

—CDのセールス1500枚は本当に凄いと思います!シンディ・ローパーの名前が出ましたが、シンディは2011年の3月。東日本大震災の起こった真っ只中に来日公演を行って、沈み込んでいる日本人を勇気づけてくれました。『サンクチュアリの魔女』も、同様に今コロナウイルスの影響で、困難を抱えている人たちを勇気づける力をもった音楽ではないかと思うのですが、それをリスナーに届けるひかりさん自身も同様に活動が制限されて今とても苦労されています。特に、ひかりさんの真骨頂を発揮できるライブハウスでの演奏ができない状況で、どうやってこれからひかりさんの音楽をリスナーに伝えていきますか?

 
野坂:確かに、活動の中心であるライブハウスでの演奏が出来なくなっているのは大きな打撃なのですが、悲観的にはなっていないんですよ。幸いなことに、ツイキャス等ネットでのライブ配信ツールが既に確立されているので、これを活用していきます。ライブ中にファンと会話することができたり、ライブハウスとはまた違った楽しみ方ができる、時代にマッチしたコミュニケーション・ツールでもあると思うんです。とても可能性を感じています。
 

—最後に。ひかりさんが歌い続ける理由、モチベーションは何でしょうか?

 
野坂:歌い続ける理由…ちょっと恥ずかしいですが(笑)私は、自分の楽曲が生まれた意味である『私の曲が、私の行きたい所まで、会いたい人の元まで、私を連れて行ってくれる』と本気で信じているんですね。あと単純に、音楽をやる事で自分の人生や自分自身を肯定出来たこと、周りの人との関係性を作れること、演奏する事で自分が元気になれる、と言う事が大きいです。もう駄目だ―って思う状態で、思いながらライブに行って、歌ったら元気になっちゃう(笑)それの繰り返しです。モチベーションは周りの人のおかげ。私の周りにいて一緒に関わってくれる人、応援してくれるファンの皆さま(ひかり中毒=ひかちゅーと呼んでます(笑))が素晴らしくて、それに助けてもらっている感じです。
 
私自身は全然大したことないと思います。本当にふにゃふにゃで、努力も苦手だし、出来るならあんまり頑張りたくないなぁって思っちゃうし、結局はやるんですが(笑)私の楽曲が、結局こんな私から出て来てくれて、それがちゃんと力を持ってて、それが素晴らしかったから、周りの人が付いて来てくれて、だからまだ頑張れる。本当にただ単純にそれの繰り返しです(笑)私、音楽が出来る事は、『魔女の宅急便』の中に登場する絵描きのウルスラが言うセリフ『神様か誰かがくれた力なんだよね』だと思ってます。与えてもらったとしたら、それにはちゃんと報いたいと思う。応援してくれる、支えてくれる周りの人を悲しませたくない、と言う部分で一歩、踏みとどまれるんです。だから、これからも私なりに歩みを止めず、やって行こうと思います。“自分だけの音楽”を続けていきたいです。

 


 
 
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