特集

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TEXT:橋本昌浩 PHOTO:岡田祐貴子

下山武徳 / SABER TIGER[以下:下山]が主催するHARD ROCK / HEAVY METALにフォーカスしたロックイヴェント『HAMMER BALL』は2012年から札幌で毎年開催されている。イヴェントの規模は決して大きくないものの『HAMMER BALL』でなければ実現しないレアなラインナップや趣向を凝らした演出で毎回物凄い熱量と興奮を発生させてきた。そして7回目となる『HAMMER BALL 2018』は開催10日前(2018年9月6日)に「北海道胆振東部地震」が発生。全道域停電の状態から被害状況が把握されて各インフラが復旧し出した9月10日、『HAMMER BALL 2018』は予定通り9月15日に開催されるとのアナウンス。
 
この状況について下山は『HAMMER BALL 2018』を「元気をチャージする場」と位置付け、当日は出演アーティストやイヴェントスタッフ一同を集めたミーティングで、参戦するオーディエンスに元気を与えイヴェントを成功させる事で「震災からの復興」に繋げるのだという意志を確認。『HAMMER BALL 2018』は昨年同様にホール内にサブステージを設置し、オープニングアクト/サブステージアクトをラインナップする事でオーディエンスがホールに入場した瞬間から音楽に包まれる演出を用意。札幌発最強メタルイヴェント『HAMMER BALL 2018』の様子をレポートする。

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■ELIZA
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オープニングアクトを務めるELIZAは1983年から1990年まで活動。その後、暫くのブランクを経て近年は精力的にライヴ活動を行いながら2017年に初期のデモテープや7インチなどに収録されていた曲をリレコーディングしたCD「BATTLE FIELD」をリリースする。札幌のロックシーンで根強い人気を誇るELIZAには暗転したホールにSEが流れた瞬間に数多くのオーディエンスの拳が突きあげられ歓声が飛ぶ。バンド設立時のメンバーである小鴨がリーダーとして復帰した事もファンには嬉しいニュースだろう。
 
ザクザクした攻撃的なギターサウンドで攻めつつも美しいハーモニーを聴かせる佐藤川崎のツインギター、ヘヴィさと躍動感を併せ持つ小鴨NOBのリズム隊、叫/SADAYAの荒々しくも突き抜けるようなヴォイス。20分弱で3曲と短いステージではあったが、ファストチューンのみで構成されたELIZAのパフォーマンスはオープニングアクトの役割を完璧に果たした。
◆ELIZA
小鴨寿明(Bass)
佐藤公彦(Guitar)
川崎彦美(Guitar)
叫/SADAYA(Vocal)
NOB(Drums)
 
◆Facebook Page
https://www.facebook.com/ELIZA
◆Setlist
M01. SCORPION
M02. Final Rage
M03. DEAD END FIGHTER

 


 
Sub Stage/akane (https://akaneutau.theblog.me/
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■SABER TIGER

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本編トップにSABER TIGERが登場。2018年はBOXセットやDVDをリリースし、春には4カ国全12公演3週間に及ぶ北欧/東欧/ロシアツアーを敢行。秋には新作『OBSCURE DIVERSITY』のリリースとレコ発ツアーを控えて勢いに乗るSABER TIGER。ラウドながらもクリアなサウンドをPAから吐き出して緻密に構成された強力なアンサンブルをオーディエンスに浴びせて頭を振り抜かせる。下山は「オレ達の情熱をそちらに全部届けますから!受け取って下さい、元気を!」と震災を経て実現した『HAMMER BALL 2018』に参戦したオーディエンスにアピール。
 
SABER TIGERはバラード系の曲はチョイスせずに新曲3曲を含めたスピードチューンを立て続けにプレイしてオーディエンスを煽り続ける。ステージから発せられるバンドのエネルギーにオーディエンスが激しく反応してホール内の熱気は上昇して行き、ラストナンバーの「Angel Of Wrath」では大合唱が発生。メンバーがステージから去ってもなかなか鳴り止まなかったSABERコールはバンドとオーディエンスが「元気をチャージする場」を共有した喜びの表れだったように思う。
◆SABER TIGER
下山武徳(Vocal)
木下昭仁(Guitar)
田中康治(Guitar)
Hibiki(Bass)
水野泰宏(Drums)
 
◆Official Website
http://www.sabertiger.net/
◆Setlist
M01. Sin Eater
M02. Hate Crime
M03. Beat Of The War Drums
M04. Permanent Rage
M05. First Class Fool
M06. The Worst Enemy
M07. Act Of Heroism
M08. Angel Of Wrath

 


 
Sub Stage/TAKARA 
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■TAGAWA

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2009年にLOUD PARKへの出演オファーを受けた盲目のギタリスト:田川ヒロアキ[以下:田川]は、リズム隊に歴戦の猛者である寺沢長谷川をセレクトし『LOUD PARK 09』で強烈なインパクトを残す。その後、2015年「Flying Carpet」2016年「Wind」とCDをリリース。『HAMMER BALL 2018』はTAGAWA北海道初上陸の場となった。田川のギターソロからライヴはスタートしたが、彼独自のギターのネックを逆から持つスタイルのフィンガリングから繰り出される流麗なスィープピッキングやタッピングを織り交ぜた煌びやかなソロプレイにオーディエンスは圧倒される。
 
続くインストナンバーでは寺沢長谷川が疾走感と重厚さを併せ持つグルーブを鳴らす中で田川が巧妙なリフワークと輝きを放つようなソロをキメまくる。「That’s Over」は各々のソロがフィーチャーされ、テクニカルでパワフルなプレイをオーディエンスに誇示。寺沢が唄う「Crazy Gun」ではコール&レスポンスでホール内を盛り上げ、田川が唄う「平和の風」「キミを乗せて」とリリカルな曲でステージを終えたTAGAWAはヘヴィなインスト曲からポップな歌物まで音楽性の広さとポテンシャルの高さを『HAMMER BALL 2018』で見せつけた。
◆TAGAWA
田川 ヒロアキ(Guitar & Vocal)
寺沢 功一(Bass & Vocal)
長谷川 浩二(Drums)
 
◆Official Website
http://www.bc-s.co.jp/tagawa/
◆Setlist
M01. Guitar Solo
M02. Stranger Destroys Arms
M03. My Eternal Dream
M04. Running Light
M05. That’s Over
M06. Crazy Gun
M07. 平和の風
M08. キミを乗せて

 


 
Sub Stage/かりてきたキャッツ (https://www.facebook.com/karitekitacats/
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■ROCK JAM THE NIGHT BEAST

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2015年から活動をスタートさせたROCK JAM THE NIGHT BEASTは関東近郊から東北地方・中国地方にライヴ活動の範囲を広げ、2017年は札幌で2Day’sライヴを成功させている。スケジュールの都合で加藤剛史(Drums)を欠いた3名を札幌在住のミュージシャンがサポートする形でROCK JAM THE NIGHT BEASTは『HAMMER BALL 2018』のステージへ。唯一無二のヴォイスを自在にコントロールしてオーディエンスを魅了する二井原。フロアを揺らす轟音を鳴らす山下は数回共演している礒田とのスムースなコンビネーションでボトムを支え、貝崎がセンス有るプレイで曲に華やかさを加える。横関は原曲のニュアンスを踏襲しながらもトリッキーなアーミングやタッピングを散りばめた高速フレーズで観る者を圧倒。
 
メンバー各々の音楽的ルーツや嗜好に沿ってチョイスした曲をプレイする中で二井原は抜群のタイミングでオーディエンスを煽る。その姿には国内外でアウェイな環境や過酷な状況であってもライヴを成立させてきたタフなキャリアを想起させるし、ユーモアセンス溢れるMCで和ませ笑わせる部分を含めてホール内の空気感をコントロールするフロントマンとしてのスキルの高さを実感。「Forever / Y&T」では下山を呼び込みツインヴォーカルでプレイし、エンディングで壮絶なロングトーンシャウトを二井原がキメる。オーディエンスの大歓声を浴びながらROCK JAM THE NIGHT BEASTは『HAMMER BALL 2018』のステージを降りた。
◆ROCK JAM THE NIGHT BEAST
二井原実(Vocal)
山下昌良(Bass)
横関敦(Guitar)
礒田良雄(Support Drums)
貝崎綾子(Support Keyboards)
下山武徳(Vocal:M08)
 
◆Official Website
なし
◆Setlist
M01. Soldiers Under Command / STRYPER
M02. Looking For Love / Michael Schenker Group
M04. Dreams / VAN HALEN
M04. Rainbow In The Dark / DIO
M05. Love Hurts / NAZARETH
M06. Thundersteel / RIOT
M07. The Night beast / LOUDNESS
M08. Forever / Y&T

 


 
Sub Stage/the(ゼ) (https://www.facebook.com/the.ze.xe/
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■DUO : KYOJI YAMAMOTO & REI ATSUMI

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WILD FLAGBOW WOW G2HAMMER BALL DREAM TEAMと過去3度『HAMMER BALL』へ登場している山本恭司[以下:山本]は、『HAMMER BALL 2018』にVOW WOW時代の盟友である厚見玲衣[以下:厚見]と“二人だけのプログレバンド”をコンセプトとしたDUO : KYOJI YAMAMOTO & REI ATSUMIで登場。冒頭からVOW WOWのナンバーが繰り出され、厚見のピアノ系の音色をヴォイスパッドで包むサウンドの美しさと山本の繊細なタッチから繰り出されるギタートーンをただただ聞き入るオーディエンス。タイトルコールがないまま始まったブルージーなテイストを持ったバラードに姿を変えた「Hurricane」には驚きの声が上がる。
 
「Starless / KING CRIMSON」では厚見が秀逸なアレンジを施したバッキングに山本が狂気を孕んだようなソロプレイを披露しオーディエンスを圧倒。「メタルじゃなくてゴメンね」と微笑んで見せた山本厚見は続けてVOW WOWの曲を続けてプレイしたが、中でもインスト仕様でプレイされた「Cry No More」の沁み渡るような哀愁を帯びたメロディとサウンドにオーディエンスはただ立ち尽くすのみ。DUO : KYOJI YAMAMOTO & REI ATSUMIはラストナンバーに「Echoes / PINK FLOYD」をチョイス。原曲の荘厳な世界観やフォルムを尊重しながら20分以上に渡って自分達のセンスで表現する“二人だけのプログレバンド”の凄まじいパフォーマンスにオーディエンスは盛大な拍手を送った。
◆DUO : KYOJI YAMAMOTO & REI ATUMI
山本恭司(Guitar & Vocal)  
厚見玲衣(Keyboards & Vocal)
 
◆Official Website
http://www.kyoji-yamamoto.com/
http://atumic-rooster.org/
◆Setlist
M01. Don’t Leave Me Now
M02. I’m Gonna Sing The Blues
M03. Hurricane
M04. Starless / KING CRIMSON
M05. Mountain Top
M06. Cry No More
M07. Shock Waves
M08. Echoes / PINK FLOYD

 


 
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■ENCORE SESSION

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先ずはステージに残ったDUO : KYOJI YAMAMOTO & REI ATSUMI下山が加わる。山本はMCで下山のシンガーとしてのポテンシャルの高さを賞賛しつつ「ボクと厚見君と下山君でスペシャルな曲を・・」と「Pains Of Love / VOW WOW」がプレイされる。3人の美しく情感溢れるプレイの余韻に満足気な表情を浮かべるオーディエンス。ここからTAGAWAのメンバーと二井原横関が加わり豪華メンバーによるセッションへ。
 
下山が「今日は良い日になったと思います。地震でちょっと凹んでた人達も元気になったでしょうか?」とオーディエンスに語りかけ「Rock And Roll / LED ZEPPELIN」がプレイされる。二井原下山は競い合うようにシャウトし、ギターソロは横関田川山本の3人がそれぞれ個性溢れるアドリブを披露。6時間に及ぶイヴェントが終演し、下山から「また来年、HAMMER BALL 2019でお逢いしましょう!そして、皆んなROCKで元気になりましょう!」とメッセージを受けて帰路に就くオーディエンスの満足気な表情は「北海道胆振東部地震」という不測の事態を経て開催された『HAMMER BALL 2018』が「元気をチャージする場」として成立した証に思えた。HARD ROCK / HEAVY METALにフォーカスした札幌発最強メタルイヴェント『HAMMER BALL 』が今後も継続される事を願う。

 

◆ENCORE SESSION
山本恭司(Guitar)  
厚見玲衣(Keyboards)
下山武徳(Vocal)
二井原実(Vocal)
横関敦(Guitar)
田川ヒロアキ(Guitar)
寺沢功一(Bass)
長谷川浩二(Drums)
 
◆Setlist
M01.Pains Of Love / VOW WOW
M02.Rock And Roll / LED ZEPPELIN
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