特集

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TEXT & PHOTO:株本和美

国内のロックシーンの最先端を駆け抜け、輝き続けるフロンティアたちの横顔に迫るインタヴュー特集「ROCK ATTENTION」。第54回に登場するのは、騒音寺(そうおんじ)。ど派手な衣装に身を包み、ダイナミックなパフォーマンスでロックの美学を体現している唯一無二のヴォーカリストNABEにインタビュー。
 
2018年7月27日(金)に約7年ぶり9作目となるフルアルバム『百歌騒乱』を全国リリースした騒音寺は、1994年に京都で結成されたロックバンド。ヴォーカル・NABE、ギター・TAMU、ベース・こーへい、ドラム・絢太(※)の4人は、京都を中心に全国でライブを展開、現在は、盟友・KiNGONSとの『騒乱万博ツアー2018』の真っ最中だ。
 
同アルバムには、すでにライブの定番曲となっている「Are you ready?」「届け、君の町へ」、「ロックンロールバカ息子」、問題作「What’s going on」、こーへいが初めてヴォーカルを務める「惜別のサンダーボルト」などバラエティにとんだ全15曲が収録されている。また、くるり岸田繁が「NABEの見た空はどこまでも続いてゆく。いちど行ってみればいい。彼の家へ。」と、帯キャッチのコメントを寄せており注目を集めている。
 
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騒音寺 9th Album『百歌騒乱』
 
M01. Are you ready?
M02. 届け、君の町へ
M03. ロックンロールバカ息子
M04. カモナ・マイ・ハウス
M05. 5丁目のブルース
M06. What’s goin’ on
M07. KAIMANAHILA
M08. ロッカ・フラ・ギャンブラー
M09. Love & Hate
M10. 惜別のサンダーボルト
M11. 俺には今、空が見える
M12. 押し花怨歌
M13. 懐かしい人
M14. スリープレス
M15. Happy day
 
2018年7月27日リリース
2500円+税
 


騒音寺 Official Website
https://so-on-g.net/
 
NABE(Vocals)、タム(Guitar)、こーへい(Bass)、絢太(Drums)
 
Live Information
 
▼2018年09月09月28日(金)@兵庫県・神戸VARIT.
▼2018年09月09月29日(土)@愛知県・名古屋得三
▼2018年09月09月30日(日)@愛知県・名古屋得三<『百歌騒乱』発売記念ワンマン>
(※)ドラムの絢太がこの日がラストライブとなります
▼2018年10月20日(土)@京都府・拾得
▼2018年10月21日(日)@京都府・拾得
▼2018年10月26日(金)@奈良県・NEVERLAND
▼2018年10月27日(土)@大阪府・十三FANDANGO
▼2018年10月28日(日)@京都府・CLUB METRO

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ライブで鍛えられた曲が多いので、レコーディングはギクシャクすることなくグルーヴ感が出せたと思います。

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—前作から約7年ぶりにアルバムが全国リリース。待望の新作ですが、長い歳月を経ての理由は?

 
NABE:10年くらい前から「CDが売れなくなった」と言われる時代になり、全国リリースしても売れないのなら、ライブをたくさんやって会場で買ってもらえたらいい、という風潮になってきてすごく幻滅したんですよ。ミュージシャンが形に残せるものといえばCDやレコードといったものしかないので、世の中がそれを必要ないというのなら、俺たちが残すものは何一つなくなるなって……。作品(CDやレコードという形としての)が作れないのならバンドをやっている意味がないし、「だったら、曲作りもしなくていいや」って思うくらい凹んだね。俺たちは空気を売っているわけだから「ライブ」のみでもいいのかもしれないけど、ミュージシャンとしては、自分がやってきた証として、手元に作品が欲しいわけです。ところが「作っても売れないからやめようっていう風潮はどうなの?」って思いがずっとあってね。
 

—音楽配信なども増えて、CDプレイヤーを持っていない方も多いといいますし。

 
NABE:2~3曲入りのCDを出すバンドもいるけど、俺はアルバム志向だったので「この先はライブだけやればいいや」ってかなり曲作りのペースも落ちて……。それでもやっぱり新曲は発表したいから曲は作るけど、そうしている間に7年が過ぎたという感じかな。途中、ミニアルバムは出したけど満足できず、もう~ストレスがたまってしまって「アルバムを出そう!」と。どうせだったら15曲入りのフルアルバム。「この“CDが売れない時代”に対してFUCK OFF」って感じで出してやろうと思って作ったのが『百歌騒乱』です。
 

—本作はコンセプトを立ててというよりは、7年の凝縮という意味合いの方が大きい感じですか?

 
NABE:俺は、本当ならライブで発表していない新曲ばかりを収録して、それを発売してからツアーを行うというのが正しいライブバンドのやり方だと思っていて。ところが、ライブのブッキングが先々まで決まっていくから(笑)。今回は『騒乱万博ツアー2018』(37本)のライブ日程が決まっている中、リリース出来る時期はこのあたりかな?という流れで発売することが決まったから、現状だと俺の思う順番でやるのは難しいよね。だから、すでにライブで発表している曲で、皆さんも聞き慣れた曲がアルバムに入っているという、自分では不本意になるのかなぁ(笑)。
 

—ライブの鉄板曲が待望の音源化という面では、皆さんは喜んでいらっしゃるのでは?

 
NABE:そう言われると嬉しいから、それもアリかな(笑)。まあ、そういう俺も好きなバンドの音源がやっと出たら嬉しいしね。最近やっとそういうファンの気持ちがわかるようになったな(笑)。いつも自分勝手に曲を作って、スタジオでやって、この曲収録しようってやっていたけど、そういう楽しみ方もわかってきたので、大人になったってことかな。
 

—レコーディングの手応えはいかがですか?

 
NABE:ライブで鍛えられた曲が多いので、レコーディングはギクシャクすることなくグルーヴ感が出せたと思います。歌も、歌い慣れた曲だったので、歌詞に気をとられず感情を込めてやれたし、良いレコーディングになったんじゃないかな?一方で、ライブでやりなれた曲ばかりだから、自分的に新鮮味がないんだけど、音源で聞くと、「あ、タムこんなこと弾いているんだ。ベース、こうしたんだ。ドラム、ここ変えたんだ」とかっていう発見というか、積み重ねてきたモノの上に、さらにもう一つ重ねることができたな、と。そういう所は大成功だったと思いますね。メンバーは苦労しているんだなぁって(笑)。
 

—特に思い入れがある曲は?

 
NABE:3曲目の「ロックンロールバカ息子」だね。バンドを結成して24年間、ライブばかりやってきたわけじゃないですか。長年やっていると「垢」とか「贅肉」とかが心についてくるんですよ。ついつい慣れすぎてしまって、自分では気合いを入れているつもりでも「気が入ってない」こともまれに出てくるわけ。それで、バンドを結成した時にあったような輝きを思い出させてくれる記憶はないかな?って探しながら、いつもやっていて。人生で初めてギターを持ってスタジオに入ったとき、すごく楽しくて心もアグレッシブだったし、「やった!不良になれた」って気持ちもあったし、その勢いを取り戻したいと思っても、昔には戻れないじゃないですか。だけど、その時の思い出や記憶を曲にぶち込むことは出来るから「ロックンロールバカ息子」という曲になり、「成績下がるバカ息子、ボリュームあがるバカ息子」「とーちゃん、かーちゃんゴメンナサイ!」「なるほど金がかかるのか」って歌詞でね(笑)。この曲を歌っていると“中学生”に戻れる……良い曲だなって思うよ。
 

—バンド経験者じゃなくても爽快な気持ちになります。青春時代の記憶がよみがえるロックンロールナンバーですね。

 
NABE:最近のライブではマストナンバーですね。バンドやり始めた当時、周りにパンクとかロックとかやっている仲間たちが沢山いて。この仲間たちの合い言葉として「35歳以上の大人を信じるな」っていうのがあったんですよ。今、俺29歳(※NABEは永遠の29歳!)だから、言うべきだな、って思い歌詞の中に盛り込もうと思ったんですけど、歌詞で言うのはやり過ぎかな……って思い直してね。最近は演奏の最後みんなが音をかき鳴らしているとき、「いいか!大人を信じるな」って捨て台詞を発して、歌詞にならなかった部分はライブで伝えています(笑)。
 

—12曲目の「押し花怨歌」は、和の要素も入って騒音寺らしい曲だな、と思いました。

 
NABE:ロックバンドで一番問題になるのは「金銭問題」で、続けていくのも「お金」。自分も貧乏な時代を経験していて、国民健康保険や年金などの請求書がしょっちゅう来ていて。仕方がないから少しずつ払うけど、また次の督促がきて、しまいには「差し押さえ」の通知が何通も来るから、頭にきてまとめて支払いに行ったんだけど、「なんか腹立つな~」って。かといって、自分が悪いし、誰に怒っていいとかでもないし。だけど「無理矢理金をとるなんて」って思いながら、その怨念を綴った歌です(笑)。この中では、一番騒音寺らしい曲じゃないかな?あと、4曲目の「カモナ・マイ・ハウス」もね。ミディアムテンポのブルースナンバーで、ちょっと和のアプローチがあるやつ。こういうのを昔からの騒音寺ファンは「待ってました!」って感じなのかな?
 

—そんな中、10曲目の「惜別のサンダーボルト」はこーへいさんが初めてヴォーカルを務めた曲ですが、作詞作曲はどなたが?

 
NABE:これは歌詞も曲もこーへいが作りました。結構良い声しているからね(笑)。この曲だけ爽やかで、騒音寺じゃないみたいでしょう?意外と好評で腹立つわ~(笑)。
 

—ヴォーカルの先輩として、レコーディングは立ち会いを?

 
NABE:歌入れは立ち会いましたね。「腹立つ歌い方やな~」って(笑)。演奏にも、結構指示が細かくて。俺が歌うときの演奏はそんなに細かくないのに、自分の歌の時はタムにも「ここ、あーして、こーして」って言ってたもんなぁ。
 

—今作も様々な曲調の楽曲が集まっていますが、NABEさんの音楽ルーツは?

 
NABE:パンクもロックンロールもブルースも幅広く好きなんだけど、自分が子どもの頃に聞いていた筒美京平が作曲した音楽がすごく好きで。特に、南沙織さんが歌っていた「早春の港」は本当に良い曲だな。そこから筒美京平が作曲した作品のシングルレコード(CD化されていない作品も)を集めるようになって、今でも集めています。それくらい“筒美京平メロディー”は日本特有のものだと感じています。今回のアルバムにもブルースナンバーやロックンロールナンバーはあるけど、必ずどこかに“筒美京平”が潜んでいて。自分の中に染みているものだから隠しきれないんだろうね。
 

—例えばどういう所に影響が見られますか?

 
NABE:定番ロックはAメロ・Bメロ・Aメロ……って感じだけど、筒美京平にはAメロ・BメロがあってCメロというサビがあり、これは筒美さんに限ったことじゃなくて、日本特有の歌謡曲の作りかたですけど。日本にはAメロ・Bメロ・Aメロでヒットした曲は少ないけど、そんな中でヒットしたすばらしい曲はキャロルの「ファンキー・モンキー・ベイビー」だよ。俺はCメロがある曲が好きなので、Aメロ・Bメロ・Cメロっていう構成が多いかな。
 

—騒音寺の歌やライブは、どんな人でも受け入れてくれるようなあたたかさや、背中を押してくれるというかそんな勇気をもらえる感じがします。

 
NABE:あまり深く考えてはないけど、こんな衣装でこんな風貌のやつが「ハードロックメタル調のモノ以外やっちゃダメ!ってことはないだろう」という事を結成当初から思っていて。だから、騒音寺には女の子を追いかける歌や、車やバイクの歌もあるんだよね。自分の人生を、相手(聞く人)の人生に投影できるようなものを歌って「そこから先はアナタの努力次第ですよ」っていうヒントだけは、どの曲でも出してあげたいと思っていて。言うたら“起爆剤”みたいなモノかな。何か行動を起こすような気持ちを煽ってあげるから、その先はあなた次第だよっていう意味合いのモノが全作品に入っていると思いますね。
 

—曲を聴いた人に“考える隙間”を残している感じですね。

 
NABE:自分の日記を綴ったような歌詞や、答えを出してしまっている歌詞は好きじゃないから。聴いても心地よいだけで何も残らない音楽に対して反発しているのかな。
 

騒音寺はマネージャーも含めて1世代づつ違うから、ケンカが一切ない。歳が離れすぎていて(笑)

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—詩(詞)と言えば、2016年に詩集『夏の墓標』を出版されていますね。これは、どんな経緯で?

 
NABE:某ライブハウスの店長に「詩集を出せばいいのに」って言われたのがきっかけで。ファンからも言われ続けてきたことだったので、出すなら今かな?というタイミングもあって出しました。売れたよ(笑)。詩集なんて、そんな売れる物じゃないと思っていたら……。びっくりしたよ。
 

—NABEさんの綴る詞は、活字で読むと違う印象も受けそうですね。

 
NABE:俺はCDに歌詞を載せないんですよ。音楽というのは、読み物じゃなくて聴くものだと思っていたから、メロディーに乗せてこそやっと意味が伝わると思っているし、余韻も残るしね。騒音寺の音楽について、100人いたら100通りのとらえ方があると思うから、それを大事にしたくて歌詞を載せなかったし、今回も載せていないんです。
 

—アルバム制作とは異なる作業を経験していかがでしたか?

 
NABE:最初は、大変な作業になるだろうなと思っていましたが、とても良い作業でしたね。昔を振り返るというのも、自分の為になりました。出版が決まって、いままで書き留めた詞を整理して、自分で読んでみたら、意外と作品になっているし(笑)。ああ、良い詩集だな、結構自分がんばって書いていたんだな~って思いましたね。
 

—膨大な作品の中からセレクトするのは大変だったのでは?

 
NABE:そこは大丈夫でした。入りきれないものもあったけど、あれくらいがちょうどいいかな?
 

—未発表曲って結構ありますか?

 
NABE:何曲もある。作っている最中は「歌える」と思って書くんですけどね。渡鍋彰規(NABEの本名)という人間が書いているから、ヴォーカルのNABEじゃないんですよ。曲が出来て、いざスタジオに入ってあわせてみると、演奏はすごく上手にできているのに、歌がしっくりこず「あれ、なんかおかしいな?」ってなると、それはお蔵入りになります。無理してポップ過ぎるモノを書いてしまった……とか沢山ありますよ(笑)。
 

—それも是非聞いてみたいですね。騒音寺のメンバーは下は20代からと幅広いですが、世代が違うことで化学反応みたいなことは?

 
NABE:騒音寺はマネージャー(しのやん)も含めて1世代づつ違うから、ケンカが一切ない。歳が離れすぎていて(笑)。もし、バンド内でなにか問題が生じても、最年長のしのやんがクッションになって「僕がやっときましょう、伝えましょう」って買って出てくれるので大きなもめ事にはならない。あと、共演も様々で、頭脳警察シーナ&ロケッツといった先輩たちには俺が窓口になるけど、フェスとかで若いバンドと一緒になったときは、絢太とかこーへいら若い2人が、窓口になってくれるから助かっていますね。
 

—最年少、ドラムの絢太くんの印象は?

 
NABE:あいつは上手い!どこ行っても、「あいつは凄い」って他のバンドからも言われるし、羨ましがられるよ。本当、良いドラマーだと思う。若くて音がでかいって、本当に良いことだなって思う。絢太のドラムに合わせて俺も声がでかくなるし、相乗効果になっているなぁ。
 

—世代のギャップを感じる時はありますか?

 
NABE:例えば、「あの時代のこういうベース、こういう風にドラムをたたいてみて」って伝えたとき、彼らは知らないから「???」ってなるな。逆に、彼らが「○○っていうバンドのリズムトラックでいいですかね?」って言ってきても、俺が知らなくて(笑)。音楽のバックボーンも時代も違うしね。俺の若い頃はラジオ全盛期で、みんながヒットチャートに一喜一憂していて、今でも“音楽に依存”して暮らしているんですよ。一方、彼らの時代にはインターネットやゲーム、いろんな娯楽があって、その中で音楽をチョイスした感じなので、選び方からして違うから。俺みたいな狂信的な音楽プレイヤーではないと思う。ただ、俺たちがそういうミュージシャンを引っ張っていかないとな、という気持ちは持っているかな。
 

—音楽に触れる生活はできても「演者としてやり続ける」のは想像以上に大変だと思いますが、続けるために意識されていることはありますか?

 
NABE:それがね、大変と思うことはないの。俺は、音楽を聴くのが好き。オーディオも好きだし、アナログレコードのコレクターでもあるし、それありきの“バンド”なんだよね。音楽を聴くことが好きじゃないと、バンドって続けられないと思うな。聴くことで引き出しも増えるし、新しい音楽と出会う喜びを感じたら、それをまた自分のパワーにしていけばいいし。まず、聴くことが大事なんじゃないかな、って思っているんです。つまり俺にとって「レコードを買うこと」「オーディオを磨くこと」「ラジカセを修理すること」が趣味(笑)。それあってのバンド。聴くのが好きだから、自然と続けられていると思うな。
 

—ラジカセといえば、最近カセットテープが地味に流行っていますよね。

 
NABE:そうなの?俺はカセットテープのコレクターでもあるよ(笑)。家に来たらびっくりするよ!ラジカセ、6台持ってるもん。
 

—えぇ!?その6台は使い分けもされているのですか?

 
NABE:うん。あるレコードを聴こうとしたときに、レコードをそのままかけず、カセットテープにダビングして、その年代のラジカセで聴く。例えば、シンディーローパーなら、カセットテープにダビングして「80年代のラジカセ」で聴くのが正しい聴き方だなって思うもん。こうすれば、当時、みんなが聴いていた感じの音を感じることが出来るかな……って。アホでしょ?
 

—(笑)なんか……THE NEATBEATSみたいですね。

 
NABE:THE NEATBEATSもアホやで。真鍋くんと話していると、毎回すっごく長くなる(笑)。
 

—これまでのバンド人生で、音楽的ターニングポイントはありました?

 
NABE:特にないの。ずーっと同じ。ただ結成当時、タムに言った言葉があって。当時、京都のバンドってツアーもしないし、チャートに入ろうって気持ちもないし、京都だけで収まっているバンドが多かったんですよ。そこで、「俺たちだけでも背伸びして、大きい会場やフェスとか目指して、グッと懸垂して上をちょっとのぞいて、もし嫌だったら、またライブハウスに、京都に帰ってきたら良いって気持ちでやろうな」っていう話をしたときが、もしかしたらターニングポイントやったのかもしれませんね。「俺たちだけでもがんばろうぜ。お金無くなってもがんばろうぜ」っていう。
 

—タムさんとの出会いは?

 
NABE:俺はずっと騒音寺やっていて、タムは別のバンドやっていて。当時、俺はギター・ヴォーカルをやっていたんだけど、歌だけに専念したいからギターを弾きたくなくて。そんなとき、タムを見て「こいつは良いギターを弾くな」と思って彼のバンドを見に行きスカウトして。最初、俺と会ったとき、殴られるかと思った、って(笑)。そうだ、さっきの話、タムが入ったことがターニングポイントやったんかもしれんな。
 

—NABEさんは、タムさんが加入されたことでギターを手放し、ピンヴォーカルとしてのスタートを。

 
NABE:そう。ヴォーカルさえしっかり歌えていたら、多少、演奏がダメでも、そんな下手くそに聞こえないはずだというのが俺の哲学なので、ヴォーカルに対してはそれをずっと貫いているし、自分の枠から外れた音楽はぜったいやりたくない、っていうのはあるかな。ただ、俺の場合、枠が広いけど(笑)。だから、やっていることは、結成当時から一緒で「きっちりした日本語を打ち出すこと」。美しいビートにピタっとあわせて詞を書いて、それをライブで表現すること。それが結成当初からの目標であり、今でもそれを目標にやっているので、そこはブレていないですね。
 

—現在もツアー真っ最中ですが、本数の多さに驚きました。みなさんすごい体力ですね。

 
NABE:これはね~慣れますよ(笑)。ツアーで始めた頃は嬉しくてしかたがないから「うわ~朝まで飲もう!」とかしていたけど、それも数年で飽きるの(笑)。まあ、最近は、ちょっと一杯飲んで次の日に備えることが多いかな。朝まで飲んでいてもイケるかもしれないけど、翌日のライブでもし歌詞を忘れた!とかあったら「昨日朝まで飲んでたからだ~」、って思うのが嫌だからというのが大きいな。ほどほどに(笑)。
 

—これまで、ツアー中にハプニングみたいなことありました?

 
NABE:こーへいが入る前、バンドが仲悪くなって(笑)。ツアーで博多から神戸に車移動しているときも誰も口をきかないし、雰囲気最悪でみんな殺気立ってて。車内に、靴下が落ちてるだけで「誰のやこれぇ~(怒)」ってエライ剣幕で(笑)。当時、ローディでついてきていた拾得の店員のヒロくんが、その空気に耐えかねて「海、見に行きましょう」って、明石のあたりで高速をおりて、みんなで海に行って砂浜を走ったことがあるな。「わ~!」って叫びながら走っている最中の写真が、3枚目 『狐か狸か』の中ジャケットになっていて。まぁ、でも男の子ってしょうもないことが理由で、ケンカするでしょう。ケンカしたからって後を引くわけでもなく、そんなことがありましたね。
 

Official Live Photo by 山中善正

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—青春ですね!ここで、ファンからの質問をよろしいですか?その1、今まで苦労した曲と、スッと下りてきた曲を教えてください。

 
NABE:苦労した曲は、4枚目『まにぐるま』に入っている「道成寺(安珍と清姫)」という曲です。「今昔物語集」にも納められていて、能の「道成寺」や歌舞伎の「娘道成寺」にもなっている物語をテーマに、歌詞へ落としていくのに3か月半かかったな。アルバムで一番苦労したのは5枚目『不良少年の口笛』。もう俺引き出し無いんや、音楽辞めよう、バンド辞めようって思ったね。1枚目2枚目なんて誰でも出せるんです。3枚目から作曲者の力が求められるわけで、俺は引き出し多いほうだから出来ましたけど、4枚目も、オリジナルの騒音寺だっていうモノが出来て、全部出し尽くしたんだろうね。5枚目は本当苦労したよ。ノイローゼになったもん。それを乗り越えたから、今も曲作りが出来るんだと思う。5枚目を作るため、お酒も絶って、ツアー先のホテルでもずっと書いてて。だけど、何も出来ないから、俺は何も能力が無くなってしまった、バンドを辞めようってくらいに追い詰められて。
 

—どうやって乗り越えられたのですか?

 
NABE:それも「お酒」。このとき、お酒を絶ってずっと曲作りをしていたんだけど、2月の中旬、大雪の日に、家で「いよいよ俺には才能が無い、ダメだ」って思い、部屋を見渡すとファンから頂いたお酒が家に沢山あって、ストーブにやかんをかけていたので「もう、酒を飲んでしまえ!」って思って、焼酎のお湯割りを作って飲んだら「美味しい!」って思ったの。続けてカカカーって飲んだら頭の中でパキーンと音がしてソファに脱力したんですよ。そしたら、「リリースは6月だからゆっくり書いて大丈夫」って気持ちに余裕が生まれて。よっぽど張り詰めていたんだろうね。こんなこと初めてだったから。その苦労があったから、今があるし、曲作りで苦労することは良いことだぞって思えるかな。
 

—よっぽど精神的に追い詰められていたんでしょうね。では、すぐ降りてきた曲は?

 
NABE:今回のアルバムに入っている4曲目「カモナ・マイ・ハウス」。電話の会話をそのまま歌にした実話だから(笑)。でも、普段はそこまで苦労するタイプじゃないんですよ。1曲に集中して歌詞を仕上げるのは大変だけど、俺の場合、色んなアイデアがあって、4~5曲くらいを毎日同時進行で書き綴っていく感じなので、途中で頓挫した曲も、こっちの曲とあわせたら面白いかも、という風に、パズルのように作る場合もあるのでね。曲作りが趣味の部分もあるし、苦労とは思わないな。
 

—ファンからの質問 その2、ひと月に何枚くらいレコードを買いますか?

 
NABE:10枚から20枚くらいかな?この前はハードオフでスピーカーを買ってしまい……。ツアー先でレコード屋がある限り、見に行ってしまうしな。名古屋のワイルドハニーや下北沢のディスクユニオン、あそこは最高!
 

—ファンからの質問 その3、ご出身は名古屋ですが、京都に住んだのは進学の都合?それとも京都の音楽シーンに興味があったからですか?

 
NABE:両方。東京や大阪じゃなくて、横浜とか金沢とか京都とか博多・長崎といった地方都市に行きたくて。それで、大学受験で京都の学校に決まったから、まぁいっかって京都に来て。風景も好きだったし、京都に来たら真っ先に京大西部講堂や拾得へ行ってみたくて「良い街だな~風情があって」、って思いましたね。当時、6畳一間に暮らしていて銭湯通いでね~、シンとした冬も寒い中行ったり、暑い夏は鴨川に足をつけに行って涼をとったり……。あの頃に戻ってもいいと思うくらい、良い思い出が沢山あるな。
 

—初めて西部講堂や拾得、磔磔のステージに立ったときのことを覚えていますか?

 
NABE:自分の感動というより「村八分」や「憂歌団」といった人たちが演ってきた場所に俺も立てた、って思いが強かったな。スタートラインにやっと立ったっていう感じで、「ついに一流ミュージシャンの仲間入りだ!有名になるぞー」って、嬉しかったなあ~。今もし騒音寺が「武道館でライブをやる」ってなったとしても、あの時の“嬉しさ”の方が大きいと思うよ。
 

—今後の目標はありますか?

 
NABE:アルバムは出たから、次は新しい曲をどんどん書きたいし、ツアーを休んででも曲作りの時間があれば、1か月でも2か月でも充てたいな、と思っています。とにかく良い曲を書くこと、それに尽きるかな。エンジンは、詞と曲。それをメンバーに出して、ライブで新曲を披露したい。騒音寺はずーっとそうしてきたし、これからもそうしていくよ。俺は、まだまだ引き出しあるよ(笑)。
 

—最後にメッセージを!

 
NABE:メッセージと言えば、この前、ラジオで「若いバンドマンたちにメッセージ」をくださいと言われたんだけど、「就職しなさい。おわり」(笑)。でも、やりたかったら絶対やるよね。誰かに反対されたからって辞めるようじゃ、続かないし。あと、バンドをやるなら、良いバンド名をつけなさいって思うよ。一生大事に出来る名前をね。俺は、騒音寺というバンドは一生モノだと思っているから、他で何かをやりたいなって思っても、騒音寺にそれを持ち込んでやるし、別のバンドを組もうという意識は全くなくて。バンドなんか1つで充分って思うくらいこのバンドのことが好き。まぁ~、もし1人になっても騒音寺として弾き語りだな(笑)。
 
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