TEXT:株本和美
国内のロックシーンの最先端を駆け抜け、輝き続けるフロンティアたちの横顔に迫るインタヴュー特集「ROCK ATTENTION」。第49回に登場するのは、THE STARBEMS (ザ・スターベムズ)。2018年に結成5年目を迎えるTHE STARBEMS が、1年ぶり4枚目のフルアルバム『Stay Punk Forever』を、1月31日にリリース。2017年6月に発売されたミニアルバム『NEWWAVE』の中で見せた独自のニューウェーヴ解釈が更に進化した一枚で、常に“PUNK”で在り続ける彼らにしか出来ないPUNK ROCKが詰め込まれた作品となった。
「夢を叶えられるのは自分しかいない」と高らかに宣言する表題曲「Stay Punk Forever」で幕を開ける本作は、既存の価値観を取り払って新しいサウンドを構築しようとする意志がみなぎった意欲作である。「ワンアンドオンリーでいられるか、をいつも考えてる」と語るヴォーカリスト日高央 (以下日高 )のインタヴューをお届けしよう。
THE STARBEMS / New Album “STAY PUNK FOREVER” Trailer
VIDEO
THE STARBEMS(L to R)
菊池篤(きくち あつし:Guitar & Chorus) / 山下 潤一郎 (やました じゅんいちろう:Bass & Chorus)
日高央 (ひだか とおる:Vocals)
越川和磨 (こしかわ かずま:Guitar) / 高地広明(こうち ひろあき:Drums & Chorus)
なるべく常識的じゃないことをやろう、っていうコンセプトでやっています
—アルバム『STAY PUNK FOREVER』のリリースおめでとうございます。今作のコンセプトとタイトルに込めた思いを教えてください。
日高: タイトルだけ見ると、鋲の皮ジャンにモヒカンのイカついパンクスが出てきそうですが、パンクとかロックは自由だから、っていう言葉を一番言い表している言葉だったんです。一番自由さを表現できて、逆に誤解されてるのも計算の内、というか、誤解されてもいい、というところでも全体をよく言い表していると思います。
—表題曲については?
日高: 当初「STAY PUNK FOREVER」は、没になりかかってたんです。まず、基本のデモを俺が作ってメンバーに配り、リハであわせながら曲を作っていくんですが「ちょっとソフトすぎるんじゃないか?」という意見があって。そもそもBEAT CRUSADERS (ビート・クルセイダース)と違うことをやるためにTHE STARBEMS をはじめたのに、これだとBEAT CRUSADERS っぽい……という話になり、それならやめようかと言ってたんですね。ところが、ギターの西 くん(越川和磨 )とベースの潤 くん(山下潤一郎 )が「これ、ええんちゃいますか?」と“アリ発言”をして、入れることになりました。
—西(越川)さんと潤さんはどういうところでアリだったのでしょう?
日高: 「STAY PUNK FOREVER」は、ソフトに聞こえないようなアレンジもできますし、仮にソフトな演奏になったとしても、パンクなりロックって自由なんじゃないか、っていうことで。仮に、それを聞いた人が「パンクっぽくない」って思うならそれでもいいし、単純に曲が好きだったから。仕上がりも良くなる自信が特にその2人はあったので「やりましょうよ」って事になり、実際やってみたら良かったんですよ。そして、この曲だけ最初から歌詞はあったので、「(アルバムの)タイトルはコレだな」っていう自然の流れで決まりましたね。
—なるべくしてなったタイトル! 2017年6月発売のミニアルバム『NEW WAVE』から7ヶ月。その頃から、今作の発売も想定していらっしゃったのですか?
日高: 何かしらやろうとしていましたが、俺の中ではフルアルバムの予定は全然なくて。ミニアルバムかシングルっぽいものを出して、2019年か2020年あたりにフルアルバムかな、って思っていたら、メンバー的に「THE STARBEMS 、5周年だから、フルアルバムでしょう?」と(笑)
—5周年となると気合も入りますね(笑)
日高: それプラス、今年は日高央 50歳なんです。メンバーから、「50周年を謳っちゃうと結局BEAT CRUSADERS をやれって言われちゃいますよ。それでいいんですか?THE STARBEMS はそんなつもりでやってたんですか?」っ凄まれまして(笑)。「BEAT CRUSADERS を超えるために頑張ってるんですよね?じゃあ、オリジナルをフル(アルバム)でやりましょう」となり渋々………(笑)。
—THE STARBEMSは東日本大震災の時にメンバーが集まり始動したと伺っています。1月31日にフルアルバムが発売、そのツアーが3月からスタートというのは意図があってのことでしょうか?
日高: アルバムの発売とツアー開始の間をあけたのは、紋切り型のやりかたを変えたくてそうしました。今の時代、ただでさえCDが売れず、CDを聞く人も減っています。今作のジャケットが表している通り、CD自体が「カセットテープ」のような一部嗜好品になってきちているじゃないですか。高価なBOXセットをコレクションで買うために、CDが存在しているようなね……。
—CDプレイヤーを持っていない方も多いと聞きます。
日高: メンバー全員がいつも思っているのは、自分たちが子どもの頃、苦労してお金を出してアルバムを買ったり、友達とトレードしたり、ダビングさせてもらったりって、どうにかして聞きたい音楽を手に入れていたんですね。年齢はともかくとして、ロックとかパンクって気持ちの若い人たちが聞く音楽と思っていて、だからこそ、予想が出来ることを演っていちゃダメだなって思うんです。予想を常に裏切られるような、アーティストたちが、自分たちも好きだったので、そういう意味で、あえて発売日とツアースタートも離すし、お約束の東名阪(東京・名古屋・大阪)のライヴも入れてなくて(笑)。なるべく常識的じゃないことをやろう、っていうコンセプトでやっています。
—東名阪をまだ決めていないというのは、これもまた意外です。
日高: (笑)。普通だったら、アルバム発売と同時にツアーも決まりました、ってバーンと発表しますよね。友達のASPARAGUS (アスパラガス)っていうバンドが昨年9月27日にアルバムを出した時、THE STARBEMS をツアーに呼んでくれて一緒に回ったんですけど、2017年のうちにツアーが終わっちゃったんです。俺達は、これからもっとたっぷり遊びたかった(笑)。すぐ終わって寂しかったので、うちは半年くらい引っ張ってやろうかなって……(笑)。
—外国のバンドの回り方のようですね。
日高: そうですね。アメリカやヨーロッパは広いから、半年や1年かけてっていうのもあるけど、そんなに広くない日本を半年くらいかけて回ろうかな(笑)。THE STARBEMS としては、“はじめまして”の場所もありますので、すごく楽しみですね。
—ちなみに、製作期間はどれくらいでしたか?
日高: これはね~、すぐでしたよ! ミニアルバムのツアーファイナルが8月だったので、それが終わってから次のリリースの話をして、来年早々に出しましょう、って決まったので、すぐ!通常アルバムって、発売の3ヶ月前に完成させるのが目標なんですが「時間無いやん!」ってところからスタートでしたから。
—てっきり平行して進められていたのかと思っていました!
日高: いやいや(笑)。NEWWAVEから2曲持ってきていますが、ほかは書き下ろしです。今作も録音は西 くん(越川 )が担当して、ミックスは前田くんという、昔THE STARBEMS の音を撮ったときに、当時アシスタントだった方なんですが、今、彼がメインのエンジニアに昇格したので「やってくれよ」って。お互いにあの頃から成長しているだろうから、確かめ合うっていう(笑)……ということで、依頼しました。
—5周年という節目に盟友と……。
日高: まさにそんな気持ちですね。
世界の中でワンアンドオンリーでいられるか、ということをいつも考えていますね
—短い制作作業の中で、まずは日高さんがデモ音源を作り、メンバーに投げるわけですが、特に苦労した点は?
日高: デモ自体は、歌とギターとドラムが簡単な感じで入っているだけのもので、仕上がりはこうなるだろうな……と予想のもとに投げているんですが、それが全然違うってこともあるんですよね。例えば、アルバムで言うと6曲目「Go to Hell, Instead of Us」とかは、ひたすら速くてうるさくて短い曲なんですが、俺としては、ワンコーラス作って、デモを持っていって、これが2コーラスになったり、ソロが入ったりと展開するかな?って予想していたんですが、スタジオで、せーの、でやってみたら、これだけでいいんじゃないか、って(笑)。
—キュッと(笑)1分未満の曲に。
日高: そう。でも、ギターが追っかけで入っているんですよ。歌じゃなくて、ギターが輪唱してるんですが、そのギターは西くん(越川)が後から重ねてるんです。
—それは日高さんも立ち会って?
日高: 歌入れも終わった後なので、立ち会ってないです。後日、ギターが重ねて入ったものが西くん(越川)から送られてきて、「あ!!」って。結果面白いんですけど、驚きました。
—そういうことはよくあるんですか?
日高: サードアルバムくらいから、時々あるかな。メンバー同士がびっくりし合う(笑)。
—日高さんの作詞・作曲のプロセスについて教えて下さい。
日高: 基本、曲が先にあって……っていうのが多いですが、1曲目「STAY PUNK FOREVER」は、冒頭でもいいましたけど、サビの部分の歌詞は曲を作った段階で思いついていたので、それもデモ音源に入れて、そこから膨らませていきました。メンバーみんな、歌詞には興味がないだろうな、って思ってこっちは勝手に書いているんですが、意外と西 くんとか、歌詞を読みながらギターを入れています、とか言ったりしてるんで、あ、意外と大事なんだな、って(笑)
—歌詞が英語という点は、どのようなこだわりが?
日高: ロックの目覚めが、The Monkees というアメリカのバンドだったんです。その後も、LAUGHIN’ NOSE 、YMO 、The Flipper’s Guitar ……といった人たちも英語で謳っていたしそういう所に惹かれて。まあ歌謡曲的なものも好きでしたけど、そこには自分の美学や気持ちをイマイチのせられなかったんです。特に、YMO やLAUGHIN’ NOSE は、日本人なんだけど世界に向けてやっている感じがすごくかっこいいな、って思っていて。
—最初から世界を視野に?
日高: うーん、日本の中で受け止めて完結しちゃいがちなモノ、特にアイドルとか。アイドルはアイドルで、好きなんですけど、それを俺は面白いと思ったことがなかったので、自分でやるなら、外に向けてやりたいし、彼らが教えてくれたのは「誰かと同じじゃだめ」って事だったのでね。YMO 、LAUGHIN’ NOSE 、The Flipper’s Guitar って、バンドもサウンドも違って共通点がないけど、日本だろうが海外だろうが、誰が聞いても同じ印象を持てるというか、かえって“平等さ”をすごく感じたんです。たとえ、アラブで聞いても日本で聞いてもロシアで聞いてもYMO はYMO でしかない、みたいなワンアンドオンリー感がすごくロックだな、と思っていました。
—日高さんは海外留学の経験もされていますが、その影響も大きい?
日高: “誰が聞いても同じ印象”っていうことは、留学中すごく感じましたね。日本でどれだけ人気があるアーティストでも、アメリカで聞くと別になんとも思わない。逆にアメリカのアーティストを俺達は“さも大げさな存在”として捉えて聞いていても、実際アメリカでは“普通”だったり。そういうことが往々にしてあったので“世界のどこにいても同じように聞こえたい”っていうのはすごくあります。だから、世界の中でワンアンドオンリーでいられるか、ということをいつも考えていますね。
—日高さんの作られる歌詞を聞くと「夢を叶えるには自分で行動を起こさなきゃ」というメッセージを感じていて、背中を後押ししてくださると同時に勇気づけられます。
日高: 「自分でやらなきゃ」ってのは、まさにいつも思っていることですね。普段生活していると、何かがひとつ流行ると、みんな同じ方向をむき、その流行りが廃れると誰もやらない……みたいなことになりがちじゃないですか。そういうのが、昔から好きじゃなくて。「ナタデココ」「ティラミス」とかが流行ったときもね(笑)。今でも「ナタデココ」とか食べたかったら食べるんですけど、そういうことって、「ワンアンドオンリー」感を自分で捨てている気がして。
—音楽だけでなく、生き様ですね(笑)
日高: 健康には良くないかもしれませんが、好きだったらそればかり食べたいでしょうし、自分のタイミングで食べたい、だけど、そのためには自分で責任を持たなければならならない、という事も含めてね。音楽の難しさなんですけど、THE STARBEMS なり自分を偶像視するんじゃなくて、自分の好きなことをただただ突き詰めていく。でもそれは自分にしか責任は取れないっていうことは、多分歌詞の中には自然と織り込んでいると思います。
—流行にあまり流されないほうですか?
日高: もちろん流行り廃りは大事だし、否定はしないけど「好きなもの」というのはそういうことじゃないと思うんです。「5年後に、同じテンションで好きでいられますか?」っていうことなのかな。特にアイドルとか食べ物なんかは、本当に短いスパンで入れ替わっていくからね。自分も、BEAT CRUSADERS をやって、なんとなく世間的に受け入れられた時に、すごい違和感を感じたんです。「今キャーキャー言っている人たちは5年後にいるのかな? 絶対いないだろうな」って思っていて、実際いないですからね。
—例えば「音のスタイルが変わって」とかで離れる方もいるかと……。
日高: だとしたら、「何が好きだったんだろうね?そのアーティストを見に来ていたのに」って思ってしまうんです。もうちょっと自覚的に音楽を聞いたほうが絶対楽しいよ、っていうことですよね。僕は、人気があってもなくても自分の好きな音楽は調べて聞きますし、かつて人気があって、今はそうでもないアーティストがいたとしても、その人が好きだから新作が出たらちゃんと聞きますね。
—「好き」ひとつにも責任をもつことでその分深く楽しめると。
日高: 行動の責任を自分で取らないと、逆に世の中楽しくないんじゃないか?っていうのはすごく言いたいですし、そういう歌詞しかないような気がします。小うるさい説教ジジイみたいで申し訳ないんですけど(笑)。
—CDを買いブックレットを見て歌詞を確認することで新たな発見がありそうですね。今作は4枚目のアルバムになるのですが、初めてTHE STARBEMSを聞く方にも“入りやすい”印象をもちました。
日高: 確かにとっつきやすいかも。これまで出したアルバムの中で、一番入りやすいかもですね。
—それは、意図として?
日高: 今って、ストリーミングで音楽を聞く機会が多いじゃないですか。メンバーも、ドラムの高地 以外はそうなんです(笑)。まあ、高地 も多少使ってるんですけど。そんな中、ギターの篤 が、「誰かの新譜が出た時に、頭5曲くらいで判断しちゃう」って話を。なので今回は、前半にわかりやすいもの、キーになる曲をいれたほうがいいんじゃないか、というアイデアを受けての曲順になりました。前半は、入門したての子でも聞きやすいものがあり、後半はドロドロっとしていく感じで深いところに(笑)。
—聞き終わる頃にはベムズ色に染まっている(笑)。ちなみに、本作で新たにチャレンジしたことはありますか?
日高: 最後の11曲目「Saturday Night We Must be Allniters」がスカなんです。ファースト、セカンドくらいの時は、とにかくBEAT CRUSADERS と違うものとして「激しい」「うるさい」ってのをモットーにやっていたので、その頃にこの曲を思いついていたら、絶対にアルバムには入らなかったでしょうね。やっと、THE STARBEMS としての色が、皆さんもわかってきた頃ですし、「元BEAT CRUSADERS でした」って自己紹介しなくても通じるようになってきたので、そろそろ自由度を上げてもいいかなと思い、スカナンバーを入れてみました。
—メンバーの反応は?
日高: メンバーもびっくりしてました。「え、スカ?」って。でも楽しくレコーディングもしました。印象的だったのは、ギターの篤 。実は、裏打ちのギターを西 くんが先に録音していたので、「裏打ち、いらんやん! 篤 、どうする?」ってなり……。そしたら、アイツは、家に帰ってRancid とか、The Specials とか、スカバンドを中学生みたいに聞きまくって(笑)。それで、思いつきました、ってレコスタに来て弾いたのが、“サックス”みたいなフレーズだったんです。本当だったら、管楽器を入れたりしたい所なんですが、時間もない中やっていたので、篤 が自らサックス役をギターで買って出てくれたという……。あれは、俺もちょっとびっくりしました。「篤、がんばったな!」って、みんなで感心しながら聞きました。
THE STARBEMSを媒介として、全然知らなかったものに出会ってほしいな
—メンバーは聞いてきた音楽は近いんですか?
日高: ルーツはちょっとずつちがってるけど、90’s……Oasis とかRed Hot Chili Peppers みたいな、今のスーパーバンド的なものは大体共通して好きですね。西 くんは毛皮のマリーズ だったのでガレージっぽいものとか、篤 はFed MUSIC だったので、もうちょっとポップなロック系。高地 は完全にエアジャム世代だし、潤 さんは俺と歳も近くて、Theピーズ が神なんですよ。割りと、そこはバラバラですね。そのバラバラさがいいのかな、と思っています。
—様々なエッセンスが混じり合ってTHE STARBEMSの音が。
日高: そうですね。だから曲によって解釈が全然ちがいますよ。10曲目の「Go-Go Sensation 」は、俺はもうちょっとUK寄りのイメージでデモを作っていたら、西 くんとかは「THE STALIN とか70’s~80’sのJ-インディーズっぽい感じを出したい」って言ってノイズを入れてきて。こんな風に、それぞれ違って面白いです。あと、5曲目「Funky Control」も、俺はもっとTHE BEATLES の「TAXMAN」みたいなロックバンドがやるファンキーなやつをイメージしていたら、みんなはもうちょっとRed Hot Chili Peppers っぽいのを想像して演奏していたとかね。
—是非デモと聴き比べてみたいですね。
日高: (笑)デモだともう少しソフトなんですけど、仕上がってみるとハードになっている……というね。ファンキー系の曲は、結構そうなることが多いですね。
—日高少年は幾つくらいの時に音楽に目覚めましたか?
日高: 小学校二年生の時にテレビ番組『ザ・モンキーズ・ショー』でThe Monkees を見て。The Monkees って、THE BEATLES に対抗してアメリカで作られたバンドで、今考えたらひどいアイドルなんですけど(笑)。それを見た時に、「バンドって、ずっと遊んで暮らせるんだ」って勘違いをしちゃったんですよ。実際テレビの中の彼らは、楽しそうだし、弱そうなギャングと戦って、お姫様を助けて、最後にみんなで演奏して終わる……って。そしてメンバーみんな一緒に暮らしてるんですよ。「すげえ夢みたいな生活だ」って俺は思ってましたね。
—小学校二年生にとっては憧れの生活ですね。
日高: その頃って、毎日学校行って勉強をし、先生に怒られたり、放課後は大して上手くもない野球をしたり、クソ安いアイスを買って家に帰ってテレビをつけたらThe Monkees は180度逆の世界を生きているわけですからね。それで、母が持っていたガットギターを借りて練習をはじめました。「夕飯もいらない」っていうくらい夢中で。当時は小2だから「プロのミュージシャンになりたい」とかはわからないから、友達とも普通に遊んだり、野球をしたりで、そんなつもりじゃなかったですが(笑)。まさか今、こんなことになるとは思ってませんでした。
—バンドというスタイルを初めて経験したのは?
日高: 中学二年生かな? 三年生を見送るための謝恩会があって。うちの学校は、文化祭とかではバンドは禁止だったんですが、謝恩会の時だけバンド演奏が許されていたんです。そこで、同級生たちと一緒に、Sex Pistols の「Anarchy In The UK」をやりました(笑)。
—!!
日高: 卒業生を送る気は無いですね(笑)。ただ自分たちがやりたかっただけの……。バンドって呼べるほど立派なものじゃなかったですけど、みんなでやろう、っていうのはそこからです。
—怒られませんでした?
日高: 怒られる覚悟で、半分ギャグでこの曲をやったんですけど「謝恩会に華を添えてくれてありがとう」って褒められちゃって。先生たちはSex Pistols とかわかんないし、中学生が学生服来て一生懸命楽器を演奏してるので「ステキな演奏ね」ってだけで終わっちゃいました。結果、僕らの思惑とは真逆に(笑)。
—その頃から、人々の予想を斜め上に行く方だったんですね。
日高: あの時予想通りにいかなかったから、今こうなったのかもしれない(笑)。まぁ確かに、期待されている方向に行くのはイヤかもしれないですね。
—5年目を迎えるTHE STARBEMSですが、変わったところと、変わらない点、教えてください。
日高: まずメンバーが変わりました。最初は6人いて、2人やめてひとり入ったので結果5人組です。あと、前よりちょっとやさぐれてきましたね。最初は、お肌がもっとツルツルしてたんですよ。だんだんカサカサに……(笑)。それから、音楽的な自由度は変わりましたね。当初は、俺が作ってきた曲を俺のイメージ通りに仕上げるっていう形でファーストアルバムとかは演っていますが、サードアルバムくらいから少し自由になりました。今はNGは無いな。例えば、バラードでも自分たち的に面白い、カッコイイって思えば演るでしょうし、打込み系のものでも、自分たち的に面白いって思えばやるだろうし、そういう意味では自由度は上がりましたね。それがロックであり、パンクだ、って思えば、なんでも演れるようになったと思います。
—なるほど。
日高: 「変わらないところ」は、俺も含めて全員天邪鬼(笑)! 「あれ絶対言うなよ」ってことを言うと絶対言うし、昨日と今日で言っていることが180度かわるメンバーもいるし、忘れっぽいだけかもですが(笑)。篤 は、腹が減ると手負いのクマみたいになるんで(笑)。そういうところは変わらないです。
—今後の主な活動を教えてください!
日高: レコ発は、みなさんの予想を裏切って、3月くらいからゆっくりはじめます。通常は、リリースしてすぐ、1~2ヶ月で終わっちゃうところを3月くらいから6月くらいまで、3ヶ月位かけて、超ゆっくりまわりますので、あなたの街の近くにも行きますので、遊びに来てください。ライブ情報は引き続きwebで!
—最後に音楽ファンへメッセージをお願いします。
日高: 自分もそうですが、今って新しい音楽との出会い方が難しいというか。ストリーミングのいいところは、いつでも聞けることですが、悪いところとしては自分の好みのものしかレコメンドしてこないところ。もしかすると、お金(宣伝費)を払えば多くのユーザーに向けてレコメンドされるようなことがあるかもで、今のメディアとかわらない状態になりつつあるとは思うんですが、そういう中で、自分の好きなものや、自分が出会っていなかったものに出会うというのが、逆に難しくなっているのかな、という気はしていて。
—確かにそうですね。
日高: Twitterなどでも、レコメンドされたものが上がってくるから、まっさらに知らないものに出会う可能性がどんどん狭まっている気がするんです。そこをかいくぐって頑張るのも、こちらの仕事でもあるので、引き続き頑張りたいな、と思います。THE STARBEMS を媒介として、全然知らなかったものに出会ってほしいな、と思っています。是非、皆さん、ITに負けないで頑張りましょう(笑)。
◆PROFILE
東日本大震災の支援活動を通じて、2013年に産声を上げたPUNK ROCKバンド。メンバーそれぞれの思うPUNKを、熱い思いと共に鳴らすそのサウンドはPOPかつアグレッシブ、ファストかつエモーショナルで唯一無二。時代に迎合する事なく、あえてMCやFUNな要素を排したLIVEアクトも独特で、EMOさと多幸感が共存するその空間は他に類を見ない。
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