特集

Rock Tour Of Virtual Earth

TEXT:桜坂秋太郎

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いよいよ日本はお盆休みです。海や山へとお出かけの予定がある方は、今年の夏を満喫してください。かなり暑い夏となってますが、暑いということはキンキンに冷えたビールが旨い!というメリットもあります。今年の夏の予定が何も無い!という方へ、冷たいビールを片手に、“ヴァーチャルな一人ロックツアー”はいかがでしょうか?ヴァーチャルとはいえ、かなり楽しいツアーです。最大のメリットは、費用がかからないこと!不況が長引く時代ですから、これは大きいと思います。いつでも思った時に旅立てるのも最高です。そんな新しいロックライフの一つの提案をしたいと思います!

題して「Rock Tour Of Virtual Earth」。様々な問題を指摘されながらも、利便性と新たなマーケット開拓により、デジタルマップが最近定着してきました。基本は紙に刷って売っていた地図のデジタル化ですが、それ以上の大きな付加価値があるといえます。デジタルマップの世界は、数社がそのシェアを削っていますが、世界を舞台にしているのはやはりGoogle社のサービスでしょう。この特集ではサービスの良し悪しではなく、あくまで“ヴァーチャルな一人ロックツアー”の視点から書いてみたいと思います。

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そもそも地図のデジタル化というのは、70年代から始まっている作業です。インターネットが普及したため、話題としてはここ数年の話ですが、作業自体はかなり古くから進められています。特に90年代からは、カーナビゲーション(以下カーナビ)の進歩に引っ張られる形で、デジタル化が加速。現在日本のカーナビの普及率は70%を越えているといわれ、ほとんどの車(特にマイカー)は、カーナビ付きという時代になっています。(※アメリカ等でもポータブルカーナビがポピュラーになりつつあります)

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カーナビ以外の面では、パソコンやインターネットの爆発的な普及も影響しています。そもそも地図というものは、その目的からして大判の印刷物が多く、目的地から到着地までのシミュレーションにおいては、何枚もページをめくるなどの作業があります。それが画面上で見るデジタルマップは、マウスでスクロールするだけという簡単な作業で、必要に応じて尺図も自在に変えられるというユーザーフレンドリーな物でした。

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高機能になった携帯電話やスマートフォンで、デジタルマップの恩恵を感じている読者もいるかもしれません。意識することなく、デジタルマップを生活に取り入れていた!という時代になりました。デジタルマップは新しいマーケットをいくつも開拓し、生活に必要な情報を活用できるようになりました。またその技術は、災害時などにも役立つことでしょう。デジタルマップのマニアになると、GPS機能を活用して、自分が行った場所の記録とコメントを残し、画像を貼り付けるなど、独自マイマップを作成しています。

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一般的に使われている無料デジタルマップの代表として、「Googleマップ」がありますが、今回ご紹介するのは「Google Earth」です。「Google Earth」の具体例をご紹介しますので、ご自分の行きたいロックなスポットに置き換えて活用してみてください。私はLA(ロサンゼルス)が好きなので、サンセットストリップにあるロックの聖地「Whisky a Go Go」へ行ってみたいと思います。

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「Whisky a Go Go」は、ロックンロール・パンク・ヘヴィメタルといった多様なロックの最前線を維持してきたスポットです。英国からもThe WhoLed Zeppelinが出演していますし、Frank ZappaRamonesも熱演を繰り広げた会場です。あのThe Doorsが箱バン(※会場と契約した専属バンド)を務めていたという老舗スポット。世界中のギタリストに衝撃を与えたVan Halenや、LAの悪ガキロックを確立したMötley Crüe、興行収益世界一のロックバンドGuns N’ Rosesなども輩出しています。

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「Whisky a Go Go」だけでなく、「HOUSE OF BLUES」や「ROXY」といったメジャーなライヴスペースは、「Google Earth」に直接入力することで、一瞬でその場へ行かれます。行きたい場所を入力してサーチすれば候補が出てきます。後はその候補からチョイスしてクリックするだけ。とても簡単な作業です。マイナーな場所だと、サーチには出てこないかもしれませんが、その場合は住所を入力すればOKです。

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サーチが終わると、地球がグルっと回って該当するエリア付近で止まります。地球が回るビジュアルに、ワールドワイドな移動を感じます。そして航空写真のような町が見えてきます。アクション的には、「Googleマップ」と似ているので、違和感なく作業できるのではないかと思います。空から目的地へ近づいてみると、CGの町が登場します。一時期話題になったLinden Lab社の「Second Life」を彷彿させますが、ここからが「Google Earth」のすごいところ。

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ヴァーチャルな絵の町の中に、球体が登場します。その球体の中には、本当の町の画像が入っています。「Googleマップ」のストリートビューのように、リアルな風景が登場して、目的地の前に移動完了です。ブロードバンドのインターネット回線であれば、目的地の入力から移動完了までに必要な時間は、たった数十秒です。ストレス無く「デジタルマップ ロックツアー」を可能にするのは、この速さがポイントです。

残念ながら「Whisky a Go Go」の中には入れません。おのぼりさんのように、外からの風景を楽しむだけです。でも、実は裏技が存在します。「Google Earth」のGoogle社が同じく展開しているサービスに「Youtube」があります。言わずもがなのメジャーな動画配信サービスです。今のブラウザはタブ形式がスタンダードです。別タブを開いて「Youtube」へアクセスし、「Whisky a Go Go」で検索すれば、会場の中のライヴ映像を観れます。この合わせ技により、ヴァーチャル体験の臨場感が増します。

実際に足を運ぶわけではないので、あくまでヴァーチャルではありますが、疑似体験としてはかなり楽しいのではないでしょうか。この作業を1として、4,5回繰り返すだけで十分ツアーした気分になります。リアルでは回りきれないようなコースの設定も可能です。同じLAを回ることはもちろん、NY(ニューヨーク)へも一瞬で移動できます。「The Bowery Ballroom」や「Bitter End」などへ移動して、東の雰囲気を味わうことも朝飯前。私はいつもラスベガスへ飛んで、ヴァーチャルなカジノを楽しみます。アメリカ以外のオーストラリアや中国へ移動しても面白いかもしれませんね。

今は裏技として書いたこの方法、いずれGoogle社は標準装備してくると思います。「Google Earth」と「Youtube」の融合は、技術的には早い段階で実現するかもしれません。その時になると、インターネット上に単品で存在しているサービスの融合がさらに進み、利便性は増すことでしょう。もっと楽しいロックツアーが出来るようになっていると思えば、技術の進歩も悪くありません。

ヴァーチャルを否定するコメントを時々見かけますが、私はこのようなヴァーチャル体験の意味は大きいと思っています。一度でも行ったことがある場所を、「Rock Tour Of Virtual Earth」することで、その時の空気を思い出せます。ヴァーチャルの最大の弱点は“匂い”をかげないことです。しかし、行ったことがある場所なら、その“匂い”までも人間は思い出せます。ロックにゆかりのある場所だけでなく、観光旅行で行った場所へもすぐに飛べるので、思うがままのオプション付き自分ツアーを楽しめます。

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もちろん行ったことが無い場所の探索もできますので、いつか行きたいと思っている場所をサーチしても楽しいです。“匂い”をかぐことはできませんが、事前に疑似体験していることにより、現地でデジャヴ(既視感)を楽しむことができるからです。このデジャヴ感にハマってしまい、初めて行く場所を「Google Earth」でチェックするのが、最近の私のスタイルとなっています。

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さらにもう一つのお楽しみを最後に書きたいと思います。「Google Earth」には「flight simulator mode」という優れた機能があります。これはずばり“フライトシミュレーション”。飛行機は、ジェット戦闘機のF16とプロペラ機のSR22のいずれかをチョイスして、世界中の空を飛びまわれます。キーボードとマウスを駆使するので、操作はちょっと難しいかもしれませんが、自由自在にフライトができるのは最高です。

この「flight simulator mode」を知ってしまうと、お金を出して市販のフライトシミュレーションゲームを買わなくなってしまうかもしれません。専用ゲームではないので、エンターテイメント性はあまりありませんが、無料で世界中の空を自由にフライトできるなら十分です。公式の動画が無いため、この記事では動画を掲載しませんが、「Youtube」で“flight simulator mode”を検索してみてください。多くの動画がアップされています。どのような物かはそれでわかります。

この機能を最初に知った時に私が取ったアクションは、ドキュメンタリー映画の『Flight 666』ごっこです。IRON MAIDENを聴きながら、「Ed Force One(ボーイング757)」のパイロット気分を味わいました。『Flight 666』は45日間で5大陸を回っていますが、「flight simulator mode」なら45分で5大陸を回れます。「Rock Tour Of Virtual Earth」のエンディングは、Bruce Dickinsonの気分を味わってみるのも良いかもしれません。