連載

ロック社会科見学 ステージ1★ライブハウス店長編!

「ライブハウス」台信店長に突撃取材!
TEXT & PHOTO:武田乃与太郎

記念すべき第1回目の『ロック社会科見学』は、「ライブハウス店長」のお仕事に密着!はたして「ライブハウス店長」は、どんな仕事をしているのでしょう? ライブハウス「高円寺ショーボート」の「台信(だいのぶ)店長」の一日を追ってみたぞ!

漠然と『ロックに関わる仕事』を考えてみると、人それぞれ様々な業種や職種が思い浮かんでくることだろう。しかし、その思い浮かんだ仕事の具体的な内容や、現場の環境までをきちんと理解している人は少ないのではないだろうか。そこでビースト編集部では、『ロックに関わる仕事』の従事者に対し一日密着取材を敢行!ついでにアレやコレやと話を聞くことで見聞を広げてみようと思う。

Photo今日の入店時間は、いつもより遅めの16時。基本的に、入店時間はイベントの都合や打ち合わせによりマチマチだが大体14時前後らしいぞ。さぁ、これから一日の仕事がスタート!今日はどんなことがあるのやら。「台信店長」よろしくお願いします!

Photo入店してメールチェックやスケジュールの確認をすませると、出演者の入り時間までは打ち合わせが主な仕事。次から次へと電話や対面にて、ブッキングの打診やイベントの相談などに大忙しだ。とにかく事前の段取りがライブの良し悪しを左右するため、納得がいくまでは手を抜けないのだとか。他にも、業者対応や買出しなどがあり、ハッキリ言って休む暇が無い。

Photo仕事をこなしていると、あっという間に出演者の入り時間になり、リハーサルがスタートした。すると「台信店長」も一旦仕事の手を休め事務所からフロアへと移動。どうしても外せない場合を除いては、リハーサルを見学してバンドとコミュニケーションを取るのだという。そう、ライブハウスを経営する上で出演者と良好な関係を築くことは何よりも大切なのだ。

Photoライブ中はスタッフがそれぞれの持ち場につくため、唯一自由の身の「台信店長」は大忙し。ドリンク出し・トラブルチェック・接客対応・電話番と一人何役もこなさなければならないのだ。今日は予想以上にドリンクが出るため、ドリンク出しの手伝いをしながらトラブルチェック。実は「台信店長」、ドリンク出しの際に楽しんでいるお客さんの顔を見るのがなによりの喜びらしい。

Photoライブ終了後は打ち上げのセッティングをすませると、まずは出演者との金銭清算だ。この際、大切なのはビジネスライクな対応だけで終わらせないこと。必ずライブの感想を伝え、場合によってはアドバイスをすることもあるそうだ。その後は、売り上げ管理やデータ入力などのデスクワーク。まだまだ仕事は終わらないぞ。

Photoスタッフを送り出して店を閉めた後は、事務所にて今日打ち合わせた内容の確認作業を行なう。基本的にこの作業が終わればお仕事終了。結局「台信店長」の今日の仕事上がりは26時となった。ちなみに、遅いときは28時過ぎまでかかることもあるのだとか・・・。とにもかくにも、台信店長お疲れ様でした。

—今日はお疲れ様でした。

台信:お疲れ様でした。

—「台信店長」の仕事の内容や流れは、いつもこのような感じですか?

台信:そうですね。大体こんな感じです。ライブハウスの店長といっても何でもやりますし、基本的には地味な仕事の連続ですね(笑)。

—その中でも打ち合わせに費やす時間が非常に長いなと感じたのですが、その辺がライブを成功させるためには一番重要なのでしょか?

台信:やはり、ライブハウスにとって看板イベントやブッキングは命ですからね。それに、コンセプトのないイベントを企画しても誰も出演してくれませんし、いいかげんなブッキングを組むと二度と出演してもらえない恐れもあります。そのようなことを防ぐためにも、企画内容は徹底的に煮詰めますし、出演者とはお互いに納得がいくまで話をするようにしています。

—ではそのブッキングに関してなのですが、台信店長が特に注意をしているところを教えてください。

台信:僕はジャンル的なくくりよりも“空気感”みたいなものに気を使うようにしています。例えば同じジャンルのバンドであっても、趣味で楽しくやっているバンドとメジャーを目指しているバンドとではベクトルや求めているものが違いますよね。その違うバンドを同じジャンルだからといって、安易にブッキングしてしまうのはどうなのかなと。それだったら、ジャンルは違っても同じベクトルのバンドをブッキングした方がバンドの刺激にもなるし、お客さんにも楽しんでもらえるのではないのかなと思っています。ただ、そうは言ってもある程度ジャンルは合わせる必要があるので、その辺のさじ加減は難しいですね。それと、僕は店長という立場上経営についても考えなければならないので、面白いだけではなく売り上げにつながるブッキングも意識するようにしています。

—経営という言葉が出ましたが、アルバムが売れず不況が叫ばれる音楽業界の影響ってライブハウスにもあるのでしょうか?

台信:娯楽の多様化やコピーの影響で昔に比べてアルバムが売れなくなったなという感覚はありますが、音楽業界の不況がライブハウスの経営に影響を及ぼしているとは感じませんね。事実、バンドブームの頃から順調に経営しているライブハウスはいくらでもありますし新規参入も多いですしね。世間の景気云々よりも結局のところ、いかに個性を確立し営業努力をするかがライブハウスの経営を左右するのではないかなと思います。

—なるほど。ライブハウスの経営は結局お店の努力次第だと。では「台信店長」が描く「高円寺ショーボート」の理想像について聞かせてください。

台信:やはり誰からも愛されるライブハウスですかね。出演者・お客さん・地域の皆さんなど、取り巻くすべての人に喜んでもらえるような店になればいいなと思っています。そのためにも、常に情報を発信し一人でも多くの人に認知されるよう頑張っていきたいですね。

—では、最後の質問です。「台信店長」にとって、ライブハウスの仕事の魅力とはなんでしょうか?

台信:う〜ん、難しい質問ですね。良い意味で最底辺の音楽シーンを形成できるところでしょうか。昔から一部を除いて、どんな大物アーティストでもはじまりはライブハウスでしたし、この流れはこれからも変わらないと思うのです。その未来のアーティストの才能にいち早く出会え、ライブをプロデュースできるのがライブハウスの仕事の醍醐味じゃないかなと。まぁ、なんとも言えませんがやり甲斐のある仕事には間違いないですね(笑)。

—今日は本当にありがとうございました。

台信:こちらこそ、ありがとうございました。

『ロック社会科見学〜ステージ1★ライブハウス店長編!』の取材を終え、華々しいステージの裏では、出演者や明日の音楽シーンのために地道な作業が行われていることが確認できた。そのことを少しでもロックファンに知っていただけるよう、これからもシリーズ化してお伝えしていきたいと思う。

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<取材協力>
高円寺ライブハウスShowBoat
オフィシャルサイト

7月のShowBoatは台信店長渾身の16周年記念イベントが目白押し!今すぐサイトをチェック!
http://www.showboat.co.jp/pick_up/index.html


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