3月30日と31日の2日間、桜冷えの恵比寿LIQUIDROOMで、筋肉少女帯の熱いライブが繰り広げられた。今年初のスタンディングライブ、しかも「メジャーデビュー4半世紀記念への予言は」と銘打たれた、いつも以上に期待高まる2daysだ。
筋肉少女帯──。その歴史は、誕生日が2日違いという大槻ケンヂ(Vocal)と内田雄一郎(Bass)の中学時代の出会いに始まる。1988年のメジャーデビュー後、クラシックの素養のある三柴理(Keyboard)と絶妙の音楽的邂逅を果たし、さらに橘高文彦(Guitar)、本城聡章(Guitar)の加入を経て厚みのある音を獲得。類まれなるロックバンドとなり、90年代にひとつの絶頂を迎えるも、21世紀を目前にしての活動凍結──。その間、他に代わりの効かないバンド・筋肉少女帯を求める熱が冷めることはないまま迎えた2006年の年の瀬、中野サンプラザでの完全復活!その後「同窓会に徹しぬよう」と大槻ケンヂが語る通り、アニメ番組への楽曲提供、相次ぐアルバムリリースなど進化を続け、新世代のファンも獲得している筋肉少女帯。そんな彼らのメジャーデビュー25周年の序曲となったこの2daysライブは、定番曲だけでなく、メジャーデビュー時の楽曲からレア曲まで多彩な楽曲が重層感に満ちた演奏技術で再現され、25年の時空を追体験させるような素晴らしい2日間となった。
まずは野村佳緒理が2days初日の模様を、”筋少”ファンの方々に振り返って喜んでもらえるように、さらに、僭越ながら若い世代に”筋少”のすごさを少しでも伝えられたらという願いを込めて、お送りしたい。
突然、期待を膨らませながら待っていた観客の喧噪が、歓声に変わった。”特撮ソング”に乗って、内田雄一郎(Bass)、橘高文彦(Guitar)、本城聡章(Guitar)、そしてサポートを務める長谷川浩二(Drums)、三柴理(Keyboard)が登場!そしてSEが終わる完璧なタイミングで、大槻ケンヂ(Vocal)も登場!お馴染みの特攻服ですぐさま、有無を言わせぬ「エンジェル!」コール!素早い切り替えで瞬時に反応する観客。活動再開後のノリの良いナンバー「心の折れたエンジェル」でのっけから心地良く煽られる。挨拶代わりの勇ましいコール&レスポンスに、会場の空気は一気に、熱く熱く膨張してゆく!
立て続けのナンバーは活動凍結前のラストアルバムから、「タチムカウ―狂い咲く人間の証明―」。大槻ケンヂのビブラートが切なげに伸びきったと思うと、待ってましたとばかりに観客も大合唱。ガタガタ震えながらもビクビク怯えながらも”タチムカウ”のだ!と自らを鼓舞するように、メンバーも観客も拳を振り上げる!欺瞞に満ちたこの世界で、脆弱さゆえに発揮される人間の強さは、冷気の中で咲き誇る桜に確かに似ている。「折しも桜が舞い散り」と唱える大槻ケンヂの声に、ギターの高鳴りが哀切さを加えて、挨拶代わりにしては体感温度の上がる2曲が終了。
盛大な拍手と歓声の後、大槻ケンヂの雄叫びが響き渡る。「2days一日目、アントニオ猪木の死闘のごとく、ヨダレをダラダラ垂らすほどに盛り上がるのだ!」という強烈なビジョン!するとヨダレかけとガラガラが用意され、大槻ケンヂの赤ちゃんパフォーマンスが展開される。和やかな笑いに包まれる中、突然の低いタイトルコール、そして演奏されるのはもちろん、「踊る赤ちゃん人間」!橘高文彦のギターが引っ張るハードなロックテイストに三柴理のピアノが交錯し、手段選ばず生きるしかない、ひねくれた弱者のリアリティを自嘲気味に歌いあげる大槻ケンヂの声が中心を貫く。筋少ならではの華麗な演奏に観客はノリながら酔いしれる。
続いて「北の国からやってきたー!」の声で、「あのナンバーをもう?!」という観客の驚きとともに、4曲目で早くも「イワンのバカ」に突入。妖しげなイントロの後、めくるめくギターリフ、前方ではヘドバン炸裂、間奏で「明日もライブあるけど、余力残さなくたっていいんだぜ!桜舞い散るように燃え尽きたっていいんだぜ!」と叫ぶ大槻ケンヂ。揺さぶられる観客。冴え渡る橘高文彦の早弾きフレーズ。
狂騒の後は、優しく柔らかなアコースティックの音で奏でられる、「生きてあげようかな」。大槻ケンヂを追いかけ、重なるコーラス。「良かったら一緒に歌って」の声に、間奏の「ラララ」が、隣に、前に、後ろに、響きあって大きくなっていく。死を望んでいた少女を見守るストーリー性高いこの曲は、大槻ケンヂの優しさがてらいなく真っ直ぐに表現された名曲。追いかける音がギターに変わった頃にはもう、誰もが胸の奥をじんと熱く湿らせていたことだろう。
ここで照れ隠しのように「一緒に歌うと結構疲れる」と笑いを誘うMC。なぜかトークの内容は野球の話題へ。「俺とウッチー(内田雄一郎)は野球に詳しい」ということで、昭和チックな野球ネタがしばし繰り広げられる。じゃぁここは、ということで内田雄一郎がバットに見立てて手にしたのは一弦ベース。ノイジーなベース音から、6曲目「ゴーゴー蟲娘」へ。昭和歌謡を髣髴とさせる不思議なエレジー、それさえなぜかカッコ良く仕上げるのがさすがの筋少!
ここから休みなく、「バトル野郎」で小刻みのリズムに乗ってボクサーアクションに野太いコーラス、「労働者M」で力強いドラムに乗って「働け働け」の声出しと、男っぽい2曲が続く。すっかり体温が上昇したところで、「お客さんに満足して帰ってもらうには疲れさせることだとわかった」と語る大槻ケンヂ。「激しい曲で疲れさせておいていい感じのバラードをやると、あの人たちいい人ねって思われる」の言葉に観客はまたも大爆笑!
メンバー紹介の後、ステージはさながら大槻ケンヂと橘高文彦のトークショーの趣。橘高文彦ゆかりの地のキャラクター「ひらパー兄さん」の後継者を狙いながらも、ジャニーズの岡田准一に取って代わられてしまったという話題から、9曲目「代わりの男」へ。レア曲の多かったこの日のライブでも最も驚きの声が高くあがった1曲。ピアノとアコースティックギターの子守唄のような音に、現代詩のような謎めいた歌詞が甘い声で重なる。筋少の幅の広さを感じさせる楽曲だ。
内田雄一郎と本城聡章が戻ってきて始まったのは、「香菜、頭を良くしてあげよう」。橘高文彦はエレアコのまま、本城聡章のギターが嘆くように響く。いつかは終わる、どこか屈折した恋の歌に、ゆったりと観客の体が揺れていく。その余韻に浸っていると、無言のままの楽器チェンジ。
そして突然のドラマティックな前奏。「ゴッドアングルパート2」、メンバーさえ忘れかけていたと冗談も飛んだこの曲は、ライブでは2度目の演奏というレア曲だが、もしかするとこの日一番の聴きどころだったかもしれない。心地良さげにギターとベースが三方向から変則的な渦をつくり、そこに鐘を叩くようなピアノが響く。ハードなだけでも不条理なだけでもない、捕われるよりも求め、磨きつづけたい。まさに、筋少こそ日本のプログレバンドだという証明のような、圧巻の演奏だった。
歌い終えて、満足げに「マニアックな曲をやっちまったぜ」と語る大槻ケンヂ。「日本をインドに?というポーズを長年やり続けて腰が痛いし、これからはもっとマニアックな曲をやる」という宣言に期待が膨らむ。サポートメンバー紹介の中で、卒業式の話題を振られた三柴理は「教科書を全部河原で燃やした」とカミングアウト。大槻ケンヂも同意を示していたが、たしかに、三柴理の言うとおり、教科書を捨てちゃうような、上っ面の言葉では満たされない人たちが、筋少に惹かれ、ここに集っているのかもしれない。
そして後半の幕開け。「どんなコアな曲が来てもOKだな?」と言いつつ、「日本をインドに?!」ということで大爆笑。いつものコール&レスポンス。お馴染み「日本印度化計画」の出番だ!「ド定番の曲ってどうなの?」と自嘲気味な大槻ケンヂ。しかし間奏のエキゾチックな弦の絡みはやはり何度でも聴きたくなる心憎いクオリティなのだ。
一転、メロディアスなシンセの和音が響き、ここでメジャーデビュー時からの定番曲「サンフランシスコ」だ!間奏のパイプオルガンの音色は神秘的に鳴り響く。そして交互に左右から響くギター、「サンフランシスコ!」の斉唱、どこか遠くを旅して回帰していくような壮大な演奏に聴き惚れてしまう。
「ライライライライ」の耳に残るメロディ、活動再開後の定番曲「ロシアンルーレットマイライフ」。「生き残る奴は誰だ」「銃をもぎとれ」とストレートにきれいな地声で歌う大槻ケンヂがめちゃめちゃカッコいい。最後は三柴理のクラシック調の独唱と指揮で回転数を高めていき、その絶頂でいきなり途切れるエンディングに、場内、大歓声。
間髪置かずに高音の旋律でギターがうねって、「暴いておやりよドルバッキー」。真実を暴く子猫という魅惑的な歌詞に、不協和音の猫の声、一体となって暴れまくるダンサブルな演奏に、腕をクロスさせて踊りまくる大槻ケンヂ。ともに踊る観客の最後に決めた「ニャー」はこの日一番の大音量、もう楽しくってたまらない!
心からのアンコールの声に応えて、大槻ケンヂ以外のメンバーが再登場。「毎度毎度、筋肉少女帯に貴重な時間とマネーを費やしてくれてありがとう!」と内田雄一郎。しかし残念ながら、4半世紀記念の告知については「明日告知するぞ」とのこと。二日目のお楽しみとなった。そうして始まったアンコール1曲目は内田雄一郎ボーカルの「モコモコボンボン」。低音をドシドシ響かせる演奏に、スタンド付きのハンドマイクで股を開き、男くさく泥くさく、がなりたてる!
そしてアンコール2曲目は、何の前振りもなく、新曲・「妖精対弓道部」。ポップでカッコいい疾走感で始まったかと思うと、ラップ調に切り替わる。外来語のように崩してタイトルを歌いあげた後、「バーサス、ようせぃー飛び交う愛のー」と引っ張る大槻ケンヂの声がセクシーで、実に気持ちよさげだ。特攻服の背中には誇らしげな「2013」が刻まれている。
新曲を披露し終えて興奮気味に観客を褒めたたえる大槻ケンヂ。たしかに新曲とは思えない、完璧なアクションで応えていた観客。「それはなぜかというと、エビバディは筋肉少女帯に洗脳されているからだーっ!」。嬉しそうに叫ぶ大槻ケンヂ。この日何度目かの「いけるのかい?!」に観客もヒートアップ。手に携えられたアイテムはタオル。そう、あの曲だ、「これでいいのだ」!
ぐるぐるぐるぐる、タオルが回る中、「これで、いいのだ、こ、れ、で、いいのだー」の連呼、連呼!「今夜はありがとう、明日のためにしっかり休めよー」と言われても、観客も大槻ケンヂも余力なんて残すつもりはないといったノリっぷり。そう、これでいいのだ。
そして2days初日ラストを飾る、大槻ケンヂのタイトルコール。「トリフィドの日が来ても、二人だけは、いーきーぬーくーーー!」。「トリフィドの日」は、1951年のSF小説。流星雨の中、盲目になった人類が歩く肉食植物・トリフィドに支配されていくという話だ。わかりやすい愛だの恋だのを歌うことの少ない筋肉少女帯の楽曲の中で、新旧入り交じるすべてのファンに向けた究極のラブソングと言えるだろう。何があっても、「伝える」という術はなくならないのかもしれない。だから大槻ケンヂの歌う言葉はずっと変わらない。それは記号としての言葉ではなく、彼の言葉に込められた、普遍的な質量なのかもしれない。
M01. 心の折れたエンジェル
M02. タチムカウ―狂い咲く人間の証明―
M03. 踊る赤ちゃん人間
M04. イワンのばか
M05. 生きてあげようかな
M06. ゴーゴー蟲娘
M07. バトル野郎
M08. 労働者M
M09. 代わりの男
M10. 香菜、頭をよくしてあげよう
M11. ゴッドアングルパート2
M12. 日本印度化計画
M13. サンフランシスコ
M14. ロシアンルーレットマイライフ
M15. 暴いておやりよドルバッキー
-encore-
E01. モコモコボンボン
E02. 妖精対弓道部
E03. これでいいのだ
E04. トリフィドの日が来ても二人だけは生き抜く
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◆インフォメーション
筋肉少女帯メジャーデビュー25周年記念「4半世紀」
・2013年06月22日(土)【中野】サンプラザ
◆ニューアルバム発売!
『公式セルフカバーベスト 4半世紀』
・2013年05月29日(水)発売予定
続いて2日目の模様は三橋コータがお届けする。「4半世紀記念への何か予言はあるのか?」と題された今回の2days。初日の夜、内田雄一郎が発した言葉は「明日告知がある。という告知をします」という、やきもきさせられつつも、期待に胸膨らむ内容だった。そろそろ新作音源が出るんじゃないか。ライブ告知もあるんじゃないか。そんな期待と共に、第二夜がスタートした。
長谷川浩二のフィルインを合図に、オープニングSEを打ち破る。 この日の1曲目は「アウェー イン ザ ライフ」からスタート。某ロックフェスでの経験を元にした歌詞は「アウェー感」を自虐的に歌うもの。しかし、ファン以外の観客さえも釘付けにした、それは正に勝利そのもの。筋肉少女帯の凱旋のテーマだ。 なにより、今夜を心待ちにしていたファンで埋め尽くされたLIQUIDROOMは、言うまでもなく彼らのホームグラウンド。それでもなお「繋がれ!」と叫ぶ大槻ケンヂに、会場のボルテージは1曲目から最高潮。 そこへ畳み掛けるように2曲目「タチムカウ―狂い咲く人間の証明―」。1曲目でつかんだ心をそのままに、さらに緊張感の高いビートでまくしたてる。
ここで、MC。というのがいつもの流れだが、今夜は違う。「2Days楽しんで、すっかり出来上がってるんじゃないのかい?!じゃぁ。もう何も言うことねぇや!」と大槻ケンヂ。のっけから最高にシビレる一言と共に、3曲目「ワインライダー・フォーエバー」へ突入。 曲中盤でハンドマイクに切り替え、メンバーが台詞を掛け合う。この曲の見せ場と言えるだろう。
時に和やかに、時に煽動的に。世界観を演出しつつもメンバー各々の個性を強く感じられる台詞、そしてその分担は見事にはまっていて、「ディス・イズ・ザ・筋肉少女帯」と思わずにはいられない。個人的な思いではあるが、近年の最重要曲の一つではないかと考えている。
そしてそのまま大定番曲「イワンのばか」のイントロSEへ。「今日はノンストップ筋肉少女帯だ!みんな大丈夫か!」と観客を気遣いながらも、セットリストは容赦無しの完全燃焼コース。橘高文彦の超絶ギターから、内田雄一郎の太い掛け声と共にコールアンドレスポンス。ヘッドバンギング、シンガロングとてんこ盛り。序盤からこんなに楽しくていいのだろうか。そんな観客の悲鳴が聴こえてきそうだ。
と、ここまで一気に駆け抜けた序盤の締めくくりとして演奏されたのは和みムード満点の「きらめき」。オープニングから走り抜けてきた締めくくりの、さながらウィニングランをしているような充足感でMCコーナーへ。
唐突に魚のぬいぐるみを取り出した大槻ケンヂ。「この魚を釣ってやろうじゃねぇか。釣り竿をくれ!」と内田雄一郎が手にしたのは、昨夜に引き続き一弦ベース。ファズサウンドのアドリブで暴れる内田雄一郎に大槻ケンヂはDeep Purpleの「Space Truckin’」の名フレーズをリクエスト。そして、そのままダウン・タウン・ブギウギ・バンドの「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」を即興セッションのファンサービス。
「一寸前なら~」と大槻ケンヂが歌い出したものの、恥ずかしそうに一言「早く、曲やりなさいよ」とひと笑い。そして間髪置かず、昨夜に引き続き「ゴーゴー蟲娘」へ。
7曲目は一転して定番曲「バトル野郎 ~100万人の兄貴~」。三柴理の鳴らす印象的なシンセ音のイントロが鳴り響くと、会場は一気に戦闘モード。お馴染みの振り付けで一体感を高めつつ、8曲目「労働者M」へ。ドロドロした陰鬱な気持ちを晴らすには、うってつけのこの曲。拳を振り上げ「働け!働け!」と叫ぶ、そういうトランス状態がむしろ日頃の鬱憤を癒してくれる。
2度目のMCではこの日大槻ケンヂがうっかり左右違いの靴を履いて会場入りしてしまった事をカミングアウト。しかし、橘高文彦曰く「Ace Frehleyも左右違いの靴がきっかけでKISSに入ったんだ。だから君も今日から筋肉少女帯だ!」。「25年目にして遂に憧れの筋肉少女帯に入れました!」と大槻ケンヂ。会場は爆笑に包まれつつ、祝福ムード。
昨夜同様ここで、一息アコースティックコーナー。演奏されたのは橘高文彦の美しいアコースティックギターの音色で「愛のためいき」。言うまでもなく筋肉少女帯上級者向けの曲だが、掛け合いもしっかりついてくる観客は流石だ。
10曲目のイントロのSEが流れると、会場がどよめいた。ライブでなかなか演奏されない名曲「月とテブクロ」のイントロだ。しっとりとした曲調から一転、間奏では初期筋肉少女帯の特徴である激しいプログレ展開になり、非常に緊張感の高い名演となった。
「長年やってきて、ライブで疲れない方法に気づいた」と大槻ケンヂ。「拳を絞りきらない、膝でリズムをとらない、ジャンプはつま先立ちでOK。30代以上のお客さんは、加減しながら楽しんでください」と、ファン思いな一面(?)を見せる大槻ケンヂ。
「つまり、これでいいんだな?…もう、曲の繋ぎがわかっちゃうよねぇ」とひと笑いはさみつつ、怒濤の後半戦。11曲目「これでいいのだ」へ。観客のテンションの高さに本城聡章もキレキレのカッティングフレーズと、激しいボディアクションで応える。
12曲目、近年の新定番曲とも言える「ロシアンルーレット・マイライフ」。「ライライライ…」と会場と一体となって歌うメンバーは心からライブを楽しんでいるといった感じだ。「暴いておやりよドルバッキー」のSEが流れると、会場は大歓声。「尻尾を振って」の歌詞に合わせて、橘高文彦が客席にお尻を突き出し、ドレスをフリフリするパフォーマンス。所々の難しいキメにもかかわらず、突き上げた拳は乱れることを知らない。
本編最後の曲は、「パリ・恋の都」。昨夜に続き「ドルバッキー」でラストと思っていた観客は驚かされたかもしれない。ミドルテンポのバウンスビート。そして、ザクザク刻む低音に乗せて、メンバーと会場が一体となる。最高の高揚感がいつまでも持続していく、そんな印象を感じつつ、本編終了。
アンコールに応えて、メンバーは再びステージへ。 観客の期待が最高に高まる中、遂に待ちに待った瞬間が訪れた。橘高文彦から「初のセルフカバーベスト発売」の発表がなされたその瞬間、会場は大歓声に包まれた。しかも、その中には、かつてのメンバー太田明(Drums)のレコーディング参加曲が含まれているというから、期待せずにはいられない。
「筋肉少女帯の将来を予感させる音を聴いてほしい。早く届けたくてウズウズする。」という橘高文彦の言葉からは、この作品への想いがとめどなく溢れていた。 そして、もう一つの嬉しい告知「25周年記念ライブ」の詳細も明らかとなった。曰く「復活の聖地」中野サンプラザでの公演。そこは、筋肉少女帯第二章が始まった場所。その日、筋肉少女帯第三章の幕開けとなるのか。呼び方や定義は大きな問題ではないが、この日、新しい歴史が刻まれることだけは間違いない。
そんな中、アンコール1曲目は橘高文彦がヴォーカルをとるサプライズ。イントロをストップさせ、「俺が主役だ!」と言わんばかりに、フリースタイルでのソロプレイ。「LIQUIDROOM!俺の声が聴こえるか!いくぜ、アンクレット!」と、シャウトとともに演奏が再開。CD音源以上に攻撃性を増したギタープレイもさることながら、煽り立てるような激しいヴォーカルに会場が沸く。 そして、大槻ケンヂがステージに戻り演奏されたのは、この日の公演タイトルにもなっている新曲「中二病の神ドロシー」。
一度崩壊しながらも8年の歳月をかけ、再生・より強固な絆を得た筋肉少女帯。人気絶頂から低迷までを嵐のように経験した。大槻ケンヂはじめ、メンバーの苦悩は壮絶なものだった。そうした筋少の姿にファンは自分自身の姿を重ね合わせて、そして心救われてきた。そんな25年間のファンへの想いを綴った、まさにメモリアルソング。この日、初めて披露されたこの曲を聴くことができたファンはとても幸せだったに違いない。
そんな幸せな気分を打ち破るように、流れてきたSEは再び戦場にいざなうキラーチューン「カーネーション・リインカーネーション」のイントロ。輪廻転生をテーマにした、かなりハードなナンバーではあるが、それが「中二病の神ドロシー」で最高の優しさを見せた、大槻ケンヂなりの照れ隠しだったのかもしれない。
緊張感が増したところで、再びMC。「お前らがポックリ逝っちまうような、キラーナンバーで終わってやるぜ!」大槻ケンヂがまくし立てる。いよいよアンコールラストか。観客の期待も否応なく高まる中、流れてきたSEはなんと、最強のほっこりチューン「じいさんはいい塩梅」だ。4人全員がハンドマイクで歌うその姿は、さながら社員旅行の余興。こういうことをさらっとやってしまうところに、筋肉少女帯の度量の大きさが伺える。筆者も最高にニコニコさせてもらったのは言うまでもない。最高のエンターテインメントだ。
「なまぬるい。。良い曲だけど、、この終わり方はちょっと違うんじゃないのかい?!もっとワーっといきたいんじゃないのかい?!」と、大槻ケンヂ。そうこなくっちゃ!2daysラストを飾るのは最凶の大定番曲「釈迦」だ。何度演奏されても色あせる事の無い、筋肉少女帯のライブの代名詞とも言えるこの曲。オーディエンスも激しく頭を振り、拳を突き上げ、最後の力を振り絞って応える。 この日、リキッドルームで一番美しい瞬間だった。
こうして怒濤の2daysが終了した。こうして振り返ってみると、今回もハッとさせられる瞬間がいくつもあった。筋少のライブは一回一回が「事件」なのだと、改めて感じさせてもらった。
活動再開から6年。その中で、大槻ケンヂはことあるごとに「同窓会じゃない」という旨の発言を繰り返してきた。今回告知されたセルフカバー・ベストは、見ようによっては後ろ向き、と捉えられるかもしれない。だが、もちろんそうではない。今の筋肉少女帯の音でかつての曲を振り返るということが、完全なる未来志向なのだ。
長年愛され鍛えられた曲達が、更に進化する瞬間が間もなくやってくる。大槻ケンヂの言葉を借りるとすれば、我々は再び歴史の目撃者になるのである。
M01. アウェー イン ザ ライフ
M02. タチムカウ―狂い咲く人間の証明―
M03. ワインライダー・フォーエバー
M04. イワンのばか
M05. きらめき
M06. ゴーゴー蟲娘
M07. バトル野郎 ~100万人の兄貴~
M08. 労働者M
M09. 愛のためいき
M10. 月とテブクロ
M11. これでいいのだ
M12. ロシアンルーレット・マイライフ
M13. 暴いておやりよドルバッキー
M14. パリ・恋の都
-encore-
E01. アンクレット
E02. 中二病の神ドロシー
E03. カーネーション・リインカーネーション
E04. じいさんはいい塩梅
E05. 釈迦
http://eplus.jp/king-show/
◆インフォメーション
筋肉少女帯メジャーデビュー25周年記念「4半世紀」
・2013年06月22日(土)【中野】サンプラザ
◆ニューアルバム発売!
『公式セルフカバーベスト 4半世紀』
・2013年05月29日(水)発売予定
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