本誌ではお馴染みの彼らだが、「ROCK ATTENTION」にはバンドとしては満を持しての登場となる。5年ぶりの新作『In the Abyss』を2024年7月10日にリリースということもあり、新譜リリースまでに5年間も間が空いてしまった理由やアルバムの制作過程について詳しく語ってもらった。また、ニューアルバム『In the Abyss』の収録曲を全曲、細部まで解説してもらえたが、盛りだくさんの内容で1回の特集には入り切らなくなった為、後編として2回に分けて近日中にお届けするので、後編も期待して欲しい。
◆HEAD PHONES PRESIDENT プロフィール
ANZA(Vo)、HIRO(Gt)、NARUMI(Ba)、BATCH(Dr)
シーンの中で一際異彩を放ち、「世界」を舞台に闘い続けるバンドHEAD PHONES PRESIDENT。女性ヴォーカルANZAの美しくも痛々しい程激しく撒き散らされる激情と、怒涛のへヴィネスとグルーヴが渦巻くステージングは圧巻。 確かな技術に裏打ちされた重厚なバンドサウンドと美しいメロディ、生々しいエモーションを混在させたそのスケール感とダイナミズムは他の追随を許さず、日本へヴィロック界を代表する唯一無二の存在。これまでに「OZZFEST」、「LOUD PARK」、「TASTE OF CHAOS」、「Japan Expo Sud」、「Formoz Festival」「MEGAPORT FESTIVAL」「MTAC OMEGA」「ASIA METAL FESTIVAL 2009 SUMMER SPECIAL」等といった名だたる大型フェスに国内外問わず出演し、In This Moment、The Agonist、Chthonic、LAZARUS A.D.(from US)、ANTERIOR(fromUK)といった海外アーティストとも共演している。
HIRO:曲は作り続けてはいたんですけど、やっぱり一人じゃできないんでね。みんなの気分が乗らないとできないじゃないですか、バンドって。その乗らない気分のままズルズルとコロナ禍(編集部註:コロナ禍を2019年末から2023年5月の感染法上の分類が5類に移行されるまでの期間としています)に入って、全てが止まってみたいな状況になって…。
HIRO:中ですね。(編集部註:2021年5月31日配信リリース)ソロアルバム制作中もバンドの曲は作っていて、これはバンド用これはソロ用みたいな感じで曲は常に作ってはいたんですけど、バンドはソロと違ってみんなの気分が乗らないと進まないから、出来上がってみたら5年も経っちゃってたという感じです。
NARUMI:コロナ禍が明けてANZAがちょっと焦ってきて、やばい明けちゃったみたいな(笑)
ANZA:焦ったわけじゃないけどさ(笑)
NARUMI:ようやく動き出したみたいな感じだと思います。はい。
HIRO:確かに。コロナ禍明けの頃にアルバムをリリースしたバンドが結構いて、あの時にANZAはすごい焦ったと思います。
ANZA:焦ってないよ別に(笑)
NARUMI:みんなアルバム出してるから(笑)
HIRO:その頃に私がバンドの共有のフォルダに入れていたデモの曲を聴き始めて、これいけるかなとかこれやりたいなみたいな連絡、レスポンスがあって、ようやく時計の針が動き出したと睨んでますけど。
ANZA:BATCHさん、来たんだから喋りなさい(笑)
BATCH:そうですね。HIROさんの言った通りというか(笑)コロナ禍でだいぶ気持ちが落ちたので、テンション上げるまでに時間が掛かったって感じです。
NARUMI:コロナの時はライブするのがまず大変で、アコースティックライブの予定を入れていたのがまずなくなって、それから1年くらい粘ってもライブが開催できず、ライブってどうやってやるの?みたいになっちゃって(笑)そうしたらもうほとんどライブハウスはアイドルに押さえられてて…。
HIRO:3本くらい無くなったかな?台湾が無くなったりね。国内のライブも3本くらい無くなって、確か。で、みんな不貞腐れちゃって(笑)
NARUMI:不貞腐れましたね。もういい…。
HIRO:二度とやんねぇ、みたいな(笑)
NARUMI:そっちがそうなら考えありますよっていう(笑)
BATCH:ツアー行っても「東京者は来るな!」みたいな感じで(笑)
HIRO:楽器持って電車とか乗ってるとすごい嫌な目で見られて(笑)
ANZA:って言うか、みなさん忘れてるんですけど…。コロナ禍に私が無限大に自分のパワーを注ぎ込んだ舞台だあったじゃないですか?ミュージカル『COLORS』をやって私は正直完全燃焼しちゃったんです。だからもうそこで私の中では一旦終わっちゃって…。
NARUMI:バーンアウトしちゃったんですね。
ANZA:それで、コロナの状況を考慮して1年間開催を遅らせたりして、20周年の節目だから(編集部註:ミュージカル『COLORS』は、20周年で開催できず、21周年の2021年10月に開催)どうしてもやりたかったので、アルバムのことはなかったんだよね、頭に。もうとにかくミュージカル『STAND IN THE WORLD』でできなかった、後悔しているものを絶対取り戻したいってミュージカル『COLORS』を作って、ようやく自分の中で納得のいく、2部のショーで納得のいく作品ができて、そこで私の中では1回終わっちゃったんですよ。もうなんかいいかなって。
ANZA:もう別にアルバムを作ろうとかって言う気持ちもないわけじゃないんだけど、ちょっと一旦これ無理だなって、私の中で今空っぽだってなっちゃったからそれが原因かも。周りがアルバム出すとかじゃなくて、舞台で完全燃焼しちゃったと。それからミュージカル『COLORS』を2部やったからこそ自分が持っていきたい方向性がはっきりしすぎちゃって、はっきりするものを音にすることができなくて、フォルダに入れてもらったのは聞いてたけど、なんか違うって感じで全く制作の方に気持ちが向かなかった。とにかくまずはミュージカル『COLORS』で、本当に私の中ではコロナ禍は終わってしまいました。
HIRO:レコーディングが始まったのは今年だったよね?
ANZA:今年の3月とかだから。
HIRO:基本的にはレコーディングは歌入れ中心なので、その歌を入れるまでの準備には結構時間が掛かってるかなと思います。
NARUMI:掛かってないんじゃないかな?1週間くらいで作った曲もあったよ。
HIRO:それもあったけど、「Burn It All Down」に関してはアレンジがなかなか決まらなくて。あれもアイディア自体は古いんですよ。コロナ禍に基本的な、粗削りなデモはあったんですけど、なかなかキーが決まらなくて。キー合わせも3回くらいいろんなキーでやって、ようやくあれになったんですよね。それが去年のことで、ライブでやれるようになって、実際にライブでやってみて、そこでもなんか違和感があって、最終的にそこからさらにアレンジが変わり、今の形になっているので。
ANZA:1週間でできたものもある。割と私たちってそう言う感じです、今までも。1、2曲でき始めるとペースが早くなってスピードアップしていって、だんだんイメージが掴めてくるから。それでみんながそれぞれ持ってきたものをどういう風にするか?HIROの曲に関してはHIROがメロディまで書くことが多いけど、BATCHとかNARUMIの曲はまず私がメロディを書いてどうかね?って。そこから最終的にアレンジを全部HIROに投げたり、各パートは自分たちでアレンジしたりとか。最終的なジャッジはHIROだから、それは2、3曲できると早い。やっぱりライブができるようになったからっていうのも一番の要因、やっぱりうちのバンドはライブをやらないと曲も生まれないです、正直。
ANZA:この曲はいきなりイントロから変わりましたからね。うん、キャッチーと言えば1番キャッチーな曲かもしれないですね。本当だったらPV曲とかメインになる曲が「Burn It All Down」になるはずなんだけど、今回はあえてそこじゃなくさせてもらってるんですけど、まだ何の曲だかわかってないと思うんだけど(笑)でも一番悩んだのは「Burn It All Down」なんだよね?HIROね?すごい悩んでた。
HIRO:アレンジは新しいことをやっているから結構悩みました。
ANZA:こことここが繋がってるのね。(ANZAとBATCH、ANZAとNARUMIを指差す)「Seeds Remain」と「Can You Feel It」の元ネタはBATCHなんだけど、もうがっつりアレンジを変えて。HIROがアレンジャー、総監督なので。二人の要素は加わりましたけど、最終的にまたHIROワールドになるので、うちのバンドは(笑)うーん、でも結構あれだよね? 大手術はされてます。NARUMIの曲は比較的そこまでいじられてなかったかな?どうなんだろう?
NARUMI:そんなことない。私のデモはもう単純な…。
ANZA:シンプルだから。NARUMIとBATCHの2人が作ってくれるのは。
NARUMI:最初の最初だけです。
NARUMI:いや、コーラスやDパートも含めてみたいな感じで。
ANZA:それをHIROさんに。ギターも変わるので。
HIRO:NARUMIの曲はね、難しい。ギターが難しい。どう弾いてるのかよくわかんない(笑)まずそれをコピーして。譜面も送ってこないから。
NARUMI:なんかギターがぶっ壊れて、ちゃんと鳴ってくれないんで(笑)
HIRO:このノートがどっちなんだろうな?こっちかな?みたいな(笑)そこからちゃんとした解析から始まると。こうやって弾いてんのかって。そこを理解してからアレンジが始まって、ちゃんとイントロからエンディングまで組み立てるみたいな感じです。
HIRO:BATCHの曲もどうなんだろうな?結果的に分かれましたけど、7曲目の「Seeds Remain」と8曲目の「Can You Feel It」は元々1曲になっていたのですが、エンディングとか、イントロの歌から始まって静かなパートがあって、ちょっとリフが出てきて、みたいな部分とか、あとパーカッションのリズムの感じとか部分はあったけれど、エンディングとかなかったので、この前半の歌をまず解析して、そこでコード進行をちゃんと1回整理して、その後に出てくるリフも、前半の歌と同じ流れで、キー的に合うようにリフのキーも変えて組み立てたらなんとか目途が立ってきて、ギターソロも入れて、エンディングまでなんとか流れが組み立てられるようになって、全貌がなんとなく見えてきていけるかなと。そうしたら曲が長くなっちゃったので、これは絶対分けた方がいいな、その方が親切だっていうことでこうなりました。
HIRO:あ、シタールを弾いてる曲ね。
ANZA:それはあんまり考えて作ってないかもしれないですね。
ANZA:なるほどね。多分ね、本人たちは一切何にも考えてなかったかもしれない。
NARUMI:全く考えてない。
ANZA:今言われてそうなの?みたいな。でも、そういう風に思ってもらえるんだったら。ミュージカル『COLORS』の後の初の作品だったからじゃないですか?これが。だから私がちょっと悩んでた部分っていうのが、自分たちには意識はなかったけど、聞いてもらった時にそう感じてもらってんだったらこれは良かったのかな?
ANZA:全然そんなこと考えてないです。セーラームーンは一切ない。
HIRO:それは俺も思った。
ANZA:それは多分ねセーラームーンを考えてるからだと思う。でも、これにセーラームーンの要素はないかな?自分の中では一切。
HIRO:なんかそれっぽかったけど。
ANZA:そう?
NARUMI:めちゃくちゃセーラームーンの要素を詰め込んだって言った方がいいよ(笑)
ANZA:いや、だって、ほんとにないんだもん(笑)
NARUMI:気付く人はもう全部気付く(笑)
HIRO:やばい、これは絶対買わなきゃって(笑)
ANZA:いや、ごめんなさい。とは言っても、全く無かったから。
HIRO:いや、短めにやりましょうか?
「短めに」ということだったが、『In the Abyss』の全曲解説が盛りだくさんの内容となったので、後半の全曲解説編として近々お届けする。乞うご期待!
ANZA:ツアー。そうですね、やっぱり久々のところにも行かなきゃいけないので。(編集部註:年内は東京以外に名古屋、大阪、仙台、金沢をツアー予定)
ANZA:そこはね、うん。
ANZA:はい。
ANZA:まだ発表できていないこととかも結構いっぱいあるんだけど、別に12月のDoorsがファイナルっていう訳ではなく、これは前兆。年内は、2025年の我々の25周年の1番大事な年の前座的なスケジュールなので、来年の25周年からこの『In the Abyss』の本格的なものが始まります。その間もシングルのリリースは多分していくと。 25周年のプロジェクトの前座的なものという気持ちでいるんだけど…。
ANZA:もう25周年なんで、はい。ツアーライブを今までできなかった分やりたいし、もちろん自分たちにしかできないショーを企画していてね。またコンセプトワンマンじゃないですけど、『Devilize It』とか、ああいう風なこととかも。やっぱりこう、一応25周年の一区切りとして、やりたいことはやらせてもらって、はい。
ANZA:BATCHさんから。お待たせしましたってことだよね?
BATCH:本当にお待たせ致しました。頑張って作ったんで聞いてください。
ANZA:じゃあHIROさん。
HIRO:そうだな。これからね、曲が(ライブを経て)多分ガラッと変わって行くと思うのでね。25周年になってまた新しいHEAD PHONES PRESIDENTをお見せすることができるんじゃないかと思って、はい。皆さん期待して待っててください。
ANZA:NARUMIさん、次どうぞ。
NARUMI:はい、そうですね。随分お待たせしましたけれども、 これからはですね、今の音楽情勢を踏まえて、コンスタントにちょこちょこリリース。
HIRO:二度とやらないって言ってたじゃない(笑)
NARUMI:いや、もうね、今の世の中ね、ちょこちょこリリースしてなんぼですから。ちょこちょこリリースしながらね、ライブもやって、制作とライブのツアーの境目がない感じでやって行きたいなと。今の音楽情勢に合わせてね、周りを見ながら進んでいきたいと思います。
ANZA:もちろん「お待たせしました」っていう言葉が1番まずは皆さんに伝えたいことではあるんです。この作品『In the Abyss』って、新しい要素にチャレンジしてる部分と今までHEAD PHONES PRESIDENTの心臓である自分たちの伝統的な部分もあって、昔の5人編成時代の作品が好きだった人たちも、『Stand In The World』以降のちょっとメタル要素が強いのが好きな人たちのどちらが聞いても、別に嫌だっていう風な作品にはならないっていう自負はあります。
個人的には NARUMIさんの歌詞も今回は結構ポイントとして聞いて欲しいなと思っています。今までのスタイルは基本的に変わってはいないんだけれども、すごくより伝えようっていう、本当は日本語にするべきなのかもしれないんですけど、やっぱり何かを感じ取ってもらう時に、今この世の中、簡単になんでも情報が手に入る中で、自分で調べて自分の中に入れようとすることが、逆に難しい時代じゃないですか。自分が思ってることとは全く違うことをNARUMIが書いてくれたことがすごく自分のエールに、NARUMIが書いてくれたことによってエールになった言葉っていうのもあって。それが、1つの曲に合わさって、 今回は私の中ではやっとここまでたどり着いたなっていうか…。
そのお待たせしてしまった分、なんか自分の中ではすごく納得感があって。初めてかもしれないですよ。やりきったと言うともう先がなくなっちゃうんみたいだけど、自分が描いてたバンド像にまでついに到達できたなっていうか。ただ暗いだけがHEAD PHONES PRESIDENTではなく、喜怒哀楽、人間の気持ちだったりっていうことをちゃんと詰め込んで、時間はかかった分、1曲1曲が捨て曲なしの、歌詞もアレンジも楽曲も含めて、これがHEAD PHONES PRESIDENTだって堂々と世の中に示せるものができました。これはきっとライブはとんでもないパフォーマンスになると自分の中では思っているので、皆さんライブを見ないとはっきり言って損すると思うんで、来てください!ということです。