「ギャップ萌え」という言葉がある。「ひとりの人物の中にある、一つの要素と別の要素とのギャップや、普段は有り得ない状況が生みだす萌え」というイメージを表した言葉だ。
激情★めたりっちぇは、ガールズらしい「可愛らしさ、可憐さ」と、メタルならではヴァイオレンス性という二面性からの「ギャップ萌え」を有する強烈な個性を持ったバンドだ。今回はその彼女らとともに、この9月にリリースされた初のミニアルバム『I YASSAAA』を紹介しよう。
彼女らは、大阪を起点として活躍している3ピース構成のバンド。メロディアスなボーカルラインの中でアイドル風の声、力強い声、そしてデスボイスと目まぐるしく変化するボーカルを披露するみがき、超絶テクニックを誇るギターのMidori、重量感たっぷりなドラムさばきとともに、絶妙なボーカルのバックアップを行うZEN。そんな個性あふれる3人の作り出すサウンド、パフォーマンスは、インパクト十分という言葉では表現しきれないほどユニークだ。
彼女らのルックス、コスチュームから見られるアイドル的、オタク文化的な要素。アルバムから聴こえる音は、それぞれに対する一つ一つの要素には定義づけができるかもしれない。また、同人文化が発達した今日では、彼女らの様々な個性を合致させ一つのイメージを作ることも意外に珍しくはないが、彼女らの魅力はむしろそれらを一つに集結し、バンドの個性、自分たちの個性として完成させていることにある。
自らの胸の内をすべて掃き出し、さらけ出してしまうような叫び。その一発の叫びを聴くものの心の奥深くまで届かせるために、激情★めたりっちぇの「ギャップ萌え」というスタイルはあるようにも見える。一つ一つの彼女らの要素はすべて、一発の叫びを最も響かせるためのお膳立てとして巧妙に構築されているかのようだ。おそらくどの要素が欠けても、彼女ら本来の姿は見えない、すべてが彼女らのスタイルとして確立されている。
また興味深いのが、個々の詞の世界だ。アルバムラスト曲「意味の果て」に見られるストレートな表現、「二次元に恋してる君に恋をした」で飛び交うネット用語、そしてその中間的な表現が見られる「じゅもんぐ ちょおい ちょおい」「Porker face」「逃げ道compleat」。それぞれの作詞者のセンスもさることながら、これを通して聴いてみると、どの言葉も自然に耳に入ってくることがわかるだろう。「ネット用語に抵抗のある層」「ストレートな表現に抵抗を感じる層」と、様々な性質を持つリスナーに対して、この作品はそれらを自然に感じさせるような雰囲気がある。
最も印象的なものは、「二次元に恋してる君に恋をした」にある「自分を殺してあの娘をコピペ」という表現。「殺す」というバイオレントな表現、その中に潜む「本来の自分を表現できない」女子の哀しさ、それをメタルならではの荒々しいサウンドと、飛び交うシャウトが、その感傷的な思いを増幅して、聴くものの心へ突き刺してくる。ありきたりの表現ではおそらくここまでの激情感は表現できないだろう。
メタルの様式を追究したサウンドでは、オリジナリティを作り出すのが難しい感もあるが、その壁を打ち壊した姿の一つといってもいいのではないだろうか。ライブで観衆と一体感を持たせるキーワードもふんだんにちりばめられているところなど、完成度の高さも感じられる。彼女らは自身のサウンドを「ナチュラルメタル」と表現しているが、彼女らの個性は、まさにこの一言に集約されているといってもいい。
まだ結成して一年という若手のバンドであるが、可能性を十分感じさせるほどの器を彼女らは持っている。激情★めたりっちぇ、「ギャップ萌え」を武器に、どこまでその存在を確立できるだろうか?彼女らの「激情」の威力は計り知れない。是非一度、ライブやこのアルバムで、その衝撃を体感してみてもらいたい。そしてその衝撃に萌えたなら、「I YASSAAA!」この合い言葉を叫んでほしい。
特別インタビュー:「激情★めたりっちぇ」とはどのようなバンドなのか?メンバー3人へのインタビューよりたずねてみた。
ZEN:「めたりっちぇ」という言葉は私が考えたんですが、「メタル」という言葉を可愛くした造語、女の子が可愛くメタルをやっているという感じで。響き重視なんです。
それと英語には絶対したくないという思いもありました。「日本のバンドだし、平仮名と漢字だけでいこう!」って。それに加えて「『めたりっちぇ』だけじゃ面白くない」と、Midoriが「激情」をつけて(笑)。さらにみがきが「バンド名に『★』を入れたい」と言いだし(笑)
みがき:面白いでしょ?たとえば対バンのタイムテーブルなんかで、ほかのカッコいい英語表記の名前のバンドが並んでいる中で、「激情★めたりっちぇ」って(笑)
Midori:もともと音楽学校の私の同期に「ヨシングウェイ・マサムスティーン」というコンポーザーの友達がおりまして(笑)、彼から「(音楽的に)こんな感じのバンドやってみたいんやけど」という話をもらったのがきっかけでした、彼から楽曲提供してもらって。
Midori:いえ、今バンドでやっているようなコンセプトは、その時点ではありませんでした。それはボーカルがこの子(みがき)になったからというだけ(笑)。私たちだけで決めました、このルックスなんかも。ボーカルが映える形というのが一番理想的じゃないですか?だからこのコンセプトでいこうと、私たち自身が決めたんです。
みがき:そうですね。まだ一年前くらいに知り合ったばかり。
Midori:もうみんな毛色が違うんですが(笑)、私は前の所属バンドというものは無くて、ずっと音楽学校の方でメタルとか、テクニカルなものを主体にいろんなものを好んだり、弾いたりしていました。いろんなものを追究したあげく、「メタルバンドをやりたいな」ということで今に至っています。
ZEN:私はいろんなバンドをやっていましたね。20バンドくらいやったかな?サポートも含めて。それこそメタルだけじゃなくて、ポップスもあり、男装してビジュアル系とか、(チアガールの)ポンポンを持ったこともありましね(笑)
ZEN:まったく無いです!なんでも好き。Midoriとはバンド仲間を通じて知り合いました。
みがき:シャウトって、昔はできなかったんですよ(笑)
みがき:本当に趣味程度で友達とバンドでスタジオに入っていた程度でした。その頃の仲間に言われた曲を聴いては「あっ、カッコいいな」とか思いながら。そのとき何気にボイストレーニングに通っていて、その先生がMidoriの音楽学校でも教鞭(きょうべん)をとられていたつながりがあり、彼女から誘われました。「えっ、いいの?」って入ったら、「なんと、メタルバンドだった!」みたいな。目が点になりましたね(笑)。今ではメタルも大好きですけど。
Midori:よく道を歩いているときにずっと「ウォーッ!」とか言って練習していたんですよ(笑)
Midori:いや…最初からそこまでは(笑)。どちらかというと、彼女がフロントマンなので、それをフィーチャリングするというのが普通、くらいに思っていました。まあやりたい音楽は、3人でやっているうちにできる化学反応でボン!って出てくるので(笑)
ZEN:私もやっぱりフロントマンが一番際立つ感じで、かつ各人がそれに合うようにアレンジを進めていくのがいいと思っていましたし。
Midori:それはあります。だって3人ともまったくキャラが違うし(笑)。かえってそっちの方がいいと思っているんです。
みがき:そう、被らないんですよ、まったく。
ZEN:そうですね…敢えて言うのであれば、「私たちのことを知らない人たち」。
Midori:そうですね。私たちのサウンドやパフォーマンスが、必ずしも万人に受け入れられるものではないかもしれませんが、それでも。
Midori:無いです。みんな考え方もバラバラだし(笑)
ZEN:『サマソニ』!(笑)
Midori:Cool Japan!日本に限らずライブしたい!なんせこんな衣装を着ているんですよ(笑)、もろに日本の萌え文化って感じでしょ!(笑)
みがき:いろんなフェスに出たいですね。どちらかというとフェスバンになりたいんです。
Midori:いや~武道館は…
ZEN:だって、暴れられないでしょ?(笑)
(3人):出たいーーー!!(笑)
Midori:あと『Wacken Open Air』とか。
ZEN:『KNOTFEST』も!
激情★めたりっちぇ『I YASSAAA』(限定盤)
発売中
GJMT-002/1,700円 (税抜)
収録曲:
M01. ready?
M02. じゅもんぐ ちょおい ちょおい
M03. Porker face
M04. 逃げ道compleat
M05. 二次元に恋してる君に恋をした
M06. 意味の果て album ver.
ライブ情報
藤花祭(京都女子大学学祭)
2014年11月02日(日)【京 都】京都女子大学
a DROP OF JOKER企画 DROPxDROPxDROP vol.2
2014年11月08日(土)【大 阪】心斎橋club DROP
non Linear Metal Dynamix Vol.40 in Nagoya
2014年11月23日(日)【愛 知】名古屋・今池3 STAR
公式サイト
http://gekijometaliccheofficial.web.fc2.com/
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