2018年4月15日(日)、大阪アメリカ村に新しいライブハウスが誕生した。その名も「BEYOND(ビヨンド)」。大阪、東京を中心にライブハウス事業を展開するベースオントップ(BOT)グループの10店舗目のオープンとなり、これまで名だたるアーティストを輩出すると共に、大阪を拠点に活動する様々なアーティストたちの拠り所にもなっている老舗アメリカ村DROP(B1)の真下(B2)に位置する新しいハコ「BEYOND」は、音響や照明のクオリティが高く、ミュージシャンからもオーディエンスからも人気のベースオントップグループの総力を結集した、足を踏み入れた瞬間にワクワクするような空間だ。
そんな「BEYOND」のこけら落し公演として開催されたのは、CANTA、地獄カルテット、DAIDA LAIDAで活躍する、もはや説明不要の超絶ベーシストMASAKI率いるスペシャルバンドの夢の競演だ。『MASAKIデビュー25周年ロード第2章~東京&大阪スペシャル~』と題されたツアーは東京・大阪それぞれ2公演ずつの合計4公演開催。2部制によって行われた豪華な一夜の、ツアーとしてもラスト公演となる2部の模様をお届けする。
ボーカルレスの公演ということで、舞台の配置は上手にベース、下手よりにギターとキーボード、ドラムセットも通常より前に配置された、楽器が全面に押し出された構成。オンタイムにそれぞれラフな出で立ちで現れたメンバーだが、突如舞台がぐっと狭くなったかのような圧倒的なオーラが漂う。
それもそのはず、本日のスペシャルライブのメンバーは主役のMASAKI(Bass)を筆頭に、淳士(Drums/BULL ZEICHEN 88)、you(Guitar/Janne Da Arc)、都啓一(Keyboard/Rayflower)という、各々が実力と人気を兼ね備えた一流ミュージシャンたちなのだ。
1曲目は「宇宙戦艦ヤマト」。音が鳴った瞬間に、地鳴りのような音の塊が新しいライブハウスの良音響と相まって襲い掛かってくる。メタルアレンジの雄々しきヤマトの音色に呑まれる、ド迫力のオープニングを終えたところでメンバー紹介へ。また、本日がオープンとなるBEYONDの楽屋がピカピカな件についても盛り上がる。当然本日オープンのライブハウスの楽屋の壁はキレイだが、「ライブハウスの壁っていっぱい落書きあるじゃないですか。一番先に落書きするのって誰でしょうね?」確かに気になる!
そんな和やかな空気の中、続く「Dirty Drop」は秋には自身の4枚目のソロアルバムがリリースされる予定だというMASAKIの3枚目のソロナンバー。技巧派の彼らしく手元が見えないほど早いフレーズと、一音一音に魂がこもった重い音の波が最高に気持ちいい。さらに「キル・ビルのテーマ」ではyouの渋味のある重厚なギターサウンドに鳥肌が立つ。そして都啓一作曲の「Freeway Note」は美しい照明も相まってムーディーなナンバーだ。情熱的なピアノ・キーボードと弦楽器のかけあいが美しく、オーディエンスを夢心地の世界へと連れていってくれる。
印象的だったのは、演奏は言うまでもなく、ライブの運びからMCの間までが絶妙なベテラン揃いのメンバーなのに、曲が始まった瞬間、はじめて楽器を手にしたピュアな少年たちを見ているような微笑ましい気分になることだった。音楽が好きで好きでたまらないというミュージシャンたちの笑顔は、こちらまで笑顔にさせてくれる。
「1曲だけしっとりしたナンバーを」と演奏されたのは、名曲「夜空ノムコウ」。ベースでメロディーラインを繋ぐアプローチが新鮮で、こんなにも一人一人の個性が際立っているのに相手の個性も活かしている好相性のバンドが、たった4公演しかないのが勿体ないような気がする。
そしてステージは終盤へ。「T.C DASH」は淳士作曲のノリノリのナンバーだ。圧倒的なスピード間で展開するこの曲のドラムは、作曲者である彼以外は叩けないのではと思えるぐらい速くそして軽快な曲なのに一打が重い。事前にMASAKI主導で横モッシュ(※ヴィジュアル系のバンドでよく行われているオーディエンスが左右に動く振り)を伝授されたオーディエンスたちが右へ左へ動き回り、会場の熱気は一気に急上昇。続くMASAKI作曲の「Zanzo Circus」は彼ならではの血が沸騰するようなシャッフルビート。一流のプレイヤーが揃うとキメの一瞬の静寂すら音楽になる、息を呑む瞬間の連続だった。
「音楽とはテクニックと笑いである」というMASAKIの言葉は最高の技術と最高の間を持ち合わせた彼だからこそ説得力のある言葉だ。ゆるやかに進むMCの中でもしっかりツボを押さえ、メンバーもオーディエンスも常に笑わせてくれる手腕は流石。ラストナンバーは「暴れん坊将軍」。各パートの華麗なソロプレイも披露される。フレーズごとにくるくると表情を変え、豊かな音色を奏でる都啓一のキーボード、youの職人技と呼べる正確で丁寧で不思議と柔らかなギターフレーズ、淳士のドラムソロのターンではオーディエンスの「淳士ーー!」コールと呼応する圧巻のプレイで見ているこちらの目が回りそうだ。そしてMASAKIの一音一音に物語が見えるようなベースソロに酔いしれるうちに、舞台はフィナーレを迎えた。
「今日はありがとう!夢で逢いましょう!」割れんばかりの拍手とメンバーコールの中、記念すべきこけら落としライブは大盛況のうちに幕を閉じた。約90分という限られた時間の中にぎゅっと凝縮された濃厚なひと時だった。公演中にMASAKIが話していたとおり「このこけら落としライブを超えられるバンドは現れるのか?」今後新しいアメリカ村のランドマークとして、若手からベテランアーティストまで幅広くサポートしていくライブハウスに成長していくのが楽しみである。
M01. 宇宙戦艦ヤマト
M02. Dirty Drop
M03. キル・ビルのテーマ
M04. Freeway Note
M05. 夜空ノムコウ
M06. T.C DASH
M07. Zanzo Circus
M08. 暴れん坊将軍
◆MASAKI 公式サイト
http://www.masaking.com
本記事の写真:ベースオントップ&岡本義之