REPORT丨2016.11.27
Busking Series 2016 FINAL
2016.10.8 @下北沢 CAVE Be
本誌BEEASTで27年ぶりの単独来日公演をリポートしたSTRYPERは、キリスト教信仰をロックで表現する”クリスチャン・ロック”の先駆者といえる存在だ。神とキリストを賛美する内容の楽曲、ステージ上から聖書を投げ込むパフォーマンスで、STRYPERはワールドワイドに知られている。
“世界最速のメタル・ギタリスト”と名高いChris Impellitteriも、本国アメリカではクリスチャン・ロックにカテゴライズされる場合がある。彼がこれまで発表したアルバムの中には、キリスト教信仰を題材にした楽曲が必ず1~2曲ずつ収められているからだ(現時点でのImpellitteriの最新アルバム『VENOM』の中にも、旧約聖書の神ヤハウェ=エホバの名を冠した「Jehovah」という曲がある)。
1990年代後半から登場したポスト・グランジ/オルタナティヴ・メタル路線の洋楽アーティストの中にも、クリスチャン・ロックに分類されるバンドが多数存在する。筆者が最近プライベートで愛聴しているTHE LETTER BLACK、NINE LASHES、SKILLET、THOUSAND FOOT KRUTCHなどが、その代表格だ。
しかし日本では、クリスチャン・ロックが定着しているとは言いがたい。全人口の70~80%(うちカトリック約25%)をキリスト教信者が占めるアメリカと異なり、日本のキリスト教信者数の割合は人口比率で1%未満に過ぎないというから、致し方ないことかもしれない。
そんな状況下にもかかわらず、2015年6月より発足した日本初のクリスチャン・ロック専門レーベルCalling Recordsが、下北沢 CAVE Beでライヴ・イベント『Busking Series 2016 FINAL』を開催した。本イベントにはCalling Records所属の日本勢に加え、南米チリ出身にもかかわらず流暢な日本語を操るバンドVICTORIANOも出演した。その模様を紹介しよう(文中敬称略)。
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M01. Are You Ready
M02. Pain
M03. 産業廃棄物
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M01. あなたの声で
M02. FREEDOM
M03. Break Me
M04. 間違いだらけの僕に
M05. 神様の歌を唄わせて
http://www.hiroki-miki.info/
◆三木ヒロキ
三木ヒロキ(Vocals & Guitar)
岡谷 和作(Support Guitar)
黒崎 直哉(Support Bass)
金山 建成(Support Drums)
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M01. Soul Of Faith
M02. God Bless You
M03. Nobody
M04. 夢
M05. Light For The World
M06. Calling
http://solfai2013.wixsite.com/solfai
◆ソルフェイ
オオハラシンイチ(Vocals)
now(Guitar)
Yuta(Bass)
Luka(Drums & Vocals)
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M01. Unlimit
M02. Repent
M03. Heaven’s Gate
M04. Love Is To Do Something No One Dares To Do
M05. Faith Rider
http://www.imaritones.net/
◆IMARi ToNES
Tone(Vocals & Guitar)
Hassy(Bass)
Jake(Drums)
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M01. 主の祈り
M02. 人と愛
M03. 十字架の印
M04. 轍を行こう
M05. ハレルヤマン
http://www.xiete.com/
◆Xie
Machi(Vocals, Guitar & Trumpet)
Suzuki”BUDDHA”Noriyuki(Guitar)
鶴瓶(Bass)
nalu:shin(Drums)
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日本語詞と英語詞が混じった「A Matter Of Faith」では、Sergioがステージ袖に引っ込み、Gersonがリード・ヴォーカルに回り、低声のハスキーヴォイスを聴かせてくれた。続いて、PVが制作されたバラード「届かない恋」では寡黙なDamienが椅子から立ち上がって観客にウェーブを促す。同じくPVがある「神の許しがない」は、獰猛なグロウルと高速のバスドラム連打がアクセントに効いたファスト・チューン。「Mas Mas Mas(もっと、もっと、もっと)」というスペイン語のサビのフレーズを観客も一緒に合唱する。気をよくしたSergioはメンバー紹介に続き、チリの国旗をメンバーと共に掲げ、観客と「Viva Chile(チリ万歳)」コールを連呼する。アルバム未収録曲「悪魔の仕業」で本編を締めくくると、客席から「アンコール」の合唱が起こる。すると、VICTORIANOはチリの国旗を再び掲げて登場。母国の大先輩バンドであるLA LEYの「Right Here」(スペイン語原題は「Aquí」)の日本語カヴァーで、40分強のロングステージの幕を下ろした。
M01. 装うことないさ
M02. 夢をつかもう
M03. パラダイス
M04. A Matter Of Faith
M05. 届かない恋
M06. 神の許しがない
M07. 悪魔の仕業
M08. Right Here(Japanese Cover of LA LEY)[-encore-]
http://www.victoriano-rock.cl/
◆VICTORIANO
Sergio Victoriano(Vocals)
Gerson Victoriano(Guitar & Vocals)
Damien(Drums)
Tone(Support Bass From IMARi ToNES)
最後に、南米チリから遠路はるばる来日を果たしたVICTORIANOに、この場を借りて敬意を表したい。地球の裏側のチリで日本文化に魅せられ、独学で覚えた日本語で作詞・作曲するロックバンドが存在するとは誰が想像しただろうか。バンドの存在自体もさることながら、かねて念願だった来日公演が実現したことも奇跡といえる。歌メロ重視のキャッチーなサウンドからは良質なJ-POPやJ-ROCKのエッセンスを貪欲に吸収している様子が窺え、日本人好みのスタイルをよく心得ているようだ。日本が世界に誇る”クロサワ”の映画をキッカケに、はるか彼方の異国である日本に好印象を抱き、SIAM SHADE、L’Arc〜en〜Ciel、X JAPANなどの日本人アーティストにインスパイアされたというVICTORIANO。音楽を通じて、チリと日本の架け橋になることを目指す彼らが、日本の音楽シーンに本格進出を果たす時が来るのを期待したい。
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